2013年6月23日アーカイブ

2013年6月23日

食べて克つ(Ⅱ)-ファイトケミカルの力

 

高橋弘医師の話は続く。

 

ファイトケミカル成分は以下に分類される。

1.ポリフェノール

  フラボノイド (アントシアニン、イソフラボンなど) と非フラボノイドに分かれる。

2.含硫化合物 (イオウ化合物)

3.脂質関連物質 (カロテノイド類など)

4.糖関連物質

5.アミノ酸関連物質

6.香気成分

 

ポリフェノールは水にもアルコールにも溶けるため、

赤ワインにはアントシアニンが多く含まれる (もっと多いのは紫芋の焼酎だと)。

脂質関連物質は脂に溶けやすいので、

トマトはオリーブオイルで調理するとリコピンが効果的に摂取できる。

バナナの香気成分であるオイゲノールは白血球を増やしてくれる。

だからスィートスポット(黒い点々) が出て匂い立ってきた時が食べ頃ということになる。

このように分類上の特徴を知っておくことは大事である。

 

ではファイトケミカルと五大栄養素とは、どう違うのか。

 

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5大栄養素である糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルは、

体の生存に必要なエネルギー源や体の素材となる。

これに食物繊維を加えると6大栄養素となる。

ファイトケミカルは植物が作る 「機能性成分」 で、

第7番目の栄養素と言われたりするが、

体のエネルギー源や素材にはならないので、正確には栄養素ではない。

 

しかしファイトケミカルは、

栄養素がエネルギーを作る時に発生する活性酸素を無毒化する力があり、

免疫のバランスを調整し、発ガンを抑える働きをする。

いわば、車にとってガソリンが栄養素なら、

ファイトケミカルは排気ガスを中和する機能性成分である。

栄養面での働きでもなく、嗜好面での働きでもなく、

生活習慣病などの疾病を予防する働き。

 

ファイトケミカルには、

抗酸化作用、抗がん作用、免疫力を整える作用など優れた機能があり、

健康の維持や病気の予防に欠かせない機能性成分である。

例えば、ワインに含まれるポリフェノールや

人参に含まれる β ‐カロテンには抗酸化作用、

ニンニクやネギに含まれるイオウ化合物には抗がん作用、

キノコの β ‐グルカンには免疫力を高める作用がある。

その機能こそ、いま私たちの体が必要としているもので、

5大栄養素に匹敵する重要な成分だと言える。

 

抗酸化作用とは、色々な病気の原因になる活性酸素を無毒化させる力。

分かりやすく言えば体を錆びさせない作用である。

活性酸素は、呼吸という生きるための行動によって必然的に産み出される。

そこで発生した活性酸素スーパーオキシドは、

酵素の力さえしっかり働けば無毒化 (中和) されるのだが、

抗酸化力は年齢とともに衰えるし、

活性酸素がその力以上に発生すると働きが追いつかなくなる。

また、活性酸素が処理されるときにできる過酸化水素は、

鉄があるとその触媒作用によって、活性酸素ヒドロキシラジカルをつくりだす。

 

この活性酸素ヒドロキシラジカルは、短寿命であるが酸化力が強く、

スーパーオキシドの数十倍もの毒性を持つ。

発ガンや皮膚の老化、生活習慣病、免疫異常、

あるいはアルツハイマー、神経変性疾患など、様々な慢性疾患の要因となる。

しかも、体内にはこれを分解するシステムがない。

鉄の取り過ぎは要注意である。

しかも日本人は鉄は足りているのだから。

(これにはたくさんの方が驚かれたようである。)

 

抗酸化作用を持つファイトケミカルには、

アントシアニン(赤ワイン、紫芋、赤しそ)、プロアントシアニジン(クランベリー)、

カテキン(お茶)、リグナン(ゴマ)、リコピン(トマト、スイカ)、などがある。

昔からスイカには栄養がない(水と同じ) と言われてきたが、

海水浴から帰って冷やしたスイカを食べると体の火照りや不快感が消えるのは、

紫外線によって発生した活性酸素を中和して炎症を和らげる効果があるためで、

実は理に適っている。

 

抗がん作用を持つファイトケミカルには、

イオウ化合物であるスルフォラファン(ブロッコリー) やアリシン(ニンニク)、

イソフラボン(大豆)、脂質関連物質であるリコピン、

糖質関連物質である β ‐グルカン(キノコ類) や フコイダン(モズク、昆布)、がある。

 

