2014年5月アーカイブ

2014年5月25日

人格権を保証するエネルギー革命を!

 

「 生存を基礎とする人格権は、

 すべての法分野において最高の価値を持つ。」

「 多数の人の生存に関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた

 議論自体、法的に許されないと考える。」

 

関西電力大飯原発(3、4号機) の再稼動差し止め訴訟に対する

福井地裁による画期的判決の余韻冷めやらぬ二日後( 5月23日)、

東京・丸の内にある千葉商科大学丸の内サテライトキャンパス(Galleria商.東京) で、

「全国ご当地エネルギー協会」 の設立総会が開かれた。

 

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発起人幹事の飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所代表)

による開会挨拶に続いて議長選出があり、

定款・規約・役員構成の説明など、議題はすべて承認・決議された。 

 

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2014年 5月 23日、

「全国ご当地エネルギー協会」 は一般社団法人として正式に発足した。 

北海道から九州まで、9ブロックから地区幹事が選出され、

代表幹事には会津電力(株)代表・佐藤彌右衛門さんが担ぎ出された。

挨拶する彌右衛門さん。

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フクイチ原発事故の後、こらえきれない怒りを満身で発散させながら、

ここまで走ってきた。

「ホラが現実になったよ」 と本人は照れているが、

機運をつかみ、人をつなげ、形にしてきた。

内心はしてやったりと言ったところだろう。

市民サイドでの電事連の旗揚げだと一層気合も入る。

 

9地区の地区幹事を紹介する飯田哲也さん。

この中から 5人の副代表幹事が選ばれた。

なんと、すべて女性である。

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皆さん、3.11までは電力のことなどまったくのど素人で、

ゼロからの出発だったと口を揃える。

コミュニティ・パワーは女の力があって活性する。

いや、まったく。

 

ちなみに大地を守る会からは、

代表の藤田和芳が 「消費者幹事」 として選任された。

(で、仕事をさせられるのはワタクシ。。。)

 

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総会後、その場で行なわれた記者会見の様子。 

関心は自ずと今後の展開と、そして財政など運営体制に集まる。

 

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予定のプログラム終了後は、

我が 「Daichi & keats」 にて祝賀会。

しかもご当地の銘酒・名産品持ち寄りによるパーティとなる。

お店の定員をかなりオーバーした人数が集まって、

内心ヒヤヒヤしたが、まあ何とか収まった。

「過去最高の売上です!」 と店長からお礼を言われ、

ちょっといい気分になったりして。

 

設立を祝って、好きな飲み物で乾杯!

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並べられたご当地名産品の数々。 

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歌まで飛び出して、大いに盛り上がったのだった。 

 

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自然エネルギーの全国ネットワークが、ついにできた。

もちろん問題は山積だけど、

明らかに加速することは間違いない。

 

地域が主体となって組織され、

プロジェクトの意思決定もまたコミュニティを基盤に行なわれ、

便益は地域に分配される。

持続可能で自立した地域社会の実現に向けて、

相互支援と協働が、これから始まる。

 

昨年の9月、日本で唯一稼動していた大飯原発が定期検査に入って、

現在この国では原発からエネルギーは産み出されていない。

出されているのは汚染物質のみである。

国民はとても高い代償を払わされているし、

さらに長い年月払い続けなければならないというのに、

原発がないと電気代が上がるというのは、まったくのマヤカシでしかない。

彼らが恐れているのは、利益の分散化である。

いつまでも吸い上げ続けたいのだ。

 

人格権を保証するエネルギーはいま、

全国で見える形になって生み出されつつある。

これは革命である。

後戻りさせるわけにはいかない。

 

全国ご当地エネルギー協会の HP はこちらから。

 ⇒ http://communitypower.jp/

一人でも多くのご支援をお願いしたい。

 



2014年5月19日

25年目の「稲作体験」

 

「大地を守る会の稲作体験」

が、今年もスタートした。

1990年から始まって、ついに 25回目到達。

ここまでくれば、押しも押されもせぬ伝統行事だ。

大地を守る会の " 顔 " のひとつ、と言ってもいいだろう。

 

