戎谷徹也: 2011年2月アーカイブ

2011年2月24日

『種蒔人』 新酒、発売開始!

 

大地を守る会のウェブストア担当から連絡あり。

大地オリジナル純米吟醸酒 『種蒔人』

2011年産新酒の絞りたて " あらばしり " 

のネット販売を24日から始めますので、よろしく、と。

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今年は取り扱いが早いね。

東京集会の鏡割りでお披露目して、翌日から配送とは-。

大地を守る会の会員の方々にはすでに今週配布の注文書に載っていますが、

会員以外の方でも、「大地を守る会のウェブストア」 でご注文できます。

 

水と田んぼを守りたい、の願いを込めて造られたお酒です。

よろしかったら。

https://store.daichi.or.jp:443/GoodsDetail/index/itemCode/44001188

 

ご注文期間は、本日2月24日(木)午後1:30~3月3日(木)お昼12:30

の1週間のみ。

あわせて稀少な 「種蒔人の酒粕(板粕)」 も同時発売。

https://store.daichi.or.jp/GoodsDetail/index/itemCode/06301667

 

ぜひご利用ください。

めったにやらない宣伝、でした。

 

新酒完成を見届け、安心したところで、

ワタクシはまだ暫く、昨年絞りの在庫処分にかかります。

こういう気分も、まあ悪くないものです。

 

<注-上の写真ラベルは絞ったときの急造品ですので、お届け商品とは異なります。>

 



2011年2月 9日

大作さんの玉ねぎ

 

2週前の1月24日~28日、

宅配会員の方々に1枚のチラシを入れさせていただいた。 

「 緊急入荷 大作さんの玉ねぎ (慣行栽培) の販売について

 

北海道の玉ねぎの大不作によって、春までの玉ねぎがショートする。

北海道の作柄が概ね見えてきた晩秋に入った頃の、ぞっとするような報告。

それなりの余裕も持って総量で約250トンの玉ねぎを道内7産地と契約していたのだが、

はじき出された供給見込みは170トンという数字になった。

流通者の使命としては当然、肩を落としている場合ではなく、

各産地に対して契約分以上の出荷のお願いや新規の産地開拓にもあたるのだが、

僕ら(農産グループ) は、もうひとつの選択を社内に諮った。

「大作(おおさく) 幸一さんの減農薬の玉ねぎを仕入れたい。」

 

大作さんとのお付き合いは大地を守る会設立時代にまで遡る。

じゃが芋の金井正さんとは義理の兄弟で、35年より前に、

二人は互いに明かすことなく無農薬栽培に挑戦し始めた。

入社当時に聞かせてもらった話。

 

  ・・・だってね、戎谷くん。 無農薬で野菜を作るなんて言ったら、周りから何言われるか。

  そんな時代だったんだ。 だけどこんなに農薬かけてちゃいずれダメになるんじゃないか、

  と思ってね。 誰にも言えずに、こっそり一人で始めたわけさ。

  兄 (金井さん) にも言えなかったな。

  それがある日、金井から 「実は・・・」 て聞かされて、オレもだよ! となってね。

  それで大地を紹介してもらったっていきさつさ。

 

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                         (大作幸一さんと息子の淳史さん) 

 

ただ北海道の大面積をすべて無農薬でやるのは厳しい。

大作さんは耕作面積の半分を無農薬で栽培するが、

除草にかかる人手の確保や家族労働の限界から、

その半分はいわゆる減農薬栽培という形で営んできた。

しかし除草剤の使用もあって、当会の生産基準には適合しないため、

大地を守る会で仕入れることは、これまでなかった。

にもかかわらず大作さんは、たとえ他と同じ 「北海道産玉ねぎ」 として一般市場に流れる

ものであっても、できるだけ農薬を減らしたいという努力を惜しまなかった。

今は北海道の慣行栽培の約7割減である。

この姿勢は立派なものだと、僕は心底から思っている。

しかも、これによって大作さんの経営の半分が支えられてきたということは、

大作さんの無農薬玉ねぎを維持させてきた 「弟分」 のようなものではないだろうか。

 

数年前に奥様 (金井さんの妹さん) が亡くなられた時、大作さんは伝えてきた。

「少し無農薬の作付を減らしてもらってもいいかい。」

除草作業のパートさんたちを上手に仕切ってくれていた奥さんの力は大きかったのだ。

肯定も否定もできなくて、つらかった。

 

この期に及んで新規の産地をかけずり回るより (それもするのだけど)、

大作さんのこの玉ねぎを会員に問いたい。

 

しかし、、、生産基準とはイコール取り扱い基準であって、これまではどんなときでも、

足りなくなったからといって基準外のものを仕入れたことはなかった。

これは禁じ手ではないか・・・

 

迷いはなかなか吹っ切れなかったが、ここで素直に告白すれば、

この判断を下したのは単純な自問自答だった。

もしも基準内の玉ねぎがなくなったら、

もし我慢できずに次を選択するのなら、食べるべきは、

大作さんの経営を陰で支えてきたこの玉ねぎだと、お前は思っているのだろう。

仮に有機JASの玉ねぎがスーパーで手に入ろうが、

大作さんの玉ねぎを食べることが自分の果たすべき仁義だと思っているのだろう。

 

