2014年1月13日

マグロを喰いつくす民族でいいのか

 

おととい(11日) は、築地で

専門委員会 「おさかな喰楽部」 主催の新年勉強会が開かれた。

テーマは、「マグロから見える養殖魚の可能性」。

マグロとの末永く良好な付き合い方を考えようというものだ。

 

講師は東京海洋大学大学院准教授・中原尚知さん。

専門は海洋政策文化学という分野で、

水産物の加工・流通・マーケティングの研究というポジションだが、

近畿大学の研究員時代に

クロマグロの完全養殖を実現させたプロジェクトに携わっている。

 

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日本人は世界一のマグロ好きで知られる。

築地での初競りの値段が話題になる国柄である。

ちなみに今年の最高値は、青森・大間産本マグロ(クロマグロ) で1本736万円。

㎏ あたりにして 3万2千円。

昨年はなんと 1億5千万円 (㎏あたり70万) もついて世間を騒がせたが、

まあ今年は普通に戻ったということらしい。

 

そのマグロが食べられなくなる、

と言われるようになったのが 2006年あたりから。

原因はもちろん、乱獲である。

しかも数年泳がせておけば立派なマグロになるはずの幼魚が獲られている。

昨年12月、中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC) は、

クロマグロの幼魚(0~3歳) の漁獲量を

02~04年の平均から 15%以上減らすことを決定した。

大西洋や地中海マグロはすでに先行して漁業枠削減に取り組んでいる。

 

ではこれから、私たちは何をどのように考え、行動すればいいのか。

持続的な付き合い方というものを知らなければならない。

 

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まずマグロ全体の資源量を見てみるなら、

実は減っているのはクロマグロやミナミ(インド)マグロ

(この脂の乗った大型マグロを 「アブラマグロ」 と分類するらしい)であって、

漁獲量の大半を占めるキハダ、メバチ、ビンチョウは減ってない。

" 食べられない "  とはアブラマグロに関してであって、

まあ簡単に言ってしまえば、大好きなトロが食べられなくなる、

ということだ。

 

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乱獲には漁獲方法の変化も関係があって、

伝統的なはえ縄漁(幹縄にたくさんの枝縄をつけて釣る) に変わって、

1970年代から大型のまき網漁(巨大な網で囲んで獲る) が

盛んになったことにもよる。

加えて問題なのが、まき網漁と養殖(用の採捕) による

未成魚(3歳以下、マグロは3歳から産卵できる成魚になる) の獲り過ぎである。

太平洋マグロ漁獲の 90 %以上が 3歳以下という実態である。

 

世界のマグロの四分の1、クロマグロに至っては 8 割を消費する

世界一のマグロ消費国として、どう考えるか。

日本も冒頭で紹介したWCPFCの漁獲規制には合意したのだが、

「02~04年の15%減」 といっても、すでにもうこれくらい漁獲量が落ちているので、

とても充分な規制とは言えない、と中原さんは指摘する。

 

たとえば大西洋では

 ICCAT (大西洋まぐろ類保存国際委員会) という管理組織があり、

2007年から総漁獲可能量が削減され、禁漁期の設定、

蓄養(獲った若魚や成魚を数ヶ月育てて太らせる) 事業の登録制などに

取り組んでいる。

漁獲枠を超過したら、そのぶんは次の割当量から差し引かれる。

この枠はさらに拡大の方向にある。

 

漁獲量制限が世界の方向であることは間違いない。

まき網漁や養殖用種苗採捕を野放図にやり続けるワケにはいかない。

しかし単純な漁規制だけでは、漁業者は潰れるだけである。

まき網漁だけではない。

近海で行われているひき縄漁

(擬餌針を引いて船を走らせながら獲る。小さな魚体のものが多い)

もまた、夏場の貴重な収入源である。

ここは知恵が必要だ。

望ましい天然漁獲と養殖のあり方を考えたい。

 

一年前の勉強会で、勝川俊雄さん(三重大学准教授) が説いた

持続的資源管理の仕組みが思い出される。

早取り競争にならず、ちゃんとした値のつく魚をとって漁業経営を向上させる

「個別漁獲枠方式」。

要するに、もっと中長期的な産業政策が必要だということだ。

「マグロが食べられなくなる」 って被害者みたいな言い方でなく、

「マグロを喰い尽くす野蛮な民族」 と非難されないための、

ちゃんとした政策を編み出さなければならない。

 

さてそこで、養殖の動向とマグロ市場について、見つめてみたい。

すみません、今日はここまで。

続く。

 



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