戎谷徹也: 2013年11月アーカイブ

2013年11月30日

スター農家!発掘オーディション

 
若手農家の力で、新しい農業のカタチを創る!
 
11月17日(日)、渋谷ヒカリエで開催された
「スター農家発掘オーディション ‐STAR's」 Vol.2(第2回)。
 
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農業にかける夢や志が
精一杯の表現でピチピチとはじけていて、
まだ炭酸の残る新酒絞りたてのような新鮮さだった。
大海に出る若い水夫たちの、怖れを知らないハツラツさよ。
 
全国から寄せられたビジネスプランの数が34。
一次審査の結果、8名のファイナリストが選ばれた。
審査スポンサー企業は17。
それぞれのプレゼンに対して、支援しようと思ったら札を上げる。
ちゃんとした支援の意思表示として上げてください、
と言われていたので、
こっちもそれなりに真剣に聞かせていただく。
(気軽に上げていた企業もあったように見受けられたが・・・)
 

8名のファイナリストは、
3名が新規就農希望者部門で、5名が若手農業者部門。
こんな内容だ。
 
【新規就農希望者部門】
① 農業×土壁 ~バッハのように基礎を創る~
  自然素材の土壁を利用して黄ニラ栽培に挑む、工業大学卒の若者。
 
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② 農的暮らし体験
  「農的暮らし」そのものを商品化し、農業による持続可能な社会づくりを提案する。
 
③ 「離島」 × 「農業」 ~島内自給率100%~
  ふるさと「徳之島」に帰る、島に帰って「農業者になる」。
  島野菜のブランド化に取り組み、地域とともに生きる決意を語る女子。
 
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【若手農業者部門】
④ -農が見える食- 楽しくて美味しい農村の魅力を伝えます。
  自然と人がつながる 「野良しごとカフェ」 を提案する双子の姉妹。
  資金収支計画書もしっかり付けて、笑顔で支援を訴える。
 
⑤ 山形発(初) → 世界へ
  4年以内にネギ10haを作付けして世界一になる、経営者を5人育てる。
  加工部門も作ることで冬の雇用を増やし、年間雇用者を30人にする。
  世界中に YAMAGATA のネギを普及する、と宣言する33歳の社長経験者。
 
⑥ 富士山頂からあなたへ、届け七色のお茶!
  若い茶師の夢は、世界遺産となった富士山の山頂郵便局から届けるお茶レター。
  世界中で作られる様々なお茶を麓で育て、富士山で熟成させて送ります。
  富士山でしか造れないお茶で、みんなを繋げたい。
⑦ " モノを売るな、価値を売れ!" の伝え方と進め方
  カーネーション農家の3代目。 経営指針を明確にし、6次化やネット販売に向かわず、
  生産に特化して、消費者に思いを伝えてくれる企業と手を組むことで、
  企業価値を創造していきたい。
 
⑧ スムーズな農地継承のための 「離農」 と 「卒農」 を考える 「余年制度」
  「耕作放棄地の再生」 の前に、農地をしっかり継承させていくために、
  計画的に 「離農」 「卒農」 を進められる 「余年制度」 を提唱したい。
いずれの面々も、相当練りに練ったパフォーマンスを見せてくれて、
内容よりもその度胸のよさに感服させられた。
しかも、この機会にたくさんのものを得ようと貪欲である。
こいつらなら、たとえ初期計画はつまづいても、何とかやれそうな気がする。
 
応援資金を会社からいただいて臨んだわけでないので、
札を上げるのは少々慎重になる。
僕が上げたのは、①と③。
③は、すぐにでも農家を紹介してあげられる、という明快な理由からだった。
実際に、早々に徳之島の奥田隆一さんに連絡を取って、
会う段取りまで進めた次第。
 
15歳で島を出た娘が、島に帰って農業をやると言う。
島のおじんたちの驚く顔が見たい。
そして数年後、、、東京集会で会おうじゃないか。
 
栄えある大賞(賞金100万円) をゲットしたのは
⑥番、富士山の茶師。
たしかに、アイディアの独自性、現実的なプランと面白さ、
成功しそう感では、一番だったかもしれない。
 
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僕としては、ビニールに包まれた農業を後世に残したくない、
と叫んだ若者の、
「土壁農業」 というのを見てみたい誘惑が、今も捨て切れずにいるのだが。。。
 
