2013年3月 5日

「食」 からの CSV

 

ダラダラと東京集会レポートを続けている間にもいろんなことがあって、

日々何がしか動いている。

お月さんのようにただ満ち欠けを繰り返しているだけでないことを願いながら。

トピックをいくつか残しておきたい。

 

2月25日(月)。

二日酔いで東京集会の服装のまま、

編集プロダクションからの取材を受ける。

福島県から委託を受け、6次産業化を推進するためのパンフレットを作成中とのこと。

しかし一次産業者が自ら農林水産物を加工・商品化して売り出すにも、

いかんせん今の福島では放射能に対する風当たりが強く、

新たな販路を獲得できる状況ではなくなってしまっている。

ただの手引書では生産者を後押しするものにはならないのではないか

と考えた結果、福島の生産者を支援している団体もあることを紹介し、

メッセージを掲載したい、ということである。

 

約2時間お話ししたのだが、

放射性物質の基準値の考え方、生産者と取ってきた対策の成果など、

かなりの時間が放射能対策の話となってしまった。

でも、こういう話が聞けてかえって心強く思ったとの感想をいただき、

こちらも安心した。

6次化では、まずは地域に貢献するものを、と強調させていただいた。

地域の潜在力やニーズとつながっていて、

ステークホルダー (その製品に関わる人々) が広がっていくようなもの。

まずは地元で消費され、自慢になるようなもの。

たとえば、帰省した息子がお土産に持ち帰りたくなるようなもの。

そういうものこそ持続し、発展する可能性も生まれるような気がする。

大消費地にいきなり目を向けても、そこは厳しい淘汰の世界である。

しっかりした価値 (土台) が設定されてないと、

一瞬の消費財として使い捨てられる  " モノ "  になりかねない。

何のための6次化なのか、目標を定めて取り組んでほしい。

 

このパンフレットがどういう範囲で配布されるのか、聞きそびれたけど、

撮られた写真が酒臭くないことを祈る。

 

続いて2月26日(火)。

夜、丸の内での 「地球大学」 の会合に出席。

座長の竹村真一氏が招聘したコア・メンバーと称する関係者での集まりで、

2012年度の活動を総括し、来年度からの展開について語り合った。

竹村さんらしい大きな構想が語られたのだが、

一年前に立ち上げたものの低空飛行を続ける 「つながる食プロジェクト」 の

課題も抱えている身として、偉そうなことは言えず、

ただ沸々と闘志を燃やすまで。

 


ひとつここで語られた内容を紹介すると、

これからの企業の社会的方向性は、CSR から CSV へと進む、ということだ。

 

企業がただ利潤を追求するだけでなく社会的な課題に対して貢献する、

いわゆる CSR (Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任) は、

企業の本体とは別の活動と見られがちであったが、

これから求められるのは、社会的課題の解決を事業本体が担う

CSV (Creating Shared Value、共通価値の創造) である。

マイケル・ポーターというハーバード大学の教授が提唱したもので、

社会問題の解決と企業の利益創出を両立させる、という考え方。

この機能を街の中に埋め込んでいこう、というのが次の構想であり、

そのキーワードのひとつが、

万人に共通する生きる根本活動としての 「食」 である。

さて、僕らは何ができるか-。

 

しかし・・・ CSV って。

社会的課題に取り組むことで新たな価値を創出し、

結果として経済的価値も創造される。 そんな企業活動が求められつつある。

って、何をかいわんや! ではないか。

これこそまさに大地を守る会を誕生させた組織コンセプトに他ならない。

僕らは37年にわたってこの点で苦心惨憺、生きてきたのだ。

いよいよ時代がここまで喋り出した。

僕らはここで改めて腹を据えて、挑戦者魂を発揮させなければならない。

生きて、その向こうを目指してみようじゃないか。

  - とまあ、いきなり気合いを入れるのは簡単だけど、

   言えば言うほど自らの首を絞めることも分かっている。

 

2月27日(水)は、週刊誌 『アエラ』 の取材を受ける。

" あなたは福島の野菜を食べますか? "  をテーマに

各地でいろんな人の取材を続けてきて、どうも袋小路にハマってしまったようだ。

ご同情申し上げながら、

ここでも自分たちが取ってきたスタンスと取り組みを語るしかない。

答えは、ある意味でシンプルである。

事実を知る、影響について出来るだけの情報を集め、自らの判断基準を持つ。

生産地が対策に努めるなら、私は応援する。

それが未来の保証につながっていると確信する者だから。

応援の形は多様にあり、それは各々が決めることである。

 - 採用されるかどうかは分からないので、とりあえず忘れることにする。

 

3月1日(金)。

農林水産省が関係省庁と連携して進めてきた

「地域食文化活用マニュアル検討会」 の最後前のひと仕事、

巻末に掲載するという検討委員のコラムを書き終える。

付けたタイトルが、かなりクサい。

「食文化は、ふるさとの  " 風景への愛 "  とともに-」。

かなり情緒的な文章を書いてしまった。

読み返すとやっぱり気恥ずかしい。 しかしもはや書き直す気力なく、

「もう、どうでもしてっ」 と 「送信」 クリック。

あとは得意の開き直り精神で臨む。

 

「活用マニュアル」 という表現が、どうも上から目線的で気に入らない、

というのが委員の大方の意見で (そういうメンバーを選んじゃったのね)、

最終的に、

『 日本食文化ナビ -食文化で地域が元気になるために- 』

というタイトルで落ち着いた。

最終チェックがまだ残っているけど、

まあまあ自分なりに役割は果たせたか、という感じではある。

出来上りを見て、至らなかった点に気づいたりするのだろうが。

 

以上、先週のトピック 4本。

書いてみれば、すべてつながっていることに気づかされる。

「食」 からの CSV、体現するのは他でもない、、、と言わずにどうするよ。

 



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