5月18日(日)、暑くなりそうな予感のなか、

待ちに待った 「田植え」 を迎える。

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千葉県山武市沖渡、佐藤秀雄さんの田んぼ。

今年は若干少なめだけど、

それでも 70名ほどの親子が集まってくれた。 

すっかり顔馴染みになったリピーターあり、初参加あり。

子どもたちは田んぼに着くや、生き物探しに取り掛かる。

子どもたちの生物に対する関心は本能のようなものだ。

 

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水を入れ、きれいに代かきをやって鏡のような田んぼになると、

蛙たちが産卵にやってくる。

しばし田んぼは虫たちの楽園となる。

天敵は人間の子ども、か。

 

例年通り、田植え指導は綿貫直樹さんから。

お父さんの栄一さんから引き継いでもらっている 2代目指導者。

「伝統」 はこうして築かれていく。

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説明を聞いている間にも、うずうずしている人たちがいる。

顔で分かる。

では、一斉にスタート。

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田植えって何で楽しいんだろう。

いよいよ本田(ほんでん) での米作りが始まる

新学期のようなワクワク感。

人生の本番ともいえる厳しいフィールドに移される早苗たちに、

逞しく育てと願う親のような気持ち。

田植えってやっぱ、希望の作業なんだよね。 

加えて、温んだ泥の感触から何か大事なものを取り戻していくような

蘇りの感覚が、嬉しい。

 

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秋になれば君は、ひと回り逞しくなっている。 

間違いなく。

 

慣れた手つきのお父さんもいる。

子どもたちに一度でも体験させておくこと、

これ必須アイテムだと、体が伝えている。

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紙マルチも例年通り。

こちらは真ん中で向かい合って、下がりながら植える。 

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毎年やっていても、ずれる時はずれる。

調整しながら、まあ何とかやり遂げる。

 

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虫とりに熱中する男子。

でもまだそんなにいろんな虫がいるわけではない。

しかも畦で探しても、見つからないぞ。

 

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田んぼの中に入って、じっと目を凝らしてみれば、

コオイムシや小さなゲンゴロウも見つけられる。

この田んぼなら。

 

もう外せないプログラムになってしまった

「陶(すえ) さんの生き物講座」。

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蛙の種類について、その棲み分けと生態について、

生き物が食べ合い連なりあって豊かな自然が形成されていること。

 

稲作体験が 25年を迎えたということで、

ご指名がかかり、初めてこの企画に挑戦したときのことなど

話させていただく。

でも、いろんな思いが涌いてきて、ちゃんと話せなかった。

 

人が集まってくれるかビビリながらも、新宿からバスを仕立てた。

やるからには草取りも経験しなければ無農薬の米作りは学べないと

草取り作業を間に組み込んだ。

初年度の田んぼを借りた生産者は故今井征男さんで、

毎朝、自分の畑より先に田んぼの見回りをしてくれた。

「無農薬の米作り」 を失敗させるわけにいかないと、

とても緊張していたと後で奥様から聞かされた。

今井さんが亡くなったのは、その年の冬だった。

 

続けるかどうか悩んだが、

「今井さんがあんなに頑張って成功させてくれたんだ。 続けるっぺよ」

と山武農協睦岡支所長(当時) の下山久信さんのひと言で決心がついた。

 

2年目から借りたのが佐藤秀雄さんの田んぼ。

秀雄さんも還暦を過ぎて、腰痛とたたかう毎日だ。

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秀雄さんと掛け合いで、田植えまでの工程や、

これからの生育のポイントなどについて聞き出していく。

陸苗代(おかなわしろ:畑で稲の苗を育てる) がやれる人は、

もう少なくなった。

しかも手植え・無農薬なので、大きめに育てる。

しっかりした健苗を育てるのが、無農薬でやるための最大の胆(きも) なのである。

 

無農薬で 24年。

いくつかの希少生物まで発見される田んぼになって、

生物多様性を育むという有機稲作の思想まで喋らせていただいた。

「 害虫は益虫の餌として適度に存在し、そのバランスが取れたとき、

 害虫は害虫でなくなります。 この世に無用な生き物などいない。

 有機稲作は平和の思想なのです。」

「 それは、まっとうな値段で食べてくれるだけで

 守り続けることができます。」

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美しい風景は生命によってつくられている。

たかが 4回の作業体験だけど、

何かを感じ取っていただけたなら嬉しい。

 

