2014年1月アーカイブ

2014年1月29日

IPM と環境保全型農業を学ぶ新年会

 

明日から出ずっぱりで、今週はもう書けそうにないので、

何とか一つだけでもアップしておきたい。

 

1月23日(木)、群馬・伊香保温泉にて、

群馬県の生産者 40 名が集まって新年会を開催。

幹事を務めたのは、北群馬郡吉岡町のトマト農家・栗田文明さん。

6年前の 「第13回全国環境保全型農業推進コンクール」 で

農林水産大臣賞を受賞された精農の人。


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懇親会の前に、例によって勉強会を開く。

講師をお願いしたのは、保全生物的防除研究事務所代表、根本久さん。

埼玉県農林総合研究センターの副所長を務めて、昨年退官された。

農薬に頼らない、土着天敵を活用した IPM(総合的害虫管理) 技術を

日本に広めた権威の一人である。

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根本さんは、日本における環境保全型農業の取り組みの遅れを

厳しく指摘された。

欧米では、農業(という産業) 自体に環境破壊的要素があるがゆえに、

そのリスクを最小限に喰いとめ、保全型農業を発展させようという

明確な意思がはたらいている。

海外の研究者とも親交のある根本さんには、

日本の指導者はまるで 「井の中の蛙」 に見えるようだ。

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EU では、第三者機関を設けて、専門家たちによるリスク分析と議論に

時間をかけてきた歴史がある。

その上で、予防原則も機能させながら、

保全型農業を進める農家にはインセンティブを与える制度が発展してきた。

それに対して日本は、いわゆる " 業界 "  寄りの立場で常に動いている。

1999 年に環境保全型農業の推進を掲げてからも、

根本的姿勢は変わってないように思える。


例えば、かつて農薬多投型の農業を行なっていたオランダは、

IPM の技術を積極的に取り入れ、農薬の使用量を減らし、

なおかつ農産物輸出大国に成長させてきている。

かたや日本は、単位面積当たりの農薬使用量では韓国とトップを争いながら、

農業を衰退させつつある。

長らく技術指導の現場にいた根本さんにとっては、

忸怩たる思いが深くあるのだろう。

農政に対する批判も、以前より厳しくなっているような気がしたのだった。


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根本さんは、生産現場における病害虫リスクの問題に対し、

化学合成農薬に頼らない技術の方向性を示しながら、

分かりやすく説明された。

作物や虫の名が具体的に出てくるので、質問も現場の悩みが率直に出され、

やりとりも実情に沿いながら進められた。


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新年会と謳って集まり、共通の悩みを語り合い、学び、

互いを刺激し合う。

これはこれで意味のある仕掛けだと思っているのだが、

欲を言えば普段の技術交流をもっと活発に進めたいところではある。


参加者の挨拶の中から、今回はお二人を。

「くらぶち草の会」 のメンバーで、元大地職員の鈴木康弘くん。

まだまだ学ばなきゃいけないことが多く・・・

とか言いながらも、なかなか逞しい有機農業者になってきているようで、

こちらも嬉しくなる。 

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甘楽町有機農業研究会を率いてきた吉田恭一さん。 

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昨年、歴史ある公益社団法人「大日本農会」(総裁:桂宮宜仁親王) から

優れた農業功績者に贈られる 「緑白綬有功章」(りょくはくじゅゆうこうしょう) 

が授与された。

養蚕農家から有機栽培経営に転換し、甘楽町有機農業研究会を設立。

有機認証の取得など経営の安定化に努め、地域農業の発展に

けん引役として貢献した、との評価である。

照れながら報告する吉田さんに、会場から拍手が沸いた。

こういった受賞に冷ややかな方もおられるが、

地域のために働いてきた長年の苦労が認められた証しであり、

周りにとっても励みになることではある。 讃えたいと思う。


夜は遅くまで飲み、語り合って、

「今年も頑張りましょう」 と握手して、別れる。

遅い新年の約束だけど、互いに気持ちを新たにする

誓いの儀式のようなものか。

それも日々の日常の中で忘れていくのが常であるがゆえに、

この時期にこそ僕らは、産地を回る義務を課しているのかもしれない、

と思ったりする。


帰りに、栗田文明さんのハウスを見学させていただく。

冒頭で紹介したように、こちらは 「全国環境保全型農業コンクール」 での

「農林水産大臣賞」 の受賞者だ。

ちなみに、まったく同じ年(2008年) に、

千葉の 「さんぶ野菜ネットワーク」 も農林水産大臣賞を受賞している。 

すごい人たちと付き合ってるんだなと、改めて身が引き締まる。


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石の多い利根川河川敷で、就農して40年。

ひたすら土づくりに邁進し、トマト一筋に生きてきた。

化学肥料は使わず、10種類以上の有機質肥料と微生物資材を施す。

マルハナバチを放すこともあって農薬も極力使わない。

もちろん土壌消毒もしない。

病気にかかった葉は一枚一枚ガスバーナーで焼いて、菌の繁殖を食い止める

こういった労を厭わないだけでなく、

それは丹念な観察が土台にあってできることである。

畑がきれいに見えるのも、頷ける。

暖房用燃料の使用を抑えるために、ハウス設計にも様々な工夫を凝らしている。

水も控えるため、やや小ぶりだが、糖度の高いトマトが育つ。

 

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少ない栽培面積で、土地条件も悪い中で、どうやってトマト栽培で生きていくか。

道を探して探して、辿りついたのが環境保全を土台にした農業であった。

ハウスの中で家族が一緒になって働き、

ベビーカーでは赤ちゃんが穏やかな表情で僕らを見つめていた。

トマトの木の下でのんびりと寝そべっていた猫が、

突然の闖入者に驚きもせず、人懐っこく我々の足元をウロウロしてくれる。

見学中、常連さんらしいご婦人がトマトを買いに立ち寄られた。

文明さんの奥様の美鳥(みどり) さんが、予め取ってあった袋を差し出す。

けっこうな量のトマトが入っている。 

トマトの好きな人が通ってくるハウス、なのだ。


そんなわけで、ご家族全員での一枚をお願いする。

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左から、美鳥さん、友香さん、愛季(あき)ちゃん、和巳さん、そして文明さん。