 
いずれにせよ、しっかりと農業の魅力を語り胸を張れる若者たちに、
未来はかかっている。
 
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同期生としてつながって切磋琢磨しあえれば、
志も持続し、パワーも本物になっていくだろう。
 
頑張ってチョーダイ。
 


2013年11月28日

「沈黙の春」 を超えて

 

東電から賠償支払いが打ち切られたとか、拒否されたとかの話が

昨今、生産地から聞こえてくる。  

除染費用の負担が拒否されているといったことは報道されているが、

賠償支払いがどうなってきているのかも、

メディアはちゃんと取材してもらいたいと思う昨今である。

お願いしますよ。


燃料棒や汚染水の状況も気になるところだ。

食品の虚偽表示もまたぞろだし、減反制度の撤廃も、秘密保護法案も、

と考えることが増えるばかりで、

言いたいことを整理する間もなくストレスが積もっていく毎日。

すべての政治状況は、我々が選んだ (あるいは選ばなかった) 結果である。

村上龍の小説 『希望の国のエクソダス』 に登場する日本を捨てた少年の台詞が

リアル感を持って迫ってくるようだ。

「あの国には何もない。 もはや死んだ国だ。」


しかし、どこへ行っても現実からは逃げられない。

生きている以上は希望を失わず、歩んでいくしかない。


さて、11月の振り返りがまだ残っているので急ぎたい。

11月14日(木)、神田の学士会館で

一般財団法人 生物科学安全研究所」(RIAS) の

開所記念公開シンポジウムが開かれたので参加する。

僕は今年からこの団体の評議員を仰せつかっているのである。


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冠せられたシンポジウムのタイトルがなんと、

『 「沈黙の春」 を超えて』 とある。

昨年までは 「財団法人畜産生物科学安全研究所」 という名称で

農水省と厚労省の共益公益法人だった団体が

今年4月に一般財団法人として再出発することになって、

その開所記念のタイトルが、これである。

来賓の農水省の方も、少々たまげたのではないだろうか。

しかも基調講演を大地を守る会代表・藤田和芳が務めたもんだから。



藤田さんは、大地を守る会が設立された時代背景から辿り始め、

社会的ソーシャルビジネスと呼ばれて認められるまでになった経過を語った。

そして今では、中国の青年たちと一緒に、

中国で有機農業のネットワークづくりを進めていることを付け加えた。

「地球環境の問題は、中国を切り離しては解決できない。

 あの国が変われば、世界が変わるかもしれない。」


いやいや、大言壮語に聞こえるだろうな、と思いながら聞いた。

でも38年前には、有機農業という言葉は極めて限られた人たちのものでしかなかった。

今では、農業を目指す若者の大半は有機農業指向である。

みんなの一歩々々が現在のトレンドを築き上げてきたのだ。

種を蒔かなきゃ、花は咲かない。

ひとつでもモデルを作り出せたなら、後に続く者たちが生まれる。

大言壮語は一歩間違えると笑いものになったりするけれど、

挑む価値はあるだろう。

そうやって僕らは生きてきたんだし。


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生まれ変わった生物科学安全研究所の設立理念は、こう謳われている。

