2013年6月 4日

未来のために、忘れない -河田講座レポート③

 

河田昌東さん講座レポートを終わらせたい。

残るは内部被ばく対策の話。

 

個人での対策。

その1。 粉じんを吸わない、汚染したものを飲まない・食べない。

(汚染しにくいものを選ぶ。)

その2。 飲料水は、深い井戸水なら問題ない。

(今は、飲料水からは検出されてないが、

 今後の河川からの影響は未知数=継続調査が必要、と河田さんは慎重である。)

調理での工夫も有効なものがある。

よく洗う、煮る、酢漬けにする。

旧ソ連ではいろんなものを酢漬けにして保存する文化があり、

半分くらい減ることが確かめられている。

 

その3。 被ばくの影響を減らす。

放射性セシウムを吸着し、体外に排出する効果を持つものは、

ペクチン(多糖類、パンを食べる時はジャムを一緒に)、

キチン・キトサン、ゼオライト、など。

キノコにはキトサンが大量に含まれているので、

汚染されてないキノコは逆に推奨品である。

 

放射線の影響は、直接的に遺伝子を傷つけるだけでなく、

体細胞の 8-9 割を占める水の分子を破壊して

フリーラジカル(活性酸素や活性水素) を作るという間接的影響がある。

活性酸素には抗酸化作用物質を摂取することが有効。

ビタミンA・C・E、 β カロチン、カテキン(ポリフェノール類)、

ペクチン、そして醗酵食品。

日本には、ラッキーなことに醗酵食品の文化がある。

チェルノブイリ原発事故の後、味噌を大量に輸出した実績もある。

(やっぱ、味噌汁だね。)

 


セシウム137 を 一日 1ベクレルで摂取し続けた場合、

蓄積と排出を繰り返しながら、

幼児だと 100日 くらいで 30 ベクレルの蓄積量でピークを迎え、

そのまま平衡状態になる。

成人だと約 600日 で  140 ベクレルくらい。

排出速度(生物学的半減期) も子どものほうが早い。

1歳児で 13日、10歳児で 50日、15歳以上では 90~100日 で半分に減る。

 

内部被ばくのリスクについては、対立する二つの概念がある。

ひとつはICRP(国際放射線防護委員会) の見解。

外部被ばくと同様にシーベルトで評価し、「1mSv 以下なら安全」 というものだ。

(日本政府もこの主張に沿っている。)

セシウム137の 1mSv をベクレルに換算すると、76,900 Bq(全身量) になる。

 

一方で、体に溜まったセシウムのベクレル数で評価する考えがある。

亡くなった1500人の臓器を詳細に調べた

ベラルーシのユーり・バンダジェフスキー医師らは、

50 Bq/kg(体重) 以上は危険と主張している。

体重 50kg の場合だと、2,500 Bq。

この見解にしたがえば、76,900 Bq (1mSv)/体=1,538 Bq/kg

という数値は 「危険水域」 となる。

 

どちらを採用するかは、それぞれの考え方次第である。

私はバンダジェフスキーの主張を支持したい。

 

内部被ばくのリスクを避けるための参考値として、

河田さんは1日摂取量を 10 Bq 以下に抑えることを提唱する。

それだと、乳幼児で 30 Bq、大人で 28 Bq (ともに /㎏) で平衡状態になり、

バンダジェフスキー医師の指摘する数値を下回ることができる。

 

この場合、摂取する量も頭に入れて判断してほしい。

例えば 200 Bq/kg の梅干しがあったとして、

1個 1g の小梅なら 摂取量は 0.2 Bq である。

この場合、梅干しから得られるメリットの方が大きいと考えたい。

 

さて、日本の食品の基準値について。

この表は、ウクライナの基準と日本の基準を比較したもの。

  e13052606.JPG  

真ん中の列は、最初の暫定基準値。

 

日本の基準値は、分類が大ざっぱすぎるというのが河田さんの指摘である。

また、今はほとんどの食品が下がってきているのだが、

高いレベルのままだと、かえって風評被害の原因になる可能性がある。

基準はもっと下げるべきである、と河田さんは主張する。

 

チェルノブイリの経験で得たことは、

内部被ばくの影響によって発生した疾病は、

子どもの甲状腺ガンだけではない (これだけが公式に因果関係が認められている)、

ということだ。

心臓病、脳血管病、糖尿病、先天異常、免疫力低下など

様々な病気が発生している。 

実は、ガンは 10% 以下である。

ガンや白血病は、放射線による病気の一部に過ぎない。

 

私たちはすでに、非常に厄介な社会の下で暮らしている。

様々な情報を集め、自身で判断し、

日常生活の中で被ばくを減らす努力をしていくしかない。。。

 

以上。

質疑は省かせていただき、

最後にいただいた河田さんのコメントを記しておきたい。

 

  大切なことは、忘れないこと、です。

  福島もアベノミックスの陰に隠れて、

  まるで過去のことになりつつあるかのようですが、

  けっして、忘れないこと。

  当事者と周りのギャップが大きくなっていってることが気がかりです。

  チェルノブイリ原発事故から 27 年経っても、

  ナロジチの人たちにとっては、日々が昨日の続きなんです、ずっと。

  何度行っても、彼らから出てくる言葉は、

  「私たちを、忘れないで」 です。

  忘れないこと。

  それが今後の事故を抑止することにつながるし、

  被災地を支援することになります。

  どうか、よろしくお願いします。

 

河田さんの話を通しで聞きたい方は、

大地を守る会の HP にアーカイブをアップしておりますので、ご確認ください。

⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza2/

 

レポートを書き終えたと思ったら、もう次回が迫ってきている。

焦るね、ホント。

   



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