戎谷徹也: 2012年7月アーカイブ

2012年7月31日

やまももの樹に抱かれて -藤本敏夫没10年

 

幕張の通勤途上の街路に、ヤマモモの木がある。

ちょっと前の写真だけど、6月、今年もたくさんの実をつけた。

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しかしここで、その実を口に入れるヒトはいない。

落ちて、路面を赤黒く染めるだけである。

南四国に育った人間には、ヤマモモは子どもたちを猿にさせてしまう、

酸っぱい青空のような記憶としてあるのだけど。

 

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都会では 路傍に堕ちる 山桃の恋 ・・・なんちゃって俳句。

 

僕にとって、ヤマモモを見て思い出す人と言えば、

山桃忌の柳田国男ではない。

大地を守る会初代会長、故藤本敏夫さんである。

1983年に大地を守る会の会長を退かれ、

千葉県鴨川に 『自然王国』 なる専制君主の国、いや農場を建設した。

 

その鴨川自然王国での素人百姓の奮闘や暮らしぶりを

楽しく綴った本が手元にある。

『やまももの樹に抱かれて』(冬樹社,1988年刊)。

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  農業はエキサイティングなスポーツだ!

  残された  " お金で買えないもの "  がある所

  新鮮な感性で宇宙を実感しろ

 

その藤本さんが亡くなられたのが 2012年7月31日、

10年前の今日である。

享年58歳。

最後まで精力的に活動し、ペンを執りながら、逝ってしまわれた。

 


藤本さんの奥様、登紀子さんから、

社長の藤田に連絡があったのは春のどこか。

「藤本後の10年を振り返りながら、偲ぶ会を開きたいの」

と言ったかどうかは知らないけど、そういうことになって、

「じゃあ、エビにやらせるか」 となった。

 

藤本敏夫。 1944年、兵庫県は甲子園に生まれる。

京都・同志社大学の学生時代に全学連委員長となり、

1968年、国際反戦デーでの防衛庁突入という行動を指揮したカドでお縄を頂戴し、

獄中、歌手の加藤登紀子と結婚して芸能界にスキャンダルを提供した。

お腹に子供ができていたこともあって、登紀子さんが刑務所に面会に行って

結婚を迫ったのだ、と聞いている。

「ゴチャゴチャ言わずに、ハンコ押して!」 みたいな感じだろうか。

 

その間、藤本さんは内ゲバを批判して学生運動から離脱。

1976年、「大地を守る会」会長に就任、有機農業の普及運動に邁進する。

会長退任後は、いろんな運動や事業を仕掛け続けてきた (長くなるので省略)。 

1992年、政党 「希望」 を設立し、参議院選挙に挑むも落選。

当時、大地を守る会事務局長だった僕は、

会員から 「なんで大地を守る会は応援しないの!」 と責められた記憶がある。

だって、、、特定の政治家の応援はしない、という掟は藤本さんがつくったんだもの。

 

1997年、農業食品監査システム(現・アファス認証センター) 設立。

1999年、農水省関東農政局諮問委員に就任。 持続循環型農業の普及を提言。

2000年、全国の青年農業者とともに、持続農業推進全国集会を開催。

2002年、当時の武部勤農水大臣に 「建白書」 を提出。 2ヵ月後に病没した。 

 

いま藤本さんが生きてたら、どんなアクションに出るだろうか。

 

 

藤本敏夫没10年。。。  

この大役に、「オ、俺だって忙しいんですけど」 なんて、言えない。

腹を決めて、登紀子さんの事務所に出かけたのが6月1日。 

一気に進めることとなった。

 

 

日程は 11月17日(土)、

日比谷公園で例年開催している 『土と平和の祭典』 の前夜と決める。

題して、

『 藤本敏夫没後10年を語る

 ~「土と平和の祭典」 の前夜に~ 』 

 

記念講演は、人類学者の中沢新一さんにお願いした。

藤本さんが後世に託した  " 希望 "  を、

中沢さん流に紐解いてもらえたら嬉しい。

 

そして会場は、いろいろ探した末に、

日比谷公園内のレストラン 『 松本楼 』 に決定。

 

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明治36年、日比谷公園の開園とともに歴史を刻んできた老舗。

時々の政治の舞台となり、たくさんの文豪が愛した店。

1971年11月には、沖縄返還協定反対運動で

暴動学生が放った火炎瓶により焼失したという、いわくつきの洋館。

 

7月19日、会場との打ち合わせをお願いして伺ったところ、

何と玄関に 「戎谷 様」 の掲示が。

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ウ~ン、いい会場だ (エビは単純だ)。

 

お登紀さんと娘の Yae ちゃんにも歌ってもらって、

藤本敏夫が残した  " メッセージ "  の、

今日的価値を見つめ直す時間にしたい。

参加費は、パーティ代込みで1万円で計画中。

正式の案内と募集は9月上旬になるか。

どうぞお楽しみに。

 

藤本さんが愛した鴨川のヤマモモの樹は、今も健在なのだろうか。

あるのなら、来年の実が成る頃に訪ねてみたい。

 



2012年7月28日

連続講座第3回 -測定を市民の手に(Ⅲ)

 

連続講座・第3回の後半1時間は、

コーディネーター・津田大介さんの進行で質問をさばいてもらった。

たくさんの質問がペーパーで上がってきたが、

そこはさすが津田さんである。

内容を読み、仕分けし、

パソコンに入ってくるツイッターからの質問や意見もチェックしながら、

テンポよく早野さんに投げていく。

 

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ベクレル(Bq) からシーベルト(Sv) への変換には様々な意見があって、

リスクを小さく見せようとしているのではないか。

- 放射線によるリスクを考える際、人によって様々な流儀があって、

  シーベルトは使わないという学者もいる。

  誰でも一致する目安としては、誰の体にもカリウム40という核種が1㎏あたり

  50~60Bqくらい存在していて、それより多いかどうかで見ればよいのではないかと、

  自分は考えている。

 

1Bq=1秒(余命が短縮される) という平均化に意味があるのか。

- たしかに、ガンになった人には 「1秒」 という数字は意味がない。

  安全性については 「しきい値はない」 というのが定説であるが、

  1ベクレル以下の水準までリスクを考えることが適切とは思えない。

  ビートルズ世代が受けた内部被ばくの線量を示した際に、

  日本人にガンが増えたのは放射能のせいだと理解されたことがあった。

  しかし実際に、放射能によってガンになったと特定することは不可能であって、

  たくさんの人の死亡年齢と被ばく線量から平均化させたらこうなったという、

  あくまでもリスク度を考える際の一つのモノサシとして紹介したものである。

 


食事の丸ごと検査では薄まってしまって、原因が突き止められないのでは。

- 1Bq くらいのレベルでは由来の特定は不可能だろう。

  当初はもっと高いレベルを想定していて、学校給食なら

  食材が一定期間保存されるので追跡できると考えた。 

  積算してどれくらい食べたかのリスクを判断する材料にはなる。

 

5日間丸ごとより、一日ごとのほうが特定しやすいのでは。

- 測定費用が5倍かかる、という現実的な問題が大きい。

  微量な数値で残っているとすれば、まとめて測る方が出やすい。

 

