戎谷徹也: 2012年1月アーカイブ

2012年1月27日

復幸の光

 

1月7日付の日記で、被災地支援用 紅白モチにご登場いただきました。

読み返せば恥ずかしいおバカなブログですが、

送り届けた岩手・宮城の方からお礼の言葉が届いたので

(メールは東京サポートの方からですが)、

転載させていただきます。

 

大地を守る会 ●●●●● さま

いつもお世話になり、ありがとうございます。

東北復興支援団体 祈望 東京サポート本部の佐々木です。

 

昨年に引き続き、今週も大変お世話になりありがとうございました。

被災地3ヵ所のたくさんの方々から、

食品の支援を再開してくださった大地を守る会と担当の皆様に

 「ありがとうございます」 と御礼を伝えてほしいと言われました。

本当にありがとうございました!

 

今週の加工品が3ヵ所に到着して、ありがたく分配いたしました。

このたびもたくさんのご支援をいただきまして、ありがとうございました。

久々のご支援に町内の皆さんは大変喜んでいらっしゃったそうです。

先の見えない不安ななか、美味しいソーセージ、納豆、お豆腐、

どれもどれも有り難くて涙を流す方々もいらっしゃったそうです。

 

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あと、昨年末のお餅のご支援もありがとうございました。

3地区とも大好評で、もったいないからと冷凍して、少しずつ頂いているそうです。

ニンジン嫌いの子供たちはニンジンの味が濃厚なので食べにくかったようですが、

ニンジン好きには美味しくて大好評だったそうです。

震災でたくさんの方々が亡くなられたので

お正月はできませんでしたが、餅を食べ力をつけ皆様から元気をもらい

この冬を乗り越えようと頑張っているそうです。

 

お餅の写真と、今週の加工品のお写真をいただいたので、送信します。

 

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昨年は震災直後の年でしたので、たくさんの方々が炊き出しやイベントなど

被災地で復興の太鼓や踊りや歌などが催されましたが、

被災地の方々からすると、実際のところ

「食べられる」 「食べられること」 「仕事を得る」 ことにつながらないので、

全国の皆さんからのお気持ちは有り難いけれど、複雑な心境のようです。

新聞やTVではどんどん復興しているように報道されていますが、

本当は被災地の1割にも満たないごく一例でしかないのだそうです。

 

漁業関係のがれき撤去もほぼ終了したため、がれき撤去の仕事もなくなり、

女性も男性も内職をしていますが、

被災地に内職仕事をということで、ミサンガ等をつくってはいるものの

1日2千円前後の収入にしかならないので、生きていくのがとても大変だと

おっしゃっていました。

沿岸部から1時間くらいバスで行った所に、電子部品の工場が再開したので

そこに勤めに行く方もいますが、交通費やガソリン代もかさむので通勤が大変で

収入から通勤費を引くとほとんど残らないらしいですが、

これも何もしないよりは、ということで、頑張っていらっしゃるそうですが、

なかなか生活再建するには厳しい状況です。

 

地元の商店のために、仮設店舗の場所が決まったそうですが、

5坪で家賃5万円かかるらしく、なかなか入店できる店舗が集まらず

11月でオープン予定がまだ先になるという状況で、

せめて最初の1年位は家賃無料にしていただければ、5万円で人を雇えるのに、

と地元の方々が町の商工会と交渉しているのだそうです。

 

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沿岸部はさらに地盤沈下で、いまだに埋め立てが進んでいないこともあり、

昨日の大潮で国道45号線沿いがみるみる海水が流れ込んできて、

満潮時は危険な地域になります。

今まで商店街がたくさんあった場所が、今は海の中になってしまいました。

お店を出すにも場所がなく、補助金の申請も通らずで、

地元の商店は事業を再開できずに苦しんでいるそうです。

蓄えも底を尽きる寸前なので、なんとか早くよい場所を見つけて再開したいそうです。

 

北上町の 「復幸の光」 と国道45号線の冠水風景も添付します。

 

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一日も早く、皆様からのご支援におこたえできるように

あらゆる面で参っているのですが、

皆で力を合わせて頑張ります、とおっしゃっていました。

 

今後ともどうぞよろしくお願いします。 

 

東北復興支援団体 祈望 佐々木千香子

(岩手県) 大槌町:土沢孝弘

(宮城県) 雄勝町:大槻敏也

             北上町:武山英明

 

これは、大地を守る会の 「震災復興支援基金」 にご協力いただいた

会員の皆様への手紙でもありますので、

ここに感謝とともに共有させていただきます。

 