「 農畜水産物の生産から消費までの安全性の確保、

 人と動物の健康及び環境の保全に係る生物科学に関する事業を行ない、

 もって持続的社会の発展に寄与する 」

付けられたタイトル- 『 「沈黙の春」 を超えて』 には、

改めて科学の功罪を真摯に見つめ直すところから出発しようという

気概が込められたものなのだ。 これは付き合うしかない。


会場で配布された記念誌には、僕も評議員として一文を寄せさせていただいた。

科学に対する社会的信頼が揺らぐ時代にあって、

上記の理念を実践することは途方もない事業であること。

その困難さに挑むには、実は科学(者) だけではダメだろう、ということ。

「生産から消費までの安全性の確保」 には、

あらゆる  " 知 "  を動員しなければならないだろうこと、など。

書いた以上は、付き合うしかない。


翌11月15日(木)は、千葉・海浜幕張にて、

大地を守る会の 「加工食品製造者会議」 を開催。

この会議も毎年回を重ねて、もう14回目になる。

僕は3年ぶりの参加になるか。

「放射能のほうに行ってまして、ご無沙汰でした」・・・ってヘンな挨拶などしながら、

全国各地から集まってくれたメーカーの方々と懇親を楽しむ。

もちろん、品質管理など真面目な会議もやった上で。


一日おいて11月17日(日)、今度は若者の街・渋谷に出向く。

「渋谷ヒカリエ」 の 9 階イベントホールで、3日間にわたって開催された

食と農林漁業の祭典 食の絆サミット2013」。


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その最終日に行なわれたのが、

スター農家発掘オーディション STAR's vol.2」 なるイベント。


「自らの夢への支援を自らの手で勝ち取る!」

を合い言葉に、若手農業者と新規就農希望者たちによる

ビジネスプラン・コンテスト。

一次審査を勝ち抜いた 8 名のファイナリストがプレゼンテーションを行ない、

それを審査スポンサーとなった企業が札を上げて支援を表明する、という趣向。

腰をさすりながら偉そうに 「審査員席」 に座って、

若者たちの元気のいいプレゼンを楽しませてもらった。

その話は、次に。




2013年11月26日

3年ぶりの三番瀬クリーンアップ

 

ネオニコのフォーラムを終え、東京駅近くの居酒屋で

大野先生や abt スタッフの方、有機農業関係者たちと一杯やった。

その席で、作家・詩人でもある abt 代表の星川淳さんから

次回の内容について打診され、よせばいいのについつい意見を述べてしまった。

結局、また関わらざるを得なくなる。 

こうやって墓穴を掘るっていうか、自分の首を絞めるっていうか・・・ 


翌 11月10日(日) は、

久しぶりに 「ふなばし三番瀬海浜公園」(千葉県船橋市) に出向いた。

震災の影響で中止されていた 「ふなばし三番瀬クリーンアップ」 が、

3年ぶりに開催されたのだ。

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この日は朝から冷たい風が吹いていて、しかも中潮で海は満ち始めていた。

それでも600人くらいの市民、ボランティアが集まっただろうか。

砂浜の清掃をメインにして、なぎさ美術館と銘打った絵画展や

貝殻工作教室、木の実クラフト作り、地球温暖化対策のパネル展示などが、

それなりに楽しく、実施された。


大地を守る会の 2 つの専門委員会(おさかな喰楽部&米プロジェクト21)

とNPO法人 「ベイプラン・アソシエイツ」(BPA) が共同で運営する

我が 「東京湾アオサ・プロジェクト」 も、

震災後は開店休業状態だったのだが、ここで3年ぶりの登場となる。


アオサはびっしりと打ち上げられていた・・・

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本来ならここで

プロジェクトの目的であるアオサの回収を力強く呼びかけるところなのだが、

残念ながらできずに終わった。

アオサを引き取って発酵飼料に仕上げてくれる予定だった

本田孝夫さん(埼玉県深谷市) が飼料用米の収穫で忙しくて来れなくなった。

加えて生の海藻は焼却ゴミとして扱えないのだ。

富栄養化の原因となるチッソやリンを吸収して海を浄化してくれている

このアオサが、厄介ものと嫌われるようになって久しい。

これを農業の力で資源に変える、陸と海の循環を取り戻す、

そんな構想に挑んで 13 年が経った。

生産者とのネットワークで、堆肥化や発酵飼料化の受け皿はつくった。

その効果も確かめた。

しかし、これを採る人手と運ぶ手間(コスト) が課題として残った。

公園が震災でやられた後、こちらもやけに忙しくなってしまったこともあって、

なかなか再開できず、気がつけば 3 年の月日が流れた。

 

クリーンアップが再開されたことを機に、

こちらのモチベーションも復活させるか、と話し合った。

このまんまじゃ、どうにも終われない気分だしね。 

 

開会式で挨拶する実行委員長の大野和敏さん。

BPA 代表であり、元船橋漁協組合長。  

「東京湾アオサ・プロジェクト」 の代表もお願いしている。

" 船橋の顔 "  の一人。 

相変わらずダンディで、カッコいい。

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アオサ・プロジェクトを代表して、おさかな喰楽部(くらぶ) の吉田和生が

アオサの説明をして、予告してあった回収が中止になったお詫びをする。

生産者は今日も食の自給力を高めるために頑張っていることをお伝えして。

 