魚が不安だが。

- 魚は難しい問題だ。 淡水魚や底魚は出やすいとかのデータは出ているが、

  まだまだ継続的な測定が必要である。

  福島で漁業が再開され始めているが、測って結果を公表して出荷することで

  判断材料は得られる。

  詳しくは次回、勝川先生に聞いてください。

 

チェルノブイリと福島の違いはどこからくるのか。

- 流通と食生活の多様性が大きい。

  生産者も実はスーパーなどでいろいろ買って食べている。

  チェルノブイリでは地域の生産物への依存度が高かった。

  また日本では牛乳や牛肉から出るとすぐに餌まで替えるなど、

  生産現場の対応も早かった。

 

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結局は、大地を守る会以外のものも大丈夫ということか。

- データからはどれもかなり低いレベルになっている、とは言える。

  ただし油断は禁物。 引き続きたくさんの、いろんな食材を測り続けてほしい。

  その結果をちゃんと確かめられるところが大地を守る会のメリットではないか。

 

産地偽装がコワい。

- 偽装があったとしても、

  (こと放射能に関しては) そんなに高いものが出回ることはないと思う。 

 

今も放射能は放出されているのでは。

- 原発由来で濃度が上がっているというデータは、今のところない。

  ただし降下物が風で舞うということはあるので気をつけたい。

 

子どものほうがセシウムの排出が早い、ということだが。

- 留まらないからリスクが低い、というワケではない。

  食べた分量が同じなら、子どものほうが Sv は高くなる。

 

生活習慣で気をつけた方がいいことは何か。

- それは専門外。 ただ被災地でメタボや糖尿病が増えている、と言われている。

  リスクは放射能だけではない。

  適度に屋外で運動するとかも大事なことではないか。

  (食生活のバランスが壊れていることも原因の一つではないか、と思う。)

  

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活性酸素が悪さをする、ということで水素水が良いと聞いたが。

- 分かりません。 ガンの原因は活性酸素だけではない。

 

生産地の信頼回復にはどれくらいの時間がかかるのだろうか。

- 相当な時間がかかるとしか言えない。 正しく測って、数値を出し続けることだ。

 

身近で安く測定できる体制をつくるには。

- 今は米の全袋検査など消費量の多いものから測定できる体制に進んでいる。

  メーカーも努力しているので、市民レベルでも測定できる

  低価格のものがつくられてくるだろうが、精度的には限界がある。

 

話を聞いて少し安心したが、

それでもネガティブな情報を耳にするとドキドキしてしまう。

- ネガティブな情報を流したがるマスコミに問題がある。

  良いニュースをもっと報道してほしい。

 

この1年で早野さんが一番学んだことは。

- 還暦になっても人生は変えられる、ということかな。

  学び合いながら成長できる環境をつくっていきましょう。

 

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「これでほぼ、頂いた質問にはお応えできたでしょうか」 - スゴイ!

早野さん、津田さん、有り難うございました。

 

以上3回にわたってのレポートは、僕のメモと記憶に基づいた整理なので、

文責はすべてエビスダニであることを付記しておきたい。

詳細をお知りになりたい方は、アーカイブで。

http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/

 

それにしても、 「~は大丈夫か」 的な質問が多いのは、仕方のないことなのだろうか。 

・〇〇区では給食の検査をやってないが、大丈夫か?

・外食を避けてきたが、そこまで心配しなくてよいか?

・ホームセンターの土や肥料は大丈夫か?

・家庭菜園を続けても大丈夫か?

・お茶は? 水は? ・・・

 

早野さんの答えは、「要は (自身の) 納得の問題である」。

心配なら測るしかない、あるいは測定結果を公開するところを選ぶ。

そして結果を見て判断する。

学校や自治体に測定を求める。 あるいはカンパを集めて測ってみる。

3カ月に1回でもいい。 そういう行動をもって安心をつかんでいくしかない。

 

(大地を守る会の) 福島のトマトや米は、本当に大丈夫か? 

という質問は、僕が答えるしかない。

「 大丈夫、というセリフは、公的な場では出せません。

  ND(検出限界値以下) である、という事実をお伝えするしかないです。」

 

こと放射能に関しては、(あなたにとって) 「大丈夫」 とか 「安心」 の判断は、

専門家とてできるものではない。

そういう答えばかりを求められると、

「大丈夫、大丈夫、笑って暮らしなさい」 と言ってバッシングを受けた

お医者さんの気持ちが、少しばかり分かってきたりするのだった。

 

一緒に強くなりましょう。

 

津田さんがツイッターからの声を拾った中に、こんなのがあった。

「早野なんかを呼んで、もう大地の野菜は食べない。」

僕からの答え。

「6回シリーズのラインナップから、意図を読み取ってもらうしかないです。」

私たちがいま獲得しなければならないのは、

できるだけ冷静な判断力であり、ロバスト(強靭) な精神力であり、

柔軟なバランス感覚ではないだろうか、というのが今回の企画意図です。

立場や見解の違いでもって排除することは簡単だけど、

その知見を正確に理解した上で、「判断」 したい。

右でもなく、左でもなく、僕は前に進みたいのです。

できれば皆さんと一緒に。

 

少なくとも、自腹を切ってまで

学校や保育園の給食を検査してきた早野さんを、

僕は偉いと思っています。

 

連続講座・第3回のレポート、これにて終わり。

 



2012年7月26日

連続講座第3回 -測定を市民の手に(Ⅱ)

 

早野さんが心配して、私費を投入してまで取り組んだ

食品による内部被ばくの実相の解明。 

いろんなデータから見えてきたことは、

「食品由来の内部被ばくのリスクは、当初想定していたよりは、かなり低い」

ということだった。 

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南相馬でのWBC(ホールボディカウンター) 検査結果は、

フクシマとチェルノブイリでは内部被ばくの時間的変化が異なることを示している。

チェルノブイリでは影響が長く続いたが、

南相馬では、わりと短期間のうちに急激に低下した。

「南相馬の方々は注意して食べている」

「福島県民は今、ほとんどセシウムを食べていない」

と早野さんは評価する。

 


ただし油断は禁物である。

実態をちゃんと把握して、精神的不安を少なくし、現実に対応していくためにも、

検査・測定は継続させる必要がある。

たとえば目の前に 2000Bq/body という人が現われたときに、

それが下がりつつある途中なのか、上昇傾向にあるのか、あるいは変わらないのか、

どのシナリオによるのかを掴まなければならない。

下がってきているのなら、このまま続けよう。

上がっているなら、あるいは横ばいなら、汚染源を突き止めなければならない。

とにかく、1回では分からない。

測定を継続することによって実相が見えてくる。

 

尿検査も有効である。

ただしセシウムが体内を回る速さは年齢によって違う。

子どもは早く排出される。

(5歳児の生物学的半減期は30日と言われている。)

したがって食事の影響を正確に突き止めるには、親子で測るほうがよい。

 

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現在、リスクが高いと思われるもののひとつは、未検査の農産物。

検査対象に乗っからない自家保有米(縁故米) や家庭菜園などだ。

できれば一度測っておくことを、早野さんは勧める。

また主食として摂取量の多い米は、基準値未満でも比較的高い濃度のものが

出回っている可能性がある。

産地が分かる、測定結果が分かるところから入手した方が無難ではある。

 

