戎谷徹也: 2012年1月アーカイブ

2012年1月25日

「共同テーブル」 会議にNHK入る。

 

23日(月) は、昼間の予定をすべて変更して、

東京大学医学部のある先生を訪ねた。

「食品と放射能問題 検討共同テーブル」 で進めている

専門家へのヒアリング依頼に対して、

「この時間なら」 というピンポイントでの空き時間が告げられ、

3団体の方々にも声をかけて、本郷まで出向いたのだった。

遠方からの訪問をお断りした O さん。

逆にお気遣いまでしていただき、申し訳ありませんでした。 

 

先生は食品安全委員会での規制値の検討に関係したお立場もあり、

「ヒアリング内容は了解なしには公開しない」 という前提をもってお願いしたもので、

したがって今ここでお名前と内容をお伝えすることは控えたい。

いずれ 「共同テーブル」 として取りまとめるであろう報告には、

何らかの形で反映されることになると思う。

 

そして昨日(24日) は、その 「共同テーブル」 の会議が開かれた。

厚労省の新しい 「基準値(案)」 に対する

共同テーブルとしての 「提言」 をまとめる作業を行なったのだが、

この会議にNHKさんがカメラを持って乗り込んできた。

(当然、了解済みでのことだけど。)

 

カメラが回るなかで、「提言」 文案を読み上げながら意見交換し、

加筆訂正を行ない、段々と仕上げてゆく。

途中からカメラを意識することもなくなって、何とか粗々、あと一歩のところまで詰める。

残った修正箇所を数日中に仕上げ、各団体で確認・合意して、

厚労省に提出することになる。

 

会議後、NHKのカメラを前に各団体のメンバーが立って並び、

インタビューを受ける。

少々緊張しながらいくつかの質問に応えて、

インタビュー後、記者さんから 「バッチリです。 さすがですね」 とか褒めていただき、

気をよくして終了。 したのだったが、、、

昨夜のニュースではインタビューはカットされて流されたようだ。 

(夜8時45分からの首都圏ニュースで取り上げられたが、僕は見ていない。)

ムカつく!

 

本日、「録画見ますか?」 と広報担当が聞いてくる。

うっせぇよ! 見ないよ! (あれぇ、いじけてる? ちっちゃいね~)

 

でもビルのお掃除のおばちゃんが、「テレビ出てましたね~」 と声をかけてくれて、

テレながら、ちょっと気を取り直す。 単純ですなァ、まっこと。

 

4団体の方々、力及ばずで申し訳ありませんでした。

「提言」 発表まで、あと一歩ですね。

よろしくお願いしま~す。

 



2012年1月19日

シンポジウムのご案内

 

ご案内。

2月18日(土)、朝日新聞主催によるシンポジウム

「放射能と向き合う (食品と安全)」 が開催され、パネラーとして参加します。

会場は、東京・浜離宮朝日ホール。

参加費は無料で、申し込みはホームページから。 先着360名まで、とのことです。 

 ⇒ http://www.asahi.com/shimbun/sympo/

 



2012年1月15日

哀しい、農の始め

 

くそッ、俺としたことが、、、久しぶりに風邪を引いてしまった。

咳とくしゃみが治まらず少々熱っぽい。

 

昨日は楽しみにしていた横浜パシフィコでの脱原発世界会議はパスして、

厚労省が出した放射性物質の新基準値案に対する、

共同テーブルとしての声明文案の作成を進めることにした。

4団体での合意に持っていかないといけないので時間はかかるが、

24日までに仕上げる、というゴールラインを決めてある。

ぐじゅぐじゅとパソコンに張り付く、情けない週末。

 

新聞をめくれば、昨日の脱原発世界会議の開会式で、

福島から避難してきている小学生が壇上に立ったことが紹介されている。

彼は訴えている。

「国の偉い人たちに聞きたい。 大切なものは命ですが。 それともお金ですか。」

こんなことを子どもに言わせてしまう社会を、僕らはつくってしまったのか。

悔しい。。。

 

机の上には、NPO福島県有機農業ネットワーク理事長で二本松市在住の

菅野正寿(すげの・せいじ) さんから届いた賀状がある。

『農(の) の始め 』 と題した詩が書かれている。

 