栗田さんのトマトは、これからさらに味が乗ってくるはず。

美味しいトマトを今年も期待して、ハウスを後にする。


農薬に頼らず、生物多様性を活かしながら

環境との調和を図る持続型農業によって、健康な作物が育ち、人も健康になる。

そんな農が当たり前になる時代を早く築きたいものだと

思いを新たにしつつ、僕は群馬から霞ヶ関へと向かったのだった。




2014年1月27日

浅見さん、お疲れ様。 風は吹いたよ。


1月22日(水)、山形県白鷹町・加藤秀一さんの告別式から帰って、

翌23日(木) は群馬・伊香保温泉にて群馬県内の生産者たちとの新年会に出席。

一泊して24日(金)、吉岡町・栗田文明さんのトマトハウスを見学して、

午後は霞ヶ関の参議院会館まで出向き、「有機農業の明日を語る会」 に参加。

25日(土) は、専門委員会「米プロジェクト21」 主催の新春講座

「ジェイラップ2013年の取り組みから学ぶ」 を六本木にて開催。

26日(日) は、「ネオニコチノイド系農薬を使わない病害虫防除を探るフォーラム」

の第 2 回ワークショップにパネラーとして参加した。


例によって終了後に懇親会が持たれ、気になってしょうがなかった

福島・喜多方市長選の選挙結果を確かめることができたのは、

昨夜遅くのことだった。

以前にも報告したけど、この市長選に

「あいづ耕人会たべらんしょ」 の浅見彰宏さんが出馬していたのだ。


結果は以下の通り。

   山口信也氏(現職) 14,842票

   浅見彰宏氏(新人)  6,886票

ダブルスコアの敗退だったが、多くの人が喝采している。

「大切な市長選挙を、無投票で終わらせてはいけない」

と出馬を決意したのが 2 カ月前。

突貫の準備と 2 週間の選挙運動で、知名度もないに等しい

千葉出身の新規就農者に対して、7 千人近い市民が彼に投票したのだ。

" 市民が主役のまちづくり " " 新しい循環型の地域づくり "  を謳い、

「希望の種まき式」 と銘打った出陣式には、

歌手の加藤登紀子さんが旅の途中に事務所に立ち寄るといった演出も

取り入れるなど、なかなかの戦術家ぶりも発揮した。

" 風は吹いた "  と言っていいんじゃない、浅見さん。

未来への種は、たしかに運ばれた。

芽を育て花を咲かせられるかは、明日からの仕事にかかっている。

今日のところは、「お疲れさんでやんした。」

2月 8日の 「大和川酒造交流会」 では、蔵人に帰った君を称えよう。


浅見彰宏の果敢なるたたかいぶりについては、

彼の公式サイトで楽しんでいただけると嬉しいです。

 ⇒ http://asamiakihiro.com/


とまあそんなワケで、次から次へとレポートも進めないとダメなんだけど、

今週も、千葉、茨城での新年会、

そして土日は福島での国際会議、とイベントが続いている。

溜まった宿題は、来週から順次報告ということで、

ここはヒラにご容赦願います。

今日はとり急ぎ、浅見さんへのエールまで。




2014年1月24日

『100,000年後の安全』、無料配信!

 

" 渋谷の聖地 "  と呼ぶ人さえいる映画館 「アップリンク」 を主宰する

浅井隆さんが、

ドキュメンタリー映画 『100,000年後の安全』 を、

サイトで無料配信を始めた。

浅井さんが 3.11前に買って上映活動を始め、

その後大きな劇場でも上映されることになった作品だ。

これを無料配信って、、、 

DVD を数千円で買ったワタクシとしては、当然抗議すべきところだが、

今回だけは拍手を送りたい。

 

いま争われている東京都知事選で

候補者並みに注目されている小泉元首相が、

この映画を見てフィンランドのオンカロまで視察に行き、

脱原発を決意したと言われたりしている。

 (今日参議院会館で開催された 『有機農業の明日を語る』 で、

  民主党の篠原孝議員は 「本当は、彼はその前から考えていたんですよ」

  と語っていたが。 -この会合については改めて報告したい。)


ゲンパツをどうするか、いずれの立場に立とうとも避けて通れない

核廃棄物処理の問題を考えるのに、必見の一本である。

加えて、エネルギーをどうするかは、

東京にとって極めて重大な政策争点であることは

重ねて強調しておきたい。 浅井さんの本意もそこにあるのだと思う。

原発は必要というなら、どの地方に頭を下げるのか、

そして廃棄物をどこに埋めるのか。

(日本列島にはオンカロに匹敵する地盤の場所はないと言われている)

よーく考えてもらいたい。


浅井さんの採算を度外視したこの暴挙に敬意を表して、

紹介しておきたい。 

『100,000年後の安全』 無料配信サイトはこちらから。

   http://www.uplink.co.jp/100000/2014/

まだ観てない方には、この機会にぜひご覧ください。

 


2014年1月22日

加藤秀一さんに捧ぐ

 

前回、少々思いつめ気味の感懐を綴ってしまったのは、

この人の訃報が影響したのかもしれない。

山形県白鷹町、「しらたかノラの会」 元代表の加藤秀一さんが亡くなった。

悲しい知らせを受け取ったのは18日。

今日、仕事も放ったらかして、告別式に向かった。

 

山形新幹線の赤湯駅から山形鉄道に乗り継いで1時間。

終点の荒砥駅で、ノラの会の山本昌継さんが愛娘・みのりちゃんを抱いて、

軽トラで待っていてくれた。

似合わない礼服と黒のネクタイを見て、泣きそうになった。

 

