産地情報: 2011年7月アーカイブ

2011年7月27日

までいの大和川酒造、金賞を祝う

 

山崎農研のシンポジウムを、大変失礼ながら、

最後の質疑応答の時間を前に退席させていただき、次の会場に向かう。

何の集まりかというと-

「 ガンバレ福島! その活力を喜多方から!

  ~大和川金賞受賞酒を楽しむ会 」

 

本年度の全国新酒鑑評会にて、

大和川酒造店の大吟醸がめでたく金賞を受賞したのだ。 

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これまでも金賞受賞を祝う会は、地元・喜多方で開かれたりしたのだが、

東京で開くのはこれが初めて。

しかも大和川を愛するファンたちの手によって準備された。

それだけ、今年の受賞は特別な歓びと感慨をみんなに与えたのだ。

 

場所は有楽町・東京国際フォーラムの中にある、

「宝 東京国際フォーラム店 by 夢酒」。

少し遅れて到着したら、すごい数の参加者で、

すでに佐藤弥右衛門社長の挨拶が始まっていた。

 

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挨拶はちゃんと聞けなかったが、社長の思いはこんなだろう。

ひとつは、地酒屋の哲学において金賞を獲得したことだ。

受賞をねらって山田錦などの酒造好適米を各地から取り寄せたりせず、

地元で、社員自らの手で栽培した 『山田錦』 を醸しての栄誉、なのである。

 

地酒とは 「地の米、水、風土で醸すもの」 のポリシーのもと、

1997年に農業生産法人 「大和川ファーム」 を設立して以来、

早生の 「五百万石」 から始まり、中生の 「夢の香」 「美山錦」、

そして高度な栽培技術を要する晩生の 「雄町」 「山田錦」 の栽培に、

困難な東北の地で挑んできた (山田錦は兵庫県で生まれた品種) 。

間違いなく世界最北の山田錦である。

「地酒のかたち」 へのこだわりで、ここまできた。

「どうだい!」 の気分だろうか。

 

もうひとつは、震災の年に、である。

震災後、佐藤社長は自社の仕込み水を一升瓶に詰め、

支援物資と一緒に、自ら車を飛ばして何度も被災地に届けた。

工場の敷地を支援物資の保管場所として開放し、

また 飯館村支援 のために奔走した。

 

までいの大使に、本業での金賞という冠!

ここはファンたちの手で、お祝いと感謝の席を用意しようじゃないか。

呼びかけてくれた実行委員長、杉原英二さんにも感謝したい。

 

飯館村の菅野典雄村長も馳せ参じ、挨拶に立った。

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支援してくれた多くの方に熱い感謝の言葉が語られるとともに、

避難したみんなを一日も早く村に帰れるように頑張りたい、

そしてゼッタイに 「までいの村」 を取り戻して見せる、と決意が表明された。

 

みんなの参加費から、いくばくかの支援金を飯館村に贈る。 

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がんばろう福島! がんばろう飯館!

 

次代を担う後継者にも、この日は刺激になったことだろう。 

挨拶にも力が入る。

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マイクを持っているのが、長男の雅一さん。 

左が次男の哲野 (てつや) さん。

どうも弟のほうが人気があるらしく、兄はちょっと嫉妬気味である。 

 

1993年、あの冷害の年に、大地を守る会オリジナル純米酒第1号を

大和川さんにお願いした我ら 「米プロジェクト21」 としても、

社長を囲んで一枚いただかなければならない。

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「おめでとうございます! 僕らも本当に嬉しいです。」 

 

右から二人目のおじさんは米プロのメンバーではないけど、

勢いで入っていただいた。 お分かりでしょうか・・・・・

あの! そう、あの! サッカー実況のカリスマ! 激闘の語り部!

元NHKアナウンサーで解説委員を務められた山本浩さん (現在は法政大学教授)。

1998年6月、W杯に初出場したフランス大会の第1戦 (Vs.アルゼンチン)

の実況中継の語りは伝説になっている。

「声は届いています、はるか東のほうから ~ 」

サインをもらうのを忘れた。。。

 

山と酒の愉快な仲間たち -「飲めまろ会」 の皆様にも集まってもらわねば。 

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飯豊山登山では、登山靴が割れて、助けられたこともある。

5月の山都の堰さらいでも、いつも何人かと一緒になる。

 

金賞は、我らみんなの誇り、と言わせてもらいましょう。

極上の美酒に酔い、励まし合い、心を一つにして、

美しい復興に向かおうではないか。

 

