戎谷徹也: 2008年10月アーカイブ

2008年10月31日

反省・・・

このところのお祭り的イベント続きで、持病の腰痛が再発。

一日ダウンして (させてもらい)、火曜日から復帰するも、

いろんな業務調整やら溜まったメールの処理やらに追われる始末。

29日に予定していた、汚染米に関する集まりもキャンセルして、宿題に向かう。

もちろん日常の仕事のなかにもいろんなネタやトピックはあるんだけど、

拾う間もなく次へ次へとやっつけていると、何も書けなくなる。

そんな合い間にも飲み会などあると、これがなぜか、つい深酒してしまう。

かくして、10月は低調に終わってしまった。

 

日曜日の出店お手伝いのご褒美に、おきたま興農舎の小林亮さんから頂いた

「もってのほか」(山形特産の食用菊) をつまみながら、暫し反省の夜を過ごす。

なんでかなあ。 腰が痛いよう、とか言いながら頑張っちゃうのよね、まったく。

生来の貧乏性だな・・・

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「もってのほか」-正式名は 「延命楽」 。 食用菊の王様とも言われる。

その名の由来は、「もってのほか美味い」という説と、

「おそれ多くも天皇の御紋である菊を食べるとはもってのほか」

からきたという説があるらしいが、私としては後者に軍配を上げたい。

偏屈の多い山形県人のこと。 「いやは、畏れ多くもよぉ、~とはもってのほかだな」

とか言いながら、ザクザク食っている姿が、っぽい感じがする。

シャキシャキして、味は淡白。 

面倒なので軸もいっしょに茹でちゃったが、やっぱり花びらだけの方がよかったか。

生産者が 「ホウレンソウと一緒に和えるといい」 と言ってたな。

たしかに。 次はそうしよう。

 

あ~あ。 今週届くのを心待ちにしていた 『あいづ山都の若者たちの野菜セット』 も

限定数を超えるオーダーがあり、職員は早々にカットされてしまった。

仕方ない、というより喜ぶべきことなのだけど。

 


水をやらずに育てた、ギュッと甘みと酸味を詰めたようなミニトマト。

チャルジョウ農場・小川光さんが手塩にかけたオリジナル品種-「紅涙(こうるい)」。

酸味の感じがとてもいいのだ。

 

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食べたかったなあぁ・・・ 

 

しかし、このセットにもクレームが発生した。

予告では 「これら8品目の中から5品目入ります」 と書いておいたのだが、

届けた箱に入れたチラシに8品目の作物紹介を載せたところ、

「チラシに書いてある8つが入ってない!」 とお怒りの電話が入ったのである。

会員サポート部署からは、「チラシに追記して作り直せ!」

さすがに今からそこまではできないと、お届けする会員への請求書に、

入るのは予告どおり5品目である旨のメッセージを入れてもらうことで、お許しを願った。

 

ところがしかしながら・・・である。 

そんなドタバタなどまったく知る由もなく、実際には、6品目入っていたのである。

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                     (会社に届いた現物見本から)

5品目との約束ではあったが、彼ら ( 「あいづ耕人会たべらんしょ」 の若者たち) は

喜んでもらおうと、もう1品目、余分に入れてくれたのだ。

この心づかいは、彼らのメッセージでもある。

大地を守る会とのつながりを、彼らなりに大事にしようとしてくれたことに、

感謝したいと思う。

来年はもっといい形でできるよう、しっかり考えなければ。

 

慌しい収穫の秋のイベントは峠を越したけど、

11月は11月で、シンポジウムやフォーラムが続く。

腰をさすりながら、整理できていない机の上を眺め、

ついに11月3日の秋田行 (ブナを植えるつどい) もキャンセルする。

電話の向こうから、黒瀬正さん (ライスロッヂ大潟) の高笑いが返ってくる。

「ハァーハッハァ! 腰が痛いてか。 そらあかん(使いものにならん)わ。 まあお大事に」

くそッ、口惜しいィィィ・・・・・

 



2008年10月27日

フードアクション ニッポン

 

