2013年8月21日

営まれてこそ続く未来への財産

 

斎藤さんの田んぼを後にして、

次に訪れたのは 「トキの森公園」。

 

ここでトキ保護から野生復帰までの歴史を辿ってみると-

大英博物館がトキに 「ニッポニア・ニッポン」 という学名を付したのが 1871年。

日本の特別天然記念物に指定されたのが 1952年。

国際保護鳥に選定されたのが 1960年。

佐渡・新穂村に 「トキ保護センター」 が開設されたのが 1967年。

1981年、佐渡に残っていた野生のトキ 5羽を捕獲し、センターで飼育を始める。

以降、中国から借りたりもしながらペアリングを試みるが成功せず。

1989年、中国で初めて人工ふ化に成功。

1994年、保護センターを含める形で 「トキの森公園」 がオープン。

 一般公開が始まる。

1999年、国内で初めて人工繁殖に成功。 「ユウユウ」 誕生。

2003年10月10日、日本最後の野生トキ 「キン」 死亡。 享年36歳。

2007年、11ペアから14羽のヒナが育つ (自然繁殖11羽)。

2008年9月25日、10羽のトキが野外に試験放鳥される。

 以降、今年の6月まで8回の放鳥が行われた。

2010年、放鳥トキの営巣確認。 産卵が確認されるもふ化せず。

2012年4~5月、自然界で36年ぶりのヒナ誕生が確認される。

 

これまでに放鳥された数、125羽。

うち 70羽が生存しているとされる。

野生化で誕生したトキの数、22羽。 うち12羽が生存中 (6羽死亡、4羽は収容)。

 - 以上、パンフレットおよびHPから -

 

自然に放たれるのを待つトキたち。

e13081913.JPG

 

トキはコウノトリ目だと理解していたが、

数年前にペリカン目に変更されたことを初めて知った。

この違いは何なんだ。 

今度、陶ハカセに会ったら聞いてみよう。

 (それくらい自分で調べろ、と言われそうだけど・・・)

 

e13081914.JPG

 

さて、ペリカン、じゃなかったトキのおさらいをしたところで、

ここなら運がよければ野生トキが見えるかもしれない、

というスポットに案内される。

「あくまでも、運がよかったら、ですからね」

渡辺課長に念を押される。

e13081916.JPG

 

なるほど。 水辺があり、営巣できる森がある。

しかも巣に戻ってくる夕方の時間帯。

さあて、本日の我々の運力やいかに。

 


あの林のあの木の上のほうに白いものがチラチラ、見えない?

いやあ見えないなあ、巣じゃないかなあ・・・

とか言い合いながら、10分ほど待っただろうか。

誰かが叫んだ。

「来た!」

e13081917.JPG 

 

オオー! と歓声が上がる。

コンパクトカメラのズームでは、ここまでが限界。

一羽発見で喜んでいるのも束の間、

続いて4羽の編隊が帰って来た。

e13082001.JPG

 

田んぼの上を悠々と舞うトキ。

驚きの声が、ゆっくりと感動のため息に変わる。

 

e13082002.JPG

 

この風景を取り戻すのに約半世紀。

時代に抵抗するかのように棚田を復元し、餌場を増やし、

トキと共存する環境を蘇らせてきた。

大の大人たちが、数羽の野鳥を見て感慨に浸っている。

失っていた大事なものを、少しは見つめ直すことができただろうか。。。

 

島に復活したニッポニア・ニッポンと、どう暮らしていくか。

米が高く売れるなら、といった算盤ではすまないよね。

このペリカン目の鳥を眺めては、島のありように思いを巡らせたりしながら、

島の人々は生きていくことになるんだろう。

何かが試されている、のかもしれない。

 

「皆さん、何か(運を) 持ってますねぇ」

とおだてられ、とてもイイ気分になって、

「また来るから。 元気でいてね」 と、トキに別れを告げる。

 

途中、斎藤さんが昨年からチャレンジしている

自然栽培の田んぼに立ち寄る。

e13081915.JPG

 

『奇跡のりんご』 で話題の木村秋則さんの指導を受けて、

2枚の田んぼで始めている。

木村さんについては、ここでコメントは控える。

話を聞いて、「試しにやってみるか」 という斎藤さんの探究心にこそ

真髄があるので。

来年、再来年、あるいはその先の結果が、

何かを教えてくれるだろう。 

 

夜は露天風呂のある温泉宿で楽しく懇親会をやって、

翌8月18日(日)。

千葉孝志さん、マゴメさんと別れて、我々「米プロ」 一行は、

斎藤さんの車で、棚田保全に取り組む NPO法人を訪ねた。

 

岩首(いわくび) という地区で、

廃校となった小学校を借りて運営されている

「NPO法人さど 岩首分室」。

e13082003.JPG

 

ここでガイドしてくれたのは、佐渡棚田協議会会長、

" 棚田おじさん "  の愛称で呼ばれている大石惣一郎さん。

 

e13082011.JPG

 

集落内の名所 「養老の滝」 を見て、 

e13082004.JPG

 

大石さん自慢の 「岩首棚田」 を登る。 

e13082005.JPG

 

眼下に碧い海を望む。

2011年、日本でいち早く 「世界農業遺産(GIAHS)」 に登録された、

佐渡を代表する棚田。

初めて来た土地なのに、懐かしさのような感情が涌いてくる。

この 「遺産」 は、博物館でも史跡でもない。

人の暮らしとともに息づいているからこそ、

愛おしくなるのではないか。

営まれているからこそ続く、未来への資産である。

 

e13082006.JPG

 

「美しい村など、はじめからあったわけではない。」

民俗学の泰斗、柳田國男の言葉だ。

 

e13082007.JPG

先人たちの汗の賜物、営々と受け継がれてきた宝物を、

この国は  " 生産効率 "  という近代経済のモノサシで捨て去ろうとしている。

大丈夫かニッポン・・・・・ 遠くを見つめるエビであった。

キマってない? 失礼しました。

 

では、棚田と日本海をバックに記念撮影。

気分を変えて、棚田ヤンキー参上! でいきましょうか。

e13082008.JPG

 

法(のり) には、ミソハギが咲いている。

e13082009.JPG

お盆の頃に咲くので盆花とも言われている。

あえてこの草は刈らずに残すんだそうだ。

あぜの花もまた、郷愁を誘う脇役である。

 

駆け足で佐渡金山にも立ち寄って、帰途に着く。

最初から最後まで、ずっと案内してくれた斎藤真一郎さんに深く感謝。

 

来年、佐渡ツアーを実現させることを約束して、

島を後にする。

e13082010.JPG

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