2014年6月アーカイブ

2014年6月30日

ブログ閉店します-今度はフルーツバスケットで会いましょう。

 

このブログの継続は、けっこうしんどかった。

ちょうど7年、延べ855本。

目指せ1000本! には至らなかったけど、

自分に課した月10本のアベレージは何とか維持できたようです。

しかも想像以上の反応をいつも頂いて、けっこう嬉しくもありました。

「エビちゃん」 のキーワードで上位に出るという野望も、

まあまあの線まではいったようだし。。

 

事後報告になってしまって申し訳ありませんが、

6月13日(金)の株式会社フルーツバスケット株主総会および取締役会にて

専務取締役を拝命し、6月15日をもって(株)大地を守る会を退社、

翌16日から (株)フルーツバスケットに着任しました。

 

いま、静岡県田方郡函南(かんなみ)町丹那にいます。

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熱海と三島の間に位置し、四方を山に囲まれ、

富士山系の噴火口跡地で大昔は湖だったとも語り伝えられている、

南箱根の水の豊かな盆地。

地下約 200m下には、全長 7,800m におよぶ丹那トンネルが走っていて、

この国の東西を結んでいる。

そのトンネル工事は、大正から昭和にかけての産業振興をかけた、

水とのたたかいで死者も多数出るほどの一大工事だった。

作家・吉村昭が 『闇を裂く道』 で描いた、

日本近代の光と影を受け止めた町。

 

壮絶な歴史を深く民の記憶に留めながら、

今はのどかに酪農を中心として暮らしている。。。

ここが僕の 「大地を守る会人生」 最後の拠点となります。

 

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この盆地にはいつも風が舞っていて、

土日にはパラグライダーを楽しむ人たちが集まってくる。

 

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地元産大麦を使った地ビールは 「風の谷のビール」 と名づけられ、

人気を誇っている。

いつまでもイイ風が吹く谷であってほしいし、

水と風と聞けば、当然のごとくエネルギー利用に想像が広がる。

 

大地を守る会も出資してつくった 「酪農王国オラッチェ」。

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この地に赴任することになろうとは、まったくの想定外だったけれど、

僕は縁を大事にするほうなので、進んで受け入れた。

専務という重職は相当なプレッシャーではあるが、 

ここで、やれるだけのことをやり遂げたいと思う。

 

日曜日にはたくさんの観光客がやってきてくれる。

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もっと活性化させたい。

これまで偉そうに喋ってきた自分の、本当の力が試される場が与えられたのだ。

喜んで行かずにどうする、だよね。

 

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このジャム・ジュース・ケーキ工房を運営するのが (株)フルーツバスケット。

有機農業を加工の立場から応援してきて 27年。

まだ社員 8人、年間売上高 5億円強の小さな加工場だけど、

培ってきたノウハウは幅広いと自負するところである。

大地を守る会に自前の農産加工の現場があることは大きな強みであって、

3.11後の生産支援や TPP といった苦難を乗り越えるにも、

この部門の強化は必須であり、その可能性は大きいと僕は確信している。

 

しかも 27年前に掲げたスローガンは、

「丹那を有機農業の里にしよう」 というものだった。

未だ夢のままである。

この夢を、少しでもいいから形にしたいと思う。

もちろん、それは中央で喧嘩する運動なんかよりずっと困難な道のりだということも、

分かっているつもりだ。

 

この地で、たくさんの人とあいまみえてみたい。

そう覚悟して単身移り住んだのは、

ここ 10年近く誰も使ってくれなくなって、

朽ち果てつつあった大地を守る会の保養施設 「ウェルカム」。

フルーツバスケットから車で 7分、

南箱根ダイヤランドという別荘地の中にある。

古い洋館、いや田舎の古い屋敷の納屋のような臭いがして、

クモ・ムカデ・ヤモリといった先住民がいて・・・

 

だったら少し明るくいってみようと、個人的に雇った相棒がこれ。

殺虫剤ではありません。 

ホンダの50ccバイク、黄色い 「モンキー」 くん。

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こいつに跨って、トコトコと函南という町を走り回りながら、