朝、ドアを開けたところで、一気に花開かせた姿を見せてくれたグラジオラス。

今日のこの日を待って咲いたのか。。。 

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飯館に・・・届いたよ、きっと。

 

欺瞞とうっとうしさに満ち、地域をお金中毒にさせるようなエネルギーなんか、

ない方がいい。

までいの花を咲かせよう。

 



2011年7月12日

畜産物&乳製品生産者会議 -ここでも放射能の勉強

 

続いて、ふたつ目の生産者会議報告を。

 

7月7日(木)、小暑、七夕の日。

東京は神宮にある日本青年館の会議室で開かれた

「第5回畜産物生産者会議 & 第6回牛乳乳製品生産者会議」。

つまり畜産と酪農の合同会議だ。

 今回のテーマは

「畜産物の放射能汚染の影響について」。

 

畜産・酪農家の間で牧草の汚染に対する不安が広がっている。

自身の行為とはまったく関係ない要因に対しても配慮しなければならない

時代になってしまった。

被害者が加害者にもなってしまう放射能社会。

もはや食の生産者として、「知らなかった」 ではすまされなくなっている。

 

ということで、

まずは放射能とその影響について、正確な理解をもつことが必要である。

講師としてお願いしたのは、原子力資料情報室共同代表の伴英幸さん。

 

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お話は、放射能の基本知識から始まり、

福島原発事故の概要とその影響について、

被曝ということの正しい理解、

食品への移行や暫定基準値をどう見るか、 

そしてこれからの放射能環境をどう生きるか・・・・。

 

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さすがに集まった生産者たちは真剣である。

質問もいろいろと出るのだが、

たとえば、放射能の影響は動物に対しても同じだと考えていいのか?

という基本的な質問ひとつとっても、

いかんせん、こと家畜や肉への影響についてはデータがあまりになくて、

分かっていないことだらけのようなのだ。

放射線の影響は原理的には人間と同じはずだが、

牛や豚がどれくらいの時間で、どれくらいの割合でガンに罹るかなどは、

過去にも調査されていない、いや 「少なくとも私は見たことがない」 と伴さん。

チェルノブィリ原発事故によって人に影響が出始めたのが5年。

だとすると、そもそも影響が出る前に出荷されることになるだろうか。

 

ではそのお肉は大丈夫なのか。

粗飼料(ワラなど) から筋肉への移行係数は示されていて、

たとえば、放射性セシウムの牛肉での暫定規制値 500ベクレルを超えないためには、

粗飼料の許容量は 300ベクレル/㎏ となる。

しかしこれも正確かどうか分からない。

牛肉の規制値自体も 「暫定」 であって、含まれている以上、

食べ続ければリスクは高まっていく。

 

福島の農家と飼料用の稲で契約したが、使って大丈夫でしょうか?

-水田では土壌の濃度が5,000ベクレル以下なら作付が認められたが、

  最終的に稲を測って判断するしかないのではないだろうか。

 

では規制値以下であれば、餌に使って、消費者は食べてくれるでしょうか?

----- これは伴さんが答えられるものではない。

しかし流通者としては、彼らの悩みに少しは応える義務もあるように思い、

マイクをお借りした。

モヤモヤとしたまま帰らせるわけにもいかないし。

 

法律上 「作ってよい」 「使ってよい」 ものであり、

私が調べたところでも、作付可能土壌から稲の子実への移行は規制値より

さらに10分の1から100分の1レベルになると推定できるので、

現時点で、その契約農家の稲を使うなとは言えない。

最終的には収穫物を測定して判断することになるけど、

その際には、規制値を根拠にした単純な判定では実はすまなくて、

わずかでも残留が認められた場合、それを使うには、

我々の思想とモラルが問われることになるでしょう。

・ このレベルなので使わせてほしい。

・ 使うことで、その農家とともに  " 農地の再生・浄化 "  に取り組みたい。

 それが将来につなげるための、我々の使命だと思う。

- と、強い気持ちで生産者の姿勢を語れるのなら、私は支持したい。

  きちんと情報を開示して、思いも精一杯語って、売りましょうよ。

 

この生産者や販売者に対する評価は、

消費者と言われる方々に一任するしかない。

 

みんなの悩みは深い。 

しかし、明解な答えはない。 

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質問する、中津ミートの松下憲司さん。

 

除染についての質問も挙がる。

微生物が放射性物質を分解するとか無害化するとかいい情報があるが、

有効な微生物はあるか?