  山に木を植えることが、略奪の文明と対峙する道と

  山の神はいう

  春の柔らかな土に種を蒔くことが

  暴走した科学に対峙する道と

  田の神はいう

  原子の鬼を土のふところに 塊として埋葬する技を

  自然の治癒力として耕す

  耕す農の営みは 花を咲かせ実を結び

  彩りが里山をつつみ

  老いも若きも おだやかな顔をあらわす

  未来永劫へと続く農の道は 美しい国への道しるべ

  山の神 田の神が降りてきて

  共に五穀豊穣の酒宴をする 農の始め  (2012.1.2)

 

実は、菅野さんからは、年末に悲痛なメッセージが

関係者に向け発せられている。

 


「年の瀬にあたり、ふくしま有機ネットからの訴え」

 3.11大震災・原発事故に揺れた2011年の年末にあたり、

 この1年の温かいご支援、ご協力に心から感謝を申し上げます。

 

 年の瀬のこのときに、

 伊達市(霊山町) のイチゴ農家、二本松市(東和町) のりんご農家が

 自ら命を絶ちました。 もうこれ以上農民から犠牲者を出さないでください。

 福島県の米は農協の倉庫に業者の倉庫にそして農家の納屋に

 生き場をなくして年を越す状況にあります。

 

 とくに消費者との産直で取り組んできた有機米、減農薬米の生産者の

 「これでは年を越せない」 との悲痛な声に耳をかたむけてください。

 

 すでに報道されているように、検査の結果100ベクレル以下は95% (不検出は85%)

 であり、基準値を超えたのは0.3%です。

 もちろん検査し、不検出の米のみの支援をお願いするものです。

 出荷停止となっている伊達市小国地区などの地域は特異な例であり、

 それをもって福島県産米が否定されることは悲しくてなりません。

 セシウムの米への移行が極力少ないことが検証され、

 来年の米づくりに光が見えてきているこのときに、

 この希望の芽に心を寄せてください。

 責任は東電にあり、農民を責めることができるでしょうか。

 

 原発のない新しい次代を創るために今こそ、

 都市と農村の新しい関係を構築していくこと、

 私たち農民も農の営みを続けて、

 さらに安全安心はふくしまを再生していくことを約束して、

 緊急に米のご支援を訴えさせていただきます。

 2011年12月30日

 

大地を守る会としても、ジェイラップややまろく米出荷協議会など、

契約産地の米を販売するのに一杯々々という状況にあり、

菅野さんのネットワークの米まではどうにも手が回らない。

「産直とはなんだったのか・・・」 の声が、つらすぎる。

 

他からもいろんな依頼が舞い込んでくるが、我々にも限界があって、

応えられないことは多い。

 

鼻水すすりながら考え込む日曜日。

あれこれ考えあぐねても、答えは 「王道でいくしかない」。

粘り強く徹底的に対策を進め、

有機農業の力によって 「ふくしま復活宣言!」 までもっていくことだ。

そのプログラムを持とう。

 

ああ、こういう時は、思いきって横浜パシフィコにでも

出かけたほうがよかったかもしれない。

 



2012年1月11日

楽しく Re-Fish! 新年おさかな勉強会

 

1月8日、日曜日。 千葉県浦安市。

法事や宴会・仕出しなどで利用される料亭 「浦安 功徳林」 の御座敷。

ここにいかにも魚屋って感じの手荒そうな、いやもとい、たくましい男たちと、

お魚大好きという会員さんたちが集まった。

 

専門委員会 「おさかな喰楽部」 主催による新年勉強会。

「水産庁のウエカツさん、鮮魚の達人・山根さんと楽しく Re-Fish!」

知る人ぞ知る、分かる人は分かる、分からない人には何のことか分からない、

けど何やら楽しげなタイトル。

 

水産庁のウエカツさん。 本名、上田勝彦。

島根県出雲市出身。 長崎大学を出て漁師になって、

その後水産庁に引っ張られたという異色の経歴。

魚の伝道師とも呼ばれ、

NHKの朝番組 「あさイチ」 にため口で登場してからブレイクしちゃったとか。 

現在の正式の所属・肩書は、水産庁増殖推進部研究指導課、情報技術企画官。

「 ひと言でいえば、資源管理ですわ。

 逆に言えば、魚をどうやって売っていくか、でもある。」

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" なぜ私たちは、魚を食べ、漁業を守らなければならないのか " 