途中、吹雪と青空が目まぐるしく変わる山形路だった。

内陸に進むに連れ雪が深くなっていった。

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加藤秀一さんとの出会いは1986年だった。

アメリカから理不尽な米の輸入圧力が始まって、

全国的に反対運動が高まる中で、いくつかの団体から、

ただハチマキ締めて反対運動をやるだけでなく、

米の産直・提携運動によって日本の水田と農を守ろう、という声が上がった。

そこで結成されたのが、

「日本の水田を守ろう!提携米アクションネットワーク」 だ。

 


当時はまだ米の食糧管理制度が健在で、

減反政策が強制的に実施されていた時代。

提携米ネットワークは、

「減反政策は農民の主体性を奪い、日本の農業を衰退させるものだ」

と主張し、運動を展開した。

 

これは国家の政策と対峙するだけではなかった。

減反政策が、目標数量を達成しないと地域に補助金が下りない、といった具合に

地域共同体のしがらみを利用しながら進めてきたがゆえに、

反対するということは必然的に地域内での対立を生むことにもなった。

いや、対立ではない。

反対することは、集落内で孤立することを意味していた。

 

それでも加藤秀一さんは、

提携米ネットワーク設立の呼びかけ人にも堂々と名を連ねて、

反対の立場を表明した。

高校時代は生徒会長を引き受け、当時は青年団長を務めるなど

信頼の篤かった彼も、その一事で

地元から村八分的な仕打ちを受けることになった。

消防団長も辞めさせられ、

87年冬、秀一さんは初めて川崎の飯場に出稼ぎに出ている。

 

早くから有機農業の意味を理解し、率先した人でもあった。

10アールという小面積ではあれ、

米の無農薬栽培を実現して見せたのは1971年のこと。

大地を守る会が誕生する4年前、日本有機農業研究会が発足した年だ。

 

81年には、冬の仕事作りのために農産加工を手がけ始める。

出稼ぎから帰り、88年、秀一さんは新しい農産加工所を建設する。

しかし減反反対運動の先頭に立ったことが災いしたのだろうか。

取引が始まるはずだった生協から味噌餅の販売が断られ、

秀一さんはいきなり窮地に立たされたのだった。

自分たちの米で、自信を持って作った餅が大量に滞留した。

 

秀一さんとの関係が深まったのは、そこからである。

あの時、僕はその餅の販売を思い切って引き受けたのだ。

今だから語れる、トレース (原材料・製造工程の確認) あと回しの判断だった。

内容への信頼はもちろんあってのことだけれど、

それでも内心ビクビクと、クビを覚悟しながらの決行だった。

基準は運動と信頼と仁義だと、開き直った。

なんとも決意主義的な、懐かしい思い出である。

でもその味噌餅は、今でも定番商品として立派に続いている。

(25年前の話。 今では仕組み上不可能。 そのルールも自分でつくった。)

 

1994年、平成の米パニックと呼ばれた冷害・米不足の翌年。

提携米ネットワークは多くの団体に呼びかけて、

「減反政策差し止め訴訟」 に打って出る。

米を作らせない政策は、法によって保障された国民の 「生存権」 を奪う

日本国憲法違反の政策である、と。

 

毎回の裁判で、原告団は人を繰り出して主張を展開した。

加藤さんは、「減反政策を受け入れているのは農家の自主的判断である」

(国からの強制ではない) という被告・農水省の主張に対して、

自らの体験をもとに、そのカラクリをあばいた。

僕は、減反政策が農業の持っている環境保全機能(公共財産) を

喪失させていっていることを主張した。

興奮して途中から震えが止まらなくなったことを、今でも覚えている。

 

僕らはあの頃たしかに連帯していたし、

裁判の勝敗とは別に高揚していた。

(結果は棄却。 訴える筋合いのものではないという門前払いだった。)

でも加藤さんにとっては、相当な心労が続いたことだったのだろう。

自らつくった白鷹農産加工研究会と別れ、2006年、

秀一さんは若い仲間とともに、新たに 「しらたかノラの会」 を結成する。

その頃から体調を崩された。

 

血気盛んな若い頃からの仲間が駆けつけ、

告別式の後も集って、思い出を語り合った。

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高畠町の星寛治さんや、おきたま興農舎の小林亮さん、

長井市・レインボープランで名を馳せた菅野芳秀さん、

一緒に提携米運動を担った庄内協同ファームの面々・・・

 

最後に、ノラの会現代表の大内文雄さんが挨拶を述べた。

「秀一さんは、種を蒔き続けてくれた人でした」

ホント、その通りだと思う。

 

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秀一さんは、はにかんだような笑いがとても可愛い人だった。

純粋な人なんだなあ、と思ったものだ。

でも腹の中は、農の民として生きる誇りと、怒りと、意地で満ちていた。

名刺の肩書きに 「百姓」 と刷った最初の人だ。

 

悲しみ沈んでいる場合ではない。

それは秀一さんの望む姿勢ではない。

彼の遺志と矜持をちょっとでも懐に入れて生きていくことで、

彼もまた生き続ける。

そうやって命(いのち) はつながっていくのだ。

大内さんたちがつくる味噌餅の中にだって。。。

 

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昨年末の三里塚の萩原進さんに続いて、

  魂を語る農民がまた一人、いなくなった。

  偉そうに書いてるけど、けっこうこたえている。

  でも、加藤秀一と一緒にたたかえたことは、僕にとって誇りである。

  背中はどんどん重くなるけど、

  背負って生きないと、、、死ぬのが怖い。

 



2014年1月19日

産地行脚中 +いくつかのイベント案内

 

