戎谷徹也: 2012年3月アーカイブ

2012年3月20日

放射能に克つ

 

放射能に勝つ! なんてできるワケがない。

しかし、原発を恨み、ただ手をこまねいて敗北者への救済を待っても、

農という営みは再生しない。

 

人が生きている限り、農は必須である。

しかも、農の健全さと人々の健康、そして社会の安定は比例関係にある。

その確信を持つ者は、敵が放射能であろうとも、抗い、たたかう。

たたかって、たとえ敗北しても、

この精神だけは次世代に渡さないと、気がすまない。

汚染に立ち向かい、食とその源泉である大地を守るために人智を尽くす。

これは放射能という絶望を克服する、希望のための作業であると、信じて疑わず。

 

3.11から1年、

そんな思いを込めた一冊が出来上がった。

 

『 放射能に克つ農の営み

  ~ふくしまから希望の復興へ 』 

『放射能に克つ農の営み』カバー.JPG

 

ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会の菅野正寿さん、

ジェイラップの伊藤俊彦さん、

あいづ耕人会たべらんしょの浅見彰宏さん、

といった本ブログでお馴染みの生産者が登場します。

戎谷徹也も、書いてます。

 

目次は以下の通り。

プロローグ 「土の力」に導かれ、ふくしまで農の道が見えてきた......中島紀一

第1章 耕して放射能と闘ってきた農家たち
 1 耕してこそ農民――ゆうきの里の復興......菅野正寿
 2 放射能はほとんど米に移行しなかった
      ――原発事故一年目の作付け結果と放射能対策......伊藤俊彦
 3 土の力が私たちの道を拓いた
      ――耕すことで見つけだした希望......飯塚里恵子
 4 土地から引き離された農民の苦悩
      ――根本洸一さんと杉内清繁さんの取り組み......石井圭一
 5 85歳の老農は田んぼで放射能を抑え込んだ
      ――安川昭雄さんの取り組み......中島紀一
 6 100㎞離れた会津から新たな関係性をつくる......浅見彰宏

第2章 農の営みで放射能に克つ......野中昌法
 1 農の営みと真の文明
 2 農業を継続しながら復興をめざす
 3 核実験が農地に及ぼした影響への調査から学ぶ
 4 土の力が米への移行を抑えた
 5 ロータリー耕などの技術による畑の低減対策
 6 森林の落ち葉の利用は可能か
 7 除染から営農継続による復興へ

第3章 市民による放射能の「見える化」を農の復興につなげる......長谷川浩
 1 市民放射能測定所が生まれた
 2 用語と測定の基礎
 3 放射能の「見える化」の意義
 4 汚染度が低かった福島県産農産物
 5 福島とベラルーシの農産物汚染の比較
 6 そもそも土の中はどうなっているのか
 7 今後の放射能汚染対策

第4章 農と都市の連携の力
 1 首都圏で福島県農産物を売る......齊藤 登
 2 応援します! 福島県農産物......阿部直実
 3 ふくしまの有機農家との交流から、もう一歩進む......黒田かをり
 4 分断から創造へ――生産と消費のいい関係を取り戻すために......戎谷徹也
 5 地域住民と大学の連携......小松知未・小山良太

第5章 有機農業が創る持続可能な時代......長谷川浩・菅野正寿
 1 持続可能でない日本
 2 21世紀は大変動の時代
 3 これから発生するリスク
 4 日本にも持続的な社会はあった
 5 有機農業が拓く世界
 6 有機農業が創る持続可能な時代
 7 ふくしま発、持続可能な社会への提言

エピローグ 原発と対峙する復興の幕開け......大江正章

出版社・コモンズから。

四六判 288頁。 1900円+税。

執筆者たちに払われるべき印税はすべて、

福島有機農業ネットワークに寄付されます。

 

短期間で無理やり書かされて、

「印税は寄付だからね」 と当然のように言われて、

販売までせっせと協力しているワタシ。

人がいい? いいえ。

ただ  " 放射能に克ちたい "  の一心です。

 

明日から25日まで、岩手~宮城~福島と流れます。

途中で一本は書きたいと思っているのですが・・・ さて。

 



