産地情報: 2007年9月アーカイブ

2007年9月21日

九代目 弥右衛門 襲名

 

9月20日(木)

東京は明治記念館-「鳳凰の間」にて、

「九代目弥右衛門襲名を祝う会」が開かれる。

 

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べつにヤクザの世界の話ではない。

大地のオリジナル純米酒 『種蒔人』 の醸造元である大和川酒造店

代表の佐藤芳伸氏が、

代々当主が継いできた 「弥右衛門」(やえもん)の名を正式に襲名し、

そのお祝いの会が催されたのだ。

 

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大和川酒造店。寛政2(1790)年創業。

以来217年、会津は蔵の街・喜多方にて、連綿と酒林を掲げてきた。

大和川の名は、奈良・斑鳩を流れる川の名に由来する。

江戸も後期に入った頃、大和から会津に移り、酒造りを興したのが初代・佐藤弥右衛門さん

というわけで、佐藤家当主は以後ずっと 「弥右衛門」 の名を守ってきた。

 

先代の弥右衛門さんが亡くなられたのが一昨年。

それ以前より芳伸さんが社長として経営を任されてはいたが、

いよいよ晴れて九代目襲名と相成った次第。

もちろん戸籍上での正式改名である。

 

幼名・芳伸ちゃん(同世代の友人はこう呼ぶ) 改め九代目弥右衛門氏は、

すでに6月に北宮諏方神社にて襲名の報告を済ませ、

地元での盛大な襲名披露宴が開かれたのだが、

東京の友人やファンが黙っておらず、今回の東京での「祝う会」開催となった。

 

列席者は80名ほど。

清酒業界関係者に加えて、メディア関係者、カメラマンにピアニスト、大学教授など、

多彩な顔ぶれは、佐藤氏の活動領域の広さを物語っている。

 

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ちょっと緊張の面持ちで挨拶する九代目弥右衛門さんである。

 

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弥右衛門襲名には、芳伸さんも相当の決意がいったのだとういう。

歴代の弥右衛門がそれぞれに果たしてきた功績が重かったのだ。

 

伝家のカスモチ原酒「弥右衛門酒」など数々の銘酒を生み出し、

積極的に文人墨客を招いては喜多方の文化を発展させてきた歴史が

「弥右衛門」 の名に刻み込まれている。

 

先代はと言えば、

喜多方の町並み保存に傾注し、蔵の街・喜多方を全国に発信した功労者である。

 

でも芳伸ちゃんだって、すでに相当の実績である。

地元会津の米にこだわり、熱塩加納村での有機農業の発展を陰で支え、

世に出した純米吟醸酒の数々。

古い蔵を改造した 「北方風土館」 では、著名な芸術家の個展やコンサートなどが開かれ、

喜多方を文化・芸術の香り高い街に育てている。

古い蔵や町並みを守る活動の先頭に立ちながら、

最新の技術を導入した新しい蔵では、酒造りを体験させる門戸を市民に開放している。

自らの手で日本酒ファンを育てているのだ。

 

昨今は海外へも意欲的に出かける。

「良い日本酒は、どんな料理にも合う」 が彼の信念である。

実際に、海外での日本酒評価は確実に上がっている。

 

思い起こせば1993年、大冷害の年。

須賀川の稲田稲作研究会・伊藤俊彦さんと初めて訪問した時、

当時専務だった芳伸氏は、すでにこちらの意図を正確に捉えていて、

たった1回、ものの1時間程度の商談でコンセプトが出来上がった。

 

そして翌年の冬、できあがったのが、

大地のオリジナル純米酒第1号 『夢醸』(むじょう) だった。

 

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日本の米を守りたいという強い思いと、俺たちの夢を、醸してゆこう。

飲む人の夢もまた、じっくりと熟成されていきますよう。

 

こんな思いで名づけられた 『夢醸』 は、

21世紀に入り、『種蒔人』 と改名された。

 

明日を信じて、未来への種を蒔き続けよう。

 

2002年には、稲田稲作研究会と大和川酒造店、大地の3者で

『種蒔人基金』 を設立。

 

この酒で、水(系)を守り、米(田)を守り、森を守る、具体的な行動を起こそう。

 

今年やったことは、飯豊山の山小屋掃除に種蒔山への道普請、

そして棚田の水路補修ボランティア。

 

実にささやかではあるけど、我々にできる具体的な水系保全の一歩であり、

酒飲みとしての 「弥右衛門」さんへの恩返しである。

 

専門委員会 「米プロジェクト21」 メンバーで、弥右衛門さんを囲んで一枚。

 

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我々も 「弥右衛門」 の歴史につながっている。

この重みを忘れることなく、

「種蒔人」 が九代目弥右衛門の功績に花を添えるものになるよう、

大事に育てていかなければならない。

 



2007年9月11日

台風9号(続報)