15日(水) は神奈川の生産者たちの新年会に出かけた。

京急本線から久里浜線に乗り換えて三浦半島の終点・三崎口で降りる。

さらにバスに揺られ、漁師の網元さんが経営しているという

民宿 「真魚家(まなや)」 に辿りつく。

メンバーは、「黒崎有機栽培研究会」「ウィングクラブ」(ともに三浦市)、

「折本新鮮野菜出荷組合」(横浜市都筑区)の 3 団体。

今年の幹事は 「ウィングクラブ」 で、この網元さんとは古いお付き合いらしい。

富士山が大きく見える三浦半島突端の高台で、

新鮮な魚料理に舌鼓を打ちながら、年初めの抱負を語り合う。 

 

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生産者にとって、やはり気になるのはローソンとの事業提携のようだ。

作付けが増える期待感の一方で、

振り回されるんじゃないかという不安感が、じんわりと伝わってくる。

丁寧に説明しつつ、本音で語り合う。

僕らにとって産地新年会シリーズは、ただの挨拶回りではない。

行脚(修行の旅) なのである。

 


続いて、16日(木) 17日(金) と生産者来訪。

どなたも遠方から千葉・幕張まで来ていただいたわけで、

商談だけでなく色々と本音の話し合いもしたりするのだった。

誰と語り合っても、生産者に共通するのは、

「大地が大地らしくあってほしい」 という願いだろうか。

「大地らしく」って、実はけっこう難しい設問なのだけど、

要は食の安全を守るべく頑張ってきた生産者・製造者たちの気持ちを忘れることなく、

ポリシーを持った運動を続けてくれ、ということだと思う。

 

大地を守る会が、初期からの理念をそれなりにも保ちながら

 (" それなりに~ "  という言い方で微妙に逃げを打っている気もするが)

40 年近く続いてきたこと自体が希望だと言ってくれる人もいるけど、

本音の希望がそんな水準でないことも解っている。

 

生産者の思いも、消費者からの要望も、多様である。

それやこれやを受け止めつつ、現実とたたかい続ける。

時に両方から非難されるようなバランスを重視したりもしながら。。。

この孤独はなかなか語れるものではないけれど、

思想は忘れてないよね、と常に自問自答しながら進みたいとは思っている。


手帳を見れば来週から1ヶ月、イベント続きで土日が埋まっている。

その間にも、生産地の新年会がまだ 4 ヵ所残っている。

もちろん本来の仕事も溜まる一方で、

だんだんと開き直りの心境に至りつつある。


まだ募集中のものもあるので、イベント名だけでもご案内します。

詳細は、クリックして HP にてご確認ください。

よろしかったら、どれか一つでも参加いただけると嬉しいです。

 

1月25日(土)・・・米プロ新春講座 「ジェイラップ2013年の取り組みから学ぶ」

1月26日(日)・・・ネオニコチノイド農薬のフォーラム。 パネラーで参加予定。

2月1日(土)~2日(日)・・・「コミュニティパワー国際会議2014 in 福島」

  福島から喜多方へと流れます。

  ISEP(環境エネルギー政策研究所) 代表の飯田哲也さんから 「ちょっと来い」 

  との指令が入り、2日のセッションで登壇予定。

2月8日(土)~9日(日)・・・「第18回・大和川酒造店交流会 ~新酒完成を祝う会~

  2週連続で喜多方。 大地を守る会オリジナル純米酒 「種蒔人」 の新酒完成を、

  原料米生産者(稲田稲作研究会) とともに祝います。

  酒と温泉 + イイ仲間。 誰が名づけたか  " この世の天国ツアー " 。

  新企画!「大地を守るお酒造り体験」 も併せて募集中です。

2月16日(日)・・・ 「地域の力シンポジウム」(主催:地域の力フォーラム&CSOネットワーク)

  3.11東日本大震災と内発的復興、農山村と都市の新しい結びつきを考える。

  パネラーで参加予定。

2月22日(土)~23日(日)・・・毎年恒例の 「大地を守る東京集会」。

  つくる人と食べる人の出会いの広場。

  大地を守る会が38年にわたって続けてきた最大イベントです。

  今年のワタクシは、麻布医院・高橋弘先生の講演と、

  「米の生産者と語ろう」 という小さな場を担当します。

  高橋先生監修で大地を守る会の野菜を使った新製品、

  「ファイトケミカルプラス」(スープの素) の試飲も用意する予定。

  楽しいお祭りです。 意中の生産者にも会えるはず。 ぜひお越しください。


そんなワケで、今日はとても貴重な日曜日。

寒風に吹かれながら抱いた感懐と、イベント案内まで。




2014年1月18日

「完全養殖」 という時代の切なさ

 

飲み会が続いてしまって間が空いちゃったけど、

東京海洋大学大学院・中原尚知准教授のお話 -後編

を上げておかなければ。

マグロ養殖と市場の最新動向から、魚食の今を考えてみたい。


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まずは、養殖による利点と問題点について。

利点のひとつは、何と言っても生産の安定性が挙げられる。 

生産量・品質・価格等を安定的にコントロールできる。

天然ものだけでは、どうしても価格は乱高下する。

身質については、天然ものに劣るというのが根強い評価だ。

原因は餌と運動量にある。

しかし脂の乗りや柔らかさによって市場にはニーズというものがあり、

ニーズにマッチさせられればプラスにもなり得る。


安全性については、昔は薬漬け養殖とか言われたが、

相当に改善されてきている、と中原さんは語る。

なおかつ、食物連鎖を考えた時、天然=安全とは必ずしも言い切れない

時代になってきてないか、とも指摘された。

餌の残さによる環境汚染についても、だいぶコントロールされてきているようだが、

赤潮の原因になるなど、まだ課題は残っている。

「有機養殖」 という考え方も生まれているが、日本では制度化には至っていない。

(わたし的には、この業界そのものがまだ信用ならないという印象が払拭できない。)