土と平和の祭典から1週間後の日曜日、

今度は東京・丸の内でのイベントに参加する。

農水省が、食料自給率1%アップを目指して展開する

フードアクション ニッポン」という広報戦略の一環として開催された、

「EAT JAPAN (日本を食べよう) in Tokyou Marunouchi 」。

ここに出店した山形・おきたま興農舎 (東置賜郡高畠町) の応援にかり出されたのだ。

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『美味探求 山形美味 (うまい) 屋 』 と銘打って、

興農舎自慢のお米にお餅、野菜に果物が並べられる。

 

どうやら東京・丸の内仲通りの歩行者天国を利用しての出店に、

代表の小林亮さんも、要員不足を感じたらしい。

「いやぁ、段取りもちょっと不安でよ、ここは大地の力を借りたいんだぁ。」

しかし、日頃から農政には手厳しい亮さんが、どういう風の吹き回しなの。

 


だいたい自給率がここまで落ちてしまったのは、農業政策によるところが大きいだろう。

それが何よ、自給率向上国民運動とか称して17億円もの税金を使ってさぁ。 許せるの?

「そうなんだけども、何とか山形から出て欲しい、としつこく頼まれてよ・・・・・」

 

亮さんもちょっと歯切れが悪い。 人がいいというか。

しかしそんな亮さんからのSOSを受けてやってくる俺たちも、

まあかなりのお人よしではあるけど。

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とか何とか言っても、いざ蓋を開ければ、ごちゃごちゃ御託を並べている暇はない。

山形人に成りきって、

ここは東京の人たちに一人でも多く、美味しい国産農産物を食べてもらおう。

ガンガン行くぞ!

 

こんにちわぁ。 山形は高畠町からやってきましたぁ。

有機栽培のお米にお餅、無農薬の野菜いろいろ、美味しいリンゴにラフランス。

どうぞ食べてみてくださ~い。

 

新米のコシヒカリにリンゴの試食で~す。

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反応はかなりイイ。

 

試食販売に力を発揮したレンタルのキッチンカーに女性陣たち。

亮さん(左) -いやぁ、俺は何もすることねぇな。楽させてもらったなぁ。

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朝11時から夕方の4時まで、途中30分ほどの休憩だけで、

声を出し続け、野菜と果物をさばききる。

土・日と4名ずつの応援部隊も頑張ってくれて、

少しは見直してくれました? 亮さん。 

 

土曜日には娘の和香子ちゃん無事出産の連絡もあって、

夫の温さんは、片付け早々、飛んで帰ったのでありました。

おめでとうございます、お爺ちゃま。

 



2008年10月20日

2008種まき大作戦-土と平和の祭典

 

10月19日、日曜日、晴れ。

日比谷公園にて、『2008種まき大作戦 土と平和の祭典』 開催。

小音楽堂前の噴水広場にテントを並べた 「農家市場」 に、大地を守る会も出店。 

大勢の来場者を前に、野菜・果物の試食販売でPRする。

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子どもたちの人気者、短角牛のたんくんも活躍。

 


天気もよく、日比谷公園という場所もよかったか、出足好調で、

野菜、果物はどんどん売れてゆく。

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今回、出店に協力してくれた生産者は、

新農業研究会(青森)、瀬山農園(埼玉)、さんぶ野菜ネットワーク(千葉)、

東京有機クラブ(東京)、長崎有機農業研究会(長崎) の方々。

 

青森から駆けつけてくれた新農研の若者たちです。 (左端は大地職員)

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今回は、二度の雹にやられても立派に育ったリンゴを持ってきました。

「ちょっと傷があるけど、食べてやってください!」

 

宅配や大地を守る会取り扱い食材の説明をするスタッフ。

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e08101917.jpg  (photo:Onozuka)

 

なんと午後2時過ぎには、すべて完売!

最後はブースのオブジェとして用意した " 畑の里芋たち " まで、奪われてしまった。 

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去年の記憶で、夕方にやってこられた方々には、何にもなくて、

まことに申し訳ありませんでした。

去年は午前中が雨模様で、夕方には叩き売り状態でしたからねぇ。

 

大地を守る会コーナーの脇で談笑する、歌手の加藤登紀子さんと藤田会長。 

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33年前には想像もできなかった有機農業の広がり。

世間では農業の衰退とか言われているけれど、

農に関心を寄せる若者たちは間違いなく増えている。 

ムーブメントの風を感じながら、

草創期を一緒に歩いた二人は、さてどんな会話を交わしたんでしょう。

 