以下、伝道師・ウエカツが一気にまくしたてる。

 


魚離れが言われて30年。

消費量は減り続け、

魚をよく食べる年齢も戦後の年齢構成の変化とともに上昇を続け、

今は50代以上になってしまっている。

寿司屋に人は入っているではないか、と言われるかもしれないが、

それは魚が嗜好品になってきているということである。

学校給食でも魚が出ることはない。 

 

では、魚離れがなぜ問題なのか。

人の食習慣や食文化は、本来、地理的な環境要因によって規定されている。

日本は狭い国土だと言われたりするが、

海岸線の距離はどれくらいか知ってますか。 米国より長いんです。

( エビ注・・・約3万4千㎞。 約3万㎞というデータもあるが、いずれにしても世界第6位。

 米国の1.5倍以上、中国の2倍以上。 ロシアは第4位の長さだが、

 北極海は冬に凍結する。 水が循環する海岸線ではロシアより長い。)

 

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日本は世界有数の海岸線大国、然るべくして海洋国家なのである。

狭い面積でたくさんの人口を養ってきた力は海洋、つまり魚食である。

(エビとしては、「水田稲作」 も追加したい。

 ちなみに面積は世界第61位。人口は世界第10位。)

健全な魚食を維持することが、国民を養う上でもっとも合理的な方法なのである。

 

生物の世界には食物ピラミッドというのがある。

ヒトはその頂点に立っていると思っている方もおられようが、実は違う。

ヒトは下位の生物から上位の大型生物まで食べている動物である。

つまりピラミッドを崩さない食べ方をすることで安定する、それが人間なのだ。

この社会を持続可能にするためには、

食物ピラミッドを維持させながら食べることが大切になる。

 

したがって日本人は、魚食文化を維持することこそが賢明な選択となる。

魚食の崩壊は、祖国存亡の危機だっつうの!

 

魚は長く無主物として扱われてきた。

(エビ注・・・「無主物」=持ち主がいない。

 最近の活用事例では、降ってしまった放射性物質は 「無主物」 だから返されても困るし、

 金を払う義務もない、という電力会社の主張があった。)

つまり、獲った者勝ちだったわけだ。

しかしだんだんと、人類共有の財産という考え方になってきている。

みんなで守らないといけない時代になっているワケです。

 

そこでこう思うのである。

生産者というのは、食べる人 (消費者) の代行者である。

代行して獲る。 と同時に、代行者として、絶やさないという責任も負う。

だからこそ消費者は、買って食べて生産を支える、そんな関係にある。

その生産と消費のバランスを調整するために、加工や流通の使命がある。

 

昨年の勉強会で、俺はこう言った。

「今年を魚食復興元年にしよう! Re-Fish! でいこう」 と。

( Re-Fish  ・・・魚の復興とか魚食に帰ろう、といった意味合い。)

しかし3.11を経験してきた今、

今年のテーマは 「原点回帰!」、これだね。  以上。

 

いやいや、実に歯切れがよい。

しかもウエカツさんの水産資源管理と魚食文化論は、

「資源」 という概念の本質まで突いてきているように思えた。

そもそも 「日本は資源のない国」 という論は、

昭和初期の、軍が強力になって外に侵出するのと機を一にして出てきた主張だと

最近知らされた次第である (佐藤仁著 『 「持たざる国」 の資源論』 より)。

その意識は今だ根強く、この国は国土や環境(資源の土台) を

荒らしまくりながら、裸の自由貿易へと走ろうとしている。

一方で、エネルギー資源の発想はドラスティックに変わろうとしているのだ。

このテーマ、たっぷりと議論する必要がある。

 

続いて、もっと強面(こわもて) なお父さんが登場するのだが、

本編続く、でごめんなさい。

 



2012年1月 9日

脱原発世界会議2012

 