量について言うと、

一般的には養殖がどんどん増えていってると思われがちなのだが、

むしろ日本の養殖全体としては衰退期に入っている、というのが現状である。

世界的には、この 25 年間で養殖漁業は 1.7 倍に発展している。

シェアで言えば、6.5 %から 40 %にまで伸びている。

しかし日本では、1050年代から70年代まで急上昇して、以降横ばいである。

原因は、過剰生産-過当競争-価格下落という悪循環だ。


マグロについて言えば、

アブラマグロ(クロマグロ、ミナミマグロ) の資源減少と需要の狭間で、

養殖の割合が高まってきた。

当初は高級品市場での天然マグロの代替品としてあったが、

量が増え価格が下がるにしたがって、

今では量販店や回転寿司といった大衆市場向けに、普通に出回っている。

 

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マグロ養殖には、幼魚を採捕して 2~3 年かけて育てる日本型養殖と、

成魚を捕獲して数ヶ月で太らせるヨーロッパ型の 「畜養」 があるが、

天然資源の枯渇という問題に直面するようになって、

日本が取り組んだのが、人工ふ化によって稚魚から育てる 「完全養殖」 である。

クロマグロの完全養殖は、70年の水産庁の試験からスタートして、

74年に近畿大学で成功させた。

以後、西日本で普及し、近年は非水産系の大手企業や商社も乗り出して、

爆発的に増加傾向にある。


マグロ養殖の現在の課題としては、

取り上げ・加工技術の向上 (捕獲してすぐに締めて氷詰めにすることで品質劣化を防ぐ)、

台風など天然災害による経営リスク (保険制度の充実)、

斃死(へいし) 率の低下 (生簀の大型化)、そして原魚の確保。

人工種苗が成功したことによって、今では人工種苗のほうが多くなったが

(さきがけとなった近畿大学水産研究所では種苗販売も行なっている)、

まだまだ盤石なビジネスとは言えない。

加えて、飼料費(マグロの餌は生魚である) も静かに高騰しつつある。

質疑の際に、気になる薬剤の使用について聞いてみたが、

マグロは無投薬でやれている、との回答であった。


アブラマグロ類については、すでに持続可能なボーダーラインを切っている。

資源管理が強化されるのは必然的流れである。

完全養殖の普及によって生産量と価格の安定化に貢献できれば、

天然ものと棲み分けられる市場がしっかりと形成できるのではないだろうか、

というのが中原さんの展望である。


しかし、どうも手放しでは共感できない違和感が残る。

マグロを 1㎏太らせるのに必要な生餌(資源) が 13~15 ㎏。

やっぱ普段着で食べる魚としてはムリがある、とだけは言っておきたい。

バランスの取れた食べ方の上で成立させなければ、

どこかで破たんするような気がするのである。


資源管理と需要のバランスをどう取るか、

海洋環境の保全と漁業経営の安定をどう両立させるか。

水産業の発展と魚食文化を守りたいと考えるなら、

「完全養殖」 に一定のポジションを与えることは必須かもしれない。

しかしそれはあくまでも、補完的な位置づけとしてあるべきだろう。

上手に、末永く付き合っていくためにも。


講座終了後、築地場外に期間限定でオープンしている

Re-Fish 食堂」 で新年会。

" ウエカツ "  こと、水産庁職員の上田勝彦さんも登場して、

魚をしっかり食べることが海を守ることにつながる、と一席ぶってもらう。

今やメディアでも引っ張りだこの、魚食文化の伝道師だ。


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島根県出雲の漁師出身という変わり種。

「最近は、水産庁にはどれくらい行ってんの?」 と聞けば、

「オレ、こう見えても毎日霞ヶ関勤務っすよ」 と大声で返されてしまった。

いやたしかに、ヘンな質問だった。 

長靴履いて全国を飛び回ってるような雰囲気なもんで、失礼しました。


今日のテーマを受けて用意してくれたのか、

何と天然マグロと養殖マグロの食べ比べ! が登場した。


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ほとんど区別つかない。

食べても違いは微妙で、意見は分かれた。 

さいわい当たったけど、ただ単純に

「さっぱりした感じのほうが自然なんかな」 と思っただけ。

別な場所で出されたら、判別はまず無理だろう。


無投薬で、水域を汚すことなく、天然稚魚に依存しない 「完全養殖」。

それは苦心の賜物として認める。 

いやむしろ、ここまで来たかと感心させられた次第である。

マグロに限らず、資源管理型漁業に進まざるを得ない時代にあって、

この技術は育てなければならないのだろう。


しかし、だからといって無頓着に喰いまくるのは戒めたい。

四国の漁村に育った者として、近海の大衆魚をこそ大事にしよう、

という思いは変わらない。

なんか切ない・・・・  と心が晴れないのは、

豊穣の海が遠ざかっていくような喪失感のせいだろうか。




2014年1月14日

" 脱原発 " は争点じゃない?

 

元首相の細川護煕氏が東京都知事選への出馬を表明した。

脱原発を争点にたたかうという。

加えて、小泉元首相が支持を表明したことで一気にメディアも騒然となっている。

このタッグは強力だ。

かたや政府首脳および自民党筋から聞こえてくるのは、

「殿、ご乱心」 とか 「原発は地方自治体選挙の争点ではない」 とか。

 


ここで細川氏を応援するつもりはない。

しかし 「争点ではない」 とは、どういう刷り変えのおつもりか、

とは言っておきたい。

" 脱原発 "  は、まあ一つのスローガンではあるけれど、

基本的にはエネルギー政策の転換を求める意思の表明である。

エネルギー源を地方に委託し続けてきた東京が、

どんなエネルギー政策を目指すのかは、極めて重要な争点であろう。

これは暮らしの根幹の一つだからね。

エネルギー源は原発だけではない。 たくさんある。

何をどう選ぶかは、真剣に議論してほしい。

「他に (エネルギー源が) ない」 もすでに神話だ。

もう2年にわたって東京は原発に依存してはいないのだし、

新しい選択を目指すのは時代の流れである。

" できない、できない " はやる気のない人間の台詞だというのは、

企業人なら一度は受けた説教だろう。

 