とにかく、たくさん集まってくれました。 感謝します。

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種まき食堂のコーナーでは、

中津ミートさんのフランクフルトに、北浦シャモの 「古代焼き」 で勝負。

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北浦シャモの下河辺さんは息子さんを連れてやってきた。  

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「どう、エビちゃん。 いい男だろう」

 ほんとだ。 よかったねぇ、お父さんに似なくて・・・・・

 

有機農業を目指す人、来たれ。

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小音楽堂では、 

各地で活躍する若者たちのトーク。

有機農業運動の第2世代も、逞しくなってきた。

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ライブステージでは、ゆったりと芝生に座って、

家族でコンサートやトークを楽しむ。 

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右にあるのは、竹で組んだテント。

 

昔の道具を使っての脱穀や籾すりの実演。 その向こうは竹馬づくり。 

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ステージで歌う祭典の実行委員長、Yae さん。 

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お父さん(藤本敏夫さん、前大地を守る会会長)の遺志を継いで、

千葉・鴨川の農場-「自然王国」 で農業もやっている。

二人目の子どもも生まれた。

今日はお母さん (登紀子) さんとのジョイントもあったようだが、

こちらは絶え間ないお客さん相手に、ステージはほとんど見れなかった。

 

土と平和 ・・・・・は重なっている。

種をまこう、みんなで。  耕そう、未来を。

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東京のど真ん中で、たくさんの人たちと手をつないだ一日でした。

 



2008年10月18日

稲作体験米を食べる会

-という集まりが開かれる。

大地を守る会六本木分室の会議室を解放して行なわれた。 

今年の 『稲作体験』 の田んぼで獲れたお米を食べながら、体験作業を振り返り、

みんなで感想を語り合う。 稲作体験19年の歴史で初めての企画である。

これも実行委員会が充実してきたからこそ、できることだね。 

体験田の地主である佐藤秀雄さんに、田植えから協力してくれた綿貫直樹さん、

 『いきもの博士』 の称号がすっかりはまった感のある陶武利さんも参加してくれて、

アットホームな雰囲気で、楽しく行なわれた。

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田植えから稲刈りまでを振り返るスライドショーで、思い出にひたるひと時。

 


映像を見て、田んぼに帰ったような気分になって、

みんなでカードに感想やメッセージを書いてもらう " 思い出コラージュ " タイム。

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楽しかったよ !!

豊作おめでとう。

また行きたい。 

カエルや虫の絵を描いてくれた子もいる。

 

綿貫さんが、さんぶ野菜ネットワークさんが作ってくれたアルバムを持参してくれた。

懐かしそうに見入る親子。 

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話し込む、生産者 (右:佐藤秀雄、中央:綿貫直樹) と消費者。 

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ご飯のお供に用意したのは、塩、梅干、海苔、佃煮、お漬物・・・・・

これはこれで大地を守る会で扱っている品々の味見や比較ができる格好に。

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お味は、いかがでしょうか。

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さすが新米とあって、通常の水分量では多かったか、

柔らかく炊き上がってしまった。

炊飯器がレンタルということもあって、ちょっといつもと加減が違ったとの弁も。

 

でも皆さん満足されたようで、主催者としてはひと安心。

実はね・・・内心、ドキドキしてたんですよ。

 

こんなラベルを貼ってお届けします。

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新米ですので、お水は若干少なめがよろしいようです。

 

食べ終わったところで、ゲストのお三方を囲んで、

田んぼでの交流会では聞けなかった話や質問を出し合う。 

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米作りの話から、野菜へと、はては子どもの頃の風景へと、

どんどん話が広がっていく秀雄ワールド。

陶さんには、子どもたちから、「いつからハカセになったんですか?」の鋭い質問。

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・・・・・え~と。 実は小学校2年の頃から虫ハカセとか言われてました。

休み時間には、いつも水路に行っては虫を眺めてました。

算数の時間に机の上を水浸しにして、カタツムリの動きをずっと観察してたことがあります。

あれを許してくれた先生がいなかったら、僕は今頃・・・・・(ホントだよ、良かったねぇ。)

いい (忍耐強い?) 先生に出会えるってことは、とてもシアワセなことだ。

しかし、君たちが真似して、どうなっても、オラ知らないからね。

 

逆に直樹さんから、消費者の方々に質問。

「体験田での、一番の思い出はなんですか?」

答えは - 裸足で田んぼに入った時の感触、あれが一番だった。

 