また食品で検出されてないといっても、土が汚染されてないワケではない。

イノシシの肉からは高い値が検出されている。

「イノシシと同じような食生活をしてはいけません。」

 

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実は原発事故以前でも、私たちはセシウムを摂取していた。

このことは、知っておいたほうがいい。

1960年代の核実験による影響で、その頃の日本人は1日平均 4Bq (年間1500Bq)

程度の内部被ばくを受けていた。 これは陰膳検査によるデータである。

3.11の直前では、0.1Bq程度だが、ゼロではなかった。

 

それら過去のデータから、福井県立大学の岡先生という方が、

内部被ばく量と余命短縮時間との関連を計算している。

 1Bq(ベクレル)=1秒 

あくまでも統計上の平均値で、リスクを考える参考程度のものだと、

早野さんは慎重に補足するのだが、

こういう数値はインパクトが強く、誤解を招きやすい。

みんなが等しく寿命が縮まるものではなくて、

子どものうちに影響が現われる子もいれば、天寿を全うする大人もいる、

そんななかで私たちはすべて個々のケースを生きているワケだから、

こういう時の平均値とはマジックのようなものだ。

まあ雑学程度に留めておこう。

しかし、どうやって計算したんだろう・・・

 

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さて、大地を守る会がモニターを募って実施した陰膳検査

『放射能測定 おうちごはん』 についても、

早野さんはチェックしてくれていて、以下のようなコメントとなった。

 

  結果はすべてND。 ほぼ予想通りである。

  残念だったのは、福島産の食材を食べている人のデータがなかったこと。

  ぜひ 「福島&北関東の農家がんばろうセット」 を毎週食べている人の

  サンプルが欲しかった。

  食材データを見ると、九州のものが多く、外国産が続いている、という傾向。

  産地に気を使っていることが見てとれる。

   (モニターに手を上げる人たちなので、特にそうなったものと思われる。

    ちなみにモニターは大地を守る会の会員とは限らない。)

 

  日本人は、特に都会の人は、実にいろんなものを食べている。

  その地域のものを毎日食べている、という人はほとんどいない。

  それがチェルノブイリのデータと違ってくる要因でもある。

  これは不幸中の幸いかも。

 

内部被ばくのリスクは、当初思っていたより低い。

そういうデータがそろいつつある。

普通の消費者が、どんどん内部被ばくしているという状況ではない。

しかし油断は禁物である。

WBCや食品検査は継続してやらなければならない。

(大地を守る会の陰膳検査も、継続データが欲しい。)

 

食品による内部被ばくが意外と低い結果が出てきている要因には、

様々な幸運があった。

牛乳や牛肉の汚染に対して取った規制は一定の効果があったし、

土の力にも救われている。

そして何より、生産者が実によく勉強し、努力されていたことである。

引き続き、頑張りましょう。

 

第2部の津田大介さんとのセッションは、次に。

続く。

 



2012年7月24日

連続講座第3回 -測定を市民の手に(Ⅰ)

 

『大地を守る会の 放射能連続講座

 ~ 食品と放射能:毎日の安心のために ~ 』 第3回

7月21日(土) 13:30~16:00,

千代田区立日比谷図書文化館 「コンベンションホール」 にて開催。

今回のテーマは、

「測定を市民のために ~陰膳法から学ぶ~」

講師は、東京大学大学院教授・早野龍五さん。

ナビゲーターは、ジャーナリストの津田大介さん。

ツイッター界(?) では名の知れた大物二人を招いての贅沢な講座となった。

(いやホント、この6回シリーズはかなりゼイタクだと自分でも思っている。)

 

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           (今回の写真はすべて、(株)大地を守る会・企画編集チーム 高橋玲子撮影)

 

お二人は、とても素晴らしいテンポで、しかも分かりやすく、進めてくれた。

まずは早野さんの講演から-

 


早野さんはまず、昨年3.11以前の自分がどうだったかを明かした上で、

3.11後の変化を語り始める。

原発事故に関する最初のツィートは、3月12日14時22分。

放射能の検出から  " 何かが起きている "  ことを暗示した。

以後、発表された事実やデータを解析しながら、状況を伝え続ける。

それまで2500人くらいだったフォロワーが15万人に膨れ上がった。

 

ちょうど一年前の今くらいに、これは何とかしなければ

と思ったのが内部被ばくの問題だった。

そして文科省に 「陰膳法」 と呼ばれる給食丸ごと検査を提言したのが9月。

南相馬市にも提案したが、費用は自分が持つからと説得して、

ようやく今年の1月から実施できるようになった。

(この辺の経過は、朝日新聞で連載されている 「プロメテウスの罠」 でも紹介された。)

 

また南相馬市や平田村の病院から相談を受け、

ホールボディカウンター(WBC) を使っての住民の健康調査にも

協力するようになった。

 

こういった経過を、年表に表しながら話を進める。

昨年10月21日のニコニコ生放送で早野・津田・戎谷が出会ったこと、

そして最後の行が今年7月21日-「津田・戎谷との再会」 と、

年表に記されているところが、ニクイ。

 

早野さんは、参加者に 〇 X カードを配り、クイズをはさみながら

基本的な知識や今の状況を確認していく。

・今も私たちは (ウラニウム等による) アルファ線からの内部被ばくを受けている ⇒ 〇

 自然界や建築物等からも放射線は飛んできている。

 ウラニウムはアルファ線を出して崩壊しラドンに変わる。

 ラドンは肺に入り、肺ガンのリスクをもたらす。

 米国環境保護局(EPA) は、それにより年間2万人以上が肺ガンで死んでいる、

 と見積もっている。

・外部被ばくも内部被ばくもリスクは同じ ⇒ 〇

 外部も内部も、体を傷つける最後のプロセスは同じである。

 Sv (シーベルト) という単位は、両者を同じ土俵で比べられるように作られたものだが、

 設定された計算方法には異論もあり、この単位は使わないという学者もいる。

・現在でも水や食品にヨウ素131が含まれている危険性はあるか ⇒ ×

 今では食品からヨウ素131が検出されることはなくなっている。

・ホールボディカウンターと食品検査の原理は同じである ⇒ 〇

・・・・・といった具合に解説つきで進められる。

 

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昨年9月に文科省に給食検査を提言した際には、

文科省からは 「やりたくない」 と言われたそうだ。 出たらどうするんだ? と。

行政の思考回路をよく表わしているエピソードだ。

結果的に今年の4月から文科省予算で実施されるようになったが、

文科省管轄でない保育園には助成されない。

しょうがないから保育園ぶんは、寄付を募りながら今も自費で測っている。

ちなみにその費用は、1件1万5千円。

一週間(5日=5食) 分の給食を丸ごとミキサーにかけて測定する。

 

給食丸ごと検査は、ゲルマニウム半導体検出器でやるべき、

と早野さんは主張した。

そこでゲルマと NaI シンチレーション型検出器の精度の違い

についての解説が入る。

 

さて、ここで1Bq(ベクレル) という測定結果が出たとする。

では同じ検体をもう一回測ったら、同じ結果になるか ⇒ ×

放射線の放出は一定ではない。 これが放射線測定の厄介なところである。

測定して出てくるスペクトルの形は毎回変わる。

したがって測定には時間がかかる。

 