もちろん争点はそれだけではない。

雇用・経済・格差問題、福祉、医療、防災(インフラ)、教育・・・・・

課題は山積している。 加えてオリンピック招致もある。

あれやこれやも含めて、候補者にはしっかり論戦してほしいと思う。

そもそも、ここで脱原発を争点にさせたのは誰なのか。

国民に約束した  " 脱原発依存 "  を破り捨てた者こそが主犯ではないか。

 

小平の川里賢太郎君の映画取材があって、

谷川俊太郎さんの詩を改めて覗いて再発見した、

「生きる」 という詩の一節がある。

 

  生きているということ

  ・・・・・・・・・・

  すべての美しいものに出会うということ

  そして

  かくされた悪を注意深くこばむこと

 

選挙の投票率が落ちていくのは、政治が醜いからではないだろうか。

言葉(約束) が軽すぎる。 腹の底が透けて見える。。。

 

養殖の話を続けるはずだったのだけど、今日はこの報道で

胸がザワザワして、書く気にならない。

明日から3連荘の飲み会になるというのに・・・ 

 

申し訳ありません。

 



2014年1月13日

マグロを喰いつくす民族でいいのか

 

おととい(11日) は、築地で

専門委員会 「おさかな喰楽部」 主催の新年勉強会が開かれた。

テーマは、「マグロから見える養殖魚の可能性」。

マグロとの末永く良好な付き合い方を考えようというものだ。

 

講師は東京海洋大学大学院准教授・中原尚知さん。

専門は海洋政策文化学という分野で、

水産物の加工・流通・マーケティングの研究というポジションだが、

近畿大学の研究員時代に

クロマグロの完全養殖を実現させたプロジェクトに携わっている。

 

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日本人は世界一のマグロ好きで知られる。

築地での初競りの値段が話題になる国柄である。

ちなみに今年の最高値は、青森・大間産本マグロ(クロマグロ) で1本736万円。

㎏ あたりにして 3万2千円。

昨年はなんと 1億5千万円 (㎏あたり70万) もついて世間を騒がせたが、

まあ今年は普通に戻ったということらしい。

 

そのマグロが食べられなくなる、

と言われるようになったのが 2006年あたりから。

原因はもちろん、乱獲である。

しかも数年泳がせておけば立派なマグロになるはずの幼魚が獲られている。

昨年12月、中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC) は、

クロマグロの幼魚(0~3歳) の漁獲量を

02~04年の平均から 15%以上減らすことを決定した。

大西洋や地中海マグロはすでに先行して漁業枠削減に取り組んでいる。

 

ではこれから、私たちは何をどのように考え、行動すればいいのか。

持続的な付き合い方というものを知らなければならない。

 

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まずマグロ全体の資源量を見てみるなら、

実は減っているのはクロマグロやミナミ(インド)マグロ

(この脂の乗った大型マグロを 「アブラマグロ」 と分類するらしい)であって、

漁獲量の大半を占めるキハダ、メバチ、ビンチョウは減ってない。

" 食べられない "  とはアブラマグロに関してであって、

まあ簡単に言ってしまえば、大好きなトロが食べられなくなる、

ということだ。

 

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乱獲には漁獲方法の変化も関係があって、

伝統的なはえ縄漁(幹縄にたくさんの枝縄をつけて釣る) に変わって、

1970年代から大型のまき網漁(巨大な網で囲んで獲る) が

盛んになったことにもよる。

加えて問題なのが、まき網漁と養殖(用の採捕) による

未成魚(3歳以下、マグロは3歳から産卵できる成魚になる) の獲り過ぎである。

太平洋マグロ漁獲の 90 %以上が 3歳以下という実態である。

 

世界のマグロの四分の1、クロマグロに至っては 8 割を消費する

世界一のマグロ消費国として、どう考えるか。

日本も冒頭で紹介したWCPFCの漁獲規制には合意したのだが、

「02~04年の15%減」 といっても、すでにもうこれくらい漁獲量が落ちているので、

とても充分な規制とは言えない、と中原さんは指摘する。

 

たとえば大西洋では

 ICCAT (大西洋まぐろ類保存国際委員会) という管理組織があり、

2007年から総漁獲可能量が削減され、禁漁期の設定、

蓄養(獲った若魚や成魚を数ヶ月育てて太らせる) 事業の登録制などに

取り組んでいる。

漁獲枠を超過したら、そのぶんは次の割当量から差し引かれる。

この枠はさらに拡大の方向にある。

 

漁獲量制限が世界の方向であることは間違いない。

まき網漁や養殖用種苗採捕を野放図にやり続けるワケにはいかない。

しかし単純な漁規制だけでは、漁業者は潰れるだけである。

まき網漁だけではない。

近海で行われているひき縄漁

(擬餌針を引いて船を走らせながら獲る。小さな魚体のものが多い)

もまた、夏場の貴重な収入源である。

ここは知恵が必要だ。

望ましい天然漁獲と養殖のあり方を考えたい。

 

一年前の勉強会で、勝川俊雄さん(三重大学准教授) が説いた

持続的資源管理の仕組みが思い出される。

早取り競争にならず、ちゃんとした値のつく魚をとって漁業経営を向上させる

「個別漁獲枠方式」。

要するに、もっと中長期的な産業政策が必要だということだ。

「マグロが食べられなくなる」 って被害者みたいな言い方でなく、

「マグロを喰い尽くす野蛮な民族」 と非難されないための、

ちゃんとした政策を編み出さなければならない。

 

さてそこで、養殖の動向とマグロ市場について、見つめてみたい。

すみません、今日はここまで。

続く。

 