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写真の右に座っているのは、

なぎさ美術館の絵画コンクールで受賞した小学生たち。

船橋市内の 6つの小学校から 242点の応募があったそうだ。

地元に残された貴重な干潟地帯 「三番瀬」 を守っていこうと

子どもたちが呼びかけているのだ。

大人なら、やるしかないよね。

清掃に励む市民たち。

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集めたゴミは約 500 ㎏ と発表があった。

以前には 2 ton 車満杯のアオサを回収したことがあった。

今日の人数で一斉にやったら、ゴミと同じ量くらいは採集できたと思う。

アオサを眺めながら、ちょっと悔しい。

 

アオサの回収は断念したが、

大地を守る会ではもうひとつ、「干潟の生き物観察会」 を担当した。

講師は、稲作体験でお馴染み、会員の陶(すえ) 武利さん。

専門委員会 「米プロジェクト21」 のメンバー。 

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砂以外何もないように見える砂浜のなかにも、

実にいろんな生き物たちがいて、たたかい、

食い合いながら共存している。

多様な生物がいることによって、生命の循環が守られ、海も浄化されている。

そんな世界を、陶さんは本当に嬉しそうに語るのだ。

 

 

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アオサもよく見ると、小さな貝がへばりついている。

こいつらもしっかり生きているんだ。 スゴ~イ! ね。

生物多様性の世界は、僕らの暮らしの足元にもつながっている。

大切にしよう。

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まあ、ちょっと寒かったね。

また来てほしい。 

身近にある自然から学べることはたくさんあるから。

それは未来のために必要なことだ。

 

なおこの日、放射性物質の検査のためアオサのサンプルを採取した。

結果は、ND(不検出)。 検出限界値は 0.6~0.9 Bq。

参考までに付記しておきたい。

 



2013年11月24日

農家と環境に優しい持続的農業を目指して

 

福島の再生、新しい福島づくりをオーガニックの力で!

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11月23日(土)、

「ふくしまオーガニックフェスタ 2013」 に集まったエネルギーに

未来への手ごたえを感じ取り、

閉会後は、 東京からバスを連ねてやってきた

『農と食のあたらしい未来を探る バスツアー』 に合流した。

夜にはそのツアー御一行とともに再び二本松東和地区に舞い戻って

交流会と農家民宿を満喫した。

そんでもって今日は、南相馬まで回って有機農家の取り組みを見させていただき、

渋滞に遭いながらバスに揺られて返ってきた。 東京駅着21時過ぎ。

なんとも濃いい4日間の福島巡りだった。

これをまとめるには、少し熱を冷まさなければならない。

 

  とまあそんな言い訳をして、溜まったメモの整理を急ぎたい。

  11月9日(土)、京橋にある中央区立環境情報センター研修室にて、

  「ネオニコチノイド系農薬を使わない病虫害防除を探るフォーラム」

  が開かれたので参加する。

  主催は 「一般社団法人 アクト・ビヨンド・トラスト」(abt) 。

 

  ネオニコ系農薬については、 以前よりミツバチへの悪影響が指摘されていて、

  EUではこの12月から 3 種類のネオニコ農薬について

  2 年間の暫定禁止措置を決めている。

日本 国内でもこの農薬に対する批判は厳しくなってきているのだが、

  国は逆に使用の拡大、基準の緩和に向けて動いている。

  農家のためと標榜しつつ、実は企業のためだろう。

  現在の僕のスタンスはと言うと、

  生産者が納得できる技術提案をしていかないと変えられない、

  ただ批判だけしてもダメ、という考えだ。

  有機リン系など人体への影響の強い農薬から低毒性農薬

  (ヒトへの影響で言えばネオニコも低毒性に位置づけられる) に

  切り替えてきた 減農薬栽培農家の経過も知っている立場としては、

  農家とともに代替技術を見つけ出していかないと

  現実的な対策にはならないと思うのである。

  批判派と農民がいたずらに対立を深めても何ら得るものはない。

 

  この点については abt さんも同じ認識に立たれていて

まず は農薬に頼らない農業技術を学ぼうということになった。

  生産現場での研究の積み重ねが現在どのレベルにあるのか。

  消費サイドも理解して、ともに歩みたいと思うのである。

  そこで今回推薦したのが、宮崎大学農学部准教授の大野和朗さん。

  大野さんは快く受けてくれた。

  付けたタイトルが、

  「農家が楽になる減農薬農業:天敵を利用した IPM について」。

 " 農家が楽になる " と入れるあたりが現場実証主義者らしい。

 