たまにはお気楽なのでも、と思って

正月気分の、能天気な日記をアップしてしまいました。

しかも正確に直しておきたいところがあります。

「当社謹製-人参粉末を使った紅白餅」 をお送りしたのは、

岩手県大槌町と宮城県石巻市北上町、同市雄勝町の三ヵ所でした。

合計約1100パック。 喜んでもらえたなら嬉しいです。

 

気を引き締め直して、ご案内を一つ。

今週末、14~15日の二日間にわたって脱原発の大きなイベントがあります。

「脱原発世界会議2012 YOKOHAMA」

福島の現実を見つめ、原子力からの脱却を世界に発信する国際市民会議。

ドイツ、フランス、デンマーク、米国、ロシア、ヨルダン、マーシャル諸島、オーストラリアなど、

20カ国100名以上の専門家や実践家が来日します。

 

開会イベントでは、飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所)、

佐藤栄佐久さん(前福島県知事)、レベッカ・ハルムス欧州議員(ドイツ) の講演のほか、

日本が原発を輸出しようとしているヨルダンの国会議員も発言します。

 

100におよぶセッションでは、国内外から集まったゲストたちが、

原発や自然エネルギーに関する主要な論点を取り上げ、行動を提言します。

また「首長会議」と題する特別セッションが開催され、

地方自治体の市長らが原発に頼らない地域づくりを論じます。

会議の模様はインターネットで国内外に中継されます。

 

参加するアーティストも多彩。映画上映あり、ポスター展あり、

各地・各団体・海外からの 「もちこみ企画」 あり、子供向けプログラムあり(託児所もあり)、

子どもから専門家まで、誰でも参加できる世界会議です。

世界の経験と知恵を集め、新しいアクションを生み出す、

熱気溢れる会議となることでしょう。

 

場所はパシフィコ横浜。

前売りチケットは、http://npfree.jp/ticket.html 。 僕はローソンで買いました。

 

大地を守る会も協賛しているものですが、運営はかなり厳しい様子で、

来れない方でもカンパでチケット購入いただけると嬉しい!

と事務局からの伝言です。

 

僕はたぶん万博見物みたいにウロウロしていると思います。

遭遇したらぜひ声をかけてください。

では。

 



2012年1月 7日

紅白餅占い

 

皆様、お正月はお餅をたくさん召し上がられたでしょうか。

今はおいしい食材がたくさんあるので、餅の消費も減っているのでしょうか。

でも、正月に餅は欠かせませんね。

 

さて、これはなんでしょう。

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左は玄米餅。 いえいえ、何をおっしゃる。

一回限りで、しかも地域限定となった、当社オリジナル謹製-紅白餅です。

産地で少々余ってしまった長人参 (栽培期間中農薬不使用) を引き取って、

ジェイラップでパウダーにしてもらって、紅色を期待して使ってみたところ、

こんな色合いになっちゃいました。

お口の中でほんのり人参の香りがして、お正月らしい気分に、、、

なるかどうかは分かりませんが。

 

この 「紅白餅」 は、震災復興基金から被災地向け用に作ったもので、

岩手の仮設住宅でお正月を迎えられた方々に送らせていただきました。

ヘンな餅やわぁ、人参の香りがするわ、紅ゆうには無理があるんちゃうか、

人参も無農薬やて・・・ とかかんとか (関西弁ではないでしょうが)

すこしでも団欒のお役に立てたなら嬉しかとです。

 

では、この餅を使って、正月恒例の餅占いを。

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さあ、焼けてきました。 人参餅のほうが火の回りが速いですねぇ。

オオーッ! 紅が差してきたではないか。 何と神々しい。

しかも、おやおや、、、どうしましたか?

 

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ううむ、これは、いったい何という神の思し召しだ。

裏返したら、何とこれまた・・・おお、マイ・ゴッド!

 

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今年は、欲張った上昇志向ではなく、横のつながりを大切にすることが吉、

と出ました。

愛ですね、愛。

 

なお、これはエビちゃんではなく、岩手に行くはずがサンプルで抜かれてしまった

神聖な餅様がそう言っているのであって、

ワタクシは一切の責任を負うものではありませんので、お間違いなく。

 

お屠蘇気分で書いた与太話で、捨てようかと思ったけど、

アップさせていただきました。

さあ、元気出して、いきましょう!