お餅をきっかけにニンジン好きになってくれればよかったのですが、

ニンジン嫌いには濃厚すぎたようです。

 

それにしても、道のりはまだ遠いのか、もっと良い手はないのか・・・

考えさせられます。

 



2012年1月22日

放射能対策を振り返る -くらしから原発を考える講座

 

「原発事故さえなかったら、、、、、

 この10ヶ月、皆さんも何度となく口にしたのではないでしょうか。」

 

原発事故さえなかったら-

正月の祝杯は復興の二文字で湧き上がったことだろう。

絆を確かめ、決意を語り合い、前進する力強い東北の姿が現出していたはずだ。

この国の株だって上がったに違いない。

原発事故による経済損失は、まったくはかり知れない。。。

 

昨日は、大地を守る会専門委員会 「原発とめよう会」主催による

『第73回 くらしから原発を考える講座』 が開かれた。

テーマは、「原発はいらない! 大地を守る会の放射能汚染への取り組み」。

まずは、 3.11以降の

大地を守る会の取り組み概要の振り返りから始めたい。

 - てことで、お鉢が回ってくる。

 

そこで、はからずも出た第一声が、冒頭のセリフである。

 

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会場は池袋にある 「豊島区生活産業プラザ (エコとしま)」 の会議室。 

参加者およそ50名強といったところか。

 


3.11以降の大混乱から今に至る様々な取り組みを、

かけた思いとともに報告させていただく。

 

その1: 実態をできるだけ正確に把握すること (測定体制の構築と強化)。

その2: 生産者との作付についての話し合い。

     予定数量の販売は困難であることを告げて回る。、

     " 風評被害 "  と言われながら生産と消費が分断されていくことをどう防ぐか、

     この模索は今も続いている。

その3: 測定結果の情報公開。 これにも覚悟が必要だったこと。

その4: 生産地の除染対策支援。 国もできないような成果を達成したこと。

     (しかし、くまなくフォローできたわけではない反省も深くある。)

その5: 基準 (流通上の規制値) の検討。

     他団体とともに基準のあり方を検討する 「共同テーブル」 を結成したこと。

     流通者としての規範を示したいと思っていること。

 

それぞれにけっこう苦悩があった。 20分じゃ語りきれない。

すべてが未経験領域で、思い返せば後悔や反省はたくさんあるが、

大きな針路としては間違わずには来れたと思う。

上の1から5は、順番のようでありながら、

どれもがつながっていて、今も課題を抱えながら回っている。

 

続いて、CSR推進本部事務局長の吉田和生が、

東北での震災復興支援の経過を、現地の写真を交えながら報告する。

漁が再建されても、放射能の問題が横たわっている。。。

腹立つね、ほんま腹立つわ。

 

そして、今回のゲスト。

福島県須賀川市・ジェイラップ (稲田稲作研究会) の伊藤俊彦さんから、

「大地を守る会の備蓄米」 産地として取り組んだ対策と成果を語っていただく。

 

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年末に 伊藤さんの手紙 を紹介させてもらったけれど、

本当によくやったと思う。

稲田稲作研究会の田んぼ一枚一枚の状態を確かめ、手を打ち、

結果を徹底的に検証する。 

土壌-稲体-モミ-玄米-白米-ごはん(炊飯した状態) の移行までトレースする。

そんな計画も、玄米で出なかったらトレースしようがないじゃない、

という笑い話も出るほどの結果となって、

来年はさらに 「すべてをゼロ(検出限界値以下) にできる」 という確信が、

メンバー全員に生まれた。

 

須賀川の田園地帯に転々と数値が書き込まれたMAPを見れば、

これは地域全体を生き返らせる力にもなることが実感できる。

次のプランが見えてくる。

 

県も国も唸った、2011年でしか取れなかった記録。

何とか残すことができたね。

7月に思い切って測定器を送ったことも、誇りに思えてくる。

復活の貴重な財産目録として、胸を張りたい。

はからずも会場から、「民間でできるじゃない、で終わらせられないか心配だ」

といった声まで上がった。

ま、こっちも批判したりけなしたりで終わらせられないし、

国はどうか分からないけど、県は必死だから、

県全体の取り組みに向けての提言を発していきたいと思う。

イノベーションはすでに始まっているのだ!

 

質疑応答風景。

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(左から、吉田和生、伊藤俊彦、戎谷徹也/撮影:青木文雄)

 

まだまだやれてないことも多く、不備も課題もたくさん残っている。

指摘を受け止めながら、改善々々、そして創造へ。

 

最後にしつこくマイクを奪って、ひと言。

「肝心なことは、すべての原因の大元を絶つことです。」

 

春にはすべての原発がいったん止まる。

やれる、できる、ことを見せなければなりません。

3.11の前に止めてやれなかった悔しさを一つにして、

頑張りましょう!

