2013年10月12日

干ばつの長崎へ

 

まったく時は矢のように過ぎていく。

もはや焦りを通り越して、開き直りの心境。

9月の出張レポートを飛ばすことなく、書いて終わらせよう。 

 

9月26-27日。

山口新取締役をお連れして、長崎県南島原市口之津町に入る。

リアス式海岸、石で積んだ棚田と段々畑、

温泉と雲仙普賢岳、そして天草の半島。

口之津町はその南端に位置する。

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訪ねたのは、長崎有機農業研究会の事業部門を担う (株)長有研

今年で設立30年を迎えた。

大地を守る会は、その歴史丸ごとお付き合いさせていただいたことになる。

 

長有研のセンターは、山の上にある。

来る度に、もっと便のいいところに建てればいいのに、と思うのだが、

そこは設立時の台所事情あってのことだろうから、仕方がない。

この土地を提供したのは、

設立時からのリーダーの一人・松藤行雄さん。

建てた倉庫一つにも、人々の思いや覚悟の軌跡が

染みついている。

 

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今回の目的は、

ローソンという全国に店舗網を持つ組織と事業提携するに至った経過や

今後の展開の方向について説明し、理解していただくこと。

その上で、これまでにない多様な販売チャンネルを前にして、

どう生産者にとってメリットのある形を創り上げるか、を話し合うこと。

こんなことができる、そのための条件は、できないことはできない、

そういったことを本音で語り合うことで、進む道を見定めていきたい。

なんたってこの道は枝分かれが多そうで、

もし罠にハマったとすれば、それは誰のせいでもない、

我々の意思と判断によるワケだからね。

 


 

代表の長尾泰博さんや事務局との話し合いを終え、

間もなく収穫が始まろうとしているミカン畑を視察して、 

山口取締役は忙しなく次の目的地へと向かい、

僕はもう少し他の畑を回っておいとました。

 

今回見させていただいたのは、馬場一さんのみかん園。

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熊本の 「ひごあけぼの」 という系統の枝を友人から分けてもらって、

自分で育てたオリジナルの品種。 「花子」 と名づけられている。

糖度は高く乗るが酸が抜けにくいと言う。

そこで酸抜けを促進させるために、馬場さんは白マルチを張って

適度に土の保湿を維持させている。

普通は乾燥させることで糖度が上がるのだが (水分が多いと薄味になる)、

「花子」 では糖度を多少抑えても(それでも充分にある)、

適当に保水してやるのだと。

過湿と乾燥を繰り返さないために、

一本一本マルチを剥がしては水をやって元に戻す作業を繰り返す。

これは相当手間のかかる仕事だ。

そのぶん愛着も涌き、馬場さん自慢の 「花子」 となる。 

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下まで降りてきて、トマトの中村さんを訪ねる。

8月の後継者会議にも参加してくれた中村智幸さんが出迎えてくれた。

就農して10年、28歳、すでにトマト部会長である。

 

もうすぐ第一子誕生とか。

嬉しそうだ。

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中村さんが育てるトマトの品種は 「ごほうび」。

果肉のしまりがよく糖度と酸度のバランスが取れた品種。 

12月頭には収穫が始まる。

" としちゃんのトマト "  と別枠での販売実績もある親父(敏信さん) は

けっこう高い壁かもしれないけど、やってくれそうな感じだね。

頑張ってください、パパ (・・は早いか)。

 

それにしても 9月の長崎はまだ暑く、干ばつ状態である。

乾き切った土に、ブロッコリーの苗もきつそうだ。

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キャベツの苗に水をやっているが、

やる傍から乾いていってる。

 

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山中の畑や田んぼだけでなく、

こういう開けた場所にも電気柵が張られている。 

イノシシは今や平場にも出没するのだそうだ。

 

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電気柵を漏電から防ぐには、周辺の雑草管理が欠かせない。

畑や田んぼでの作業の他に、

せっせと畦や道路脇の草刈をしなければならない。

この作業がけっこう大変なのだ。

周りの農家は普通に除草剤をかけている。

高齢化していく農家に 「撒くな」 とはなかなか言い難いとですよ、

という本音が長尾会長の口から漏れる。

つらいね。。。

 

研修生を育てるためにつくった農場 「ぎっどろファーム」、

松尾さんのアスパラ畑などを回って、長崎をあとにする。

 

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なお、ずっと同行してくれた新人スタッフが一人。

前川隆文さん、先月まで大地を守る会の社員だった男。

郷里の長崎に戻り、長有研さんが拾ってくれた。

彼が長有研での日々をブログに書いている。

この日のこと も早々に上げてくれているので、

覗いてくれると嬉しいです。

 

最後におまけを。

長有研に向かう前に立ち寄った佐世保の食品加工会社

「アリアケジャパン」 さんが、

前日に送ってあった大地を守る会の野菜を使ってスープを

作ってくれていた。

といっても手の込んだものでなく、

4種類 (玉ねぎ・人参・キャベツ・南瓜) の野菜を水で煮ただけのもの。

6月の放射能連続講座でお呼びした麻布医院・高橋弘院長が薦める

「ファイトケミカル・スープ」 だ。

 

左が大地を守る会の野菜、右が市販の野菜で煮てみたもの。

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左のほうが若干色が濃い。

味も濃いですね、との評価を得た。

工場の研究スタッフの方が、検査結果を知らせてくれた。

ブリックス(Brix:一般的に糖度と理解されるが、ここでは水溶性固形分濃度)

で2度高い、と。 濃密なのだ。

大地を守る会の野菜には、力がある。

食品加工会社の方からも高い評価を頂いたことを

報告しておきたい。

 



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