この回答は、とても嬉しいものだ。

実は、こんなことを言う専門家がいるのである。

-昨今、米作り体験とか称して、手で田植えをする体験教室が流行りだが、

 時代錯誤もはなはだしい。 今の農業は田植え機で植え、コンバインで刈ってるんだから、

 やるならそういう今の時代の農作業を教えるべきだ。

 だたの牧歌的、懐古趣味的な体験では、間違った現実を伝えることになりかねない。

 

こういう人は、ただ机上で教育論を考えているだけで、

農業体験の意味や価値が、どうもお分かりでないように思う。

いや、本来当たり前にあるべきなのに忘れてしまったもの、

僕らが取り戻さなければならないもの、について考えてないのだ。

 

農業の土台とは、土であろう。 実際に土に触れることが大切なのだ。 

そして虫や雑草とも、彼らの目線で眺めたり触れ合ったりすることで、

生態系 (生命のつながり) を体感し、

農業の持っている豊かさや魅力や大切さへの想像力が養われる。

田んぼが愛おしくなった、の感想以上に価値ある言葉があるだろうか。

そこから生産と消費が紡ぎ直されてゆく。 今の時代に喪われたものを・・・

僕は農家でもなく農学者でもない。 

これは稲作体験19年の経験からくるものでしかないけど、

延べにして2千人を超える人たちを田んぼに案内して得た確信ではある。

この確信がなかったら、続かなかっただろう。

詳密な技術論やコンバインの操作は、本気になってからでいいんだよ。

 

たった一ヶ月ぶりの再会なのに、

とても懐かしくて、ちょっと気恥ずかしくもある同窓会のような 「食べる会」 だった。

来年もゼッタイ参加します、という感想は、

抽選になってしまっている昨今、事務局にはつら過ぎるものでもある。

 



2008年10月16日

遺伝子組み換えで食糧増産というロジックについて

 

ベトナムで農村開発支援に携わるNGOのスタッフであるⅠさんから

しばらく前に届いたメールが気になっている。

ベトナムでも、遺伝子組み換え (以下、GM) 作物が大規模に推進されようとしているらしい。

彼女が知らせてくれた報道によれば、

「2020年までに作物栽培面積の30~50%で、GM作物が栽培されることになる見込み」

とのことである。

3分の1から半分ということは、その影響は国土全体に及ぶ可能性がある。

凄まじい数字、というか国家方針だ。

この情報だけでは栽培される作物までは分からないけど、

考えられるのは大豆、ワタ、トウモロコシ、ナタネくらいしかなく、

それでこんな数字になるのか、と思う。

2020年までの見通しなので、コメのGMが実用化される見通しまで

視野に入れているのかもしれない。

まあここで不確かな想像をしてもしょうがないけど、

食糧の増産と貧困の撲滅といった文脈でGM推進が語られているようなので、

やっぱりこの論には反論しておかなければならないと思う。

 


まずはっきりさせておかなければならないのは、

GM技術そのものが食料を増産させるわけではない、ということだ。

「収量が上がる」 仕組みとは、もともと収量の高い品種を選んで、

それに除草剤耐性とか殺虫成分をGM技術で導入しているに過ぎない。

つまりGM技術を使わなくても、元の品種を植えるだけで収穫量は上がるのである。

GM作物によって作業効率や歩留まりを上げるということはあるかもしれないが、

これで食糧増産と声高に叫ぶというのは、

結婚した相手の血統でおのれの能力をPRしているようなものだ。

 

また品種の特性というのはプラスもあればマイナス面もあって、

収量が高い一方で、存在するはずのデメリットの部分は何も語られていない。

その品種がベトナムという高温多湿な地域に適するかどうかは、

慎重に吟味されなければならないだろう。

 

GM技術で収量が上がる仕組みにはもうひとつあって、

機械で除草しなくてすむようになるので、高密度栽培が可能になる。

それによって単位面積当たりの収穫量が増えるという理屈だが、

これにも負の側面があって、高温多湿地帯では病気の発生確率も高くなるように思う。

密植が何をもたらすか、農家なら想像がつくはずだ。

農民に判断させるだけの、正確な事前情報が必要である。 

 