そのうちエビちゃんが選んだ 「函南百選」 もご紹介してみたいな、

とか想像を膨らましたりして。

 

呑気なことを言ってる場合ではない、か。

与えられた指令は、可及的速やかにミッションを進めよ、である。

この地で。

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というわけで、本日をもって

「大地を守る会のエビちゃん日記  " あんしんはしんどい "  」

を閉店とさせていただきます。

長らくのご愛読、たくさんの方からのご批評や励ましに

心より感謝申し上げます。

この気持ちは言葉に表せません。

7年続けられたエンジンは、皆様お一人お一人からの

「読んでるよ」 のひと言でした。 間違いなく。

 

暫くの猶予をいただき、落ち着いたら

株式会社フルーツバスケットの HP にて再開したいと考えてます。

たたかいは終わってないしね。

では、また。 お元気で。

 

≪追伸≫

職場は変わりましたが、大地を守る会の CSR 推進委員には

2年ぶりに復帰しました。

これまで同様、とはいかないかと思いますが、

大地を守る会の活動を支える立場は変わりません。

またメールアドレスも変更ありませんので、

これまで通りご連絡いただいて結構です。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

 



2014年6月15日

有機の拡大と脱ネオニコへの道筋(続き)

 

6月8日(日)、

一般社団法人 アクト・ビヨンド・トラスト」 主催による

「ネオニコチノイド系農薬を使わない病害虫防除を探るフォーラム」

の第 3回。

場所は品川区にある小山台教育会館。

このシリーズの最終回ということもあって、午前10時から16時半という

ほぼ一日かけてのワークショップとなった。

 

昨年 11月に開催した 第 1回 は報告済みだけど、

今年 1月に行なわれた第 2回は、

いろんな宿題が集中して、整理できずにきてしまった。

第 2回のテーマは 「稲作育苗箱への浸透性農薬施用について」 で、

僕は NPO法人民間稲作研究所の稲葉光圀さんや

庄内協同ファーム・小野寺喜作さんとともに

発題者として発言させていただいた。

 

稲作における省力化(コストダウン) のひとつとして、

ネオニコ系農薬をはじめとする浸透性農薬の育苗期での施用が増えている。

浸透性が高く、効果が長持ちするので、

本田移植(田植え)後も殺虫効果を発揮する。

一方で、日本各地で赤トンボが減少している原因のひとつとして

指摘する調査結果なども現れてきている。

また堅い籾がらに守られている子実(コメ) では、

農薬が検出されるケースは少ないのだが、

ネオニコ系農薬では白米でも検出されることがある(玄米はもっと高い)。

こういった問題の解決策は何か。

有機・無農薬でのコメづくりを実践しながら、

減農薬のコメでもネオニコを排除した庄内協同ファームの

小野寺さんはあのとき、こう問うた。

「ネオニコが悪いからといって、他の農薬に変えればそれでいいんですか?」

 

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答えは、有機農業を支援する、ということに尽きるだろう。

高齢化とともに農業者の減少が激しくなる中で、

コストダウンも強いられる生産者たち。

残効性の高い農薬で省力化をはかろうとする農家を悪者扱いしても、

問題の解決にはつながらない。 

 

さて、最終回。 発題者は6人に及んだ。

 ・稲葉光圀さん (民間稲作研究所)

 ・大野和朗さん (宮崎大学准教授)

 ・後藤和明さん (らでぃっしゅぼーや農産部長)

 ・徳江倫明さん (FTPS代表、生きもの認証推進協会代表)

 ・冨井登美子さん (栃木よつば生協理事長)

 ・山田敏郎さん (金沢大学名誉教授)

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午前中は、その6人によるプレゼンテーション。

稲葉さんは第 2回に続いて、「脱ネオニコ稲作の確立」 について。

本質的には、ネオニコ系農薬という限定されたものではなく、

「有機稲作の技術」 は確立されてきているのだ、というお話。 

 