-食べる微生物はいるが、それは核種が微生物に移行したものであって、

 基本的に元素が分解されるということはない。 

 放射性物質である以上、その害が消える (無害化される) ことも考えられない。

 ただし、食べる人の健康のために、食用部分に移行させない、

 ということを第1の目標にして利用することを否定するものではない。

  まだ分かってないことも多いので、いろんな試験をやることは必要だと思う。

 

ナタネでは、種には放射性物質は移行しないので、油で使うことは問題ない。

ただし、除染という効果で考えると、データで見る限り、

実はそんなに吸収されていない。

ゼオライトなどは有効性が認められている。

ただし、いずれにしても移行 (吸収) したものの最終処分は、

現在のところ、埋めるしか方法がない。

 

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なかなかしんどい会議だった。

 

安全をお金で買える時代ではなくなってしまったが、

大地を守る会CSR運営委員会の消費者委員の方が最後に語ってくれた言葉で、

少しは救われただろうか。

 

  私はずっと、買う (食べる) ことで生産者を支えていると思ってきた。

  震災の翌週、さすがに今週は宅配は来れないだろうと諦めていたが、

  当たり前のように配送員が来た時は、涙があふれた。

  支えられていたのは、実は私のほうだった。

  これからも感謝して、食べていきたい。

 

  大地を守る会が測定結果をしっかり開示してくれることをありがたいと思う。

  この安心感は捨てがたく、素性の分からないものを買うくらいなら、

  わずかの残留なら大地を守る会を選びたいと思う。

 

  有機農業のほうが、最終的には放射能にも強かった、

  という結果が出てくると嬉しい。

 

最後の期待には、応えられると思う。

なぜなら、もっとも努力するのが彼らであり、ここにいる人たちだから。

 



2011年7月 9日

米ば守ってみせんといかんばい

 

6月29日、米生産者会議の続き。

 

菊地治己さんの講演のあと、

農産チーム・海老原から米の販売状況が報告され、

米の品種別食べ比べを行なう。

はからずも北海道産の新品種の実力が示された格好になった。

さすがに、おぼろづき、ななつぼし、ゆめぴりか、ふっくりんこ、といった

道産米品種をピッタリ当てるのは難しいと思うが、

僕の間違いは、むしろ  " まさかあの米より美味いはずは・・・ "  という

思い込みによるものである。 いやあ、北海道米をあなどってはならない。

 

続いて戎谷から、

3.11以降の震災・原発事故に対する各種の取り組み状況を報告する。

 

懇親会に入り、全国から参じた生産者が各団体ごとにスピーチに立つ。

スライドショーで全員アップといきたいところだけど、

長くなりすぎるので、すみません。

ただ、この方々だけは紹介しておきたいと思う。

関東から東北にかけて、義援金への感謝の言葉が続いたので。

 

まずは、原発事故の影響を受ける格好になった、

福島市・やまろく米出荷協議会。  

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一所懸命、安全で美味しい米づくりに励んできたのに、

ちゃんと保管してある昨年産の米まで売れ行き不振になって、

この悲しみは言葉では言い尽くせない。

でも頑張りますよ、我々は。

大地さんからの義援金で放射能測定器を買いました。

自分たちでもちゃんと測って、安全を確認しながら供給したい。

食べてくれる人のためなら何でもやりますので、とにかく食べてほしい。

安全で美味しい米をつくり続けたいのです。

 


千葉県・佐原自然農法研究会。

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液状化で浸蝕された田んぼに加えて、パイプラインもやられて、

今年の作付面積は相当減ったけれど、温かい義援金を頂戴して、

みんなで頑張っていい米作ろうと励ましあってます。

 

茨城県稲敷郡、篠田要さん。 

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壊れた家の修復にはたいして力になれない義援金額だったのに、

「本当に嬉しかったですよ、ええ。 元気が出ました。

 家は少しずつ直していきますから。」

佐原自然農法研究会ともども、積極的に職員の研修を受け入れてくれている。

 

宮城から、ライスネット仙台。

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発言している小原文夫さんは、大地を守る会CSR推進委員会の生産者委員であり、

仙台黒豚会、仙台みどり会(野菜のグループ) の代表でもある。

仲間の被災状況はまちまちで、家が潰れた生産者もある。

運営は大変だと思うのだが、

気合いはいつもの通り、力強く意気込みを語る。

 

同じく宮城、蕪栗米生産組合。 

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田んぼの被害はあちこちに発生したが、

三陸の人たちのことを思えば、たいしたことはないと言い聞かしている。

内陸の俺たちがこれくらいで負けるわけにいかないから、と

こちらも強い気持ちで前に進んでいる。

 