いずれにしても、単一品種・単一技術に依存することは、

天候の影響によっては逆に収穫が壊滅的になるリスクを抱えることを意味する。

多様な品種が植えられ、その地域で育んできた多様な技術が生かされることが、

最終的には安定を支えていることは、考慮されなければならない。

ましてや地球の気候変動はさらに激しさを増しているのだから。

 

またGM作物は、けっして貧困の撲滅にはつながらない。

むしろ逆に貧困を加速させないか、丹念にシミュレーションすべきだろう。

GMは企業の特許技術であるから、農家は自分たちで種を保持することができず、

毎年々々買い続けなければならない (保持すれば訴えられる)。

種はその地域で更新されてきたものより遥かに高価である。

加えて栽培プログラムは化学肥料と農薬を前提にしているわけだから、

農薬も肥料も一緒に買い続けなければならなくなる。

しかもそれらは全部同じ会社であったりするので、

農家にとって、収穫して得たお金が特定の企業に吸い取られる仕組みが出来上がる。

加えて種子の交配 (地域の遺伝資源が汚染される可能性) は、起きる。

土壌や環境へのリスクも視野に入れておかなければならない。

化学肥料が高騰していることはご存知だろうか。

 

大規模な面積で大型機械を使ってビジネスとして商品作物を作る農業をやるのと違って、

地域自給的な暮らしをベースにしてきたところにGM作物が入り込むことが何をもたらすか。

GMとは、食品としての安全性論争以前に、

農民や地域の自立性に、そして生命活動を安定させる根幹である生物多様性に

深く関わる問題なのだ、というのが僕の認識である。

ちなみに食品としての安全性論争について言えば、それは 「不確かである」 に尽きる。

食べて死ぬわけではなく、すぐに健康危害が起きるわけでもないので、

病気とか異常とかとの因果関係は証明不可能 (安全の強弁が可能) である。

問題は、GM作物はどんどん 「進化」 という名の複雑化が進んでいて、

たかだか10年程度で、自然界の必然である耐性とのたたかいが生まれ、

2種・3種の形質の組み合わせへと進んできていることだ。

それらは 「実質的同等性」 という造語によって庇護され、

たいして安全性の実験データも要せずに審査をパスしている。

将来への影響は 「誰も分からない」 。

分からない以上、分からないものは慎重に扱おう、という姿勢に立つ者は必要である。

 

最後に、貧困や飢餓の問題について言えば、

これはGMで解決できるものでは、けっしてない。

食糧問題の本質は、あるところでは大量に捨てられていて、ないところでは飢えている、

という分配の問題である。

GM技術は、さらに格差を広げる可能性のほうが高い、と僕は睨んでいる。

 

それにしても、ベトナムでGMOの推進とは・・・・・

彼らはどこから種や農薬を買うことになるのだろうか。 

かつてベトナム戦争で、森林に大量に撒かれた枯葉剤 (除草剤)、

猛毒ダイオキシンを含んだ2・4・5-Tを開発した、モンサント社からだろうか。

だとすると、この皮肉は、とても悲しすぎる。

 



2008年10月11日

三番瀬フェスタ'08 船橋港まつり

 

今日は船橋漁港 (千葉県船橋市) で港まつりが開催される。

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朝からあいにくの雨で、出足がそがれた格好になったけど、

お昼過ぎには青空も出てきて、

船橋市民や魚好きなどで、港はいつもと違う賑わいを見せる。

大地を守る会も実行委員に加盟して、専門委員会「おさかな喰楽部」を中心に出店した。

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おさかな喰楽部の強みは、なんと言っても水産物生産者たちの結束力である。

今日も、シラスの岩崎さん、天日干しの島源さん、佃煮の遠忠食品さん、

さらには九州から海苔の成清さん、宮城からは遠藤蒲鉾店さんと、

全国から助っ人が駆けつけてくるからスゴイ。

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岩崎さんのしらす丼を食べて、生ビールを飲んで......

