戎谷徹也: 2011年4月アーカイブ

2011年4月27日

堰さらいボランティア、今年も行こうと決めた。

 

ゴールデンウィークは過去4年、

会津・山都 (福島県喜多方市山都町) での堰さらいのボランティアに通ってきた。

今年は、こういう事態となって、迷ったのだけど、

どんな時でも明日のためにやるべきことはやらなければならないと、

腹を決めて行くことにした。

 

若い生産者グループとして3年前に結成した 「あいづ耕人会たべらんしょ」

の浅見彰宏さんからも、「遅まきながら~」 と案内が届いた。

彼もボランティアに出たり、放射能に悩んだりしながら、

この日々を過ごしてきたようだ。

彼のブログ、『ひぐらし農園のその日暮らし通信』 をどうぞ読んでやってください。

  http://white.ap.teacup.com/higurasi/

 

去年は地元の方々との夜の交流会で、

「食と農と堰のかかわりについて」 というテーマで話をさせられたけど、

今年は原発の勉強会が設定されたようだ。

「東日本大震災と放射能汚染に関するミニ講演会&里山交流会」

 

やる気になったね。

こうなると、ますます行かないわけにはいかない。

 

去年の作業の様子です。 

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初めてこの情報に触れた方には、昨年の日記もご参照いただけると嬉しいです。

昨年5月5日の日記 → http://www.daichi-m.co.jp/blog/ebichan/2010/05/05/

 同 5月6日の日記 → http://www.daichi-m.co.jp/blog/ebichan/2010/05/06/

 

もし、今からでも、「行ってみようか」 と思われた方がいらしたら、

ご一報ください。

下のコメントを利用される場合はメールアドレスをお忘れなく (非公開扱いとします)。

ひぐらし農園・浅見さんへの連絡でも結構です。

大地を守る会オリジナル日本酒 「種蒔人(たねまきびと)」 を用意して

お待ちします。

(注 : この堰さらいには、種蒔人の販売で積み立てている「種蒔人基金」

 からも、協賛として毎回交流会用にお酒をカンパしております。)

 



2011年4月23日

ファイトレメディエーション

 

放射能による土壌汚染の程度によって、

米の作付を見合わせる (米を作るな) 、という指導がされ始めている。

この判断は、いいのか? 逆じゃないのだろうか?

 

 - と前回書いたが、思うところを書いてみたい。

 

昨日、原子力災害対策本部長・菅直人内閣総理大臣は、

福島県知事に対して指示を出した。

「貴県のうち、避難のための立ち退きを指示した区域 (半径20km圏内)

 並びに新たに設定した計画的避難区域及び緊急時避難準備区域においては、

 平成23年産の稲の作付けを控えるよう、関係自治体の長及び関係事業者に

 要請すること。」

 

そして農林水産省では、稲の作付けを禁じる基準として、

「土壌中の放射性セシウム濃度が土1kgあたり5,000ベクレルを超える水田」

と設定した。

これは過去のデータから、水田の土壌から玄米への放射線セシウムの移行は

10分の1と示されたことによる。

つまり、玄米中の放射性セシウム濃度が、食品衛生法上の暫定規制値(500ベクレル)

以下となるための土壌中放射性セシウム濃度の上限値は5000、というわけだ。

過去のデータとは、独立行政法人農業環境技術研究所が、

1959年から2001年まで、全国17カ所の水田の土壌および米の放射性セシウムを

分析した合計564の測定データで、それをもとにして算出された。

 

福島県内の水田113地点の土壌を検査した結果、

幸いにして (という言い方は不適切か)、20km圏内および避難区域外からは

基準を超える水田はなかったようだ。

避難区域はその意味からしても、営農そのものが持続困難なのだが、

それにしても、ただ 「作るな」 でいいのだろうか。

また仮に区域外で基準超過の水田が発生した場合においても、

「作るな」 より 「作らせる」 ほうがよい、と僕は考えるものである。

 


もちろんその米を人に食わせてよい、と言っているのではない。

稲が土壌の10分の1を吸い上げるのなら、何もしないより、

むしろ稲にセシウムを吸わせて土壌を浄化させる方がよい。

収穫された米は東京電力さんに買い取ってもらって、バイオ燃料にする。

燃料にしても移動したセシウムの問題はついて回るかもしれないが、

生命をつなぐ基盤である土壌からの除去・浄化は何より必須の課題である。

しかも、半減期30年というセシウムが相手なので、

基準値を超えた水田では 「来年はつくれる」 という保証もない。

何もしないで放置された水田はだんだんと再生が困難になってゆく。

「つくり続ける」、作り続けながら土壌の浄化を進める、のがよい。

 