大野さんは第 1回に続いて、「環境と人に優しいIPMの展開」 について。

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天敵の有効活用による実践的な減農薬技術を説く。

しかも大野さんはたんなる農薬削減にとどまらず、

モノカルチャー(単一作物栽培) の生産様式から、

生態系を整えることで農薬を必要としない体系の確立へと向かおうとしている。

脱ネオニコを考える上で、

ここには大きなヒントが隠されている。

 

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徳江さんは、認証という手法を使っての

「ネオニコ・フリー」農産物の普及を提唱した。

しかし正直言って、僕はこの手法には

何か大事なものが欠けているような気がしてならない。

 

そして流通・消費の立場からは、お二人が発表。

全国組織(らでぃっしゅぼーや) と地産地消を大事にしてきた生協さん。

どっちが良いとかではなくて、テーマに対して其々の役割がある。

よつば生協さんが提携生産者とともにネオニコ・フリー米を宣言すれば、

必然的に我々も取り組みをスピードアップしなければならなくなる。

僕らが競いながら、生産現場での技術進化には連帯する形こそ、

あるべき姿である。

そのことによって多様に消費者を守る陣形ができる。

パイを奪い合うのではなくて、みんなの力でパイ自体を大きくすること。

これが僕らが 80年代から模索してきたネットワーク理論であり、

多様な人々を巻き込んでいく革命論である。

 

その意味でも今回、長野から 「農事組合法人 ましの」 の寺沢茂春さんが

参加されたことを、僕は嬉しく思った。

「ましの」 さんからはリンゴや洋ナシをいただいている。

懸命に減農薬での果樹栽培に取り組んできた生産者である。

しかし彼のリンゴはネオニコ・フリーではない。

「今日勉強しにきたことがまあ、おいらの第一歩ということで・・・」

恥ずかしそうに語る寺沢さんだったが、

こういう人を応援しなければ、目標は達成されない。

 

6番目の山田敏郎さんの発表は、

ネオニコ系農薬の蜂群への影響についての長期野外実験

についての報告であったが、

この試験は正直言って ? マークをつけざるを得ない。

まずもって、ネオニコ系農薬ジノテフラン(商品名「スタークル」「アルバリン」等) を、

10倍、50倍、100倍と、あまりにも高濃度で使用していること。

もしこの濃度で農家が使用したなら、間違いなく農薬取締法違反に問われる。

薬を原液 (に近い濃度) で投与して、死んだから影響あると言われても、

薬というものを知る専門家は相手にしないだろう。

 

蜂群崩壊症候群についての認識不足もあるように思われたし、

有機リン系のほうが安全かのように言われては、ちょっと採用できない。

山田さんは元々工学系の学者で、趣味で蜂を飼っていたということだが、

研究結果について養蜂や農薬の専門家と情報交換していただけないかと思う。

理系の研究者なんだから、本当にこれでいいのか

という疑問は払拭していただきたい。

予防原則の立場に立つ者としても、

専門家から足元すくわれるようなデータではたたかえないし、

対立を深めるのに掉さしたくない。

 

そもそもミツバチの世界に起きている現象はけっこう複雑で、

おそらくこれは、複合汚染である。

ネオニコ系農薬だけに焦点をあてて、

それだけを排除すれば済むという話でもないと思っている。

関係機関から農家まで、総力を挙げて調査しなければならない筈なのに、

こんなレベルでいいのだろうか、と思った次第である。

 

加えて、やれることもある。

前にもどっかで書いたと思うけど、

ハチにとってイネはけっして美味しい作物ではない。

なぜ田んぼにやってくるのか。

周辺に花粉・蜜源が減ってきているからである。

たとえば周りに耕作放棄地があれば、荒れさせるのではなくて

みんなで花を咲かそうではないか。

モノカルチャーと経済の呪縛を乗り越えて、

生態系を整える、ということだ。

それは農業者でなくてもできるはずだ。

 

午後は、6つのテーブルに分かれて、

脱ネオニコへの道筋を語り合い、ロードマップを作成するという

ワールドカフェ方式でのワークショップ。 

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メンバーを入れ替えながらまとめ上げ、

テーブルごとに発表する。

 