今日はスミマセン、久しぶりの非番なんで、楽しませてください。

獲れたてのイワシをチョー格安でゲット! こういう祭りならではの楽しみだね。

 

こんな展示もある。

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対岸に見えるのは、船橋ららぽーと。

あそこでショッピングを楽しむ人たちは、眼下で魚が水揚げされていることを、

そして海の大切さを訴えている人たちが暮らしていることを、知ってくれているだろうか。

 

ラムサール条約への登録運動を進める人たちの屋台の脇では、

三番瀬の生き物に触れてもらおうと、ミニ水族館も。

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三番瀬という干潟地帯は、ここで生きる漁民にとっては、生命線のような財産なのだ。

だから一人でも多くの市民に、 魚に、港 (漁業) に、海に、親しんでもらい、

少しでも地球環境の変化に関心を抱いてほしいと願っている。

" まつり " 自体が、漁民から市民 (消費者) への、

切として豪放なラブコールなんだと言える。

 

まさにそんな剛毅さとセンシティブさをあわせ持ったロックバンドの登場。

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" FISH&PEACE " をスローガンに掲げる、

究極のフィッシュロック・バンド (そんなジャンルは聞いたことがなかったが・・・)、

その名も 『 漁港 』 (正式名称は港の字が左右逆さま)。

リーダーの森田釣竿さんは、実際に浦安で魚屋を営む傍ら、バンドを率いて興行する

れっきとしたプロである。

魚を食べることと地球がつながっていることをロックで表現しようとしている。

しかも格好に似合わず (失礼。こういう人ほど、と言うべきか)、シャイに訴えている。

歌の最後には、マグロの頭部をさばいて振る舞うパフォーマンスもあるので、

魚や海をテーマにした集まりなどあれば、ぜひ一度呼ばれてはいかがでしょうか。

さかなくんとは180度違う汗臭いキャラではありますが-

 

気分を変えて、ヨットで海に出る。

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船橋港から東京湾へ。

 

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船橋の港からみれば沖にも見えてしまう、三番瀬。

写真はカキ殻が堆積してできた、通称 " 貝殻島 " 。 ここは本当に豊饒なる浅瀬なのだ。

 

東京湾。

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経済発展という名のもとに翻弄されてきた海。

どっこい、生きている。

 

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海水浴場に行っても、本当の意味での " 海と暮らし " のつながりは実感しにくい。

港においでよ。

怖そうに見えて、実はシャイで心優しい海の男たちが待っている。

 

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2008年10月 7日

10月19日は 『土と平和の祭典』 へ

 

先週から4日ほど秋日和らしい好天の日が続いてくれて、

気持ちよく収穫祭を終えて帰ってきたら、一転して秋霖のような日々に。

どうにも続かないですねぇ、天気が。

 

集まってきている産地からの情報も、先行き不透明どころか、

明らかにこれからの野菜不足を予見させていて、

農産仕入担当職員の間にも "かなりヤバイ" 感が漂ってきている。

8月のゲリラ豪雨攻撃から9月の断続的に続いた雨や低温の影響で、

関東各産地の作業と生育が遅れている。

長野・野辺山の川上村では、9月中旬に霜が降りた。

冬が早いかも・・・・・との連絡である。

雨の中での収穫-出荷をお願いするケースも増えていて、

それは品質にも影響してしまう。

 

先週の理事会でも、千葉・山武の富谷亜喜博さんが言ってた。

「千葉の北総台地あたりでは、秋冬の人参は7月25日から8月10日の間に蒔かないと

 モノにならない。 なかでも有機でやるには8月の1日から10日の間に限られる

 (7月中に蒔くと生育途中に病気が発生するらしい) 。

 それが8月5日の豪雨で流されて、天気や畑の様子を見ながら、何とか

 7-8日に蒔き直したけど、そのあとも5回、ゲリラ豪雨にやられたんだよね。

 9月も良くなくて、10月の回復がポイントだけど、それでも相当な収穫減は必至だね・・・」

 


「普通の年がなくなった」 と生産者から言われるようになって、もう何年になるだろう。

温暖化、温暖化と、それだけのせいにはしたくないんだけど・・・・とも。

しかし、たしかに作りづらくはなっている。

 

気候変動は、おそらくとどまらない。 いやそれどころか、激しさを増すだろう。

加えて、グローバリズムによる輸入農産物の増加は外来害虫の増加なんかも招いていて、

農業生産の困難さに追い討ちをかけている。

厳しい時代である。

 

一方で、エネルギー戦争 (と勝手に言ってますが) の深刻化と、

食糧・資材の高騰が進んでいる。

様々な側面のつながりを俯瞰して、見極める必要があるのだが、整理しきれない。

メディアに登場する論評にしても、どれも一面的な感じがして、スッキリしないし。

 