2012年3月15日

バランスのとれた食事こそ防護の原則

 

遅まきながら、

2月17日(金)に 「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 が開催した、

白石久二雄さんを招いての内部学習会の概要につき、

大地を守る会の会員向け機関誌 (『NEWS 大地を守る』) 用に原稿を書いた。

白石久二雄さんについては、以前にも紹介 した経緯があるので、

ここでもアップしておきたい。

 

「バランスのとれた食事こそ大事な防護」

-白石久二雄さん学習会

 

大地を守る会他4団体で構成する 「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 では、

2月17日、元(独)放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター

内部被ばく評価室長の白石久二雄さんをお招きし、

「食物摂取による内部被ばく」 をテーマに学習会を開きました。

 

白石久二雄さんは、食品による放射線内部被ばくのリスクについて

専門的に研究された日本で唯一の研究者であり、

チェルノブイリ原発事故後、「ウクライナ医科学アカデミー放射線医学研究センター」

との共同研究に携わりました。

 

ウクライナでは1994年、知識不足によって健康を損ねがちな現地の人々のために、

放射線に対する正しい知識と防護のための食事法 (食材の選び方や調理法など)

を解説した小冊子が、国際赤十字社の支援によって無料で配布されました。

白石さんはその冊子を翻訳し、自費出版しました (『チェルノブイリ:放射能と栄養』)。

それが今、福島原発事故によって注目されるとともに、

数多くの書物等に引用されています。

白石久二雄氏.JPG

 


学習会では、放射線の基礎から始まり、

事故前の自然放射性核種と人工放射性核種の被ばく実態

(自然放射性核種による日本人の年間平均被ばく量は年間1.48mSv、

 うち食事から0.41mSv =国民一人一日当たり平均で135Bq 相当、

 人工放射性核種による被ばくは0.1Bq 未満だった)、

体内の放射能 (体重60㎏ の人で約7,000Bq)、

放射性物質の人体に及ぼす影響

(確定的影響と確率的影響。 確率的影響にはしきい値は存在せず、

 被ばく線量と健康影響は、100mSv 以上では比例関係にあるが、

 100mSv 未満では明確な結論は出ていない)、

吸入摂取・経口摂取による内部被ばくの計算法、等について

解説いただきました。

 

食品から内部被ばくを避けるための防護の基本は、以下の5点。

① 可能な限り放射性物質の含有量の低いものを摂取する。

  そのためには情報公開が必要。

② 調理や加工法により放射性物質を減らす。

  基本は、洗う(皮をむく)、煮る(浸す・茹でる)、塩や酢の活用、

  前処理なしでの油料理は避ける、魚は骨や内臓を避ける、等。

③ 放射性物質の吸収阻害と排泄促進。

  カルシウムはじめミネラル類と食物繊維の摂取を推奨。

  カリウムとペクチンも有効。

④ 被ばくに対する生体の抵抗力(免疫力)を強化する。

  それにはバランスのとれた食事によって免疫力を上げることが重要。

  ビタミン・ミネラル類、抗酸化物質、蛋白質を摂ること、脂を摂り過ぎないこと。

  海藻類や発酵食品を主とした伝統的和食を見直したい。

 

白石さんは、国の新たな基準については一定評価しつつ、

もっと子どもに対して配慮する必要があると主張され、

検査機器の徹底した配備、陰膳法の活用などが提唱されました。

 

「共同テーブル」では、こういった内部学習や専門家へのヒアリングを進めながら、

食品における放射性物質に対する規制・基準の  " あるべき形 "  について、

これからも検討を重ねていきます。

 

提出した原稿はここまでですが、おまけとして、

白石さんの著書を紹介しておきます。

前に紹介した白石さんの翻訳による自費出版

『チェルノブイリ:放射能と栄養』 より分かりやすく、

また福島原発事故を受けて日本人向けに再編集したもの。

 

『福島原発事故 放射能と栄養』 

福島原発事故:放射能と栄養.JPG

(発売元:宮帯出版社、定価890円+税)

掲載されている調理法・レシピも、日本料理に入れ替えています。

これはフード・コーディネーターである奥様・白石かおるさんが

考案されたとのこと。

 



