2013年8月22日
有機農業の普及支援における " 販路 " とは-
今日は、茨城県つくば市にある農林水産省の研修所 「つくば館」
まで出向いた。
各県の農業改良普及センターで環境保全型農業や有機農業の普及に携わる
指導員を対象に、4日間のプログラムで開かれた
「有機農業普及支援研修」 。
ここで、「有機農産物の販路拡大について」 というテーマでの講義を
依頼されたのだ。
タイトルは変化しつつ、今年で3年目になる。
農業指導員を相手に何を偉そうな、と思われるかもしれないが、
官製の農業指導には有機農業のプログラムはない、
いや正確には 「なかった」。
その基本思想や技術の概論から始まり、実践者から学ぶ。
教えるのは、現場で闘ってきた者以外にいないのである。
現場研修先に選ばれるのは、だいたい埼玉県小川町の霜里農場・金子美登さんだ。
そして3日目の最後のあたりに入れられるのが、
有機農産物の流通事情と課題。
技術を農家に伝えても、それはどこにどうやって売るのか、と問われる。
実はそれだけ、まだマイナーな世界だということだ。
しかもここ数年、有機JAS認証を取得した有機農産物は、
けっして順調に伸びているとは言えない。
したがって僕の話も、バラ色の世界は描けない。
むしろ、なぜ有機農業なのか、どういう農業経営でやるのか、
についてしっかり考えないと、
販路というターゲットは見えてこない、という話になる。
有機農産物が法律上 「有機JASマーク付き農産物」 に限定されたことで、
その内容はわりと明確になって、
まがい物を排除する役割は果たしたと言えるが、
一方で有機農業を語る表現力は貧弱になったような気がする。
JASマークに頼らず (ただし栽培内容を正しく説明できる体制は必要である)、
" 私の有機農業は- " を語れる農業者を育ててほしい。
地元の子供たちが " それって面白い、素晴らしい、私もやるなら有機農業 "
と感じ取ってもらえるような農業を。
だって有機農業は、その地の環境を守り、資源やお金の地域循環を促し、
未来の地域社会を支えるもののはずだから。
大地を守る会やらでぃっしゅぼーやさんやオイシックスさんに営業に行く前に、
大事な地域は足元にあり、
食べてほしい人は目の前にいるんじゃないのか。
逃げを打ったわけでもなく、煙に巻いたわけでもなく、
有機農業に関わった30年余の経験から学んだ、僕なりの有機農業論を
語らせてもらった。
流通現場にだって哲学は存在するのだ。
キモのところだけでも受け止めてくれたなら、幸いである。