そして、いろいろと堂々巡りしながら、いつもたどり着くひとつの確信は、やっぱり

 「これからが本当の有機農業の時代」 である。 

国が呪文のように唱えている農地の集約化や規模拡大、国際競争力の強化といった

グローバリズムと国際格差を前提とした政策に振り回されるのではなく、

環境との調和・地域資源の循環を基本に据えた、持続型農業に未来は託されている。

世界は化学肥料の枯渇の段階へと進んできているのだから。

 

実は、有機農業推進法に後押しされて、各地の有機農業先進地が

若者たちの参加 (新規就農) を呼びかけているのは、そのことと無関係ではない。

耕作放棄地の増加といった危機感が反映していることもあるけど、

新しい血を吹き込んで、これからの地域づくりを考える主役になるところまで、

有機農業は歩んできたのだ。 

 

まあ、目の前の不測の事態に、やれるだけの努力はしなければならないとして、

ちょっと気分を変えて、未来志向型の呼びかけをさせていただければ-

  

先日報告した、会津・喜多方の若者たちの野菜セット販売の話では、

試験的ながらも実現にこぎつけました (会員の皆さんには今週チラシが入ってます) 。

山間地で頑張る若者たちの、ささやかな、しかし思いいっぱいの野菜をお届けしたい。

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また、今月19日に日比谷公園で開催する 『土と平和の祭典』 でも、

大地を守る会のブースで、新規就農募集の産地を紹介する予定で準備を進めています。

 

健全な野菜をいっぱいつくって、健全な土を守る担い手を育てたい。

耕作放棄なんて言葉をぶっ飛ばして、

どこよりも美しい村づくりで競い合う社会を、築かないか。

未来開拓者よ、来たれ!

  ・・・・・とまあ、こんなふうに希望を語ることで自らを鼓舞して、

      しんどい日々を支えているワケですが、

お時間がありましたら、10月19日(日)、日比谷公園にお越しいただけると嬉しいです。

会場は小音楽堂とにれのき広場です。

 

昨年のブース風景 (立ち止まって見ているのは実行委員長の歌手 Yae さん) 。

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今年もあちこちから生産者が応援に来てくれます。

ぜひ声をかけてあげてほしい。

 



2008年10月 5日

備蓄米-「大地恵穂(けいすい)」 収穫祭

 

10月4日(土)。 爽やかな秋晴れのもと、

福島県須賀川市の稲田稲作研究会にて、 『収穫祭』 を開催。

大地を守る会が生産者と一緒につくった米の備蓄システムも、もう15年になった。

あの  " 平成の米パニック "  の翌年から始めたんだった。

その備蓄米-生産者が名づけたブランド名が 「大地恵穂」 (品種はコシヒカリ) の

収穫を祝っての、2年ぶりの交流会である。

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春先からの天候不順もあって、ずいぶん心配させられたけど、

7月から8月上旬の好天で何とか持ち直し、その後の豪雨や低温にも耐えて、

稔りまでこぎつけた。 生産者も今年はけっこうハラハラしたようである。

 

田んぼに集ってくれた会員さんたちの顔も、一面の黄金色にほころんでくる。

これが、豊かである、ということなのだ。

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これからコンバインに乗って、収穫を体験していただきます。


挨拶いただくのは田んぼの主、前稲作研究会会長、岩崎隆さん。

どんな年でも一定水準以上の米に仕上げるワザは、経験や観察によるだけでなく、

田んぼを一枚一枚土壌分析して施肥を設計するきめ細かさにも秘められている。

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今はもう作業は息子さんに任せられるようになってきていて、少し余裕も感じさせる。

今年も 「まあまあ、かな」 。 

 

さて、コンバインに乗って稲刈り。 

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たいして面白くもなさそう、と思われる方もいるでしょうが、

いざ乗ってみると、視界の高さにスピード感もあって、けっこう迫力ある、

子どもたちも興奮する体験なのです。

 

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稲がザァーッと目の前で刈られていく様に声を上げる参加者。

生産者もちょっと得意げ。 写真左は渡辺文雄さん。 

岩崎さんに続いて早くから合鴨農法を導入して、無農薬栽培を実践した方だ。

 

