産地情報: 2009年12月アーカイブ

2009年12月21日

おきたま興農舎 忘年会

 

肌を刺すような寒風の宮城から、大雪の山形へ。

e09122103.JPG

山形新幹線・赤湯駅。

ここに高倉健でも立っていたら、北のさいはてに来たかと勘違いするかもしれない。

・・・・・と思うのは、私がのんきな四国出身者だからか。

いやいや、地元の人でさえ 「この時期にこれだけ降るのは珍しい」 量らしい。

ま、どっちにしても、私には少々つらい出張になった。

 

e09122106.JPG

 

ここの由緒ある温泉宿で昨日(12月20日)、

大地を守る会に米・野菜・果物を出荷していただいている

おきたま興農舎の忘年会が開かれた。

忘年会に出席させていただくのは10年ぶりくらいだろうか。

あの時は有機の認証制度が作られようとしていた時代で、

これからの方向のような話をしろと言われて、喋った記憶がある。

e09122101.JPG  

そう。 忘年会といってもただ飲むのでなく、

記念講演のような勉強会が設定され、かつ米・果樹・野菜に分かれての

1年の反省会もちゃんと行なわれるのである。

 

代表の小林亮さん。

e09122104.JPG

農民一揆を指揮した先祖が二人いるという家系。

「オレのいのちで済むんなら、いつでも」 -そんな血が流れている。

 


今年の記念講演には、農林水産省の若い官僚の方が呼ばれていた。 

しかしいま彼らには 「人前で喋ってはならない」 というお触れが出されているので、

今回はお忍び、というより公私の私人として自腹で参加したとの事。

というわけなので名前は伏せさせていただく。

 

話の中身はというと、食料自給率向上策や農家への戸別補償制度などなど、

国の対場を代弁しながら、果たしてこれでいいのかと悩みが漏れたり、

「農家はもっと高く売る努力が必要です」 と語りながら

「消費者は安いものを求めている (僕も中国産のほうを買うかも・・・)」

とのたまうなど、(正直だけど) 要所要所で歯切れが悪い。

何よこいつ、と亮さんに問えば、 

「まだ入省して5年なんだ。 気持ちのある奴と思ったから呼んだんだ。

 育ててやりてぇと思ってよ 」 とじつに優しい。

そうまで言われると仕方がない。

このご時勢で農民の集まりに飛び込んできた気概に免じて許すことにした。 

 

分科会では、米部会に参加した。

e09122102.JPG

最初からいきなり 「ではまず、大地さんから報告を」 と振られた。

亮さんのように人間ができてない僕は、

隣に座った農水省の若者をチクリチクリとやりながら、

米の販売動向から、夏に実施した興農舎の監査結果の報告を行なう。

監査とは、大地を守る会が定めた生産基準に基づく監査のことで、

僕らは昨年から、職員による内部監査を進めるとともに、有機JASの検査員を派遣して

独自に産地の監査を実施するという手法を導入している。

 

今回の監査で改めて見えたのが、ほ場(田んぼ) の所有あるいは栽培管理者が

動いているということである。

生産者ごとに最新のほ場リストを作成し直し、登録を更新したい。

たとえば減反で今年は作らないという場合でも除外せず、登録番号は固定化させ、

ほ場リストが興農舎と大地を守る会のデータベースに常に合致する状態にする。

そうすることで県の監査を受ける際も、すぐに照合ができる。

新しく借りたら、そのつど事務局に報告して、自分の管理台帳に追加する。

面倒な作業ではあるけど、

これが自分の栽培管理を証明するデータの大元になります、と説明する。

意味が分かっている人たちは、話が早い。

地区ごとの地図もつくって、この田んぼは今年は誰が何を作っている

とかも分かるようにしておこう、という話になった。

「今年じゅうには完成させます」 (事務局の五十嵐さん)。

言うことなし。 素晴らしいです。

 

会議では今年使った資材の結果から来年に向けての検討が行なわれた他、

穀物検定協会の方から、今年の興農舎の米についての評価も発表された。

夏場の日照不足など気候不順によって、全体的に品質・収量ともに落ちる年になった

にも拘わらず、興農舎の米は大変素晴らしい結果だったとの事。

多少のご祝儀発言もあっただろうとは思うが、

「皆さんが非常に努力していることが、米から見える」

と繰り返されていたことに、鑑定官の高い評価が窺えた。

「よかった。 頑張ったですね、皆さん」 とこちらも素直に感謝の弁が出る。

ガキ大将の顔のまんま大きくなったような生産者が一人、ウンウンと頷いている。

 

あとは温泉に入って一年の疲れを癒し、酒を酌み交わして労をねぎらい合う。

注がれるたびに 「いっぱい売ってねぇ」 「頼みます」 の台詞が胸にこたえる。 

 

e09122105.JPG

 

 



2009年12月 8日

"冬みず田んぼ" に、太陽光パネル!

 

宮城県大崎市 「蕪栗(かぶくり)米生産組合」代表の

千葉孝志(こうし) さんから電話が入る。

こちらから紹介していた太陽光発電の会社の人が今日、千葉さんを訪ねていて、

その報告である。

「話を聞いて、やることに決めました。 年内のうちに工事に入りますから。」

 

オオーッ! 即決! 大丈夫?

「大丈夫でしょう。 これで何とか冬のうちに水が張れそうかな。」

 

千葉さんの地域、旧田尻町にある蕪栗沼とその周辺の水田地帯が、

渡り鳥が休息するための貴重な湿地帯として

ラムサール条約に登録されたのは4年前のこと。

千葉さんはその前から有機栽培での米づくりをやりながら、

冬にも田んぼに水を張って、" 渡り鳥のための田んぼ "  にしてきた。

鳥たちはただ田んぼで餌を取るだけでなく、田を肥やす養分を残していってくれる。

 

千葉さんの田んぼにたむろするハクチョウたち。

e09120803.JPG 

2年前に撮ったものだが、多少警戒しつつも、そばまで近づいても逃げないのだった。

 


そしてこの冬、千葉さんは用水から水を引くことのできない田んぼ用に、

新たに井戸を掘ろうという計画を立てた。 

しかも井戸水を汲み上げて田んぼに流す動力源として、

太陽エネルギーを利用できないかと考えたのだ。

e09120801.JPG 

          (千葉孝志さん/撮影:農産チーム・海老原康弘)

 

その話に(株)日本エコシステムという太陽光発電の会社が乗ってきてくれた。

モデル実験として商売抜きで一基つくってみよう、

やるならこの冬には実現したい、ということで蕪栗まで出向いてもらった。

畦に太陽光パネルを並べる。 充分いける、という話になったようである。

素晴らしい。

e09120802.JPG

蕪栗米生産組合の面々と (撮影:同上)。

千葉さんたちは水路から魚たちが田んぼに遡上できるよう、魚道も設置している。

 

現地に赴いた日本エコシステムのHさんからも、翌日メールが入ってきて、

「千葉さんは立派な方で、感心しました」 とある。 

ガンもすでに5万羽ほどやってきていて、感動されて帰ってきたようである。

 

近々にも、田園の中に設置された太陽光発電の風景をお見せしたい。

乞うご期待。



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