25年前、数人の消費者の手を借りて、職員一人で始めた「稲作体験」。

それが毎年々々若手職員たちでリレーされ、四半世紀を迎えた。

やってよかったと、本当に思う。

今年が豊作であれば、なお良し。

 

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2014年5月15日

コメ展で " コメびとトーク " のご案内

 

六本木・東京ミッドタウンにある展示会場

「21_21 DESIGN SIGHT」 で開かれている 「コメ展」 で

トーク・セッションが企画されたので、ご案内させていただきます。

 

企画されたのは本展示会のディレクター・竹村真一さん。

 

  コメについて考える 「コメ展」 なのだから、

  会場内で閉じた展示でなく、生きたコメ作りの現場につながる

  「窓」 を作りたいと考えました。

 

  米作りの現場が今どうなっているのか?

  これからどんな日本、どんな未来をともに創っていくのか?

  そして米作りに賭けるそれぞれの思いを、コメ展の作品づくりに関わった

  デザイナーやアーティストとも共有したい。

 

「生産者を呼んでくれないか。」

この依頼に、大地を守る会として応えないわけにはいかない。

そこで今回は、以下の4名の方々に上京をお願いした。

 

〇 宮城県大崎市 千葉孝志さん (蕪栗米生産組合代表)

〇 山形県庄内町 菅原専一さん (みずほ有機生産者グループ代表)

〇 石川県加賀市 橋詰善庸さん (加賀有機の会代表)

〇 福島県喜多方市 浅見彰宏さん

  (福島県有機農業ネットワーク理事、「あいづ耕人会たべらんしょ」世話人)

 

生物多様性と米作りについて、

有機稲作の最前線について、

あるいは振り回される農政と米の現状について、

いずれ劣らぬ一家言の持ち主だ。

皆さん、忙しい時期にも拘らず、二つ返事で引き受けてくれた。

 

 トーク 「田んぼの未来2」

日程は 6月5日(木) 17:30~19:30。

竹村さんと戎谷でナビゲートします。

詳細はこちらから-

  http://www.2121designsight.jp/program/kome/events/140605.html

 

平日ですが、宮城・山形・福島・石川から

有機農家の生の声をお届けします。

たくさんの方々のご来場をお待ちします。

もちろんコメ展の展示も楽しんでいただけたら、嬉しいです。

 



2014年5月12日

人も生き物もつなぐ堰

 

5月4日、堰さらいの続き。

 

落木・木の枝・落葉や土砂をすくっては、

尾根の方ではなく谷の方に投げ捨てる。

そんなもんだから、よく溜まる場所ほど壁が年々高くなっていって、

さらにパワーが必要になる。

今年は若者を使って谷側の壁を削ったりもしながら

進んだ。

 

浚って進めば水がついて来る。

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貴重なサンショウウオの卵を発見!

 

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種類までは分からないが、いずれのサンショウウオも

環境省レッドリストでは絶滅危惧種にランクインされているはず。 

そっと隅に移して、前に進む。

(左下の緑色は、私の指です。)

 


このトンネルがすごい。

江戸時代、米にかけた執念の賜物。

毎年冒険心をくすぐられるが、

ここはさすがに進入禁止である。

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午後3時過ぎ、無事作業終了。

お疲れさんの打ち上げ。

ビール、豚汁、冷奴がふるまわれる。

 

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いったん解散後、「いいでの湯」 で汗を流して、 

改めて夜は地元の人たちも参加しての交流会となる。 

 

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やっぱ地元の参加者が減っていることを実感する。

僕らボランティアは感謝もされるが、

しかし食材や布団の持ち出しなど受け入れのための準備では、

一軒一軒への負担が重くなっていっているということだ。

複雑な心境にもなる。

 

翌日は浅見彰宏さん・大友治さんの案内で、

上流部を散策する。

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清流が途絶えることなく流れ続ける。

これがシアワセの元であることを、多くの人は忘れてしまっている。

また飯豊山にも登らなくっちゃ、という気分にさせられる。

 

「元木・早稲谷 堰と里山を守る会」 の事務局長・大友治さんは

生き物が大好きで、

堰の周りで新しい植物を発見しては写真に撮って、

「堰の植物図鑑」 に加えている。

この地の生物多様性を語る時、

大友さんは熱くなる。

 