会員には欠品にして、陰で取り寄せることはただしい行ないではない。

「皆さんも、この玉ねぎを一緒に食べてくれないだろうか」 と言うべきだろう、と思った。

無農薬玉ねぎを支えるためにも。

選択の権利が残っているときに 「基準外です」 と宣言して扱おう。

無農薬の玉ねぎをできるだけ長く引っ張るためにも、

僕は大作さんの減農薬玉ねぎを食べることを明らかにしておきたい。

他の減農薬のものと区別する必要もあり、化学肥料の問題もあるので、

ここは潔く、大作さんの普段の言い方に倣って 「慣行栽培」 とした。

 

それにもうひとつ、僕をつき動かした世の中の流れがあった。

このまま自社基準の高みから眺めている場合じゃないんじゃないか、

という焦りのようなものか。

 


 

天候不順で北海道産の玉ねぎが2年連続の大不作となって、 

相場も高騰しているのだが (1月の情報で前年比35%高)、

こういうときには決まって輸入が急増する (それによって価格が安定?する)、

というのが近年の動向である。

昨年11月ですでに、前年の年間輸入量を42%上回った。

前年も不作で、その前の年に対して13%増だったので、

2年前に比べて60%輸入が増えている計算になる。

国内流通に占める割合は20%を超えたようだ。

不作を輸入で補っているうちに、世間は関税撤廃!TPP!ときた。

農協はTPP反対を唱えながら、商社と提携関係を強化している。

 

「厳しい基準」 は守りながらも、それではすまない事態が進行している。

水面下で進む土台の崩壊を、対岸の火事にしてはならない。

いや、これは対岸の話ではないワケで、大作さんには笑われるかもしれないけど、

大作さんの経営を全面的に支えるくらいの行動を起こしたい。

 

この選択と提案は、「大地を守る会の生産基準」 に胸を張ってきた者としては、

禁断の果実に手をつけたのかもしれない。

よってチラシは、戎谷の署名でお願いした。

仕入の責任者として首をかけるくらいの構えでいきたいと思ったので。

 

チラシに書いた  " セカンド・ベストの提案 "  というのも、

流通者としては当然の義務と言われるような話なのだが、

僕らにとっては初めての表現である。 狡猾と言われれば返す言葉もないけど、

大地を守る会としての 「農業を守る」 ためのひとつの提案とさせていただいた。

会社の定款である 「一次産業を守る」 に従ったとか言ってしまうと、

開き直りも過ぎるだろうか。。。

今回の提案を "考える素材" として受け止めていただけたなら、 本望としたい。

 

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札幌黄(さっぽろき) という貴重な品種を、種を採りながら守り続ける大作さんの

生き方を、食べることでもっと深くつながり、支援したい。

正しかったかどうかは、我々のこれからの仕事で証明するしかないと思っている。

ご批判はすべて甘んじて受けたい。

 



2011年2月 2日

火山灰を被った有機レタスを-

 

宅配会員の方に配布している野菜の最新情報-「ほっとでぇた」 から。

 

【レタス】 生産者- 宮本恒一郎(宮崎県)

霧島山(正確には新燃岳) 噴火に伴う降灰のため、微量の灰が付着している場合があります。

産地で水洗いをして灰を流していますが、

内部に入り込んだ場合、完全に取り除くことが難しいため、

ご使用前に流水で振り洗いをお願いいたします。

 

レタスにも同様のメッセージ・カードを入れる。

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口蹄疫、鳥インフルエンザ、そして新燃岳噴火・・・なんで宮崎ばかり、

という叫びが聞こえてくる。

宮崎県の試算によれば、噴火による野菜の被害は1億円を超す額になるらしい。

食品会社から加工用の取引を断られるケースも出ているという。

 

1月21日の日記で、産地の 「計画出荷」(こちらの注文に合わせて収穫・出荷してもらう)

に触れたけど、その要請はこんな時でもついて回る。

「大変でしょうが、レタスが足りないので、出せるようならお願いします。」

それで宮本さんは、注文に応じて、レタスを収穫しては、洗って出してくれる。

 

昔、生産者から聞かされた話を、思い出した。

「こんな雨なのに、あの人は畑に行って収穫してるよって笑われっちゃうんだよね。

 よっぽど (お金に)困ってるんかい、て言われたりしてな。」

いま宮本さんは、どんな思いで東京を見つめているだろうか。

「注文が変わらず入る」 ことを喜んでくれているなら、嬉しい。

 

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しかし、とはいえ、品質検品チェックの目線に立つと、不安はそれだけではない。 

輸送中のレタスは水を嫌う。

洗って、水分が残ったままラップすると、葉や切り口が濡れた状態になって、

傷みの原因につながる危険性がある。

今は気温が低いので大丈夫かもしれないが、、、不安は残り、

ヤバイのは結局はじくことにもなってしまう。

 

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                               (撮影:海老原康弘)

 

宮本さんのレタスは、有機の田んぼの裏作でつくっています。

したがって当然、レタスも有機栽培です。 

 

噴火に負けず・・・と言うのは簡単で、どんな言葉がいいのだろうと思案しながら、

いやどんな応援よりも、「洗って食べてるよ」 という声こそ届けたい。

切に、お願いします。

 



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