給食丸ごと検査の問題点は、結果が食べた後に出てくる、ということ。

この方法がはたして市民に受け入れられるだろうか、

早野さんは心配してネットでアンケートを実施した。

2日で7千件の回答が寄せられ、

90%が 「後からでも事実を知りたい」 という声だった。

この声が、文科省への進言へと早野さんの背中を押したのだった。

 

疲れたので続く。。。

 



2012年7月19日

郷酒

 

 - と書いて、「さとざけ」 と読む。

初めて聞いた、という方も多いことと思う。

それもそのはず、これは最近生まれた言葉である。

全国各地に点在する36の小さな蔵が集まって活動する

日本地酒協同組合」 が新たにつくった造語。

 

「郷酒(さとざけ)」 は 「地酒(じざけ)」 とは違う。

「地酒」 とは、その土地で造られた地の酒という意味だけど、

特に原料までは規定していない。

それに対して 「郷酒」 とは、原料である米からして地元で栽培したお酒、

というこだわりを表現したもので (もちろん仕込み水も)、

長年、日本地酒協同組合を引っ張ってきた元理事長(現在は専務理事) である

大和川酒造店代表・佐藤弥右衛門さんは、

「これからは、この言葉を広めていきたい」 と目論んでいる。

 

実は 「地酒」 という言葉も、知られていない各地の銘酒に光を当てようと、

日本地酒協同組合が 「全国地酒頒布会」 を催してから広まっていったものと聞いている。

で、これからは 「地酒」 じゃなく 「郷酒」 だと?

そう。

何を隠そう、その 「郷酒」 をもって全国新酒鑑評会2年連続金賞受賞

という栄冠を勝ち取った蔵こそ、

会津・喜多方の 「大和川酒造店」 に他ならない。

 

というわけで昨夜(7月18日)、

大和川酒造の2年連続金賞受賞を祝って、

「郷酒(さとざけ) を楽しむ会」 なる催しが開かれたのだった。

場所は池袋・東武百貨店バンケットホール。

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全国新酒鑑評会に出品するお酒の多くは酒造好適米 「山田錦」 で造られている、

という話は日本酒愛好家の間では常識である。 

山田錦の産地は兵庫県で、蔵の腕を競う鑑評会のために多くの蔵は、

その山田錦を兵庫県から仕入れている。

 

この風潮に敢然と立ち向かったのが、大和川酒造店だった。

地元の米を使ってこそ地酒屋であろう、という意地と誇りをかけて、

自社保有の田んぼで山田錦の栽培に挑んだのだ。

暖地の米である山田錦を雪深い会津で育てる。 これは暴挙に等しかった。

雪の中で稲刈りをやった話など、何度となく聞かされたものだ。

しかし苦節13年、今や自社農場 「大和川ファーム」 は

酒造好適米の横綱 「山田錦」 栽培の北限地と言われ、

そして2年連続の金賞、という栄誉をゲットしたのである。

 

お祝いに駆けつけた応援団を前に挨拶に立つ九代目・佐藤弥右衛門さん。

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右が工場長&杜氏を務める弟の和典さん。

左が大和川ファームの責任者、磯辺英世さん。

 

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集まった酒客たち。 

 

次世代も育ってきた。

長男の雅一さん。 右が次男の哲野(てつや) さん。 

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去年のパーティ は、震災と原発事故もあって感動もひとしおだった。

今年はだいぶ落ち着いた趣になったけど、 

復興はまだまだ終わっていない。

 

九代目弥右衛門の宣言。

「福島はこれから、食だけでなくエネルギーでも自給率100%を目指す!」

 

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おめでとうございました。

これからも共に-

 



2012年7月16日

幕張から連帯の意思表示だけは・・・

 

九州北部豪雨の被害が報道されている。

「これまで経験したことのないような大雨」 と

気象庁も今までにない予報の出し方で、

当会の生産者でも、床下浸水、床上浸水といった情報が入ってきている。

特に阿蘇がヤバイ状況だ。

大和秀輔さん宅は床上浸水で家の中にまで土砂が入った、とのこと。

家具も電気製品も、そして農機具も使えなくなったかもしれない。

冠水し土砂が流入した田んぼは、今年の有機JAS認定も難しいだろう・・・辛い話だ。

それでも 「なんとかするしかなかと」 と、大和さんの声は力強い。

 

そして農産物への影響とかは、後から現われてくるワケで、

いろんな人の顔が浮かんで、心配は尽きない。

 

一方、東京は暑い一日だった。

代々木公園の 「さようなら原発10万人集会」 には行けなくて、

朝から夕方のデモまで貫徹された方々には

申し訳ない気持ちで一杯です。

 (けっして遊んでいたわけではありません。)

 

行かなかったくせに言うのは憚られるけど

(行ける時は行ってますので、許して~)、

10万人を超える人たちが結集したことは、

間違いなく力となって伝播していくはずです。

このパワーを持続・拡散させることが肝心。 頑張りましょう。

 

7月16日、幕張から連帯の意思だけは、伝えておきたく。

 



2012年7月15日

麗しの山河と 時間を返してくれ!

 

久しぶりに日曜日らしく、奥武蔵の川辺から。

 

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今年も河鹿蛙(カジカガエル) の美しい鳴き声がこだまして、

わずかだけれどホタルも確認できた。

もう少ししたら梅雨が明けて、

夕方の陽射しが少し柔らかくなったかと思う頃になると、

蜩(ヒグラシ) の合唱に覆われる。

そんな森と川から涌いてくる生命の鼓動に包まれながら長湯するのが、

僕にとってのささやかな、かつ最高の癒しのひと時になっていて、

勤務地がどんなに遠くなっても、この時間は捨てられない。

 

この癒しタイムが減ってしまったのは、ゲンパツのせいだ。

お願いだ。 慰謝料は請求しないから、時間を元に戻してもらいたい。

 


 

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おとといも首相官邸前には行けなかった。

報道によれば、唱歌 「ふるさと」 を合唱する人たちがいたという。

日の丸と一緒に 「子どもたちの命と麗しき山河を守れ」 と掲げた一団もあったとか。

 

兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川  ・・・

風呂場で口ずさんでみても、心は晴れない。

どうにも消すことのできない汚らしい塵をかぶってしまった山河。

ホタルの光に向かって、すまないねと詫びる悔しさ。

腹の底から憎むぞ。

 

「脱原発依存」 というヘンな言葉が生まれた。

その依存度が何%かで有識者の意見は分かれるのだそうだが、

冷静に分析していると思われている方々には、

以下の疑問を解いていただきたい。 お願いです。

 

 1.問題は、何基まで減らしたか(何基稼動させるか) ではないでしょう。

   リスクは稼動数ではなくて、「稼動」 そのものにあると思うのですが、

   リスク対策はさて、どのように前進したのでしょうか。

   事故が起きないという保証は、この1年でどのように確立されたのでしょうか。

   福島の苦しみを想像しながら、お答えいただきたい。

 2.すべての産業の努力も、未来への保証システムも水の泡になるような、

   そんなリスクを背負える者はいない。

   だれも責任など取れないと思うのですが

   (それを証明しているのが今の状況でしょう)、いかがでしょう。

   「首相の責任」とは、誰に対するどのような責任を言っているのか、

   正直にご説明いただきたい。

 3.廃棄物管理まで含めた原発の経済収支を、

   その業務が終わるまでの年月で計算して明らかにしてもらえませんか。

   それは国民が、何百世代ローンみたいに払い続けることになるわけですから。

   中途半端に継続することのメリットがあるのか、知りたいです。

 