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様々な意見を交差させていくことで、この場に集まった人たちの総意が

ある方向に収斂されていく。

バランスに健全さを求める方に行き着いたか、

あるいは先鋭な運動こそ必要と動いたか、

どちらが良いという正解は、ない。 

 

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いずれにしても、目指す方向はこれだろう。

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ネオニコチノイド系農薬 「を含め」 と進んだことに、

僕はコミュニケーションの力を感じた。

いいまとめだね、これ。

 

語り合えば健全な方向に行く (ことは可能である)。

そのために僕らはもっとウィングを広げ、

コミュニケーション力を高めなければならない。

その時に大切なのは、否定に終わらず提案に結びつけること、

そして批判にも 「愛」 が必要だ。

甘いかもしれないけど、捨てたくない。

それが今、この星に求められていることではないだろうか。

 

有機農業が世界を救う。

このテーマを与えられたことを、幸せに思いたい。

 



2014年6月14日

有機の拡大と脱ネオニコへの道筋

 

コメ展でのトークセッションを終えて生産者たちと一杯やって、

翌 6月6日(金) は農水省に出かけた。 

相手は 「生産局農産部農業環境対策課有機農業推進班」 で、

有機農業の拡大を推進していくためにどのような施策が有効か、

内部の勉強会を開くので来いという。

いろいろと各分野の意見を聞いているようだ。

 

その姿勢は評価しようということで、

有機農産物の流通状況と抱えている課題など、

僕なりに整理してお話させていただいた。

また要望や提案もいくつか提示したのだが、

さてどのような形にまとまっていくか、今後の動向に注目したい。

 

空振りだったのは、

生産者支援だけを考えるのでなく、消費(食べる) を応援する施策が必要だ

と訴えたのに対して、

生産支援の視点で進めるのが部局の立場である、

という回答が返ってきたことだ。

有機農業の推進とは総合施策のはずなのだが、

生産振興-販路拡大を後押しすると言いながら、

消費(者) に目を向けられないというのは、我々には不思議な話である。

「作る」 には 「食べる」 がセットされないとうまく回らないのに。

六本木でコメ展が開かれているのを知っているか、

の問いに 「いや・・」 と首を振られたのも、ガクッて感じ。

 

まあ失望していても始まらない。

聞く姿勢は持ってくれているので、

生産-流通サイドからもっと具体的な提案を、

つまり企画書を持ってぶつけることが必要なのかもしれない。

 

続いて 6月8日(日)。

「ネオニコチノイド系農薬を使わない病虫害防除を探るフォーラム」

第 3 回ワークショップ 「脱ネオニコチノイド系農業への地図を描く」。

 

ごめん。 一回でまとめるつもりだったのだけど、

続きは明日。

 



2014年6月12日

コメびとたちと語る、田んぼの未来

 

続いて 6月5日(木)。 

六本木・東京ミッドタウン内 「21_21 DESIGN SIGHT」 で開催中の

コメ展」 にて、

トーク・セッション 「田んぼの未来 2」 が開かれた。

 

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コメについて考える 「コメ展」 だから、

生きたコメづくりの現場につながる 「窓」 をつくりたい・・・ 

 

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コメづくりの現場が今どうなっているのか?

これからどんな日本、どんな未来を創っていくのか?

それぞれのコメづくりに賭ける思いをたっぷり語ります。

 

というわけで、竹村さんが表現する 「コメびと」(生産者) を 4名用意して、

ナビゲーターとして参加させていただいた。

 


平日の夕方なのに、けっこう人が入っている。

しかも六本木という場所柄もあってか、外国人が多い。

「和食」 が世界無形文化遺産に登録されたことも影響しているか。

しかし異国の人たちの関心とは裏腹に、

この国の人たちにとってコメは、ただの一食材でしかなくなってしまっている。

いろいろ思いを喋るより、

彼らの感想が聞きたくなってくる。

 

東京のど真ん中で、

懐かしい風景に見入る人たちがいる。

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午後 5時。

会場内の一角に用意されたイベント・スペースにて、 

セッションの開幕。

お呼びした 4名のコメびとは、

 ・千葉孝志さん(宮城県大崎市、蕪栗米生産組合代表)