免疫力を整える作用には、

活性酸素から免疫細胞を守る作用、免疫力を高める作用、

抗アレルギー作用や抗炎症作用、などがあり、

それぞれにファイトケミカル成分とそれを多く含む食品が挙げられた。

クランベリー、ブドウ、赤ワイン、玉ねぎ、ニンニク、エビ、金目鯛、鮭、

バナナ、ショウガ、人参、キノコ類、海藻類、、、、。

ここでエビ、金目鯛といった名前が挙がったが、彼らの黄色は

アスタキサンチンというファイトケミカル成分を含んだ植物プランクトンを

餌として食べることによってつくられている。

 

また免疫力は高めるだけではいけない。

アレルギーや炎症などは免疫力が高まりすぎて起きているもので、

その場合は適度に押さえる必要がある。

抗アレルギーや抗炎症作用を持つファイトケミカルには、

プロアントシアニジン(クランベリー)、ルテオリン(ピーマン)、ケルセチン(玉ねぎ)、

ヘスペリジン(ゆず、みかんなどの柑橘類)、ジンゲロール(バナナ)、など。

ファイトケミカルの多い果物は、

キウイ、バナナ、グレープフルーツ、マンゴー、ブドウ、オレンジ・・・

よく見ると、入院された患者さんの見舞いに持って来るものが多い。

人は体験的に感じ取っているのでしょうか、と高橋さんは含みのあることを言う。

 

さて、効果的なファイトケミカルの摂取法だが、

ファイトケミカルは加熱しても壊れない安定的な物質が多い。

野菜のファイトケミカルは、セルロースでできた細胞膜や細胞の中にあり、

細胞膜を壊さないと効果的に摂取できない。

それには圧搾やすりつぶすなどの方法があるが、

一番簡単な方法は、加熱することである。

野菜を煮出した場合、ファイトケミカルの 8~9割が

煮汁(スープ) のほうに含まれる。

煮て、スープにすることによって有効成分を無駄なく摂取することができる。

 

生野菜ジュースも良いが、野菜スープだと 10~100倍の抗酸化作用を得られる。

野菜は 「熱を加えるとビタミン類が破壊される」 と言われ、

サラダとして生で食べることが勧められてきたが、

抗酸化力の面では加熱してスープを摂ったほうが効果的である。

(要するに、いろんな調理法で食べるのがよい、ということである。)

 

またファイトケミカルとは、

植物が紫外線や害虫から身を守るために合成している物質であるため、

日光を多く浴びた野菜、すなわち露地栽培の旬の野菜に豊富に含まれている。

旬の野菜を食べるということは、この意味においても正しい。

 

そこで、高橋先生おススメのファイトケミカル・スープが紹介される。

材料は、キャベツ・玉ねぎ・人参・かぼちゃ。

水で煮るだけ。

これを基本として、様々なバリエーションを楽しむ。

このスープを毎日摂ることによって、

白血球が増える、高脂血症や脂肪肝炎が改善される、そして体重が減る。

 

高橋先生がファイトケミカルスープにたどり着いたのは、

ガン患者さんの家族の 「何を食べさせたらいいのか」 という悩みに応えるために

研究してきた結果だった。

抗がん剤を使ったり、肝炎の患者にインターフェロンを使うと白血球が減少する。

そうなると治療を中断しなければならなくなる。

これは命に関わることである。

しかし、ファイトケミカルスープによって白血球が戻る。

野菜や果物の力によって。

 

重要なことは、

ファイトケミカルは人間にはなく、植物だけに生成される成分であるということ。

人間はファイトケミカルを作れない。

植物は紫外線や活性酸素から身を守るために、

何億年という年月をかけてファイトケミカルの遺伝子を獲得したのだ。

したがって私たち人間は、

野菜や果物を食べることでしかファイトケミカルを摂取することができない。

 

ファイトケミカルは今後、

私たちの食生活に革新的な変化をもたらす機能成分であると言える。

ただ長生きするだけでなく、

「元気でいつまでも若々しく」 生きるための一つの鍵がファイトケミカルである。

 

しかもファイトケミカルは野菜や果物の皮や種にふんだんに含まれているので、

食物を丸ごと使用することになり、

エコノミカルであると同時に、エコでもある。

 

ファイトケミカルはまた、新鮮な旬のものにたくさん含まれている。

したがってファイトケミカルに注目することは、

地元産や国産の野菜・果物が良い、ということになる。

地元・国内の生産者を応援することにもなり、自給率の向上にも貢献できる。

 

ファイトケミカルは、私たちの食生活だけでなく、

生き方や社会全体を変える可能性を秘めている。

 

これを高橋先生は、「ファイトケミカル革命」 と呼んだ。

 

フーッ。 今日はここまで。

 



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