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冬眠から醒めたばかりなのか、

まだ動きの鈍いガマガエル (ヒキガエル)。

ボーっとしている。

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これからオスを選んで、餌を一杯食べて、繁殖活動に入る。 

たくさんの生命がこの堰でつながっている。

人もつなげ、未来にもつながる生命の道と

僕らは付き合っているのだ。

 

長谷川浩さんが買ったという山にも

入らせていただく。 

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雑木林にちょっと入っただけで、

存在を誇示するかのように残された熊のフン。 

 

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「食とエネルギーの自産自消」 を唱える

長谷川さんのこれからは、どう進んでいくか。

これはけっこう楽しみの一つである。

命の無事も祈りながら。。。

 

人が減っていく里山での暮らしは、けっして楽ではないだろう。

我が事より地域のために働くことも多いはずだ。

棚田を眺め、一人仕事をしながら、

感動したり、あるいはため息をついたりもするのだろう。

その営みを支えるのは、実は困難なことではない。

食べものをこそ大切にして、まっとうな値段で食べること。

そのことでつながれるし、それは我が身を守ることでもある。

 

会津山間地の 6㎞の水路が語る世界は、けっこう奥深い。

ではまた来年、お会いしましょう。

 

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2014年5月11日

堰(水路) さらい

 

5月1日に邑南町から帰ってきて、一日置いて 3日。

今度は車で東北道を北上。 要所要所で渋滞に遭い、

観光客を横目で睨みながら、郡山から磐越道に入って会津若松で降り、

喜多方・大和川酒造で 「種蒔人」 を積んで、山都まで。

休憩時間も含めてほぼ 7時間。 

 

この8年、GW後半は堰さらいボランティアと決めている。

余計なことは考えないようにして・・・

そんな感じで今年もやってきましたよ、

この里に。

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一見変わらない風景なんだけど、

やはりこちらの棚田も、年を追って不耕作田が増えている。

美しい風景は元からそこにあったわけでなく、

人の手によってつくられてきたのだと説いたのは民俗学者・柳田國男だが、

日本はいま、まったくその真逆の道を歩んでいる。

失われたものはおそらく、もう取り戻せない。

 


いつもなら満開の桜が出迎えてくれるのだが、

今年はもう散っていた。

でも草花たちはあちこちで競い合っていて、

充分に目を楽しませてくれる。

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到着したボランティアたちは順次 「いいでの湯」 に浸かって、

みんなで準備して、前夜祭へと突入する。

今年も50人以上のボランティアが集まった。

 

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しかし地元農家は今年も減ったとのこと。

かつて50戸あった農家が、今年は11戸になった。

堰が維持できない戸数まで減ってしまうと、

その時点ですべての田んぼがいっぺんに消失する。

集落そのものの存続が、

浅見さんはじめ新規就農者の肩にかかってきているということである。

 

それにしても、ここに来るボランティアは酒飲みが多い。

「種蒔人」 もしっかり貢献している。

会員の皆様が飲み続けてくれたお陰で、

1本につき 100円ずつ積み立ててきた 「種蒔人基金」 から、

今年も 2ダース(2日分) の 「種蒔人」 をカンパさせていただいた。

ささやかな、人をつなぐ潤滑油として。

またこういう人たちがいてくれることで、

原料の水と米も守れるわけで。

 

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こごみ、ウド、タラの芽・・・ 山菜の天ぷらが実に美味しい。

山に入って、適度に摘んで、適度に手を入れる。

けっして自然のまま(放ったらかし) にしない。

そうすることで生物の多様性はかえって高まり (これを 「中規模撹乱説」 という)、

いつまでも数々の資源と恵みをもたらしてくれる。

これが里山の原理である。

 

自著 『ぼくが百姓になった理由(わけ)』 のPRをする浅見彰宏さん。

一昨年に山都に入植して仲間に加わった

長谷川浩さん(元福島県農業研究センター研究員) の

著書 『食べものとエネルギーの自産自消』(ともにコモンズ刊)

とも合わせて。

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さて翌 4日。

本木上堰延べ 6kmの堰さらいの開始。

いつものように上流から降りてくる早稲谷班と、

下流から上っていく本木班に分かれる。 出会うまで終われない。

 