 ・菅原専一さん(山形県庄内町、みずほ有機生産者グループ代表)

 ・橋詰善庸さん(石川県加賀市、加賀有機の会代表)

 ・浅見彰宏さん(福島県喜多方市、福島県有機農業ネットワーク理事)

 

千葉さんの到着が遅れてハラハラさせられたが、

何とかギリギリ間に合った。

こじんまりとしたトーク会場に、

それでも50人くらいは集まってくれただろうか。

僕は前に座らせられたので写真は撮れず。

終了後、「21_21~」 のスタッフ仁お願いして送ってもらった。

こんな感じ。

 

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まずは二人ずつ前に座ってもらって、

簡単な自己紹介にご自身の栽培方法、コメづくりにかける思い、

地域や環境との関わりなど、自由に語ってもらった。 

 

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山間地の堰の保全に取り組んできた浅見さんにとって、

田んぼとはイコール  " 水の道 "  である。

「 コメ展の展示は素晴らしいと思ったけど、

 " 水路 "  への視点が弱い気がしました。」

ズバッと切り込んで、

水路こそが地域を守っているのだということを、

山都の棚田風景を紹介しながら語ってくれた。

この価値を都市(まち) の人たちと共有するために、

彼の仕掛けはこれからも続く。

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菅原専一さん。

「 田植えがひと段落して、中丁場(なかちょうば、ひと休みの意味)

 のところで呼んでいただいたので、来ることができました。

 お陰で素晴らしい展示を見ることができました。

 俺たち百姓は現場にいながら、こんな観点でコメを考えてなかった気がする。」

 

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彼のコメづくりは合鴨農法である。

しかし食欲旺盛なカモを田んぼに放すと虫も草も片っ端から食べちゃうので、

生物多様性は貧しくなる。

それは気になるところではあったのだが、

人手がなくなってきて、昔の結のようなつながりも失われ、

やむなく選んだのが合鴨農法だった。

しかし、それでも虫や草は毎年豊富に現われてくれて、

土づくりを土台とした有機農業の力を実感している。

 

「それでの~」 と庄内弁で訥々と語る専一ブシが、僕は好きだ。

「中丁場でちょうどよかった」 と言いながらも、

やっぱり田んぼが気になる専一さんは、忙しなく夜行バスで帰るのだった。

 

宮城・大崎平野の田尻地区で、

渡り鳥と共生するコメづくりを長く続けてきた千葉孝志(こうし) さん。

野生動物にとって必要な湿地帯として、

世界で初めて田んぼがラムサール条約に登録された場所である。

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千葉さんは冬季湛水(冬水田んぼ) にも取り組んできた。

しかも、警戒心の強いガンたちが一ヶ所に集まって田んぼを荒らさないよう、

ねぐらを分散させるために、あえて場所を離して水を張る。

冬に水を入れられない所では、井戸も掘った。

そのポンプアップの動力は自然エネルギーを使いたいと、

太陽光パネルも設置 した。

コメに付加価値をつけるためではない、渡り鳥のために。

彼にとって渡り鳥との共生は、自然保護といった観点を超えていて、

命のつながりそのもののようだ。

この星を守るための当たり前の百姓仕事なんだと、僕には聞こえてくる。

 

石川・加賀温泉から駆けつけてくれた

橋詰善庸(よしのぶ) さん。

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橋詰さんが有機栽培に転換したのは、

自ら体験した薬害がきっかけである。

「 こんなものを使って食べ物を作っちゃいけないんじゃないか、

 と思いましてね・・・」

優しく笑顔で語ってくれるのだが、

以後10数年の苦闘はおそらく他人には分からない。

草に覆われ、まったくコメが取れない年もあった。

それでもようやく水田らしくなってきたと思ったら、

白鳥が舞い降りるようになった。

今では千羽のハクチョウが橋詰さんの田んぼにやってくる。

 

後半は4人に前に座ってもらって、

竹村さんはじめ会場の方々との質疑。

ぼくもついつい喋ってしまう。

 