依存率を下げても、危険度は変わらない。

依存率を下げても、将来へのコスト・アンバランスは (原発の数だけ)上昇する。

依存率を10%とか25%の水準に維持するというのは、

「推進する」 ということ以外の何ものでもない (でなければ10%ですら維持できない)。

というのが僕の認識ですが、間違っていますか。

 

世界が自然エネルギーのイノベーション競争に入っているのに、

いったい何を脅えているのか、と思う。

昨日までの 「推進派」 が、隠れ蓑に使っているかのような 「脱・依存」 には

思想もビジョンも、計画もないように見える。

なんと腰の据わらない言葉だろうか、と思う。

いや、言葉のカラクリのなかに 「推進」 を潜り込ませたのだ。

ま、首相の 「決断」 は、「脱・依存」 などという弱腰ではない、

という本音を露わにさせたもの、とも言えなくもないような。。。

 

・・・とか考えてしまうこと自体、腹が立つ。

貴重な日曜日、今このひと時の、優しかった時間を返してくれ~

と叫びたくなる。

ゲンパツってまるで、

エンデの小説 「モモ」 に出てくる灰色の男 (時間泥棒) みたいだ。

いや灰色の泥棒なんかじゃない、強盗に近い。

しかも大事な、秘密の部屋まで荒らされて。

 



2012年7月13日

ただしい食事こそ・・・ 後半戦

 

7月7日に開催した 「放射能連続講座」 第2回の後半レポート。

 

白石さんの講演の後、

コーディネーター・鈴木菜央さんの進行によるワークショップが展開された。 

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「 まずは周りの方々で4人一組になって、

 それぞれのグループで白石さんへの質問を考えてください。」

 

そんなにすぐに会話に入れるのか、少々心配していたのだが、

まったくの杞憂だったみたい。

どんどん会話が弾みだすのだった。 

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質問を紙に書いてもらって、休憩に入る。

30枚ほどの質問票が届けられ、15分の休憩タイムの間に

鈴木さんと白石さんと我々で仕分けしながら、チョイスする。 

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この作業、けっこう焦る。

ある程度の傾向を読み取りながら整理し、

それをもとに鈴木さんの司会で質疑応答となる。 

 

Q.外食する際に被ばくを少なくするための注意点があれば-

A. お店の食材のルートが分からなければチェックしようがない。

   お店の考え方や姿勢が信頼できるところを選ぶしかないのかも・・・

Q.茹で汁や煮汁を捨てた場合、 結局環境を汚染することになると思うが-

A.良心の呵責はあるが、自分の身を守ることを優先するなら、そうするしかない。

   除染に使った水なども、今はそのまま流れてしまっているのが現状。

   国の責任だが、この対策は厳しい。

Q.京都大学の小出先生が 「調理などでは減らない」 と言われたのを聞いたが-

A.いろんな分野の方が書いたり話されたりしているが、

   自身の専門分野以外のことでは あまり軽々しくコメントしない方がよい。

   食品栄養学の立場からこの研究をやってきた者として、

   「やれば効果がある。 その方法はある」 とは言っておきたい。

Q.玄米や海草など効果あるものは溜まりやすいものでもある、

   とのことだが、ではその効果とリスクをどう考えて選択すればいいのか?

A.要は程度の問題。 測定結果を見て安心できるレベルであれば

   その食品のプラス効果を期待できる。

   その意味で(選択材料としての) 表示が重要である。

   表示があれば、自分の被ばく量を計算しながら選択できる。

 

などなど・・・・

放射能という問題は、明解な回答が出せない。 悩みのようなものが多い。

より詳細を聴きたい方は、ぜひ USTREAM のアーカイブで。

http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/ 

 

白石さんの主張は、

1960年代から最近まで続けられていたという全都道府県での陰膳法の復活と、

全品検査体制の構築、である。

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白石さんが提唱する陰膳法については、

いまそれを説いて回っている早野さんを呼んで、次回きちんとやりたい。

また水産物や海の問題についての質問は、第4回に。

内部被ばくの問題をもっと詳しく、という要望には、第5回と第6回で。

ということでお許しを願う。

 

また白石さんが強調したことで、

アンケートには、全品検査をすぐにやってほしい、という声が多数寄せられた。

これは実は、すぐにやれることではない、ということが伝えられなかった。

 

白石さんの説明を正確に聞き取ると、

「米、水、牛乳、、、という形で、重要なものや必要なものから

 順々に全品検査をやれる体制を早く作るべきだ。」

つまり、すべてこれから、なのである。

 

全品検査ということは、出荷する段階で、あるいは入荷した段階で、

全てをベルトコンベア式に機械を通過させて短時間で測る形になるが、

それを可能にする機械が、ようやく開発されてきた段階である。

民間団体でそう簡単に配備できるものでもなく、

またどの程度の測定精度でやれるかの検証も必要である。

今の機械での 「検出限界値」 未満のレベルまで気にされる方々には、

その不安を取り除けるものには、おそらくならないと思われる。

そもそもそれだって、何でも測れるわけではない。

いま実用化されつつあるのは、

30㎏の紙袋での保管が規格化されている米だけである。

ただこれによって、基準を超えるものの 「すり抜け」 防止効果はある。

問題は、その基準が納得できるかどうか、だね。

 

質問コーナーの後はもう一度、

「みんなで今日学んだことを話し合って、シェアしてください。」

 

 

白石さんも輪に入ってくれる。

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なんか、いい感じだ。 

 

最後に数名の方に話し合ったことを発表してもらったが、

参加者同士で不安をシェアすることはできても、

決定的な  " 安心 "  にはまだつながっていかない感じである。

難しい・・・・・

 

白石さんが最後に強調する。

国がどうと言うことは言えたとしても、食に関しては、

最後の責任は自分である。 選ぶことができない子どもに対する責任は、親にある。

重たい言葉だった。

 

ワークショップは、他の方と悩みを話したり聞いたりできてとても良かった、

という声を多く頂いた半面、

慣れない人や面倒な人には不評も買ってしまったようだ。

すべての人を満足させることはできないのだろうが、

一人でも多くの人の期待を吸収できるよう、いろいろと試行していきたいと思う。

 

次回は、7月21日。

ツイッター界の大物二人、早野龍吾さん Vs.津田大介さん、です。

テーマは、「測定を市民の手に」。

まさにうまくつながったように思う。

乞う、ご期待。

 



2012年7月11日

耕し続けたい! の思いを込めた野菜セットを

 

番組の途中ですが、お知らせを一つ。

 

宅配会員の方々には今週のカタログと一緒にチラシが入っているかと思いますが、

僕の所属する専門委員会 「米プロジェクト21」 からの応援企画である

『 ~里山の有機農業とつながる~

 会津・山都の若者たちの野菜セット』 も、

早いもので5年目のご案内となりました。

 