2012年3月 6日

大地を守る会の オーガニックフェスタ

 

続いて、東京集会二日目。

3月4日(日),「食べてつながる一日 大地を守る会のオーガニックフェスタ 」。

今回はさらに手抜き報告でお許しを。

雰囲気だけでも伝われば・・・ すみません。疲れてますね。

 

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大地を守る会の野菜売り場風景。 

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お昼の復興屋台は、満席状態。

 

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山形村のベコ丼も大人気。 

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今日僕に与えられた役割は、

12時からの生産者トークステージ・第一部の司会のみで、

終わった後に食べに行ったら、すでに売り切れだった。

 


駆け足でブースを回れば・・・・・

 

成清海苔店さん。 

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大地を守る会自慢の、お米生産者のラインナップ勢ぞろい。 

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去年は大変だったですね、水車村紅茶さん。

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会津の 小川光さん は、今年も研修生たちを連れてやってきてくれた。

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研修生諸君。 オヤジは厳しい人だけど、ただの一本気だ。 うまくやれ。

 

トークステージ・コーナー。 

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料理研究家・辰巳芳子さんと藤田社長とのトークは、立ち見も出た。

 

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こちらはキッズコーナー。 

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生物多様性の語り部、陶武利ハカセが、

しっかりツカミをとりながら熱弁をふるっている。

 

生産者トークステージ、第二部。  

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被災地からのメッセージ-②

右から遠藤由美さん(遠藤蒲鉾店)、成清忠さん、二宮貴美子さん(奥松島水産振興会)。

 

ちなみに第一部のトーク・ゲストは、

ジェイラップ・伊藤俊彦さん、仙台黒豚会・小原文夫さん、舟形マッシュルーム・海道弘子さん。

 

皆さんそれぞれに、この一年間の葛藤を深い言葉で語ってくれた。

 

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おまけの一枚は、これにしようか。

マヨネーズやきりたんぽ、温泉卵の安保鶴美さんと、

いつも一緒に来てくれる娘の小春さん。  

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いつも仲良し。 羨ましい。

苦労の連続だったけど、こんなに明るい娘さんをみると、

いつも  " あっぱれ "  と叫んでしまう。

 

最後に藤田社長からのメッセージを。

 

  大地を守る会からみなさまへ

  2011年3月11日、日本はかつてないほどの大災害に見舞われました。

  あの日から早くも一年の月日が過ぎました。

  地震、津波の被害により、多くの人が亡くなられました。

  大切な人や愛する人を失った人たちの気持ちを思うと、胸が張り裂けそうです。

  そして、その後に起こった福島第一原発の事故。

  どうして、もっと早く原発を止めておけなかったのかと悔やまれます。

  放射能が飛び散ってしまいました。

  生産者たちは、自分の責任ではない放射能という問題で苦しむことになりました。

  大地を守る会は、原発事故直後から

  「福島と北関東の農家がんばろうセット」 を販売するなど、

  生産者を支援しようと努力しました。

  しかし、野菜の出荷量という現実的な点では、

  充分な結果を出すことができませんでした。

  支えようとしても支えきれないもどかしさに、私たちも苦しみました。

 

  一方、消費者の中でも小さなお子さんを持つお母さんたちの

  「我が子を放射能から守りたい」 という、必死な気持ちも痛いほど分かりました。

  生産者も支えなければならない。 消費者にも安全な食べものを届けたい。

  大地を守る会は、ある意味で矛盾する問題のはざまで、

  もがき続けた一年だったといえます。

  二度とこのようなことを許さないよう、私たちは原発に頼らない社会を

  いまこそ作らなければならないと思います。

 

  時の流れはとめることができません。

  ただ、立ち止まることも大切です。

  2012年3月11日(日) の夜8時から10時の2時間、

  100万人のキャンドルナイトを呼びかけることを決めました。

  暗闇の中、キャンドルの灯りを囲み、大切な人と時間を過ごしてください。

  わたしたちには、必ず明日がやってきます。

  「2011年3月11日」 のことを忘れることなく、少しずつでも前に進んでいきましょう。

  「でんきを消して、スローな夜を。」

 

  株式会社大地を守る会

  代表取締役社長 藤田和芳 

 



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