2013年5月 8日

人の罪を浄化する生命の営み -堰さらいボランティアから(Ⅱ)

 

千葉県出身。 某大企業勤めをかなぐり捨てて、

あえて会津の山間部に単身移り住んだ浅見彰宏さんが、

次世代の責務として堰を守らんと、

総人足 (地元総出での堰さらい) に友人を誘ったのが、14年前。 

今や堰さらいボランティアは 50人規模にまで膨れ上がった。

 

ボランティアといえども、テキトーにやるわけにはいかない。

米づくりは、水脈の確保によって始まる。

この作業によって、水が麓に運ばれるのだ。

一年分の溜まった土砂や落葉をさらいながら、

ムカデのように進んでいく。

 

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途中、倒木が堰をふさいでいた。 

見事に・・・

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去年まで立派に立っていたヤツ。

残された幹を見れば、中はすっかり空洞になっていた。

たくさんの生命を育て、寿命を終えた古老。。。 

こうして生態系はゆっくりと、しかしダイナミックに輪廻してゆく。

 

この倒木の処理は、特別班の任務となる。

重機など入れる場所ではないので、チェーンソーで細かく伐って片づける。

ジブリの宮崎駿さんがいたら、

この木にイメージを掻き立てられ佇み続けるかもしれないが、

我々には、そんなことを考える余裕はない。

せっせと始末するのみである、蟻のように。

 


休憩のひと時。

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お疲れさまです。

 

川は地形に応じて柔軟に蛇行して流れ、

不思議と土砂が貯められていく場所がある。

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風景は、数年にミリの単位で微妙に変化していくらしいのだが、

人はある日突然、少しの変化に気づくのがやっとである。

 

ボランティアの半分は女性である。

女子パワーもあなどれない。

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ずっと気になっている場所がある。

先人の執念を感じさせるトンネル。

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雪深い山間部で、この水路を通すのに、

いったいどれだけの季節を数えたことだろう。

今の時代のように専門技術を持つ他人にアウトソーシングすることなく、

百姓たちの腕と団結力で、掘り続けた路(みち) 。

村民のアイデンティティが、この洞穴には詰まっている。 

次にベトコン体験の機会をいただけるなら、この暗闇を踏破してみたい。

視界の向こうに光が見えたとき、

この萎えた肉体が何を感じ取るか、確かめたい。

 

作業を終え、公民館の駐車場で打ち上げをやって、

温泉に入り、里山交流会に臨む。 

お酒と料理はしばしお預けとなり、いっ時の勉強会が行なわれる。

今回の講師は、会津みしま自然エネルギー研究会副会長・二瓶厚さん。

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只見川流域で、再生自然エネルギーによる電力自給を目指す。

3.11を乗り越えるたたかいが、反骨の会津でネットワーク化されつつある。

この夜も 「種蒔人」 を持って応援のエールを送らせていただく。

 

「あいづ耕人会たべらんしょ」 の若者たちの笑顔も見てほしい。

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左から二人目、Vサインを送っているのが、

チャルジョウ農場の二代目、小川未明(みはる) さん。

親父の光さんが育種した感動のミニトマト 「紅涙」 を、

今年も ヨロシク頼む!

 

あとは、ただ楽しく飲む。 

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翌日は、浅見さんたちの案内で、

耕作を放棄された棚田を見る。 

 

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子々孫々の食と暮らしの安定のために、

けっして贅沢を望まず、必死で汗を流して開墾した土地が、荒れてゆく。

自然サイドからみればそれは荒地化ではなく、

摂理に従っての植生の変化なのではあるけれど、 

明治以降に開かれた面積に相当する農地を、たった数十年で放棄したという事実を、

僕らはもっと真剣に考えなければならないのではないだろうか。

世界的に食糧需給が逼迫しつつある時代にあって。

 

幸いなことにこの国では、荒地は不毛の地ではない。

たくさんの恵みが、いたるところに生まれる。

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カタクリの花に教えられる。

あなたたちの罪は、長い長い生命のつながりによって浄化されると。

 



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