2014年1月11日

顔の見える関係

 

スーパーの鮮魚コーナーを覗けば、

「バナメイエビ」 なるエビが何気に登場している。

まるで昨日まで 「新潟産コシヒカリ」 に化けていた米が、

ある日からフツーに 「●● 県産コシヒカリ」 として店頭に置かれるみたいに。

 

冷凍食品コーナーに回れば、20品目におよぶ製品の写真つきで、

「回収しています」 という POP が貼られている。

それはあくまでもこの店で売られていた商品ということで、

マルハニチロの回収製品は全部で 94 品目 640 万袋に及んでいる。

しかも回収作業は思うように進んでいないようだ。


そうこうしているうちに被害の訴えは日々日々増えていって、

ついに 1000件を突破した。 その範囲は 35都道府県に広がっている。

これらの数字はおとといの数字なので (1/8夕方時点での厚労省集約)、

原因が特定されない間は、まだまだ増えることだろう。

その間、収去したのか持ち込まれたのかはよく分からないけど、

100検体近くのサンプルが検査されていて、すべて見事に

マラチオン(商品名マラソン) は検出されていないと言う。

一方、検出された製品の最高濃度は 2万 6千 ppm!

こうなると、ほぼ限定的な事件のようではある。


優れた品質管理をやっていたはずの大手企業の内部で何が起こったのか。

事実だけでなく背景を検証しないと、

世間から忘れられることはあっても、本当の解決にはつながらないだろう。

当たり前に横行していた表示偽装、不気味な農薬混入事件・・・

食に関する不祥事や事件は今に始まったことではないけれど、

病いは深刻な症状を呈してきていると感じてしまうのは、僕だけだろうか。


おそらく生産・製造現場だけの問題ではないと思う。 

生産プロセスが見えない中で、他人任せの消費が要求するレベルとの断絶が

大切なものを失わせてしまっているような気がする。

食(=健康) を守る生産と消費の輪の大切さを唱えながら、

一方で否応なく競争社会を生きざるをえない我々としても、

ここはようよう考えなければならない。

 

そんな思いを抱きながら、生産者との新年会シリーズに突入している。

トップバッターはいつも 「東京有機クラブ」。



8日の夕方、三鷹のそば屋さんの一室を借りて、

小金井の阪本吉五郎一家、小平の川里弘一家、府中の藤村和正一家が集う。

みんな30年来のお付き合い。

派に後継者が育ち、都市農業をしっかりと守ってきた。

若手たちはこれからの話、

お父さんたちは昔の苦労話に花が咲く。

「こんな世間知らずの若者らによく付き合ってきたもんだ」

とからかわれながらも、俺の目に狂いはなかったとも言われれば、嬉しくもあり。

今年も元気で頑張っていきましょう、と酒を酌み交わす。


以前に紹介 した、川里賢太郎さんの映画撮影はほぼ終えたようで、

いま編集に入っている。

ケンタローの働く姿に、谷川俊太郎の詩が重なる。

3月完成の予定。 ケンタロー銀幕デビュー!  いや、待ち遠しい。


続いては昨日(10日)、

埼玉県本庄市のホテルにて 「埼玉大地」 の総会と新年会。

瀬山明グループ(本庄市)、黒沢グループ、比留間農園(ともに深谷市)、

吉沢グループ(川越市)、飯島グループ(上里町)、福井一洋さん(日高市)、

三枝晃男さん(志木市)、といった面々が集まる。

それぞれ独立した個人農家だが、会費を出し合って

緩やかに結束するかたちで 「埼玉大地」 は運営されている。

現在の会長は瀬山明さん。

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 (写真は、総会の席でローソンとの事業提携について報告する山口英樹取締役)


毎年、新年に総会を開いて、一年の活動を振り返り、今年の計画を立てる。

また講師を招いて勉強会を行なう。

今回のテーマは、なんとフルボ酸資材の活用。

昨年11月の女性生産者会議で、畠山重篤さんが力を込めて語った、あのフルボ酸だ。

その報告 の中で、僕はこう書いた。

   畠山さんは今、ミネラルの運び屋・フルボ酸の

   新たな力を証明しようとしている。

   それは、フルボ酸のキレート(結合)力は、

   放射性物質対策としても高い効果を発揮するであろう、

   というものだ。


まさにその研究を行なっていた会社の人を呼んで、

フルボ酸の活用を学ぼうというプログラムが用意されたのである。

まだまだ研究開発途上にあり、高価な資材なのだが、

もっと広がれば価格も安くできるようになる。

様々な可能性を秘めた未開拓資源のパワーを、

飲むとけっこう野卑な連中が、ああだこうだと楽しげに論評しながら拓こうとしている。

彼らにとっては  " 面白い資材があるので、ちょっと検証してみよう "  という

興味本位の探究心なのだが、

こちらは畠山さんの話を聞いているだけに、内心嬉しくてしょうがなかった。

僕らの生産者ネットワークは、やっぱ強力だ。


" 顔の見える関係 "  とは、

有機農業の世界で古くから語られてきた基本テーゼのひとつだが、

生産プロセスが見え、その努力の過程が伝わり、

食べることで再生産 (持続可能性) を支える関係は、

けっして古い時代のスローガンではない。

食の市場がグローバルになればなるほど、

" 食べる "  という命がけの行為の土台思想として、

しっかり堅持し続けたいと思うのである。


新年会と称して、僕らはただ飲んでるワケではない、のであります。


ちなみに、畠山さんが語っていた放射性物質に対する研究成果も出ていると、

講師の方から聞き出した。

しかし国はこのデータをまったく認めてくれないのだと言う。

あとで送ってもらう約束をしたのだが、

「一緒に農水とたたかいましょう」 と真顔で迫られた。

喧嘩するならやってもいいけど、僕としては現場に役立たせることを優先させたい。

現場から説得力を持った成果を築いていくことも、たたかいだからね。

いやちょっと、今年はのっけからワクワクしてきたぞ。




2014年1月 7日

新年のささやかな楽しみ

 