 

台風9号の影響については、8日に速報(?)的に書いたが、

月曜日になって、産地担当が各地の被害状況をまとめてくる。

 

長野から北海道まで

稲(米)は大丈夫なようだが、

やはり野菜と果物に色々な被害が出ている。

 

ピーマンやオクラが倒れたり、ハウスが破れたり、レタスやキャベツは風雨に叩かれ、

人参などあちこちで畑が水に埋まったところもある。

果物も、りんご・梨・ぶどうなどで落果の報告。特に洋ナシがひどい。

 

いずれも、これからの病気の発生や傷痕などの品質が心配される。

 

前にも書いたけど、果樹など年一作の作物は、

一年の先行投資分を収穫で取り戻さなければならない。

「梨が1トンほど落果」

「樹に残っていた早生りんごの半分が出荷不能」

「ラ・フランスのひどいところは70%の収穫減」

・・・・・といった報告を聞くのは実にせつないものがある。

 

それでも生産者はおしなべて

「それほどでもない」 とか 「意外と(被害は)少なかった」 と言う。

力強いものだと思う。

 

しかし実際は 'それほどでもなくはなかった' という現実も運ばれてくる。

流通の悩みはこれからである。

 

会員の方々には、来週、被害状況をまとめた号外が配布されます。

ぜひご確認いただき、届いたりんごやレタスに 「よう頑張った」 のひと声でも

かけていただけたら、嬉しいです。

 



2007年9月 8日

台風9号

 

関東を席巻し、昨夜のうちに東北を縦断した台風9号。

今週の頭から進路が心配され、

有機農業推進室・古谷はこまめに各地の予報を生産者に送っていたが、

案の定、かなりヤバいコースをたどってくれた。

 

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なんなんだぁ! という進路である。

 

今日は土曜日なので、農産チーム・産地担当諸兄は顔を出してないが、

おそらくそれぞれに産地と連絡取り合っていることだろう。

とはいえ、こちらもやはり気になるものは気になる。

何軒か連絡を入れてみる。


 

福島-稲田稲作研究会・伊藤俊彦さん。

「稲はまったく被害なし。 ど真ん中でぶつかってきてくれたんで、風もそんなでもなかった。

 でも、露地野菜の人たちは少しやられたかもしれないなぁ。」

悪運強し!

 

山形-おきたま興農舎・小林亮さん。

「りんごは直撃を予想して、収穫できるところは急がせて、対策とってたんだ。

 中生、晩生のりんごは落ちたところもあっけども、"ガックリ"というほどではない。

 風の直撃を食らったラ・フランスが8-9割の減。大玉が落ちたので、ショックは大きい。

 稲は倒れたところもあるが、さほどでもない。オラの田んぼは丈夫だから。」

例によって、倒れても死なねえ (死ねない?)、って感じ。

 

宮城-蕪栗米生産組合・千葉孝志さん。

「農を変えたい」の集会に出かけて留守。 盛岡までお出かけって、肝が据わってるね。

電話に出られたお嫁さんの話。

「心配してたほどではなかったですね。他所では倒れた田んぼも多少あるようですけど」

と明るい声。

 

秋田-ライスロッヂ大潟・黒瀬正さん。

「おお、まいど。台風の目ぇが通ったんかな。おかげさんで、被害ゼロ!

 不思議なくらい、ゼロ! ほな、11月3日のブナ植え、待ってますよぉ。」

 

青森-新農業研究会・一戸寿昭さん。

「こっちもど真ん中だったんで、場所によってりんごが落ちてるけども、被害は少ないほう。

 稲は大丈夫。 まあ、想定範囲内。 こちとら根性あるから。」

 

どうやら、台風の進路を見ながら連絡したせいか、どこも力強い。

いや、連絡した相手が悪かったか。 これだけでは安心できない。

まあ、月曜日。

産地担当がまとめてくる報告を待ちたい。

 

明日は、大地の稲作体験田(千葉・山武)の稲刈りである。

こちらのほうは昨日のうちに、

さんぶ野菜ネットワーク事務局の花見くんが写真を送ってくれた。

 

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「周りはけっこう倒れていますが、大地の体験田はしっかりしています。

 会員さんの心が通じたのでしょう。」 -なかなかお上手。

 

花見君はすぐに様子を見て回ったようだが、野菜は 'そこそこ' やられているとのこと。

生産者の 'そこそこ' とか 'さほど' とかいうのは、

'持ち直せる範囲' から '立ち直れないほどではない' くらいの幅があって、

喜んでいいのか、深刻に受け止めるべきか、実に微妙である。

 

先発隊はすでに現地に入り、明日の準備に入ってくれている。

私は、今日仕事してから夜に入る後発隊と一緒に向かう。

 

明日は台風の話などしながら、申し訳ないけど、収穫を祝わせてください。

 



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