2013年7月13日アーカイブ

2013年7月13日

かんたん・・ じゃなかった「農薬講座」

 

これまで、「そう言われてみれば・・」 というくらいに、

意外とやってなかった 「農薬」 の勉強会。

有機農業の話の中で触れることはあっても、

「農薬」 というテーマを前面に出しての講座は、やってない。

意図してやらなかったわけでなく、

農薬=× (やむを得ない場合のみ許容) という前提で

ただ語ってきたように思う。

しかしその中身をいざ掘り下げようとすると、実に奥深い世界に入り込むことになる。

「農耕」 を獲得してからの人類の歴史を語るくらいに。

 

改めて 「農薬」 をテーマに講座をやりたいのだが・・・

CSR推進課からこの企画を示された時は、瞬間的に

それだけは勘弁して! という逃げの気持ちが先にたった。

でも一方で、

このテーマを提示されて、" ああ、いいよ "  と言わなくてどうする、

という気にもなったのだ。

1999年に現在の 「大地を守る会の生産基準」 を策定してから2010年まで、

毎年々々基準の改定を担当してきた者として、

受けて立たなくてどうするよ。

 

とはいえ、CSR推進課がつけてくれたタイトルが、

『大地を守る会の栽培基準と 農薬かんたん講座』。

農薬とはどういうもので、どんな問題があるのか? 分かりやすく解説せよ。

大地を守る会の基準の説明も含めて、制限時間は1時間半。

・・・って、言うのは簡単だけどサ。

農薬の世界ってのはサ、とてもじゃないけど  " かんたん "  ではないのよ。

 

どうまとめるか・・・ 悶々としながら日が過ぎ、

2日前になんとか 38 枚のスライドを作成し、

前日の夜にもう一枚追加して、とりあえず完成させた。

やればやるほど足りない部分を感じながら- 。

 

7月12日(金)。

場所は日比谷図書文化館コンベンションホール。

いつもと違って、講師と言われる側に立つ。

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いろいろと構成を考えてはみたが、

どうしても  " 基本の基 "  をおさらいしないと、次の展開ができない。

結局オーソドックスな流れで組み立てることにした。

 

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「農薬」 とは何か。

どういうものがあるか、その複雑な分類について。

農薬は農業現場だけに使われているものでないこと

(様々な場で、家庭でも、使われていること)。

農薬の歴史と日本での使用実態。

農薬登録=安全性チェックの仕組み。

毒性試験と国の基準の考え方から様々な関連法規まで

(いかにいろんな場面で使われ、規制されているか)。

農薬の 「毒性」 を測るいくつかの指標について。

そして、「農薬は安全」 か・・・ という問題について。

 

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前半戦のつもりが、ここまででほぼ四分の3 の時間を費やしてしまった。

でもそれだけセンシティブな問題なのだ。

本当はもっとディティールを、農薬の光と影の歴史を語りたかったくらい。

虫や菌と薬の果てしないたたかい。

その間にどれだけの人が死んだか(逆に薬によって救われた側面も、実はある)。

レイチェル・カーソンの 『沈黙の春』 から、農薬はいかなる道を歩んだか。

それは環境面から見ても人体への影響からみても、

相当に進化したのではある。

しかし進んでも進んでも、農薬では解決できない根本的な問題が残る。

 

一方で人はひたすら簡便な解決法を求め、あるいは便利な生活を求め、

グローバルな交易が進めば進むほど農薬を必要としていること。

農薬を求めているのは生産者なのか、消費者なのか。。。

とても語り切れるものではなく、その辺は割愛せざるを得なかった。

 

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大地を守る会の生産基準について、

有機農業の意義について、

これらは理念的なポイントを伝えるだけで終わってしまった。

たった一つの農薬を 「使用禁止」 と宣言できるまでのプロセスに

「有機農業運動」 の真髄があると僕は思っていて、

そんな事例を面白く紹介もしてみたかったし、

「減農薬」 を包み込み進化させる運動、

これが 「大地を守る会の有機農産物等生産基準」 のキモであることも

伝えたかったのだけれど、

いやなかなか、やってみると難しいものだった。

 

終わってみれば、反省点だらけ。

自己採点は 58点。

でもやってみたことで、分かったことも多い。

もし次の機会があるなら、75点まではいけるような気がする。

ただ、「農薬」 とはとても 1時間半ではすまない世界であって、

生産方法や栽培技術の変化、品種改良、

輸出入の増加と侵入害虫の問題、食生活の変化、

さらには気候変動などなどと関連して動いていることを

コンパクトにまとめるのはけっこう難しい。

 

例えば、カメムシという虫の群をとっても、今の分類では益虫と害虫がいる。

しかし本来、カメムシはどちらでもなかったのだ。

例えば、アゲハチョウの幼虫はミカンの葉を食べるが、「害虫」 化しない。

それはなぜか・・・

有機農業とは、

カメムシを害虫ではなく、本来あった  " フツーの虫 "  に戻してやる作業

でもある。

そんな話を  " 分かりやすく、手短かに "

語れるようになりたいと激しく思った 「農薬講座」 であった。

 



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