このセットをつくるのに結成された 「あいづ耕人会たべらんしょ」 を代表して、

浅見彰宏さんからメッセージが届けられたので、

ここでもぜひ紹介させていただきたいのです。

 

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 ( 「たべらんしょ」 のメンバーたち。

  後ろ左から二人目、愛犬を抱いているのが浅見彰宏さん。)

 

今年は3月11日に最初の種を播きました。

まだ辺りには 1m もの雪の残る中、鎮魂と希望の思いを込めた種蒔きでした。

その野菜たちも気温の上昇とともにぐんぐん育ち、

間もなく収穫の時を迎えます。

 


昨年の今頃、私たちは不安の中にいました。

未曾有の放射能漏れ事故で、一体これからどうなっていくのか。

会津での放射能の影響はどれくらいなのか。

福島で農業が続けられるのだろうか。

不安を払拭するために、

そして今まで通り安心な農産物を作り続けることができるのか

確認するために、収穫のたびに野菜を検査に出しました。

そしてうれしいことに、放射能が検出されることはありませんでした。

 

風向きの影響で、喜多方市山都町での放射能の降下はわずかに留まりました。

しかしその偶然の上に胡坐をかいていくわけにはいきません。

と同時に有機農業の基本である土づくりや循環を

断ち切ることもしたくはありません。

ゆえに今年は農産物だけでなく、田畑に投入する堆肥やぼかし、

米糠、鶏糞などの有機質肥料も放射能検査をしています。

これ以上の放射能の蓄積や拡散を防ぐため、

そしてこれからも会津で安心な農産物を生産し続けるために。

 

一方で残念ながら福島全体では、農業はますます苦境に立たされています。

昨年の混乱の中、多くの農民や研究者の努力や検証の結果、

会津だけでなく中通りや浜通りでも放射能の作物への移行は

予想以上に少ないことが判りました。 そのメカニズムも判りつつあります。

福島の豊かな土壌は、降下した放射性物質の多くを土中に吸着させ、

農作物への移行を防いだのです。

 

しかし放射能は土壌だけでなく、農家の心にも大きな影を落としました。

先祖伝来の土地で耕し続けることはおろか、住む所さえ奪われた人たち。

土地を耕し作物を育てたことをなじられ、

被害者がまるで加害者のように言われたこと。

真摯にデータを取り、公表することが一部の人には理解されないこと。

そしてこの春には

県内の一部の地域では新たな作付禁止、制限指示も出されました。

誰かのせいで勝手に降り注いだ放射能を、

農家自身が骨を折って除染しなければならないという現実。

その厳しさを前にあきらめという気持ちが広がっています。

あれだけ美しかった福島の豊かな農村風景が、

まるで櫛の歯が抜けるように、壊れ始めています。

それはただ農地が荒れていくだけではありません。

地域社会が壊れ始めているのです。

 

だからこそ、今までと同じように農業と向き合え

土に触れることができる有難さを、

私たち 「あいづ耕人会たべらんしょ」 は昨年よりも増して感じます。

そしてこの幸運に感謝し、耕せる以上は、

できなくなってしまった人たちの思いも込めて耕し続けなければなりません。

 

今年も山都町にはたくさんの新規就農希望者が集まってきてくれました。

彼らも近い将来、福島の代弁者・後継者にきっとなってくれるはずです。

そんな私たちの思いも一緒に、

野菜セットを味わっていただければうれしいです。

 

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山都(やまと) という美しい名の中山間地の村で、

有機農業に挑む若者たちと出会って5年になる。

つないでくれたのは、

米の生産者・稲田稲作研究会や蔵元・大和川酒造店と一緒に開発した

純米酒 「種蒔人(たねまきびと)」 だった。

山都に入植し、冬は酒蔵で働く浅見さんと出会い、

当地で有機農業を実践・指導する 「チャルジョウ農場」 の

小川光・未明(みはる)父子とつながり、

そこで鍛えられた若者たちによる野菜セットが初めて届いたのが、

4年前の秋のこと。

以来、少しずつでも継続できる喜びを、彼らとともに噛みしめてきた。

 

原発事故と放射能汚染という過酷な事態を経験しながらも、

ここ山都には、有機農業を目指す若者が途絶えることなくやってくる。

彼らはやがて里山や水系を守る柱となってくれることだろう。

未来への希望を捨てない、未来を信じる若者たちが育てた野菜。

彼らが守ろうとしている会津の伝統品種も、さりげなく入ってくるはず。

 

一人でも多くの人に食べてほしい!

今年はホントに、ホントに、そう思うのであります。

 



2012年7月 8日

ただしい食事こそ最大の防護

 

来週は行かなくちゃ・・・と言いながら、

結局仕事が終わらず、6日(金)の首相官邸前も行かずじまい。

7時半頃、大学時代の仲間からのコールがケータイに入る。

「久しぶりに会えるかと思って電話したのに・・・」

帰りに東京駅あたりで一杯やろうか、というお誘いである。

残念。

6日のデモの数は、主催者発表15万人。 前週より5万人減った。

逆に警察発表は2万1千人。 4千人増えている。

不思議だ。。。

 

で、昨日は 「大地を守る会の 放射能連続講座」 第2回。 

『ただしい食事こそ最大の防護』 と題して、

元放射線医学総合研究所 緊急被ばく医療研究センター・内部被ばく評価室長、

白石久二雄さんの講演。

 

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運営責任者となると、なかなか講演に集中できない。

ここは白石さんが用意してくれたペーパーをもとに、

ポイントと思われる点を抽出しておきたい。

 

まずは3.11前の、つまり原発事故以前のデータを押えておきたい。

日本人は一人当たり平均、年間 3.75mSv(ミリシーベルト) の被ばくを受けている

(正確には、「受けていた」)。

大きいのが医療被ばくで2.25mSv。 次いで自然放射線からの被ばくが1.48。

他にフォールアウト(降下物) による被ばくや航空機利用によるもの、

職業被ばくなどがあるが、上記の二つでほぼ100%(3.73mSv) である。

 

自然放射線からの被ばく(1.48mSv) は、外部被ばくと内部被ばくの総計であり、

ここで問題とする食事による内部被ばく(経口摂取量) は 0.41mSv である。

これをベクレル(Bq) に換算し直すと、135Bq になる。

その内訳はカリウム-40が半分を占めていて、以下、炭素-14、トリチウム、

ルビジウム、ポロニウム、鉛・・・と続く。

人工放射性核種で 0.1Bq を超えるものはなかった。

 

これに事故後、人工放射性核種による内部被ばくが追加されたことになる。

(比較して語る人がいるが、ここは足し算で考えなければならない。)

それはできるだけ避けるべきものである。

どうしても避けられない場合は、" できるだけ "  影響を低減化させたい。

最近の日常食調査を見ると、実際に口にする放射性セシウムは、

被災地周辺で1日あたり1桁のベクレル数 (食材により一部の人は2桁) であり、

1960年代の核実験に伴うフォールアウトの多かった時と同等レベルである。

ただし調査件数はまだ少ない。 調査数と頻度を高める必要がある。

 