僕は今年は本木班に編成される。

事前にスコップ組とフォーク組みが指定されたのだが、

僕も含めた数名は 「両方」 と書いてある。

土砂も枝木も落葉もとにかく全部対処しろ、ってことね。

キャリアとともに楽になっていくのではない。

任務は重くなっていくのである。 これ、世の習いなんだそうだ。

肉体労働もか・・・ ま、いいけど。

 

本木班、朝 7時半集合。 

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作業開始ポイントまで軽トラで護送され、 

あとはひたすら、浚うべし、浚うべし・・・

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冬の間に落ちた倒木も、枯枝枯葉も、土砂も浚い、

水を通してゆく。

全長 6kmの高度差は 65mとのことだが、

ほとんど水平に近い傾斜が続く。

尾根に沿ってゆっくりと、温みながら水が下っていけるように

掘られている。 

 

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江戸時代中期、1736年に着工し11年かけて完成した。 

以来 278年、修復を重ねながら麓の田を潤してきた。

この堰より上に人家はない。

上流は飯豊山のブナ原生林である。

降った雨や雪が森の力によって浄化され、ミネラルも一緒に運んで

美味しい米をもたらしてくれる。

この価値を、経済の尺度で計れるものなら計ってみてほしい。

外部経済ぶんも含めるなら、

その数字は誰も支払えない額になるはずである。

潰してはならない、汚してはならない。

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疲れたので続く。

 



2014年5月 9日

" A級グルメの町 " 邑南町訪問記(Ⅱ)

 

邑南町訪問記、後編。

 

実は今回の訪問の目的の一つに、

有機栽培のブルーべりーの存在があった。

そこで園地を視察させていただく。

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ブルーベリーはいま花の季節。

収穫は7月になる。

 

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サウスムーンなど果実の大きい品種が選ばれているが、

それでも一本の成木から採れる実の量は 2㎏ だという。

米の小袋 1袋ぶん。。。 500本植えて約 1トン。。。

農薬を使わないための手間(コスト) もある。

天敵のカイガラムシはブラシでこすって落とす。

コガネムシはトラップを仕掛けて捕殺する。


受粉にはミツバチを使うが、去年はハチがやってきてくれて

買わずに済んだんだそうだ。

どこから来たのか。 リンゴ園から飛んできたのではないかと、

農園主の森脇豊敏さんは推測している。

「リンゴ園の農薬散布が影響だと思うんですが・・」

と森脇さんの心境は複雑なようだ。

「でもそうだとすると、ここに有機栽培のブルーベリー園があることで、

 ハチもリンゴ園主も救われたんじゃないですか」

と返すと、少し笑ってくれた。

 

地元での販売の他、冷凍して加工原料に回したりしてきたが、

この間需要も伸びてきているとのこと。

というわけで、現在の生産量ではちょっと当方との取引は難しい。

増植計画の検討もされているとのこと。

しかしその場合は品種の選定も鍵になる。

風味・粒の大きさ・生産性・保存性・作りやすさなどを勘案して判断しないと、

数年後の経営に響くことになる。

日当りや昼夜の寒暖差、土地の保水性や雨量

(水を欲しがる果物だが水が多いと味がボケる) なども大事な要素だ。

森脇さんは幾つかの品種の名を挙げながら、

次の園地候補を検討中とのことであった。

長いお付き合いに進められるかどうかは、

これからのこちらの姿勢も問われることになる。

 

棚田百選に選ばれた地区があるというので、

案内してもらった。

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農家の高齢化に加えて米価は低水準というこんにち、

生産効率を上げられない棚田を維持するのは大変なことだ。

あちこちの田んぼが耕作されなくなってしまっている。

それでも荒れないようにと、黒マルチを敷いて雑草を防いでいる。

そのカネにならない仕事は、どんな思いでやられているのだろうか。

翻って思うに、山上から 「田ごとの月」 を愛でられる棚田が、

まるで第Ⅰ種絶滅危惧種のように急速に消えていっているというのに、

この国の文化人たちはいったい何を見ているのだろう。

荒れる風景を嘆きながら、グルメ気取りで輸入食品を頬張ったりしてないか。

田を荒らさず、いつか復元できるなら・・・とマルチで保護している農民たちこそ、

文化人の名に値しないか。

 