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IPM (Integrated Pest Management)。

総合的病害虫管理と呼ばれ、

病害虫に対し様々な防除技術を組み合わせて対処することで

人の健康と環境へのリスクを最小限にとどめようという考え方。

ここでは農薬の使用もその一つとして認められるが、

それはあくまでも最終手段となる。

この総合防除の考え方も半世紀におよぶ歴史があるのだが、

残念ながら日本ではまだ普及できているとは言い難い。

例えば、かつて農薬・化学肥料に過度に依存していたオランダが、

IPM に基づいた環境に優しい農業に転換して輸出大国になったのとは

天と地の開きがある。

今もって日本は、単位面積当たりの農薬使用量世界一の座を

韓国と争っている。

 

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IPM 技術の重要な柱が天敵の活用である。 

例えばナスにつく害虫・ミナミキイロアザミウマ。

1979年に東南アジアから侵入した難敵で、農薬に強い。

抵抗性の発達が早く、農薬がすぐに効かなくなるので、

どんどん強力な農薬に頼っていくことになる。

 (農産物の輸入は病原菌や害虫も一緒にやってくる、ということも忘れたくない。

  輸入の拡大は国内農産物の安全性確保も脅かす。)

このアザミウマを食べるのが、ヒメハナカメムシという小さなカメムシだ。

しかし農薬に弱い。

 

ここで大野さんはナス畑での実験結果を披露する。

普通の農薬 ( " 普通 "  とは言いたくないけど・・・) を使った畑と、

天敵に影響の少ない農薬に切り替えた畑の比較。

 

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上の赤い線を見ていただきたい。

農薬を使用するたびにアザミウマの個体数が一時的に減るのだが、

しかし徐々に増えていって、10月から一気に増殖している。

天敵のいないナス畑はアザミウマの天下となり、

結果的に農薬使用量も増える(計20回)。

かたや天敵を保護した畑では、アザミウマはほぼ一定数を保っている。

この間のアザミウマを狙った農薬散布は0、多い畑で2回。

ここまでくるとアザミウマはすでに害虫ではない、

と言ってもいいんじゃないか、とすら思えてくる。

つまり、アザミウマはヒメハナカメムシの餌として適度に存在していて、

両者がバランスを取っているとするなら、

天敵と共存する、居てもよい虫ということだ。

 

害虫を防除するために農薬を散布していたはずが、

天敵がいなくなり、やがて害虫だけが復活して、天下となる。

これを誘導多発生 (リサージェンス) という。

散布回数を増やせば抵抗性の獲得も早まる。

より強力な農薬が必要になる。

ハモグリバエ類、タバココナジラミなども、1990年代から

農薬に高度の抵抗性を発達させた害虫として世界中で問題となった。 

こいつらは、ウィルスも持っている。

 

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さて、天敵を保護するだけでなく、

次には天敵が活躍できる環境づくりを考えたい。 

天敵が必要とする餌(花粉、花蜜など)、代替餌(代替寄主)、越冬場所を

提供するためのインセクタリープラント(天敵温存植物) を植えるなど、

農業景観の植生を多様化する必要がある。

インセクタリープラントには、バジル類やスィートアリッサム、オクラ、

ハゼリンソウ、ソバ、といった名前が挙げられた。

天敵の登場を待つのでなく、

天敵を呼び込む、ほ場にとどめる、能力を高める。

これを保全的生物的防除 (Conservation Biological Control) という。

 

天敵が働かないから農薬が必要、なのではない。

天敵を排除するから化学農薬に依存しなければならなくなる。

また日本はモノカルチャー(単植栽培、一種類の作物だけを植える)

に特化し過ぎてきた。

モノカルチャーでは生態系が貧弱となり、害虫が多発しやすくなる。

保全的生物的防除の視点と対応技術をもっと進化させたい。

 

果菜類(トマト・キュウリ等) では、害虫が媒介する新型ウィルスが現われてきて、

ネオニコチノイド系農薬の使用も増えている。

農家にしてみれば、ウィルスを放置するわけにはいかない。

農薬使用への非難に対しては、

ウィルス蔓延で打撃を被るのは俺たちだ、野菜の値段が上がってもいいのか、

といった消耗な議論が始まる。

 