皆さん、こちらが恐縮するくらい深い感謝の気持ちが伝えられた。

すごい力になったことを、義援金にご協力いただいた皆様に

この場を借りてお伝えしておきたく思います。

 

もう2、3組、いってみましょうか。

秋田・大潟村から、相馬時博さん (大潟村元気グループ)。

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親父に替わって参加。

大先輩からいっぱい学んで帰りたい、と意欲満々。

いよいよ代替わりに向かって・・・とか書くと親父の喜久雄さんにどやされそうで、

やめておくけど、期待してます。

 

山形から、庄内協同ファームの小野寺喜作さん。

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小野寺さんも震災直後に宮城まで救援活動に出向いた方だ。

衝撃は大きかったようだ。 

この間二人の息子さんが就農して、未来への希望と同じだけ不安もある。

原発は止めるしかないっすよね。

 

一番南からやってきた方にも敬意を表して。

熊本・阿蘇の大和秀輔さん (大和秀輔グループ)。

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阿蘇有機生産組合の下村久明さんも、いつも一緒に来てくれる。

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ともに合鴨農法に取り組む。

北海道でやろうがどこでやろうが、米会議はゼッタイに欠かさない二人。

思いは一本である。

大地を守る会の米の生産者として、

誇りばもってですよ、米ば守って見せんといかんとですよ。

 

ありがたい存在である。

 

去年の開催地・新潟県南魚沼市から、笠原勝彦さん。 

ご夫婦での参加。

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奥様の薫さんは、何と東京育ち。

友人の結婚パーティで勝彦さんが見そめたんだそうだ。

きっと夢をいっぱい語ったんだろう。

元気な農業青年や後継者たちを見ていると、

" 嫁不足 "  なんて言葉は浮かんでこないね、いや、ほんと。

みんな素敵に輝いている。

 

最後に、地元 「北斗会」 の面々。 

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この日の食べ比べでも立証された北海道米の力。

事務局を務める(株)柳沼さんのバックアップで、

技術的進化への取り組みにも余念がない。

栽培期間の短い寒冷地・北海道の悩みは肥料ですかね。

 

おまけ。

旭川での開催ということで、乗り込んできた面々がいた。

美瑛町の早坂清彦さん。

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富良野市から今利一さん。

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今年の畑は、去年にも増して厳しいようだ。

 

中富良野・どらごんふらいの間山幸雄さんと石山耕太さん(太田農園)。

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石山さんとは、今年の東京集会での、異常気象のトーク・セッションで

ご一緒させていただいた。

いま、2月に亡くなられた 布施芳秋さん の農場も手伝ってくれている。

 

二日目はほ場の視察。

旭川で有機栽培面積を広げてきている、石坂昇さんの田んぼを見せていただく。

 

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約40町歩(ヘクタール) のうち、10町歩で有機JASを取得する。

反収(10 a 当たりの収穫量) は当初5俵程度だったのが、

今では10俵にまで達し、慣行栽培よりよく獲れている。 

 

根張りのいい、強い苗を育てるところから勝負は始まっている。 

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左は慣行栽培の苗、右が石坂さんが育てた 「ななつぼし」 の苗。

 

さらにみんなの関心は、除草機である。

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メーカーと共同歩調で改良を重ね、随所にオリジナルの工夫がみられる。

草の対策は、草を出さないこと、つまり種を落とさせないことだ。

 

実演する息子の寿浩さん。

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初期にきっちりと取る。

分けつを旺盛にし、穂数を増やすのが北海道の米作りだとのこと。

 

解散前に記念撮影。

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厳しい年だけど、力を合わせて、前を向いて、頑張りましょう。

 

最後にこいつら。

新潟・オブネットの武田金栄さんを中心に集まってきている若い生産者たち。

「元気のいい若手農家で 『新潟イケメン会』 を結成しました。

  ブランドになりますので、ヨ・ロ・シ・ク!」

 

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ポーズまで決めちゃって、その明るい自信は、褒めてやる。

ただし、新潟+イケメン、というだけで付加価値はつけられないからね。

君らが米のおまけでついてくるワケじゃないし。

個人的には、隣のオヤジのほうがインパクトあると思うぞ。

ま、負けないで頑張ってくれ。

 

どこよりも豊かな田んぼ、そして安全でおいしいお米づくりで競いながらも、

大きな輪をつくっている仲間でもある。

明日に向かって、一緒に走り続けようじゃないか。

 

米ば守ってみせんといかんばい!  だよね。

 



2011年7月 8日

北海道でお米の生産者会議

 

