2014年5月19日

25年目の「稲作体験」

 

「大地を守る会の稲作体験」

が、今年もスタートした。

1990年から始まって、ついに 25回目到達。

ここまでくれば、押しも押されもせぬ伝統行事だ。

大地を守る会の " 顔 " のひとつ、と言ってもいいだろう。

 

5月18日(日)、暑くなりそうな予感のなか、

待ちに待った 「田植え」 を迎える。

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千葉県山武市沖渡、佐藤秀雄さんの田んぼ。

今年は若干少なめだけど、

それでも 70名ほどの親子が集まってくれた。 

すっかり顔馴染みになったリピーターあり、初参加あり。

子どもたちは田んぼに着くや、生き物探しに取り掛かる。

子どもたちの生物に対する関心は本能のようなものだ。

 

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水を入れ、きれいに代かきをやって鏡のような田んぼになると、

蛙たちが産卵にやってくる。

しばし田んぼは虫たちの楽園となる。

天敵は人間の子ども、か。

 

例年通り、田植え指導は綿貫直樹さんから。

お父さんの栄一さんから引き継いでもらっている 2代目指導者。

「伝統」 はこうして築かれていく。

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説明を聞いている間にも、うずうずしている人たちがいる。

顔で分かる。

では、一斉にスタート。

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田植えって何で楽しいんだろう。

いよいよ本田(ほんでん) での米作りが始まる

新学期のようなワクワク感。

人生の本番ともいえる厳しいフィールドに移される早苗たちに、

逞しく育てと願う親のような気持ち。

田植えってやっぱ、希望の作業なんだよね。 

加えて、温んだ泥の感触から何か大事なものを取り戻していくような

蘇りの感覚が、嬉しい。

 

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秋になれば君は、ひと回り逞しくなっている。 

間違いなく。

 

慣れた手つきのお父さんもいる。

子どもたちに一度でも体験させておくこと、

これ必須アイテムだと、体が伝えている。

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紙マルチも例年通り。

こちらは真ん中で向かい合って、下がりながら植える。 

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毎年やっていても、ずれる時はずれる。

調整しながら、まあ何とかやり遂げる。

 

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虫とりに熱中する男子。

でもまだそんなにいろんな虫がいるわけではない。

しかも畦で探しても、見つからないぞ。

 

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田んぼの中に入って、じっと目を凝らしてみれば、

コオイムシや小さなゲンゴロウも見つけられる。

この田んぼなら。

 

もう外せないプログラムになってしまった

「陶(すえ) さんの生き物講座」。

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蛙の種類について、その棲み分けと生態について、

生き物が食べ合い連なりあって豊かな自然が形成されていること。

 

稲作体験が 25年を迎えたということで、

ご指名がかかり、初めてこの企画に挑戦したときのことなど

話させていただく。

でも、いろんな思いが涌いてきて、ちゃんと話せなかった。

 

人が集まってくれるかビビリながらも、新宿からバスを仕立てた。

やるからには草取りも経験しなければ無農薬の米作りは学べないと

草取り作業を間に組み込んだ。

初年度の田んぼを借りた生産者は故今井征男さんで、

毎朝、自分の畑より先に田んぼの見回りをしてくれた。

「無農薬の米作り」 を失敗させるわけにいかないと、

とても緊張していたと後で奥様から聞かされた。

今井さんが亡くなったのは、その年の冬だった。

 

続けるかどうか悩んだが、

「今井さんがあんなに頑張って成功させてくれたんだ。 続けるっぺよ」

と山武農協睦岡支所長(当時) の下山久信さんのひと言で決心がついた。

 

2年目から借りたのが佐藤秀雄さんの田んぼ。

秀雄さんも還暦を過ぎて、腰痛とたたかう毎日だ。

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秀雄さんと掛け合いで、田植えまでの工程や、

これからの生育のポイントなどについて聞き出していく。

陸苗代(おかなわしろ:畑で稲の苗を育てる) がやれる人は、

もう少なくなった。

しかも手植え・無農薬なので、大きめに育てる。

しっかりした健苗を育てるのが、無農薬でやるための最大の胆(きも) なのである。

 

無農薬で 24年。

いくつかの希少生物まで発見される田んぼになって、

生物多様性を育むという有機稲作の思想まで喋らせていただいた。

「 害虫は益虫の餌として適度に存在し、そのバランスが取れたとき、

 害虫は害虫でなくなります。 この世に無用な生き物などいない。

 有機稲作は平和の思想なのです。」

「 それは、まっとうな値段で食べてくれるだけで

 守り続けることができます。」

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美しい風景は生命によってつくられている。

たかが 4回の作業体験だけど、

何かを感じ取っていただけたなら嬉しい。

 

25年前、数人の消費者の手を借りて、職員一人で始めた「稲作体験」。

それが毎年々々若手職員たちでリレーされ、四半世紀を迎えた。

やってよかったと、本当に思う。

今年が豊作であれば、なお良し。

 

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