決め手は、ウィルスではなく媒介する害虫のコントロールだろう。

彼らを、害虫ではなく、ただの虫にしてあげるのだ。

 



2013年11月22日

合成ビタミンC添加なし「有機緑茶」

 

福島・郡山のビジネスホテルに潜り込んでます。

今年何回目の福島だろう。。。

 

昨日から二本松の岳(だけ)温泉で 『第4回 女性生産者会議』 を開催。

ダンナを置いて意気揚々とやってきた 30 名の母ちゃんたちと語り合った。

記念講演にお招きしたのは、宮城・気仙沼の  "森は海の恋人"  の人、

畠山重篤さん

実は数日前に畠山さんもワタクシと同じ患いに陥ったようで

出席が危ぶまれたのだが、何とか辿りついてくれた。

ちょうど一年ぶりの再会。

今回はさらに進化した畠山ワールドを展開してくれた。

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そんでもって今日は朝から二本松市東和地区(旧東和町) を皆で訪れ、

羽山園芸組合さんのりんご園でりんご狩りを楽しませてもらい、

道の駅・ふくしま東和で

「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」 の取り組みを聞かせていただく。

 

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解散後、元気な母ちゃんたちと分かれ、

いわき市 「福島有機倶楽部」 の小林勝弥さんを訪ねた。

こちらは除染ではなく除塩。

津波による塩害で今も難儀していて、

大地を守る会から除塩用の資材を提供させていただいたのだが、

連れ合いの美知さんが会議に参加されたのをこれ幸いと、

帰りの車に乗せてもらって立ち寄ることにした。

ブツと畑を確認し、今後の進め方について勝弥さんと話し合う。

 

そこでなお東京に帰らず、内陸に戻って郡山に辿りついている。

明日は郡山・ビッグパレットふくしまで開催される

ふくしまオーガニックフェスタ2013」 に参加する計画である。

 

この二日間のレポートはどうも長くなりそうなので、

追って報告させていただくとして(もう飲んで寝たいし)、

取り急ぎ前回からの続きで、溜まっている写真をピックアップして、

今夜は終わりにしたい。

 

11月3-4日は、「秋田・ブナを植えるつどい」 をキャンセルして休ませてもらい、

11月5日(火)は夕方まで仕事して、夜のうちに広島に入る。

6日早朝から三原市にある (株)ヒロシマ・コープさんを訪問して、

新しく開発したPETボトルでの 「大地を守る会の有機緑茶」 の

製造に立ち会った。

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これも生産部長の仕事なのって?

これは子会社である (株)フルーツバスケットの タダ働き取締役

としての仕事なのであります。 

朝6時から茶葉の抽出が始まり、4回の試験抽出-成分割合の確認を経て、

充填本番を始める。 いや実に、想像以上に複雑な工程だった。

 

大地を守る会がPETボトルのお茶を販売することについては、

違和感を持たれる方も多いかもしれない。

何を隠そう、僕もその一人である。

やっぱお茶はちゃんと急須で入れて飲みたい。

あるいは冷蔵庫で冷やしたり、マイボトルに入れて携帯するとか。

・・・しかし現実は、PETボトル茶全盛時代になってしまっている。

茶葉そのものの販売は苦戦を強いられ、

急須のない家庭も珍しくないと言われる。

しかもほとんどが当たり前のように

酸化防止剤としてビタミンCが添加されている。

これではせっかく有機栽培で育てた茶葉も農家も、哀しい。

お茶はちゃんと入れて飲むようにしよう(努力目標)、と改めて自戒しつつ、

あくまでも 「どうせ飲むんだったらこれを」 という代替として提案したい。

 