暑いですね。 政治は寒いですが。。。

 

寒いけど、クーラーの役目は果たしてくれないようで・・・

ま、政治へのコメントは避けます。 深読みしてもしょうがないし。

僕らは、やるべきことを急ぎましょう。

この夏を、生産的な汗で、豪胆に乗り切りたい。

 

では、ふたつの生産者会議の報告を-

まずは6月29日(水)~30日(木)、

北海道旭川市で開催された 「第15回全国米生産者会議」。

年1回、各産地を回ってきた米の生産者会議も、

ついに北海道での開催の運びとなった。

今や北海道の米は、内地(死語か・・) の生産者にとって、脅威なのである。

気がつけばこの20年の間に、

美味い! と言わせる米が続々と名乗りを上げてきたのだから。

見てみようじゃないか、その現場を。

 

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今回の幹事団体は、各種の道産米を作ってくれている 「北斗会」 さん。

挨拶するのは、会長の外山義美さん。

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北海道にいても、震災の影響には深く心を痛めている。

東北の人たちに思いを馳せながら、気持ちの晴れない思いで米を作っているようだ。

挨拶にも気持ちがこもっていて、

ああ、今年の生産者会議は仲間との連帯感を確かめ元気を与え合う年だ、

と感じ入る。

 

で、北海道の米の進化について、である。

講演をお願いしたのは 「農業活性化研究所」代表、菊地治己さん。

長く北海道産米の品種改良に尽力し、

この春に上川農業試験場長の職をもって退職された。

演題はまさに、「おいしくなった道産米の秘密」。

 

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北海道で稲作が本格化して130年。

厳しい自然環境にもめげず、戦前の新田開発、戦後の食糧大増産時代を担いながら、

1970年代からの減反政策で北海道の米作付面積は半減した。

量から質へのたたかいが始まる。

1980年、当時の横綱 「コシヒカリ」 「ササニシキ」 を目標とした

「優良米の早期開発プロジェクト」 がスタートする。

 

取ったのは 「成分育種」 という手法。

米の食味を左右すると言われるアミロースと蛋白質の含有量を測り、

値の低いものを選抜していくのである。

選抜した種で幾通りもの交配を行ない、最初の頃は沖縄・石垣島に送っては

年4作 (1年で4年分) というスピードで進めたが、

その後試験場内に巨大なハウスをつくってからは年3作のペースで

栽培試験-選抜-交配-栽培試験を繰り返してきた。

それでもって、世に出るのは何万分の1という世界なのだそうだ。

菊地さんは、朝、昼、夕に〇種類の米を食べ、夜は仲間と酒を飲んではラーメンを食って、

深夜にまた数種類の米を食べる、という日々を過ごしたという。

おかげで胃袋を失った、と。

 

北海道内4つの農業試験場 (上川、中央、道南、北見)上げての

育種プロジェクトの成果は、1988年の 「きらら397」 の登場から始まり、

1996年の 「ほしのゆめ」 で念願のササ・コシ級の評価を獲得し、

「ななつぼし」 「おぼろづき」 を経て、2008年 「ゆめぴりか」 へと至る。

 

しかし今、菊地さんは思っている。

プロジェクト発足から30年。 食味に関しては当初の目標をクリアしたかもしれない。

しかし良食味品種は耐冷性や耐病性に難がある。

また、ただ食味を追求して低蛋白・低アミロース一辺倒の育種戦略だけでなく、

蛋白は必要な栄養源なのだから、高蛋白・良食味の視点もあってよいではないか。

あるいは、アレルギーの出ない昔の品種-「ゆきひかり」 のような品種も

見直す必要があるのではないか。

 

開拓時代の北海道を支えた 「赤毛」 という品種の米がある。

まずい米だと思っていたが、去年食べたら美味かった。

「ゆきひかり」 は、腸の粘膜を保護して善玉菌を増やすことが分かってきている。

昔の米は (その地に根づき、その地の) 日本人の腸を守ってきた、

のではないだろうか。。。

 

定年退職後、菊地さんは改めて人生のテーマを設定されたようだ。

有機農業を北海道農業のスタンダードにしたい。

脱原発に方向転換させ、自然エネルギーで真に豊かな北海道を実現させたい。

そして野望は、大麻の普及だとか。

大麻といっても産業用大麻のことで、プラスチックや繊維の原料として、

あるいは食品や自然エネルギーの素材として、菊地さんは着目している。

 

また新たな知己を得て、僕らのネットワークはこうして広がってゆくのである。

 

・・・続く。 お休みなさい。

 



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