2013年9月12日アーカイブ

2013年9月12日

新天地を拓く父と、残った農地を守る息子

 

千葉・海浜幕張にも赤とんぼの姿が見えたね。

収穫の季節に入ってきたんだな、と思う。

しかしこいつらはいったいどこで産卵-繁殖しているんだろう。

 

さて、放射能連続講座Ⅱ-第6回レポートを続けます。

アーカイブをご覧いただいた方には " 今さら " の記事かもしれないけど、

レポートを残しておくのが自分の義務だとも思っていて、お許しを。

 

ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」 理事・佐藤佐市さんに続いては、

福島の浜通り、いわき市から 「福島有機倶楽部」代表の阿部拓さん。

6 年前に 7 軒の農家で結成。

有機JAS 認証を取得して野菜作りに励んできた。

そこに地震と津波、原発事故。

いわき市では津波で 446 人が亡くなった。

 

農家が移住するという、重大な決意を迫られるなか、

有機倶楽部では 5 軒のメンバーが移転を余儀なくされた。

双葉町の鶴見博さんは千葉に移り、新天地で有機農業を再開した。

一人は北海道に農地を求めて就農の準備中。

旧都路村の仮設住宅に移った仲間は、まだ農業をやれない状態。

原発から 40km 圏内にいた一人は、有機JAS認定を諦めて脱会した。

もう一人は津波による塩害によって、

作物を作っても夏になると枯れてしまう状態である。

 

阿部さんは1ヶ月避難した後に戻ったのだが、

畑の状態が悪く、撤退を決意。

その後、宮城県大崎市に農地を得て再スタートを切るも、

販売先がなく、無農薬でつくっても地元JAに出荷するしかなかった。

今年、大地を守る会に米と野菜を出荷する

「蕪栗(かぶくり)米生産組合」 野菜部会に入ることができ、

ようやく落ち着いて野菜作りができるようになった。 

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いわきにはもう一ヶ所、

40㎞(原発からの距離ではない) ほど離れた場所に畑があって

そこは息子さんが 「残って、やる」 というので、任せることにした。

離れ離れでの農業になってしまったが、

それぞれ懸命に有機農業でやっていこうと思っている。

そんなわけで 「福島有機倶楽部」 は

2名のメンバーで何とか続けている状態である。

 


しかし、2軒の農家で続けているといっても、

原発事故によって販路はまったく閉ざされてしまった。

取引のあった団体からはほとんど断られ、

窓口を開き続けてくれたのは、大地を守る会だけである。

(現在、他は直売所での販売という状態。)

 

宮城では、減反田を借りることができ、土づくりから始めた。

まったく最初からの出直しで、土ができるのに 3 年はかかるだろう。

収量も上がらない中で続けている。

それでも、いずれ有機認証を取るつもりでやっている。

 

とにかくこの2年間は、

虚脱感や精神的ダメージから抜け出すのが精いっぱいだった。

とても佐藤佐市さんや、ジェイラップの伊藤さんのような

元気の出る話はできないです。 申し訳ないけど。

 

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「原発事故さえなければ」 と、つくづく思う。

放射性物質は、土や海を汚染しただけでなく、

人間に対しても内部被ばくという汚染をもたらした。

風評被害の影響は今も続いていて、

放射性物質「不検出」 のデータを示しても、なかなか売れない。

 

損害賠償をすればいいじゃないか、という人もいるけれど、

販売して得るお金と賠償金では、喜びが違う。

賠償金では、虚しさしか残らない。 心が蝕まれていくようだ。

何度も何度も、書類を用意しては交渉を繰り返し、ヘトヘトになる。

苦痛になって、諦めが出てくる。

野菜の種をまいた方が、よっぽど元気が出る。

 

原発は人間の手に負えない、とつくづく思う。

賠償金だけでは、心の被ばくを感じる。

 

今は、2 軒の農家で必死で続けている。

やり続けることから、突破口を見い出したい。

消費者の方々にお願いしたいことは、

「不検出」 だったら食べてもらうことはできないだろうか。

私たちは手を尽くし、種をまき続けるしかない。

そんな農民がいることを、どうか忘れないでほしい。

種をまき続けながら、原発に頼らない生き方を模索していきたい。

 

続いてジェイラップ・伊藤俊彦さんの話へと進みたいのだが、

すみません。 今日はここまでで。

 

心の被ばく・・・・・今もこの被害は続いている。

それは賠償の対象にはならない。

阿部さんを受け入れてくれた蕪栗の生産者にも感謝しながら、

数年後に、有機JASマークの貼られた阿部さんの野菜が届くことを、

忘れずに待ち続けたいと思う。

 



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