2014年6月12日

コメびとたちと語る、田んぼの未来

 

続いて 6月5日(木)。 

六本木・東京ミッドタウン内 「21_21 DESIGN SIGHT」 で開催中の

コメ展」 にて、

トーク・セッション 「田んぼの未来 2」 が開かれた。

 

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コメについて考える 「コメ展」 だから、

生きたコメづくりの現場につながる 「窓」 をつくりたい・・・ 

 

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コメづくりの現場が今どうなっているのか?

これからどんな日本、どんな未来を創っていくのか?

それぞれのコメづくりに賭ける思いをたっぷり語ります。

 

というわけで、竹村さんが表現する 「コメびと」(生産者) を 4名用意して、

ナビゲーターとして参加させていただいた。

 


平日の夕方なのに、けっこう人が入っている。

しかも六本木という場所柄もあってか、外国人が多い。

「和食」 が世界無形文化遺産に登録されたことも影響しているか。

しかし異国の人たちの関心とは裏腹に、

この国の人たちにとってコメは、ただの一食材でしかなくなってしまっている。

いろいろ思いを喋るより、

彼らの感想が聞きたくなってくる。

 

東京のど真ん中で、

懐かしい風景に見入る人たちがいる。

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午後 5時。

会場内の一角に用意されたイベント・スペースにて、 

セッションの開幕。

お呼びした 4名のコメびとは、

 ・千葉孝志さん(宮城県大崎市、蕪栗米生産組合代表)

 ・菅原専一さん(山形県庄内町、みずほ有機生産者グループ代表)

 ・橋詰善庸さん(石川県加賀市、加賀有機の会代表)

 ・浅見彰宏さん(福島県喜多方市、福島県有機農業ネットワーク理事)

 

千葉さんの到着が遅れてハラハラさせられたが、

何とかギリギリ間に合った。

こじんまりとしたトーク会場に、

それでも50人くらいは集まってくれただろうか。

僕は前に座らせられたので写真は撮れず。

終了後、「21_21~」 のスタッフ仁お願いして送ってもらった。

こんな感じ。

 

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まずは二人ずつ前に座ってもらって、

簡単な自己紹介にご自身の栽培方法、コメづくりにかける思い、

地域や環境との関わりなど、自由に語ってもらった。 

 

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山間地の堰の保全に取り組んできた浅見さんにとって、

田んぼとはイコール  " 水の道 "  である。

「 コメ展の展示は素晴らしいと思ったけど、

 " 水路 "  への視点が弱い気がしました。」

ズバッと切り込んで、

水路こそが地域を守っているのだということを、

山都の棚田風景を紹介しながら語ってくれた。

この価値を都市(まち) の人たちと共有するために、

彼の仕掛けはこれからも続く。

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菅原専一さん。

「 田植えがひと段落して、中丁場(なかちょうば、ひと休みの意味)

 のところで呼んでいただいたので、来ることができました。

 お陰で素晴らしい展示を見ることができました。

 俺たち百姓は現場にいながら、こんな観点でコメを考えてなかった気がする。」

 

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彼のコメづくりは合鴨農法である。

しかし食欲旺盛なカモを田んぼに放すと虫も草も片っ端から食べちゃうので、

生物多様性は貧しくなる。

それは気になるところではあったのだが、

人手がなくなってきて、昔の結のようなつながりも失われ、

やむなく選んだのが合鴨農法だった。

しかし、それでも虫や草は毎年豊富に現われてくれて、

土づくりを土台とした有機農業の力を実感している。

 

「それでの~」 と庄内弁で訥々と語る専一ブシが、僕は好きだ。

「中丁場でちょうどよかった」 と言いながらも、

やっぱり田んぼが気になる専一さんは、忙しなく夜行バスで帰るのだった。

 

宮城・大崎平野の田尻地区で、

渡り鳥と共生するコメづくりを長く続けてきた千葉孝志(こうし) さん。

野生動物にとって必要な湿地帯として、

世界で初めて田んぼがラムサール条約に登録された場所である。

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千葉さんは冬季湛水(冬水田んぼ) にも取り組んできた。

しかも、警戒心の強いガンたちが一ヶ所に集まって田んぼを荒らさないよう、

ねぐらを分散させるために、あえて場所を離して水を張る。

冬に水を入れられない所では、井戸も掘った。

そのポンプアップの動力は自然エネルギーを使いたいと、

太陽光パネルも設置 した。

コメに付加価値をつけるためではない、渡り鳥のために。

彼にとって渡り鳥との共生は、自然保護といった観点を超えていて、

命のつながりそのもののようだ。

この星を守るための当たり前の百姓仕事なんだと、僕には聞こえてくる。

 

石川・加賀温泉から駆けつけてくれた

橋詰善庸(よしのぶ) さん。

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橋詰さんが有機栽培に転換したのは、

自ら体験した薬害がきっかけである。

「 こんなものを使って食べ物を作っちゃいけないんじゃないか、

 と思いましてね・・・」

優しく笑顔で語ってくれるのだが、

以後10数年の苦闘はおそらく他人には分からない。

草に覆われ、まったくコメが取れない年もあった。

それでもようやく水田らしくなってきたと思ったら、

白鳥が舞い降りるようになった。

今では千羽のハクチョウが橋詰さんの田んぼにやってくる。

 

後半は4人に前に座ってもらって、

竹村さんはじめ会場の方々との質疑。

ぼくもついつい喋ってしまう。

 

彼らは安全なおコメを作っているだけではない。

国土を守ってくれているのだということ。

しかも石油に依存した近代農業ではなく、持続可能な生産方法を追究しながら。

その結果として生物多様性が育まれ、

暮らしの土台が安定していくこと。

その世界を維持することは難しいことではない。

お茶碗一杯 30~40円 で食べてくれさえすれば守れるのだということ。

社会がおコメの値段を生産コストだけで勘定するようになり、

米価が下がれば下がるほどに、この秘められた価値は失われていく。

外部経済は外部不経済となり、社会は貧相になっていく。

こういう生産者のコメをこそ、食べてほしい。

 

最後は恥も外聞もなく、本音で迫ってしまった。

僕も焦っているのかもしれない。

 

彼らの、大地を這う営みとともにある美しい風景を、

可視化したい。

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コメ展は終了しても、田んぼスケープは続けます。

最後に竹村さんが力強く宣言する。

でもって、たくさんの生産者に投稿を促してくれと、

返す刀で僕に宿題を突きつけるのだった。

やるしかない、か。。。

 



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