 



2012年1月 6日

菅谷昭・松本市長を訪ねる

 

年を越してしまったけど、

長野県松本市の菅谷昭(すげのや・あきら) 市長を訪ねた報告をしておきたい。

 

昨年12月22日(木)、

我々 「食品と放射能問題検討共同テーブル」 一行 4名

(カタログハウス、生活クラブ生協、パルシステム生協、大地を守る会) は、

朝7時新宿発の 「特急スーパーあずさ1号」 に乗りこみ、松本に向かった。

5分ほど遅れて9時45分、松本駅到着。

面会は10時の約束なので、タクシーに乗り合わせ松本市役所に走る。

市役所で、福島・須賀川から車で突っ走ってきた伊藤俊彦さんと合流。

 

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市長のスケジュールで見つけたのか、

地元のケーブルテレビが待ち構えていた。

 

菅谷昭さん。

甲状腺疾患の治療を専門とする医師で、

1996年から5年半にわたってベラルーシ共和国に住み、

小児甲状腺ガンの医療活動を続けられた方である。

帰国後、長野県衛生部長を経て、2004年に松本市長に就任。

昨年は内閣府の食品安全委員会に招致された専門委員の一人として

内部被曝の重大さを指摘された。

福島県からの避難者の受け入れも積極的に行なっている。

 

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今回のヒアリングでは、内部被曝のとらえ方や今後の影響予測、

有効な食品対策への考え方などについて話をうかがった。

 


菅谷さんはまず、我々にことわりの言葉を述べた。

「自分は放射線の研究者でもなければ、食品の専門家でもない。

 一人の医師であり、今は自治体の首長でもある。

 理想を言うのは簡単だが、厳しい現実のなかで生産者も市民も守らなければならない

 立場にあることを、どうかご理解いただきたい。」

 

了解です。 そういう方の話を聞きたくて来たのです。

 

菅谷さんは、福島第1原発事故による影響を軽く見てはいけないと警告する。

チェルノブイリ原発事故と比較しても、線量の高い地域はある。

そういうところに子どもや妊婦が住んでいる。

除染といってもそう簡単なことではない。

いたずらに安心させようとせず、危険なところには 「住んではいけない」 ということも

政府は明確に言う必要があるのではないか、と。

 

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<以下、菅谷さんの談> 

長期にわたる低線量の内部被曝によって何が起こるか、ということは

実はまだよく分かっていないんです。

だからといって想定する被害を軽く考えてはいけない。

体内に入った放射性物質は代謝によって排出されてゆくが、

一方で、軽度でも被曝し続ければ蓄積されていくことになります。

その影響が科学的に解明されてない以上、我々はチェルノブイリから学ぶしかない。

チェルノブイリは私たちの25年先を進んでいるのです。

  

子どもの甲状腺ガンはチェルノブイリの事故後から徐々に増え始め、

5年後から突然増加し、10年後にピークに達しています。

被害を防ぐには症状から分析するしかなく、

だからこそ長期的な観察体制が必要であり、

放射線量の高い地域であれば一定期間線量の低い地域への移動も考えるべきでしょう。

 

長期の低線量被曝の影響はガンだけではありません。

ベラルーシの医師からの報告では、免疫機能の低下による症状が増加しています。

風邪を引きやすい、しかも長引いたりぶり返したりする。

造血力の低下で貧血を起こしやすくなったり、

異常に疲れやすくなったり (長崎で発生したぶらぶら病のような症状か・・・)、

消化器系の疾患や先天性障害も増えてます。

 

ただ2~3倍増えただけでは、因果関係を証明したことにならない。

25年経っても結論が出ない、チェルノブイリは今も 「進行形」 なんです。

 

子どもを放射能の被害から守るために提唱していることは、

「規則正しい生活」 と、

ビタミン、ミネラル(鉄分など) をちゃんと摂る 「栄養バランスのとれた食事」 です。

食物繊維とペクチンは排出を促進する上で有効です。  

 (寒天とリンゴがよい。 でもペクチンは過剰に摂ると他の栄養素も排出してしまう。)

私は皆さんに、「ガンより、それ以外の病気を心配してください」 と言ってます。

 