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内部被ばくには、呼吸と食事による経口摂取がある。

呼吸については、高レベルの付近に近づかない (できるだけ遠ざかる)、

マスクをするなどで体内への取り込みを防止する。

食物摂取に関しては、栄養学と放射線防護学に基づく基本原則から、

以下の5項目を心がけることが大切である。

 

1.可能な限り放射性物質の含有量の低いものを摂取する。

2.調理、食品加工法により食事中の放射性物質を減らす。

3.生体内での放射性物質の吸収と蓄積を制限する。

4.生体内から放射性物質の排泄を促進する。

5.被ばくに対する生体の抵抗力(免疫力)を強化する。

 

そこで、家庭での除去法、洗浄や料理方法の工夫、となる。

水洗い、皮をむく、浸す・茹でる・煮る、塩や酢の利用、

表面積を広くする(細かく切る)、

前処理なしでの油いためや天ぷらは避ける(中に閉じ込めてしまう)、など。

これらによって10~80%の除去が可能である。

白石さんによれば、これは1960年代、

核実験が頻繁に行なわれていた時代に調査研究されたことだと言う。

 

ヨウ素131 など半減期の短い核種対策では、加工保存も有効である。

また大部分の放射性核種は水溶性である。

牛乳であれば、乳清と脂肪分を分離して

バター、チーズにして食べればほとんど防ぐことができる。

汚染牛だと言って、せっかく搾乳した生乳を捨てる必要はなかったのではないか。

 

放射性物質の体内での吸収をできるだけ下げるために、

ヨウ素(I)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)などのミネラル類と

食物繊維の摂取が推奨される。

放射性セシウムの吸収阻害、排泄促進にはカリウムとペクチンが有効。

放射性ストロンチウムには、カルシウムや

海草類に含まれる食物繊維の1種、アルギン酸塩が良い。

ただしこれらの食品群には放出されたセシウムやストロンチウム等の放射性物質も

同時に濃縮されやすいので食材の選択には注意が必要である。

(測定して確認できたものを摂る、ということ。)

 

平素からバランスのとれた食事を摂り、体の免疫力を高めることが重要である。

海草類や発酵食品を主とした伝統食である  " 和食 "  の見直しを提案したい。

詳しくは拙著 (『福島原発事故 放射能と栄養』 等) を参考にされたし。

 

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放射線防護の専門家の一人として、次の3点を特に提案したい。

1.定期的な陰膳法の実施。

2.全品検査の早期体制整備と商品のベクレル表示。

3.被災住民の健康診断の継続的実施。

 

一般の人々には、日頃から放射能の知識を蓄えることが必要である。

安全神話によって教育現場での放射能の指導は皆無に近い。

また一見、食生活には関係ないように見える

" アメーバ汚染 "  と  " 都市濃縮 "  が国内で進行している。

廃材、煤煙、焼却灰、建築材料など人の経済活動によっての汚染拡大は

最小限にとどめるべきである。

 

白石さんの講演後、コーディネーターの鈴木菜央さんの進行によって、

「簡単なワークショップをやりながら進めましょう」 となる。

すみません。 後半は後日。

 



2012年7月 5日

『日経エコロジー』 誌で対談 -放射性物質の「基準」について

 

今日は港区白金にある 日経BP社 に直行する。

「日経エコロジー」 という雑誌の対談に呼ばれちゃったのである。

テーマは、食品における放射性物質の 「基準」 について。

対談の相手は、横浜国立大学の松田裕之教授。

環境リスクマネジメントが専攻で、日本生態学会会長、

(社)水産資源・海域環境保全研究会会長という肩書も持っておられる方。

 

「日経エコロジー」 編集長・谷口徹也氏の説明によれば、

同誌に 「論点争点」 というコーナーがあって、そこで

環境に関連した様々なテーマで意見の対立する方を呼んで

対談をしていただく、という企画で、今回が4回目との事。

論敵(?) を用意されては、逃げるワケにはいかない。

「まあ、実際は激しくやり合うようなことはないですが。」

そりゃあね、雑誌の対談となればそれなりに紳士的にやらなきゃ、とは思う。

 

松田教授も、お会いして開口一番、

「ネットで拝見させていただきましたが、あんまり対立はしないような気がするなあ。」

本ブログもチェックされたようで、恐縮する。

とはいえ、基準に対する基本認識は、やはり明確に異なっていた。

松田先生の考えるところは、以下のようである (文責はもちろん戎谷)。

 


放射線防護の基準設定については、国際的に認められている

ICRP (国際放射線防護委員会) の考え方に沿って対処すべきである。

ICRPによれば、基準には平常時と非常時の考え方がある。

事故が起きてしまい、放射性物質の今後の影響など分からない段階である今は、

まだ別な(非常時の) 基準が設定されて然るべきである。

あまり厳しい基準を設定しては、被災地の農漁業の復興を妨げる要因になりかねず、

これは新たな人災につながる。 リスクマネジメントになっていない。

 

「食べて応援しよう」 と頑張っている人たちがいる。

実際には、食品から1mSv を超える内部被爆を受ける心配はほとんどなくなってきている。

ここで行政が更なる規制をかけることは、被災地の農漁業者と消費者を結ぶ

絆を断ち切る行為である。

「復興の目途がつくまでの間」 は、暫定基準を継続させるべきだと考える。

 

僕の主張は、違う。 うまく喋れたかどうかは分からないけど。

「食品の基準」 というのは、食べる人を守るためにある。

それをきちんと遵守する生産が保証されて、人々は安心して暮らすことができる。

復興支援はとても大切なことだが、そのために基準を緩めるということは、

食べる人にリスクを負わせることになり、食品基準としては本末転倒である。

それで絆が生まれるとは思わない。

本来は最初から適切な (松田先生の言う " 厳しい " ) 基準を設定して、

きちんと水際で防ぎ (それは生産地で徹底することが望ましい)、

基準を超えたものや地域は、徹底して国が支援する。

それに信頼を寄せられる政策と実行が伴ってこそ、絆は醸成されてゆくんだと思う。

特に放射性物質の規制においては、

細胞分裂が活発な子供と、産む性である女性を保護する観点が

ベースにならなければならない。

 

しかも、教授の言う通り、今はいろんな食品を測定しても相当に安定してきている。

ほとんどがND(不検出) である。 もちろん機械の 「検出限界」 にもよるが。

であるならばむしろ、" すでにこの水準に落ち着いてきている "  ことと、

" これ以上、(残留を)超えるものは市場に出さない "  という強いメッセージを

国民に送るべきだ。

国の責任と生産者のモラルにおいて宣言するくらいの意思が欲しい。

 

したがって、大地を守る会の基準は

1.「内部被ばくはできるだけ低く」 という予防原則に立つ。

2.その上で、生産者が達成できる・すべき指標として基準値を位置づける。

3.基準値や分類は、実態や推移を見ながら継続的に見直していく。

4.測定の継続・強化と、結果の「情報公開」を行なう。

5.絆を断ち切る原因の大元である 「原発」 に反対する。

もうひとつ付け加えるなら、

6.まだら状に降り注いだ放射性物質による影響は未だ不明な点が多く、

  仮に基準値を超えるものが出た場合には、生産者を切り捨てることなく、

  情報を公開して販売を継続する。

というもの。

毎日々々測定を実施しながら、2月に辿りついた見解である。

 

松田先生は 「基本的に賛同できる」 と言ってくれた。

特に 6 の観点を評価してくれた。

二人の方向が異なってゆく原因の一つは、

健康に影響を与える水準についての考え方だろうか。

できるだけ低く、という要求を流通が生産者に押し付けるのは、

被災地に対して厳し過ぎると、というのが教授の見解である。

 

「年間1mSv で健康リスクが発生することはない」 か?