ここでビタミンCについて触れておきたいのだけれど、

お茶やジュース・缶詰などに添加されているビタミンCは、

柑橘などから抽出した天然のビタミンCではなく、

L‐アスコルビン酸など人工的に合成されたものである。

トウモロコシなどのデンプン(ブドウ糖)を化学分解して作られる。

この製造過程で石油を原料とした薬品も用いられる。

化学構造から天然のものと同じとされ、

壊血病予防など健康に必要な栄養成分と語られたりするが、

そもそもビタミンCは酸化されやすい性質が利用されている

ということを忘れてはいけない。

つまり自身が酸化することによって食品の酸化を防いでいるわけで、

酸化されたビタミンCには栄養的価値はなくなっている。

ビタミンCが酸化しつくされた後の品質劣化は急激である。

しかもこの酸化反応の過程で、

合成ビタミンCでは活性酸素が発生することがつきとめられている。

放射能講座で毎回のように登場した 「活性酸素」 というヤツ。

ガンや生活習慣病や老化の原因になる。

 

また原料として使用されるトウモロコシは100%輸入であり、

遺伝子組み換えでないとの IPハンドリング(分別生産流通管理) の

証明書確保はほぼ不可能の世界である。

原料として有機栽培の茶葉を使用しても、

製品は 「有機茶」(有機JAS認定) にはならない。

 

外で買うならこれを、ということでローソンさんにも提案中。

国内産(今回の生産地は鹿児島) 有機栽培茶葉100%

かつ ビタミンC無添加「有機緑茶」 です。

なので賞味期限は短く(それでもしっかり殺菌してます)、

常温で9ヶ月となってます。

 

さて、トピックをもうひとつ。 

11月8日(金)、月一回酸化、じゃなくて参加している

丸の内・行幸通りの 「行幸マルシェ × 青空市場」。

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今回は、人参・里芋・白菜・・・と冬物が出そろってきたところで、

千葉・さんぶ野菜ネットワークの野菜一本で勝負した。 

 さんぶからも二人の生産者、吉田邦雄さんと下山修弘さんが

売り子として出張ってくれた。

 

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さんぶの野菜は、ここで食べられます。 

とさりげなく 「Daichi & keats」 のPRも。

おススメは、農園ポトフと農園タパス。 ぜひお立ち寄りください。

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せっかく一日出張して来ていただいたので、

主宰者である永島敏行さんとの記念写真を一枚いただく。

「おう、おう、山武ね。 知ってるよ、もちろん!」

と気さくに応じてくれた。 

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(永島さんをはさんで、左が下山修弘さん、右が吉田邦雄さん)

 

今月は、丸の内のシェフたち向けに、

マルシェ - 試食会 - 現地視察ツアーと、

さんぶ野菜を前面に出しての連続攻撃をかけているのであります。

 



2013年11月20日

丸の内・シェフたちの試食会

 

立て続けに台風がやってきて、

清々しい秋晴れの日もわずかあったけど、

都会では秋を堪能する間もなく、11月11日の夜には木枯らし1号が吹いた。

書かねば書かねばと焦りつつ、気がつけば丸々一ヶ月の空白!

この時間に絶句する。

いったい如何ほどの仕事をしたんだろうか。

 

情けなく足を引きずりながら、何だかんだ、あれもこれもと

業務に追われる日々でありました。

この間、お見舞いメッセージや 「生きてるの?」メール を頂戴した方々には

ご心配をおかけしまして、まことにスミマセン。

 

10月から生産部長なる肩書きが重石のように降りてきて、

特命担当という一人部署時代では解放されていたマネジメントというやつが、

またまとわりついてきている。

事業計画に部署政策、予算に実績、人事に経費管理に・・・

加えていくつかの重要な課題に挑む 「タスク」 なるチームもつくられて、

ブログでは軽々に書けないお仕事が一気に増えちゃった。

おまけに何だっけ、脊柱間狭窄症ってのが拷問みたいに責めてくる。

腰痛は自虐的な気分にさせるね。 ホント嫌いだ。


ま、少しずつ新しい任務のペースもつかめてきたところで、

振り返りながら再開といきたい。

順不同のレポートになるかもしれないけど、

出たとこ勝負で進めますので、ご容赦ください。 

 


波状攻撃のようにやってきた台風27号のせいで、

10月26日(土) に予定していた備蓄米 「大地恵穂(けいすい)」 の収穫祭は

中止せざるを得なくなった。

大型バスをチャーターして張り切ってたのに、かなり悔しい。

あれから2年と半年、必死で前を見ながら歩み続けた

ジェイラップの人たち、そして稲田稲作研究会の生産者の人たちと

握手したり抱き合ったりしたかったのに。

まして今年は全国農業コンクール授賞という快挙もあったのに。。。

 