 



2012年1月20日

放射能と栄養

 

厚生労働省が発表した 「食品中の放射性物質に係る基準値の設定(案)」

に対する 「共同テーブル」 としての見解をまとめる作業を進めているところで、

一冊の小冊子が届いた。

 

『チェルノブイリ:放射能と栄養』

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これは放射線医学総合研究所の元内部被ばく評価室長、白石久二雄さんが

翻訳して自費出版された、いわゆる私家版である。

 

白石さんは食品学の専門家であり、

かつ放医研で内部被ばくの問題を長く研究してこられたという、

日本では稀有な 「食品による内部被ばく」 の専門研究者である。

チェルノブイリ原発事故後、ウクライナにも足を運び、

「ウクライナ医科学アカデミー放射線医学研究センター」 と共同研究を続けてきた。

 

昨年3月をもって退官され郷里・四国に戻られたのだが、

福島原発事故のせいで今やあちこちから引っ張りだこの状態らしい。

現役時代には縮小されつつあった研究が、退官直後から引く手あまた、

とは実に皮肉な話である。

 

上記の小冊子は、

国際赤十字社と赤新月社連盟の支援により1994年に発行され、

ウクライナの汚染地域に住む人々に無料で配布されたものである。

放射線とは何か、から始まり、生物と人への放射線作用、

汚染地域の住民の栄養状況などの解説、そして

食品の基本的成分と栄養素としての役割、濃度を減らす加工法や調理法などが、

専門知識のない住民にも分かるように苦心して書かれている。

 


放射性物質の摂取を少しでも減らすための前処理や調理法については、

すでにいろんな解説本も出ているし、白石さんも別な著書で書かれていることだが、

あえてこの小冊子の送付を白石さんに申し込んだのは、

事故から6年後 に、専門家たちが専門用語をほどきながら、

食事法や栄養についての解説を住民に無料配布したという、

その空気に触れてみたいと思ったからだった。

 

ここで書かれている結論の一つは、

缶詰や輸入食品に偏ることなく、栄養バランスのとれた食事を

規則正しく摂ることの大切さである。

そこで汚染の影響をできるだけ避けるための処理や調理法も具体的に書かれる。

たとえばこんなふうに。

 

「 住民の一部は牛乳や乳製品、野菜、果物、いちごの摂取を自ら制限し、

 遠方より導入された缶詰食品、一級や最高級の精製小麦粉から焼き上げた白パン、

 (中略) 等々を摂取しています。 すべてこれらは事故以前にはあり得なかった

 悪い食生活を促進しているのですが、健康な食生活を行なっていると

 思い違いをしているのです。」

「 粗挽き粉から作ったパンの中に含まれている穀類のふすまはビタミンB群、

 マグネシウム、カリウム、繊維に富んでおり、

 我々にとても良い満腹感を与えることができると共に、すでに述べましたが、

 胆汁分泌と正常な糞便の形成と排泄を助けます。

 その過程において若干ですが、消化器官において、

 放射性物質の吸収を抑えることになるのです。」

 

「 環境が放射能汚染された状況下において栄養素のビタミンが不足すると、

 電離放射線に対する生体の安定性が低下することになります。

 ビタミンは放射を受けて急激に生じたフリーラジカルを不活性化したり、

 油脂の過酸化物の生成反応を止める作用があります。」

「 ビタミンD不足はカリウムや燐酸塩不足を生体内に起こし、

 これが放射性ストロンチウムの生体内への吸収、沈着効果を促すようになります。」

 

要は、体がカリウム不足になればセシウムをつかみにゆき、

カルシウム不足になればストロンチウムの吸収を促進してしまう。

植物や土壌対策と同じである。

必須の微量元素をしっかり摂るためには、いろんな食べものをバランスよく食べること。

放射線被ばくによって怖いのはガンだけでなく、

むしろ免疫力低下による様々な病気である。

健全な食事で打ち勝とう、と励ましているのだ。

 

もう食品の放射性物質の濃度はかなり減ってきているのだから、

今さら読む必要はない?