このような悲しい事故が発生した以上、

放射能対策は理想論だけではいかなくなってしまいました。

現実的な対策として、ある期間までは15歳で区切って、

15歳未満の子どもについてはリスクのある食品の摂取をできるだけ避ける。

子どもを出産する可能性がある女性も同様。

しかし、大人には 「基準値未満なら食べてください」 とお願いしています。

現実には食べるしかありませんから。

<談、以上>

 

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松本市では、 学校給食で使用する食材の放射能検査を独自に実施している。

サーベイメーターなので限界はあるようだが、それでも数値を公開することで

市民の安心感にはつながっているようだ。

以前より地産地消を基本としてきたことで、卸し業者も理解して気を使ってくれるらしい。

やはり普段の関係性は大切である。

 

最後に、暫定規制値の見直し案に対する見解を尋ねた。 

やはり 「食品は専門ではないので・・・」 とことわりつつ、

これが現実的にしょうがないレベルか、という印象を持っているようであった。

4分類については何とも言えないが、

乳幼児の数値を設定できたことは良かった、と評価されていた。

 

子どもたちの治療にあたってきたお医者さんということもあって、

物腰の柔らかい誠実な姿勢が伝わってくる方だった。

今の時代に、市民の健康に気を配り、予防原則も忘れない首長の存在は、

市民にとってはとても安心感を抱かせることであるだろうと思った。

 

我々の専門家行脚は、まだ続く。

 



2012年1月 4日

" 希望の復興 " を始めよう

 

皆様、明けましておめでとうございます。

本年が皆さまにとって  " 希望 "  を実感できる一年になりますよう

祈念して、仕事を再開します。

 

歴史はかなり大きな激動のステージに突入しています。

しかし目の前の動きは今だ道標(しるべ) を求めさ迷う龍のようでもあり、

3.11後を経験したにもかかわらず、

さらに奈落に向かっている危うさすら感じさせます。

必要な変化なら勇敢に立ち向かいたいものです。

 

春にはすべての原発が停止します。

2012年を、正真正銘の 「脱原発元年」 にしたい。

新しいエネルギーの構想は色々と提示されているのに、

「現実的ではない」 とか 「説得力がない」 とか 「コストが合わない」 とか

「温暖化が進む」 とか、否定する人たちがまだ厳然と存在します。

しかも流れを潰そうとするから困ったもんです。

しかし、もはや老朽化してきた原発に 「安全保証」 を預けるわけにはいかないし、

手に負えない有害ゴミを排出し続ける未熟な技術に優位性がないことも、

すでに明らかです。

次世代技術を切り開く者にこそ光は当てられる。

そんな時代に入っていることを確認して、エンジンを加速させましょう。

 

有機農業の力を信じるワタクシとしては、

「この星の生命体を支えるエネルギーの根源は、太陽と植物の光合成である」

から出発したい。

石炭や石油だって、

もとは太陽エネルギーを変換させて増殖した太古の生命体の化石だし。

 

しかもそもそも、エネルギーとは電気だけではない。

生命活動を支える力を、

たとえばアジア・モンスーンに暮らす人々は、

一粒の種が1生命サイクルで1500~2000粒に増殖する湿生植物=稲(米)

との共存技術を進化させることによって獲得してきた。

その共存システムをできるだけ安全で

永遠に持続可能なかたちで育むのが有機農業である。

 

しかも、この一年でどうやら見えてきた世界は、

厄介な放射性物質をがっちりとつかみ、生命循環系への拡散を防ぐ力は

土壌のキレート力にあり、それを安定的に支えるものこそ

生物多様性という土台世界なのではないだろうか、ということである。

 

放射能リスクから自己を防衛するために必要なことは、

" 逃げる・避ける "  だけではない。

免疫力強化のためにも、有機農業は貢献する。

逃げて別なリスクを摂取しては、元も子もないしね。

土を守る、その力を回復させる、無駄にしない (荒れさせない)、

新しいエネルギーを生む基盤にもする、

その力を 3.11以前よりも強固にする。

これこそ 復興 というものではないか。

そのためにも、生産と消費の流れの再建が必須である。

 

「流通者とは、価値のネットワーカーでなければならない」

なんて偉そうに喋ってきたツケから逃げるワケにいかなくなって、

いよいよもってしんどい一年が、始まった。

 



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