ま、26号の反省が生きて、各地の被害が少なかったことで良しとするか。

収穫祭中止のリベンジは必ず、何らかの形で実施せねばと思う。

参加申込をいただいた方々に、お詫びの連絡だけで終わらせたくない。

 

いったん治まりかけた足腰の痺れがぶり返し、

翌週10月30日から予定していた島根県邑南(おおなん)町への出張も、

11月3日の 「秋田・ブナを植えるつどい」 も、直前でキャンセルしてしまった。

「ライスロッヂ大潟」代表の黒瀬正さんにお詫びの電話をすれば、

無理せんと治しや、の温かいお言葉。

こちらは逆に、何やってんだクソッ、と自分をなじってしまう。

 

それでも降ってくる仕事は容赦なくて、外出は続き、

伝えたいこともどんどん積まれていく。

いやあ、人生ってホント、面白いですね。。。 トホホだけど。

 

写真もいっぱい溜まっていて、どうすりゃいいんだろう。

とりあえず順番にアップして残しておくか。

 

10月22日(火)。

大丸有つながる食プロジェクト協議会によるレストラン向け試食会。

東京駅前・丸ビル6階、和食の店 「ななは」 にて。

集まってくれたのは6つのお店のマネージャーやシェフたち。

 

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今回大地を守る会から用意させていただいたのは以下の食材。

 〇 山形県高畠町・おきたま興農舎作、新米 「つや姫」。有機栽培。

 〇 茨城県行方市・堀田信宏作、さつま芋 「紅東」。無農薬栽培。

 〇 茨城県阿見町・柳生信義作、自家採種のれんこん 「名なし」(柳生氏命名)。減農薬栽培。

 〇 北海道積丹町・高野健治作、かぼちゃ「こふき」。有機栽培。

 〇 茨城県土浦市・常総センター作、ごぼう 「柳川理想」。無農薬栽培。

他に宮城県大崎市・蕪栗米生産組合の新米ササニシキ(有機栽培) と

新潟県十日町・佐藤克未さんの魚沼棚田米・新米コシヒカリ(有機栽培)を、

お土産用に用意した。

自分としては、どうだい、と言いたいラインアップで。 

 

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まずは生で、そしてただボイルあるいは蒸した状態で、

食していただく。

 

また今回、特別に仕掛けてみたのは

長崎・長有研のグリーンレモンとジャンボニンニクだ。

 

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下の写真が通常の3倍はあるジャンボニンニク。

ニンニク特有の臭い成分は少ないけど、

滋養強壮成分であるスコルジニンは2倍ある。

 

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でも作ったはいいが売り先がなくて路頭に迷っているというので、

場を用意するからプレゼンしてみよう、てワケ。

10月20日に開催した 「土と平和の祭典」 に

売り子としてやってきた前川隆文 (元大地職員) を担ぎ出して、 

一所懸命PRしてみる。

 

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結果やいかに-

扱いたいという希望が予想以上に上がったのだった。

とりあえずの目論見としては成功したか。

 

グリーンレモンは何と、フレンチの店から手が上がった。

普段黄色いレモンばかりなので、「このフレッシュな酸味はとても良い」 と。

使いたいですねぇ、というサラッとしたひと言は、

営業マンにとっては最高の褒め言葉だ。

実務の苦労はここからなんだけど、やる気にさせられる。

つなげるのが俺たちの仕事だから。

 

切り札として用意したおきたまの 「つや姫」。

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高い評価はもちろんだとして、レストランにとっては

「お値段もいいね」 となる。

炊き方によっても勝負できるお米は、実に奥深い激戦基本食材なのである。

 

我が 「Daichi & keats」 のマネージャー・町田クンも参加して、

感想を述べたりする。

 

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 こんな対外試合もしながら、僕らは鍛えられるのだ。

 

ちなみに、その場で書いてもらったアンケートの結果、

最も引き合いの強かったのは、柳生さんのレンコン 「名なし」 だった。

このメジャーになれない微妙な位置にある作物の

味の違いをひと口ふた口だけで指摘するプロたちは、やっぱスゴイ。

柳生さんへの嬉しいお土産話をいただいて、

僕は内心してやったりの気分である。

他人の褌(ふんどし) で相撲とってるだけだけど。

 



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