加えて感じ入ったのは、家々の美しさだ。

漆喰の白壁に蔵のたたずまいが、とてもいい。

どの家も丹精に手入れされている。

美しいと言わせる村には、必ず誇りの香りがするものだ。

 

こちらが、邑南を有名にさせた 「素材香房 ajikura 」。

地元食材を使用したイタリアンのレストラン。

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味噌だったか醤油だったかの蔵を移築した建物の

店内風景。

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ランチでは、パスタコースを選んだ。

でも順番に出される料理の名前を言われても、

覚えられない。 いや、暫くすると忘れてしまうのだ。

僕はまったくもってグルメになる素質がない。

とにかく野菜が美味しかった。 

ま、僕にとってはそれで充分。

 

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ajikura と同じ建物に併設された 「食の研究所」。

 

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ここには 「耕すシェフ」 と銘打った調理師の研修制度がある。

3年間邑南に住んで、直営の農場で野菜作りを体験しながら料理を学び、

食や農に関わる人材として鍛えられる。

また町内唯一の高校である矢上高校の生徒たちと共同で

地元食材を使った商品開発が行なわれていて、

矢上高校は 「スイーツ甲子園」 で中国大会決勝に進出した実績を持つ。

 

観光施設 「香木(こうぼく) の森公園」。

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ハーブ園にクラフト体験工房、カフェ、温泉、バンガロー

などがあって、滞在型で楽しんでもらう工夫が試行錯誤されている。

 

他にも、わざわざ広島から買いに来る客がいるという

道の駅に設営された地産地消の市場や、有機栽培農家、

山地酪農に挑む青年、チョウザメ(&キャビア) の養殖場

などを案内いただいた。

町の公務員の方が一所懸命、次は、次は、と町の産業のPRに努めてくれる。

ここでも知らされる。 鍵は人に尽きる、ということ。


農水省 「食文化ナビ」 で委員をご一緒した日本総研の藻谷浩介さんが

絶賛した邑南町を、駆け足でたどった 2日間。

" 地域 "  というテーマが一層リアリティを持って迫ってきたのだった。

 

「食文化ナビ」 調査によれば、

平成22年度に設定した目標に対しての現在の実績は-

 ・ 観光入込客数 100万人/年に対して、93万人(単年度)。

 ・ 定住人口 200人に対して、72人(23・24年累計)。

 ・ 食と農に関する起業家 5名に対して、8名(同上)。

 

2年間で 72人が移住した町。

少ないでしょうか。

一ヶ月で 3人、新しい人が引っ越してくる中国山地の町。

それを受け入れる懐の深さと、生まれる新たな仕事。

これが何を意味するか、じっくりと考えたい。

 



2014年5月 8日

" A級グルメの町 " 邑南町訪問記(Ⅰ)

 

島根県邑南(おうなん) 町。

広島駅から浜田行きのバスに乗って中国山地を北上し、

島根県に入ったところが邑南町。

10年前に旧 3町村が合併してできた人口 1万 2千人という町。

一見してどこにでもあるような、

のどかな日本の中山間地、といった風景だ。

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しかしこの町が今、とても熱い。

" 日本一の子育て村 "  を宣言して、

中学卒業まで医療費無料! 2子目から保育料無料!など、

地域で子育てを支援する制度を充実させてきている。

安心して子どもが産める町、これは日本でいま最も求められている政策である。

若者を受け入れるための空き家情報も提供している。

 

そして食関係者を唸らせているのが、

" A級グルメ立町 "  を宣言しての骨太な地産地消の展開である。

食や環境、ロハス系と言われる雑誌の取材が後を絶たない。

その推進役を果たしているのが邑南町観光協会。

既にある観光資源の売り込みではなく、

新しい地域ブランドを創造していく姿勢をもつ観光協会というのは、

そうないのではないだろうか。

 

5月1日、その山間の町に、

町立の 「食の学校」 なる施設が建設され、竣工式を迎えた。

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『 OHNAN  A-CLASS  GOURMET  ACADEMY 』

こっちを訳せば 「邑南 A級グルメ学院」 か。

" A級グルメの町 "  にかける本気度を示す施設の誕生である。

ここに僕がお誘いをいただいたのは、

この施設をコーディネートされたプランナーの石原隆司さんからであるが、

昨年度委員を務めた農林水産省の 「食文化ナビ活用推進検討会」 で

邑南町をモデル地区として調査したことも手伝っている。

観光協会の常務理事である寺本英仁さんとは

昨年 「Daichi&keats」 でお会いし、訪問の約束をしていたこともあった。

 