これは極めて大きなテーマだ。

いま始めている連続講座の終盤戦は、このテーマに焦点を当てている。

 

低線量被ばくのリスクを厳しく見積もる学者と、ICRP基準でよいとする学者が、

それぞれ別な場で主張し合っている。

松田先生に求めることではなかったかもしれないけど、

「この図式を何とかしてもらえないか」 と愚痴ったところ、

「そもそもECRR (欧州放射線リスク委員会) の低線量に対する見解

など、日本の学会には入ってないんじゃないか」 ということらしい。

しかし不安に駆られる人々にとっては、リスクの高い情報は忘れられないのだ。

これは当たり前の防衛本能である。

何とかしてほしい。

 

松田Vs.戎谷 -単純にどちらが正しいというものではないのだろう。

決定的な違いは、公共政策のあり方を考える人と、

生産と消費をつなぐ流通現場にいる者との違い、なんだよね。

僕からの要望。

「 国は、国の基準の適切さを必死で訴えてもらいたい。

 その上で、ゼッタイに基準を超えるものは市場に出さないことを担保してほしい。

 とにかく公共基準をだれも信用しない社会は、不幸である。」

 

「我々はその上で、生産者とともにさらに高い水準の達成を目指す」

という真意も含めて語ったつもりなのだが、この辺は話しきれなかった。

マスで、つまり全体の市場規模で考えざるを得ない行政にとって、

個別事業者が取り組む 「食の安全」 はうるさいハエか、

目の上のたんこぶのように見えるのかもしれないが、

安全性の向上を目指す民間の取り組みは、敵ではないのだ。

水準を上げていく先行事例として応援してもらいたいくらいなんだけど、

行政の方々にはそのへんがどうにもご理解いただけない。

 

教授とはもっと意見を交わしたかったのだが、

時間切れとなってしまった。

あとは編集者がうまくまとめてくれることを祈るのみ。

 

この対談は、『日経エコロジー』9月号に掲載予定とのこと。

ご興味を持たれた方は、書店にてめくってみてください。

 



2012年7月 3日

連続講座-予告と、第1回のアンケートから

 

6月30日(土)、株主総会終了。

7月1日(日) は、「稲作体験」 の第2回目の草取りの日だったのだが、

実行委員諸君に頭を下げてパスさせていただき、

急ぎの宿題をこそこそとやっつける。

(総会終了後に、飲んじゃったのがいけなかった・・・)

 

そうこうしているうちに、「放射能連続講座」 第2回の開催が近づいてきた。

講師をお願いした白石久二雄さんからはレジュメが届き、

コーディネーターをお願いした鈴木菜央さんには時間割の最終案を送る。

鈴木さんからは、講演後の質疑応答の時間を

" ワールド・カフェ "  的なワークショップにして、学びを全体で共有したい、

という提案を受けている。

200名規模でのワークショップが短時間でうまくいくか、

不安とワクワク感がないまぜになって、落ち着かない。

 

本日夕方、当日の運営に協力いただく専門委員会「原発とめよう会」 と打ち合せ。

ワークショップの進行をシュミレーションしてみて、

どうもスタッフが足りないことに気づく。

慌てて社員のみんなに、協力要請のメールを出す。

・・・・・ ま、そんな調子で、当日うまくいったらお慰み。

白石さんには、「多少の混乱は楽しんでください」 とメールを打った。

 

当日来れない方には、ぜひ USTRAM 中継をご覧ください。

質問も受け付けます。

概要は HP にて ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/

 

第3回のコーディネーターも決定しました。

ジャーナリストの津田大介さん。

J-WAVE 「JAM THE WORLD」 のナビゲーターの他、

最近ではNHK深夜の番組 「NEWS WEB 24」 のネットナビゲーターとしても活躍中。

早野龍吾 × 津田大介。

僕にとっては昨年11月のニコニコ生放送以来の顔合わせで、

もうすっかり大船に乗った気分。

この講座に向けて、ネットで募った  " 陰膳(かげぜん) 測定 "  の結果も

「放射能測定 おうちごはん」 と銘打って、HP で公開中。

 ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/kagezen/

早野さんには、この結果についてのコメントもお願いしています。

 


ただ第3回で考えたい本来の目的は、

これから 「測定」 という武器をどう活用していくか、にあります。

昨年のように、必死でたくさんの食材をやみくもに測る段階から、

対象を絞り込んでよいところは絞り込み、必要なものは継続的に調べ、

生産者にフィードバックして、有効な対策を立てる。

では消費者の安心のために貢献できることは何か

 -  その一つのヒントとして陰膳法での測定にトライしてみました。

ゲルマニウム半導体検出器が1台、

ガンマ線スペクトロメーターが6台 (うち2台は生産地に貸し出し)、

トータルでウン千万もする道具を、しっかりと

安心の絆を取り戻す力にしていくために、考えてゆきたいと思っています。

第3回は現在、申し込み受付中です。

 

さて、予告だけでなく、終わってからの振り返りやフォローも必要ですね。

たくさん返ってきた第1回のアンケートから、

これはお答えしなければならないと思った声は、

少しずつでも取り上げてお返事をしていきたいと思います。

 

後半の質疑応答で、僕が  "本音として言わせてもらえれば・・・"  といって

出してしまった言葉。

「京都大学の小出裕章先生が語っているように、

  " 60代以上の人は、食べて応援しよう "  と、言いたいところはあります。」

これに対して、

「本音なのでしょうが、ちょっとつらい気持で聞きました。

 誰が食べても安心、安全の食品供給に努力してくださるよう、お願いします」

という感想。

ガンを経験して、食材に配慮するようになって大地を守る会に入りました、とある。

 

舌足らずで、申し訳ありません。

けっして年配の方に覚悟を求めているワケではありません。

低線量内部被曝による晩発性障害は

たとえ発現するにしても相応の年数がかかるもので

(特に高齢になるほど放射線に対する感受性は低くなる、と言われている)、

(今の食品のレベルでは) 放射線による影響が現われるまでの時間は、

おそらく50代の僕にとっても、寿命までより長い時間がかかるであろう

- ということのようなのです。

結果的には、

放射線以外にもたくさんのリスクを日常受けている私たちの暮らしの中で、

事故と私の死との因果関係は証明されずに終わるわけでしょうが。

この内部被曝への疑問については、

6回シリーズの中で、それなりにしつこく理解を深めたいと思っています。

 

もちろん、

未来ある子どもたち(+女性) への影響は最小限に食い止めなければなりません。

そのための 「基準」 をつくったつもりですし、

測定も、生産現場での対策への支援も、そのためだと思っています。

 

不用意な発言で傷つけたとしたら、深くお詫びします。

できましたら、続けてご参加いただけることを願っています。

 



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