2013年5月22日

ナチュラルローソン・オーナー会でプレゼン

 

放射能講座のレポートに進まなければならないのだけれど、

今日はローソンさん関係で初モノ体験 (最近多いね)

をして少々疲れたのと、

心残りの話がひとつあって、

真逆のような報告を2つ提出して、休ませてほしい。

 

前回の日記で紹介した小林美知さんから聞いた話。

震災直後、津波で亡くなられた方の遺体を安置した地元の病院で、

深夜、当直の部屋に何度も内線がコールされたんだそうだ。

しかし電話に出ても、毎回なにも聞こえず、相手は沈黙している。

心配になってかけてくる部屋を確かめたところ、安置所からだった。

そこには誰もいない、死者以外は。

 

この噂が町じゅうに広がるのに、さほどの時間もかからなかった。

みんなはこう囁(ささや) き合った。

事態を理解できずに亡くなってしまった人が、

何が起きたのか知りたくて電話をかけているのだと。

 


どうせ誰かの作り話だと、多くの人は否定するだろうか。

心霊現象を信じる人なら、そういうことはある、と頷くかもしれない。

でもこの話を聞いて切なくなったのは、

" 叶うことなら、話をしてあげたい。 心残りがあるなら聞いてあげたい。

 いやそれより何より、呼び戻してあげたい " 

という願いが人々の心の中にあって

伝わっていったのではないかと思われたことだ。

昨日まで元気だったあの人は、私の中ではまだリアルに存在している、

そんなときに届いた哀話が、折れそうな琴線に響いてしまった。

私にとって、電話の向こうにいるのは死者じゃない。。。

僕はこの話を、信じようと思うのである。

 

・・・と、こんなことを書きながら今日を振り返る。

話は一転して、ローソンさんの話。

 

夕方から 「ナチュラル・ローソン」 のフランチャイズ店の

オーナーさんたちの集まりがあって、そこで

大地を守る会の野菜のプレゼンテーションをする機会が与えられたので、

出かけてきた。

集まった店長さんは60人くらい。

長有研の人参・ベータリッチをスティックにして、ミニトマト・アイコを洗って、

食べ比べ用の一般品まで用意して、

与えられた時間は15分の一本勝負。

 

「どうぞ食べ比べながら、お聞きください」 と試食をおススメして、

大地を守る会とは、有機農業とは、大地を守る会の基準の特徴は、

こだわりその①、その②、その③、、、と一気に喋くった。

 

皆さん熱心に耳を傾けてくれて、反応は上々な感じ。

食べ比べも、

「たしかに味が違う」 「食べたあとに甘さが残って、この人参は美味い!」

といった感想を頂戴した。

長有研さん、有り難う。 正直ドキドキだったよ。

 

しかし、だからと言って、現実は人参のように甘くはない。

野菜という生鮮ものを並べるリスクに加えて、価格というハードルもある。

ご検討をお願いして、今日のところは、まずは認知、まで。

 

喉が渇いたので、帰りに仲間とビールを・・・飲まずにいられない。

 

ローソンさんとの提携では、ご批判もご懸念の声も頂いているが、

考えてみれば、大地を守る会は37年にわたって、

自分たちの価値観だけで相手を選別したりせず、

機会あればどこでも出かけて、プレゼンしてきたように思う。

ファーストフードのチェーン店に採用されたこともある。

長くは続かなかったけれど。

 

それらはすべて、有機農業をあたり前にするための、

稚拙ながらも果敢なチャレンジの歴史だった。

時に有機農業陣営から批判を浴びたこともある。

それでも、安全な食べ物は選ばれた少数派だけのものであってはならないし、

それでは社会は変えられないと主張した。

 

白状すると、

実はローソンさんには、15年ほど前に営業に出向いたことがある。

無農薬の野菜を試しに使ってみたいのだが、という問い合わせを受けて、

真面目に供給計画を作成した。

実現しなかったのは思想性の違いとかいう話ではなく、

規格・価格・安定供給といった具体的条件だった。

あのとき、「うちの食材オンリーで弁当を企画させてもらえないか」

という提案もダメもとで持参したのだが、相手にされなかった。

 

有機の畑を増やし、あたり前にする。

それこそが俺たちの使命である。

これはけっしてドン・キホーテの旅ではない。

 - と無理矢理でも言いきかせながら、歩いていくのだ。 

 

小林さんの有機の畑を回復させることと、

ローソンさんの棚に進出することは、僕の中では対立事項ではない。

そこで受け入れられるための努力のプロセスに、

様々なたたかいと葛藤と、そして罠があることも承知している。

その罠は、自分でこしらえていることも。

 



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