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石原良治町長や議員さんらによるテープカット。

町の掲げる  " A級グルメ "  には、

地元で生産される食材を育て、ここでしか味わえない食体験を提供し、

その食文化をしっかり伝承させてこそホンモノのグルメ(食通) であろう、

といった主張が込められている。

そしてこの理念を発展させるものとして、

昨年秋に 「食の学校プロジェクト推進協議会」 が発足し、

この日の竣工式へと漕ぎつけたものだ。

ここを新たな拠点として、地元の人たちへの食農教育を進め、

100年先まで食文化を伝えていくこと、

さらには加工技術や素材知識の習得、新商品の開発などが

ミッションとして掲げられている。

 

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挨拶する石橋町長。

合併後の初代町長で 3期目と聞いたが、まだ若い。

 

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様々な関係者が挨拶する中に、

観光協会が運営するレストラン 「素材香房 ajikura (あじくら)」 料理長の

三上智泰さんもいた (写真右)。

ajikura のレシピが本にもなったイケメン・シェフ。

大阪や広島のホテル勤務ののち、町の取り組みに惚れて地元に帰ってきた。

意欲ある若者が帰ってくる。

その若者の手で新たな価値が生まれる。

いい循環が生まれている。

 

イケメン・シェフのお隣でマイクを握っているのは、

観光施設 「香木の森公園」 内にあるハーブ園を任されているという

はなぶささんと仰ったか。

夜の食事で同席した際に今後のプランを聞かされ、

いろんな意見交換をさせていただいた。

ハーブの先にあるもの、あるいは共生昆虫について。

この町には面白い人たちが集まってきている。

 

続く

 



2014年5月 6日

「全国ご当地エネルギー協会」 設立総会のご案内

 

皆さん GW は楽しまれたことでしょうか。

わたくしは、4月29日の夜に広島に入って、

30日から 5月1日と島根県邑南町を訪ね、帰ってきてから 1日おいて

5月3~5日は例年通り、

喜多方市山都の堰さらいボランティアに参加してきました。

ブヨに吸われた跡が激しく痒いです。

 

この二つの報告をする前に1件、案内を挟ませていただきます。

4月27日付本ブログで報告した 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)

設立総会の概要が決定しました。

ただしこれは 「総会」 ですので、

地域で自然エネルギーの取り組みを進めている団体で、

協会に加盟して他の地域と連携したい(その検討をしたい)

という団体の方が対象となりますので、趣旨ご理解ください。

 

【1】 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) 設立総会

日時 : 2014年 5月 23日(金) 15:30~16:20 (開場 15:10~)

場所 :千葉商科大学丸の内サテライトオフィス Galleria商.Tokyo

     東京都千代田区丸の内 3-1-1 国際ビル1階 (お堀側)

       http://www.cuc.ac.jp/access/

主催 : 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)発起人一同

     コミュニティパワー・イニシアチブ

プログラム : 発起人幹事・事務局から定款、活動計画等の提案

          設立総会決議

          代表幹事および各地区幹事からのメッセージ等

【2】 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) 設立記者会見

日時 : 2014年 5月 23日(金) 16:30~17:15

      - 引き続き同会場にて -

 

【3】設立記念パーティ

日時 : 2014年 5月 23日(金) 17:30~20:00

場所 : 農園カフェ&バル 「Daichi & keats」

     東京都千代田区丸の内1-4-1 丸の内永楽ビル地下1階 iiyo!! 横丁内

       http://www.daichi-keats.jp/access.html

会費 : 5000円(飲み放題)

 ※ 全国各地からの銘酒・名産品の持ち寄り歓迎。

   もちろん手ぶらの参加で OK です。

 ※ こちらは事前予約制です。

 

本総会に関するお問い合わせは

ISEP (認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所) まで。

TEL : 03-5942-8937  FAX : 03-5942-8938

URL : http://www.isep.or.jp

 

全国各地で自然エネルギーへの取り組みを進め、

それらが連携しあうことで、新しい国の形がつくられていくことを願って、

大地を守る会も応援していく所存です。

 



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