彼らは安全なおコメを作っているだけではない。

国土を守ってくれているのだということ。

しかも石油に依存した近代農業ではなく、持続可能な生産方法を追究しながら。

その結果として生物多様性が育まれ、

暮らしの土台が安定していくこと。

その世界を維持することは難しいことではない。

お茶碗一杯 30~40円 で食べてくれさえすれば守れるのだということ。

社会がおコメの値段を生産コストだけで勘定するようになり、

米価が下がれば下がるほどに、この秘められた価値は失われていく。

外部経済は外部不経済となり、社会は貧相になっていく。

こういう生産者のコメをこそ、食べてほしい。

 

最後は恥も外聞もなく、本音で迫ってしまった。

僕も焦っているのかもしれない。

 

彼らの、大地を這う営みとともにある美しい風景を、

可視化したい。

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コメ展は終了しても、田んぼスケープは続けます。

最後に竹村さんが力強く宣言する。

でもって、たくさんの生産者に投稿を促してくれと、

返す刀で僕に宿題を突きつけるのだった。

やるしかない、か。。。

 



2014年6月11日

進めよう! 地域がつくる自然エネルギー社会

 

6月に入って、少々気持ちの落ち着かない状態になってしまっているので、

前回のブログ以降の動きを手短に辿ることでお許し下さい。

 

「ご当地エネルギー協会」 設立で盛り上がった一週間後の

5月31日(土)、場所は同じ 「Daichi & keats」 にて、

「大地を守る会 自然エネルギー食堂」

なる企画が催されたので参加する。

主催したのは 「顔の見えるエネルギーコンペ事務局」 のスタッフたちで、

すでに 「大地を守る会の活動レポート ブログ大地を守る」 にて

レポートされているので、詳細はそちらに譲りたい。

 

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第一回のテーマは 「地域がつくる自然エネルギー社会」。

前半は、持続可能なエネルギー社会に向けて、

現在の流れや方向について学ぶ。

講師は、 NPO法人環境エネルギー政策研究所の古屋将太さん。

 

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後半は交流会。 

僕がこの会に出なければと思ったのは、二人の生産者に会うためだった。

大内督さん(下写真右) と近藤恵さん(同左) 。

昨年実施した 「顔の見えるエネルギー・コンペ」 で

最終選考まで残った

「二本松有機農業研究会」(福島県二本松市) のメンバーだ。

 

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支援先としては選ばれなかったのだけど、

提供した奨励金(50万円) をもとに、実に精力的に各地を視察し、

学んできた。

二人がいま考えているのは小水力発電なのだが、

水系利用となると地域の理解と協力が必須となる。

「なかなか道のりが遠くて・・・」

と大内さんは笑いながら語る。

そこで長野でのミニ水力発電の成功例を紹介し、

見に行ってみないかとお誘いした次第である。

 

二本松有機農業研究会自慢の有機人参ジュースが

ウェルカムドリンクとして配られ、

研究会の野菜を使ったオードブルやサラダ、玄米おにぎりなどを頂く。

二人はテーブルを回りながら参加者と語り合う。

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時間はかかっても、何とか形になるまで

二人を応援し続けたいと思う。

 

二日前の 5月29日には、喜多方で会津電力(株) による

雄国太陽光発電所の建設が始まった。

敷地面積 2万 6千 ㎡、太陽光パネル 3740枚、

最大出力 1000kW(1メガワット)、年間売上見込みは約 3400万円。

冬季の積雪対策のため地上約 2.5メートルの高さに設置する。

自然エネルギーの体験学習施設も併設予定である。

 

起工式の安全祈願祭で、

かま入れをする佐藤彌右衛門社長。

 

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(福島民報ニュースから)

 

続いて市長や議員さんたちによるくわ入れが行なわれ、

雪が降る前の10月末には、雄国山麓にメガ級の発電所が出現する。

後発隊のためにも成功させなければならない。

彌右衛門さんのほんとうの戦(いくさ) はこれからだ。

僕の 「種蒔人」 消費量も上がっていくばかりである。

 



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