気持ちを新しくして仕事を始めよう、

とか思っても現実は厳しい。 せわしなくスタートダッシュが求められる。

たんなる数日の休息でしかなかったかのようだ。

それでも 2年ぶりに戻った仕入部署には、新年の細やかな楽しみがひとつ、ある。

大相撲千秋楽結びの一番での懸賞金なみに束ねられた

生産者からの年賀状。



静かになった職場で、1枚1枚めくりながら、

顔を浮かべたり懐かしがったり。

さすがに印刷されたものが多いが、それでもひと言書かれてあったりする。

今も変わらず毛筆でしたためてくる方もおられる。

何枚書くんだろう・・・ このこだわりには感心させられる。

面倒でも書かないと気が落ち着かない、ってこともあるか。

若者には家族写真が多い。

家族写真の賀状を嫌悪する方もおられるが、僕はわりと嫌いじゃない。

一年に一回会えるかどうか、の相手だったりするからね。

「二人目が生れました!」 なんてのは幸せ感が伝わってきて、

「よかったね~」 とニンマリしたりするのは、悪くない。

これからが大変だぞう、とか呟いたりして。

ま、人それぞれで。

 

わずかなコメントにも時代が反映されていて、

TPP、異常気象、農業政策や再稼働への怒り・・・などが散見される。

農業(食べものの生産) をめぐる環境が一段と厳しくなっていることを感じさせられ、

それでも我らは~ と続く言葉に励まされる。

やっぱり新年は、気持ちをリセットさせてくれるものである。


そして体調整える暇もなく、産地での新年会シリーズが始まる。

こちらは 3年ぶりの行脚となる。

明日の 「東京有機くらぶ」 を皮切りに、関東をめぐって福島・宮城まで。

終わるのは2月7日。

何年か前、死のロードと書いてしまって、生産者からいじめられた。

今も覚えてくれている人がいるので、 気をつけよう。


ここにきて失敗したと思うのは、去年のうちに

健康診断を受けなかったことだ。 人間ドックも行けなかった。

会社はコンプライアンス(法令遵守) 上、「早く行け」 と命令してくるのだけれど、

この時期に行くとロクなことがないので、もうちょっと逃げることとする。

行くとロクなことがないから・・・ って理屈になってない気もするが、

16 年前の胃の手術がどうもトラウマになってしまっている。

ま、とにかく気をつけよう。 けっして気合いで飲んではいけない。

もう若くないんだし。


とか言いながら、書いてなかった賀状を今頃書いている始末。

良い一年になりますよう、と願いながら。

今年もたくさんの生産者と会えることを喜ぼうと思うのであります。


たまにはこんな雑感で、お許しを。




2014年1月 5日

" 食と環境 " の年にしたいですね。

 

皆様、明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

月の暦によれば、今年は19年に一度の正月だそうです。

西暦1月1日が月暦の朔 (さく、ついたち、新月)、

つまり師走(十二月) 一日にあたるというワケです。

太陽(19年) と月のリズム(235ヶ月) が一致して、

元旦のご来光のそばに見えない月(月の誕生、月立ち-ついたちの語源-)

があります。 いや、「ありました」 と言うべきでしょうか。

だから何? って言われても困るんですけど・・・

そんな太陽と月の周期に感慨を抱くのも、歳のせいでしょうか。

ま、忙しい中にも多少の余裕を持ちたい心境の現われかも。

 

年をまたいで気になっていることの一つが、

大手食品会社の冷凍食品から農薬が検出されたという事件。

年末にこの報道に接したとき、

マラチオン(殺虫剤、商品名「マラソン」) と聞いて、

僕は輸入原料が原因だろうと推測しました。

この農薬は昔(80年代) から輸入農産物(小麦・トウモロコシ等) で検出されて

問題になってきたものだから (国内農産物でも検出されてはいます)。

しかしその濃度が(最高に検出されたもので) 1万5千ppm!

と新聞(1/1付朝日) で読んで、

それはあり得ない数字だと目を疑いました。

これまで問題にしていた数値は一桁レベル

(農作物の残留基準は0.1~8ppm) でしたから。

 


基準値の150万倍。 さすがに原料由来とは思えず、

「事件」(誰かが故意に農薬を入れた) として調査が進み出しました。

まるで中国冷凍ギョウザ事件がついに国内でも・・・

という感じです。

いったどうなっていくんでしょうか。

 

軽々な分析はまだ控えますが、

他人任せの、顔の見えない 「食」 に依存し過ぎている社会のリスクを、

私たちは見せられている、とは言えるのではないでしょうか。

加えて、農薬とはそういうものであることも示唆しているワケですが。

 

国家は底なしの借金地獄へと邁進し、

医療や福祉制度が後退するなかで税金も上がる時代。

人口(≒消費力) は昨年1年間で24万人減少しました。

この数字は、これからさらに加速するとの予測です。

気候変動や震災への不安も増すばかりです。

暮らしの土台が揺らぐなかで、期待するのは景気(経済) でしょうか。

僕には、どうあがいても  " 食と環境 "  を守る人々のつながりに行き着く

としか答えは見い出せません。

だって、それなくして社会の持続性は担保されないからです。

エネルギーの根幹もその文脈で考えたいと思っています。

 

かくして私は、今年も性懲りもなく、

" 顔の見える "  お酒からスタートしたのでありました。

 

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  (会津・喜多方市山都町 「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」 の

  生産者たちのお米で造ったお酒/大和川酒造店謹醸)

 

食と環境、そして人とのつながりを紡いでいくこと。

今年もこのテーマをひたすら追求します。

何か一つでも、確かな前進を-

2014年が皆様にとって良い一年になりますよう祈念して、

仕事を開始いたします。

 



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