土壌に蓄積された様々な汚染物質 (重金属類や農薬、PCB、ダイオキシン類等々) を

植物の持っている機能や力を利用して吸収させ、あるいは分解させることで

土壌を浄化する技術がある。

「ファイトレメディエーション」 という。

 

植物が大気や水を浄化する機能を持っていることは多くの人が知っていることかと思う。

逆に、植物によって特定の有害物質を吸収(蓄積)する特質があることも、

部分的ではあるが分かってきている。

こと放射性物質についていえば、

アカザ科の植物がセシウムに対する吸収特性が高いことが確かめられている。

アカザ科 -野菜でいえばホウレンソウ! だ。

福島原発事故はまさにそれを証明してくれた格好になったか。

しかしそれはまた、ホウレンソウが指標作物になる、ということでもある。

土壌からの除染だけを考えるなら、回転の速いホウレンソウを植えまくる、

という考え方も、ないわけではない。

現実には、そのホウレンソウをどうするか、だけど。

 

こういった植物を、汚染物質を吸収するからといって排除するのでなく、

むしろその力を借りて浄化に取り組もうというのがファイトレメディエーションである。

チェルノブイリ原発事故では、菜の花 (菜種) やヒマワリを栽培することで

土壌浄化に効果があったというのは有名な話で、

篠原孝・農林水産副大臣はこの手法を提唱している。

 

汚染土壌の修復に土の入れ替えといったことが言われているが、

20km圏内に加えて避難区域まで含めた広域にまたがる水田土壌を入れ替えるなんて、

不可能というより絵空事としか言いようがない。

とにかく物理的あるいは化学的な方法による修復は、べらぼうなコストがかかる。

ファイトレメディエーション技術は時間はかかるが、

エネルギー消費やCO2の排出といった環境負荷がなく、

汚染土壌の拡散を防止できるし、緑化にもつながる。

太陽エネルギーによって植物が生長する、ただそれだけで環境汚染物質を

土壌から吸い上げていくという、究極の環境調和型修復技術であり、

経済合理性に適った考え方として、

欧米ではすでにその応用、つまりいろんな形での産業化が進んでいるものである。

 

ファイトレメディエーションにはいろんな考え方・方法が研究されている。

生長中の植物の根から分泌される物質によって根の周りに微生物が増加する原理

を応用して、汚染物を分解・無害化する菌を繁殖させるという方法。

あるいは植物根や分泌物に汚染物質を吸着させることによって

固定させる (地下水への流出を防ぐ) といった方法、などなど。

 

読みにくいカタカナを駆使して書いているけど、ここまでくると要するに、

根圏微生物を増やす、つまりは土壌を肥沃にしていくことが、

有害物質の除染にも有効である、ということになる。

有機農業の力はここにある、というのがわたくしの結論である。

 

「化学肥料でも肥料効果は同じである。」

あるいは 「農薬は適正に使えば、農産物の安全性は同じである。」

こういう論がいまだに跋扈しているが、土から目線で言えば、

農薬は土壌に残留する有害物質のひとつであり、いずれ植物に吸収される。

化学肥料は植物を育てる食べ物にはなっても、土壌の肥沃性を増すものではない。

最終的に放射性物質も含めた汚染物質を除去あるいは固定・無害化する力は

菌であり、それを育てる土壌の力、ということになる。

土が豊かであるほど、私たちの健康は保たれる。

その関係にあることを忘れてはいけないだろう。

 

私たちが有機農業を目指す生産者たちを大事にしたいと思うのは、

環境修復の担い手でもあると思うからだ。 

それは長期的な時間でみれば経済合理性にも適っている。

 

いずれにしても、自然界の力と調和しながらきっちりと安定化させていく、

といのが最も効率がいい、ということになると思うが、いかがだろうか。

 

大切な食料基地でもある福島を、荒涼とした大地にしてしまうのでなく、

稲やヒマワリや菜の花を咲き誇らせながら修復へと向かおうよ。

その田園はきっと僕らに 「希望」 を語りかけてくれるはずだ。

 



2011年4月14日

野菜にも一言いわせて! さよなら原発!