そうだろうか。

正しい食こそが健康を守る。 

それを支える環境がいかに大事なものか、学びすぎて損をすることは決してない。

これは日常の指南書でもある。

自力で翻訳して出版された白石さんの意思にも敬意を表したい。

 

白石久二雄さんは、

「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 の、次のヒアリング候補である。

目下、交渉中。

 



2012年1月12日

魚食文化の再興を誓う

 

今日は久しぶりに丸の内の話題で書く予定だったのだが、

その前に、おさかな喰楽部新年会の報告を終わらせなければ。

 

さて、ウエカツさんに続いて、次なる登場人物はこの人。

鮮魚の達人協会 」 理事長・山根博信さん。

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1961年、和歌山の漁師町に生まれる。

家の水産物仲卸業を継ぐも、魚には興味がなかった。

「継いだのは、トラックの運転ができるから」(笑)。

しかし26歳で結婚してから、考えるようになった。

自分はただ運んでいるだけで、魚を見ていなかったことに気づく。

そう思って市場を眺め始めると、魚の流通が変わってきていることに気づき、

このままではいけないと思うようになる。

 

浜ではたくさんの魚種が揚がるが、値がつかないものがたくさんある。

市場で値がつかない、動かない魚を売ってお金にして漁師に還元する必要を感じ、

2005年、鮮魚の達人協会を設立する。

 

鮮魚の達人協会。

卸業者や仲買業者など、魚を見極める専門家たちのあつまり。

漁業者と家庭を結び、美味しい魚を提供する。

旬の魚、美味しい魚を取り入れた健康的な生活を応援する。

魚についての知識や魚食文化の普及に努める。

海洋環境や地球環境の保全に努める。

 

今や漁業者は、魚の目利きだけでなく海洋環境まで目配りしなければならなくなった。

生きにくい時代になってしまったもんだ。

 


山根さんはハチマキ締めて百貨店の店にも立つ。

どんな魚でも、その特徴を伝え、食べ方を教え、味見させれば、絶対に売れる。

 - それが山根さんの信条である。

 

協会が認定した 「鮮魚の達人」 が、今は全国に50人余り。

その人たちをネットワークしながら、

美味い魚をちゃんと食わせる流通の新しい仕掛けを模索している。

彼らの被災地支援は、三陸の魚をしっかりと流通させること。

大阪でフェアなどを展開している。

 

ウエカツさんや山根さんとのつながりのなかで生まれたのが、

人気の 「大地を守る会の もったいナイ魚」 シリーズである。

さらにいろんな悪だくみ、いやもとい、熱い企画が検討されている。 

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左からウエカツさん、山根さん、弊社 「おさかな喰楽部」 担当・吉田和生。

この3人が並んで歩いていたら・・・ やっぱ人は避けて通るか。 

でも、思い切って目を合わせてみれば、分かる。 優しい男たちなのだ。

 

3人が語る。

山根さんのような人がいれば、売れない魚はない。

しかし、いない。

スーパーのバイヤーでも知識を持っている人は多いのだが、

売れるための工夫につながっていない。

たとえばサバは今が一番脂が乗っている時期だが、

スーパーの店頭には一年中あって、夏に塩焼きにしたって本当の美味いサバではない。

でも知らせていないから、いい消費に結びついてない。

いったん離れた消費者を取り戻すのは大変なことなのに。

サンマ一本70円なんて安すぎる! と言い張ろう。

もう一度、魚の旨みのるつぼに消費者を引きずり込む必要がある。。。。。

 

最後に指名されて登場したのが、モデルの Lie (ライ) さん。

魚を、海を愛するタレントやモデルさんたちで 「ウギャル」 を立ち上げる。

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 魚(ウオ) と海(ウミ) の ウ と ギャル をくっつけて、ウギャル。

ホームページを見てほしい (上の 「ウギャル」 をクリック)。

ニホンの食文化、海への感謝、若者の健康促進、魚食文化の発展を目指します

と堂々と宣言している。

Lie さんの特技は、魚をさばくこと。

復興支援にも積極的に動いている。

 

ウエカツさんの言う 「新しい芽吹き」 は、あるのである。

期待したい、などと他人事のように言っている場合ではない。

オジサンも頑張ってくれなくちゃ ♥ 、て言われてんのよ。

頑張らないわけにいかないっしょうよ、おっさん!

 

放射能の議論もあったが、これは簡単な道のりではない。

ただ、ゼッタイに海を見捨てるワケにはいかない、のである。

僕としては、獲る人が諦めない限り、彼らとともに歩きたいと思う。

僕にだって、漁村に育った矜持(きょうじ) は、残っている。

 

皆と飲んで歌って、帰ってから、

久しぶりに出刃包丁と刺身包丁を取り出して、研いだりして。。。

もっとも困難な時代にあって、魚食文化の再興を、誓う。

 



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