刈り取られた田んぼで、今度は 「第2回イナゴとり選手権大会」 。

30分で何匹捕まえられるか。 大人もけっこう夢中になる。

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飛び跳ねるイナゴを捕まえて、最後は佃煮にして、食べる。

優勝者は、前回2位に甘んじたお父さん。 

重さにして76 (?) グラムだったか。 100匹近く捕った勘定かな、すごいね。

子どもの頃の野生に戻ったって感じですね。

 

岩崎さんの田んぼには、ドジョウもいっぱいいる。

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これも田んぼの豊かさの指標である。

 

田んぼで楽しんだ後は、ライスセンターの施設見学。

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稲田自慢の、太陽熱乾燥施設。

ここで乾燥させた後、モミのまま保管する。

 

モミを攪拌しながら、一定の水分量になるまでゆっくりと乾燥させ、

眠りにつかせる。 

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田んぼごとに土質検査をした上で肥料設計をして、

作業はオペレーターを使って計画的に行ない、

田んぼごとに食味をはかって、収穫-入荷まで管理する。

そして乾燥-保管-脱穀・精米-袋詰めまでの一貫したラインが出来上がっている。

ここまでくるのに何年かかったっけ。

毎年来るたびに設備が充実していく様は、さながら子どもの成長を見るようだったが、

今や、見上げるまでに逞しくなった青年の姿である。

 

施設内にこしらえたテスト・キッチン。

ここで色んな食べ方や新しい素材の研究をしている。 担っているのは女性陣である。

今日は、玄米の粉でつくった生地をベースに、みんなでピザを焼きましょう。

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この生地を完成させるまでに、相当な試作があったようだ。

彼女たちはすでに米粉のパンも完成させている。

 

輸入の汚染米の転売が騒がれる一方で、国内の米農家には減反の圧力がかかっている。

しかしそんな暗い世情なんかモノともしないで、

自らの力で米の消費量を上げようと、

米の多様な活用策を研究する彼ら彼女たちの表情の明るいこと。

希望はこの輪の中にある。

 

陽も落ちて、心地よい夕暮れ。

みんなでつくったピザがどんどん焼き上がる。 この石釜が今年のニューフェイスだ。

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ご飯だけでなく、コメ (稲) をトータルに使い切ることで農家を支えよう。

強い意思を感じさせる石釜の登場である。

 

お次は、伝統のお餅。

これまた初体験の餅つきに興じる。 杵ってけっこう重いでしょ。

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交流会には、会津・喜多方から大和川酒造店の社長、佐藤弥右衛門さんも

「種蒔人」を持参してこられ、盛り上がる。

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そうそう。 「種蒔人」の原料米、美山錦も無事収穫され、しっかりと保管されていました。 

 

最後に、女性陣に感謝。

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地元食材を使った料理の数々、どれもホントに美味しかったです。

すっかり幸せな気分に浸りました。 ご馳走さまでした。 

 

夜は近くの芹沢温泉に泊まって、翌朝、解散。

帰り際、最後まで残っていた方々と、記念に一枚いただく。

なんか、みんな楽しそうだね。

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黄金色に輝いた田に、素直な気持ちになって 「今年もありがとう」 と言って帰る。

まったく息が詰まりそうな、世知辛い世の中になっちゃったけど、

大地は変わらず大らかに、惜しみなく実りを与えてくれる。

この田園にこそ農民たちの誇りがあって、

それがどっしりと生きていることがどんなに救いだろうかと思う。

ゼッタイに荒れさせてはならない。

そして、食を信頼でつなぐ -このテーマに生きていられることを、私も誇りに思おう。

昔よく歌った 『わが大地のうた』 (詩:笠木透、曲:田口正和) の一節が蘇る。

 

    この土地に 生きている 私の暮らし

    私に 流れる 人たちの歴史 ・・・

 

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    この土に 私の すべてがある

    この国に 私の 今がある

 

    いくたびか 春を迎え

    いくたびか 夏を過ごし

    いくたびか 秋を迎え

    いくたびか 冬を過ごし

 

    この国の 歴史を 知ってはいない

    この国の 未来を 知ってはいない

    けれども 私は ここに生まれた

    けれども 私は ここに育った

    

    私がうたう 歌ではない

    あなたがうたう 歌でもない

    わが山々が 私の歌

    わが大地が 私の歌

 



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