 

個人的にお付き合いのある NPO法人アジア太平洋資料センター(PARC) から

4月16日(土) に表記のタイトルで集会とデモをやるので、

スピーチしてほしい、という依頼が入った。

当会の専門委員会 「原発とめよう会」 に打診したのだが、

祝島に行くなど色々と予定があって皆さん都合が悪いようで、

「野菜にも言わせて」 ならお前だろうとも言われ、

結局回り回って、自分がスピーチを引き受けることになってしまった。

 

以下、急な話で恐縮ですが、集会のご案内をさせていただきます。

 

野菜にも一言いわせて! さよなら原発デモ!!

◆ 日にち: 2011年4月16日(土) 14:00~集会 15:00~デモ

◆ 会 場: 渋谷・神宮通公園 (東京都渋谷区神宮前6-21)

◆ デモコース:

  神宮通公園 ⇒ 神宮前6丁目右 ⇒ 東電電力館前左 ⇒ 渋谷駅前左

  ⇒ 宮益坂下左 ⇒ 神宮通公園

◆ 主 催: アジア太平洋資料センター(PARC)

        「野菜にも一言いわせて!サヨナラ原発デモ実行委員会」

◆ 詳細は、以下のURLをクリックしてください。

    http://beingb.com/yasaidemo/index.html

 

14:00からの集会では、

原発の現状と放射能汚染が農業・漁業に与える影響についての報告、

現地調査の報告、漁業者・農業者からの声、などが発表される予定です。

戎谷の持ち時間は5~10分。 

福島の生産者の思いの一端でも伝えられれば、と思っています。

 

またデモでは仮装大歓迎! ということなので、

岩手県山形村(現久慈市山形町) から

短角牛のたん君(着ぐるみ) の応援参加をお願いしました。

荷が間に合えば、牛さんになって渋谷駅の周りを歩きます。

 

デモなんて久しぶりだけど、小さな行動でもやれることはやろう、

と腹を決めています。

見物人でも結構です。 一人でも多くのご参加を!

 



2011年4月 5日

支援は多様に展開したい

 

いま 「大地を守る会震災復興支援基金」

たくさんの義援金が寄せられてきています。

ご協力ご支援いただいたすべての方々に深く感謝申し上げます。

 

お寄せいただいた義援金は、

被災された方々へのお見舞いとしてお渡しさせていただく他、

現地での炊き出しなどの生活支援や復興に向けての各種の支援に

活かさせていただきます。

支援の活動内容については、当会広報室スタッフによる

~ 大地を守る会の活動レポート ~ ブログ 大地を守る

にて逐次レポートされますので、ご覧いただけると嬉しいです。

(私のブログは個人の行動範囲とアンテナ・体力・気力に常に左右されてますので。)

 

炊き出し隊は昨日から岩手に入り、活躍してくれています。

隊長・吉田和生のツイッターからは、リアルタイム(と言っていいよね) で

現場からの情報が発信されています。

(平時ではテキヤ部長の異名も持つ彼の公式肩書は、「畜産水産グループ長」です。)

最近は誤字や変換ミスをむしろ売りにしつつある吉田のツイッターはこちらです。

http://twitter.com/DWMK_yoshidak

 

我が農産グループでは、今週から

風評被害に苦しむ産地をバックアップしようと、

『福島と北関東の農家がんばろう セット』

という、ネーミング・センス度外視の野菜セットを企画しました。

(これでも農産チーム諸兄は喧々囂々やってたようですが・・・)

 

福島・北関東の野菜は今が出盛りの時期。

にもかかわらず、出荷規制の対象外の野菜も

「福島県産」 「茨城県産」 というだけで買い控えが広がっています。

自分たちが誇りを持って育てた農産物が、人々から忌み嫌われる生産者の悲しみ、

苦しみ、怒りは察するに余りあるものがあります。

そこで企画したのが上記の  " 福島&北関東 がんばろう! "  セットです。

ご支援いただける方は、ぜひ食べて応援してください。

 

これはけっして抵抗を感じる方にまでお願いするものではありません。

支援の方法は一つではないですから。

基金へのカンパ、被災地の商品の購入、救援物資の提供、ボランティア、節電、

みんなが出来る方法で力を合わせ、

ただただ、いのちと暮らしの復興に進んでいきたいと思うのみです。

ご支援いただけたなら幸いです。

 


 



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