2013年11月28日
「沈黙の春」 を超えて
東電から賠償支払いが打ち切られたとか、拒否されたとかの話が
昨今、生産地から聞こえてくる。
除染費用の負担が拒否されているといったことは報道されているが、
賠償支払いがどうなってきているのかも、
メディアはちゃんと取材してもらいたいと思う昨今である。
お願いしますよ。
燃料棒や汚染水の状況も気になるところだ。
食品の虚偽表示もまたぞろだし、減反制度の撤廃も、秘密保護法案も、
と考えることが増えるばかりで、
言いたいことを整理する間もなくストレスが積もっていく毎日。
すべての政治状況は、我々が選んだ (あるいは選ばなかった) 結果である。
村上龍の小説 『希望の国のエクソダス』 に登場する日本を捨てた少年の台詞が
リアル感を持って迫ってくるようだ。
「あの国には何もない。 もはや死んだ国だ。」
しかし、どこへ行っても現実からは逃げられない。
生きている以上は希望を失わず、歩んでいくしかない。
さて、11月の振り返りがまだ残っているので急ぎたい。
11月14日(木)、神田の学士会館で
「一般財団法人 生物科学安全研究所」(RIAS) の
開所記念公開シンポジウムが開かれたので参加する。
僕は今年からこの団体の評議員を仰せつかっているのである。
冠せられたシンポジウムのタイトルがなんと、
『 「沈黙の春」 を超えて』 とある。
昨年までは 「財団法人畜産生物科学安全研究所」 という名称で
農水省と厚労省の共益公益法人だった団体が、
今年4月に一般財団法人として再出発することになって、
その開所記念のタイトルが、これである。
来賓の農水省の方も、少々たまげたのではないだろうか。
しかも基調講演を大地を守る会代表・藤田和芳が務めたもんだから。
藤田さんは、大地を守る会が設立された時代背景から辿り始め、
社会的ソーシャルビジネスと呼ばれて認められるまでになった経過を語った。
そして今では、中国の青年たちと一緒に、
中国で有機農業のネットワークづくりを進めていることを付け加えた。
「地球環境の問題は、中国を切り離しては解決できない。
あの国が変われば、世界が変わるかもしれない。」
いやいや、大言壮語に聞こえるだろうな、と思いながら聞いた。
でも38年前には、有機農業という言葉は極めて限られた人たちのものでしかなかった。
今では、農業を目指す若者の大半は有機農業指向である。
みんなの一歩々々が現在のトレンドを築き上げてきたのだ。
種を蒔かなきゃ、花は咲かない。
ひとつでもモデルを作り出せたなら、後に続く者たちが生まれる。
大言壮語は一歩間違えると笑いものになったりするけれど、
挑む価値はあるだろう。
そうやって僕らは生きてきたんだし。
生まれ変わった生物科学安全研究所の設立理念は、こう謳われている。
「 農畜水産物の生産から消費までの安全性の確保、
人と動物の健康及び環境の保全に係る生物科学に関する事業を行ない、
もって持続的社会の発展に寄与する 」
付けられたタイトル- 『 「沈黙の春」 を超えて』 には、
改めて科学の功罪を真摯に見つめ直すところから出発しようという
気概が込められたものなのだ。 これは付き合うしかない。
会場で配布された記念誌には、僕も評議員として一文を寄せさせていただいた。
科学に対する社会的信頼が揺らぐ時代にあって、
上記の理念を実践することは途方もない事業であること。
その困難さに挑むには、実は科学(者) だけではダメだろう、ということ。
「生産から消費までの安全性の確保」 には、
あらゆる " 知 " を動員しなければならないだろうこと、など。
書いた以上は、付き合うしかない。
翌11月15日(木)は、千葉・海浜幕張にて、
大地を守る会の 「加工食品製造者会議」 を開催。
この会議も毎年回を重ねて、もう14回目になる。
僕は3年ぶりの参加になるか。
「放射能のほうに行ってまして、ご無沙汰でした」・・・ってヘンな挨拶などしながら、
全国各地から集まってくれたメーカーの方々と懇親を楽しむ。
もちろん、品質管理など真面目な会議もやった上で。
一日おいて11月17日(日)、今度は若者の街・渋谷に出向く。
「渋谷ヒカリエ」 の 9 階イベントホールで、3日間にわたって開催された
「食と農林漁業の祭典 食の絆サミット2013」。
その最終日に行なわれたのが、
「スター農家発掘オーディション STAR's vol.2」 なるイベント。
「自らの夢への支援を自らの手で勝ち取る!」
を合い言葉に、若手農業者と新規就農希望者たちによる
ビジネスプラン・コンテスト。
一次審査を勝ち抜いた 8 名のファイナリストがプレゼンテーションを行ない、
それを審査スポンサーとなった企業が札を上げて支援を表明する、という趣向。
腰をさすりながら偉そうに 「審査員席」 に座って、
若者たちの元気のいいプレゼンを楽しませてもらった。
その話は、次に。