2014年1月11日

顔の見える関係

 

スーパーの鮮魚コーナーを覗けば、

「バナメイエビ」 なるエビが何気に登場している。

まるで昨日まで 「新潟産コシヒカリ」 に化けていた米が、

ある日からフツーに 「●● 県産コシヒカリ」 として店頭に置かれるみたいに。

 

冷凍食品コーナーに回れば、20品目におよぶ製品の写真つきで、

「回収しています」 という POP が貼られている。

それはあくまでもこの店で売られていた商品ということで、

マルハニチロの回収製品は全部で 94 品目 640 万袋に及んでいる。

しかも回収作業は思うように進んでいないようだ。


そうこうしているうちに被害の訴えは日々日々増えていって、

ついに 1000件を突破した。 その範囲は 35都道府県に広がっている。

これらの数字はおとといの数字なので (1/8夕方時点での厚労省集約)、

原因が特定されない間は、まだまだ増えることだろう。

その間、収去したのか持ち込まれたのかはよく分からないけど、

100検体近くのサンプルが検査されていて、すべて見事に

マラチオン(商品名マラソン) は検出されていないと言う。

一方、検出された製品の最高濃度は 2万 6千 ppm!

こうなると、ほぼ限定的な事件のようではある。


優れた品質管理をやっていたはずの大手企業の内部で何が起こったのか。

事実だけでなく背景を検証しないと、

世間から忘れられることはあっても、本当の解決にはつながらないだろう。

当たり前に横行していた表示偽装、不気味な農薬混入事件・・・

食に関する不祥事や事件は今に始まったことではないけれど、

病いは深刻な症状を呈してきていると感じてしまうのは、僕だけだろうか。


おそらく生産・製造現場だけの問題ではないと思う。 

生産プロセスが見えない中で、他人任せの消費が要求するレベルとの断絶が

大切なものを失わせてしまっているような気がする。

食(=健康) を守る生産と消費の輪の大切さを唱えながら、

一方で否応なく競争社会を生きざるをえない我々としても、

ここはようよう考えなければならない。

 

そんな思いを抱きながら、生産者との新年会シリーズに突入している。

トップバッターはいつも 「東京有機クラブ」。



8日の夕方、三鷹のそば屋さんの一室を借りて、

小金井の阪本吉五郎一家、小平の川里弘一家、府中の藤村和正一家が集う。

みんな30年来のお付き合い。

派に後継者が育ち、都市農業をしっかりと守ってきた。

若手たちはこれからの話、

お父さんたちは昔の苦労話に花が咲く。

「こんな世間知らずの若者らによく付き合ってきたもんだ」

とからかわれながらも、俺の目に狂いはなかったとも言われれば、嬉しくもあり。

今年も元気で頑張っていきましょう、と酒を酌み交わす。


以前に紹介 した、川里賢太郎さんの映画撮影はほぼ終えたようで、

いま編集に入っている。

ケンタローの働く姿に、谷川俊太郎の詩が重なる。

3月完成の予定。 ケンタロー銀幕デビュー!  いや、待ち遠しい。


続いては昨日(10日)、

埼玉県本庄市のホテルにて 「埼玉大地」 の総会と新年会。

瀬山明グループ(本庄市)、黒沢グループ、比留間農園(ともに深谷市)、

吉沢グループ(川越市)、飯島グループ(上里町)、福井一洋さん(日高市)、

三枝晃男さん(志木市)、といった面々が集まる。

それぞれ独立した個人農家だが、会費を出し合って

緩やかに結束するかたちで 「埼玉大地」 は運営されている。

現在の会長は瀬山明さん。

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 (写真は、総会の席でローソンとの事業提携について報告する山口英樹取締役)


毎年、新年に総会を開いて、一年の活動を振り返り、今年の計画を立てる。

また講師を招いて勉強会を行なう。

今回のテーマは、なんとフルボ酸資材の活用。

昨年11月の女性生産者会議で、畠山重篤さんが力を込めて語った、あのフルボ酸だ。

その報告 の中で、僕はこう書いた。

   畠山さんは今、ミネラルの運び屋・フルボ酸の

   新たな力を証明しようとしている。

   それは、フルボ酸のキレート(結合)力は、

   放射性物質対策としても高い効果を発揮するであろう、

   というものだ。


まさにその研究を行なっていた会社の人を呼んで、

フルボ酸の活用を学ぼうというプログラムが用意されたのである。

まだまだ研究開発途上にあり、高価な資材なのだが、

もっと広がれば価格も安くできるようになる。

様々な可能性を秘めた未開拓資源のパワーを、

飲むとけっこう野卑な連中が、ああだこうだと楽しげに論評しながら拓こうとしている。

彼らにとっては  " 面白い資材があるので、ちょっと検証してみよう "  という

興味本位の探究心なのだが、

こちらは畠山さんの話を聞いているだけに、内心嬉しくてしょうがなかった。

僕らの生産者ネットワークは、やっぱ強力だ。


" 顔の見える関係 "  とは、

有機農業の世界で古くから語られてきた基本テーゼのひとつだが、

生産プロセスが見え、その努力の過程が伝わり、

食べることで再生産 (持続可能性) を支える関係は、

けっして古い時代のスローガンではない。

食の市場がグローバルになればなるほど、

" 食べる "  という命がけの行為の土台思想として、

しっかり堅持し続けたいと思うのである。


新年会と称して、僕らはただ飲んでるワケではない、のであります。


ちなみに、畠山さんが語っていた放射性物質に対する研究成果も出ていると、

講師の方から聞き出した。

しかし国はこのデータをまったく認めてくれないのだと言う。

あとで送ってもらう約束をしたのだが、

「一緒に農水とたたかいましょう」 と真顔で迫られた。

喧嘩するならやってもいいけど、僕としては現場に役立たせることを優先させたい。

現場から説得力を持った成果を築いていくことも、たたかいだからね。

いやちょっと、今年はのっけからワクワクしてきたぞ。




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