産地情報: 2013年6月アーカイブ

2013年6月27日

未来のために、オレはやる!

 

この間飛ばしてしまったトピック -その2。

 

6月12日(水)

昨日本ブログに初登場したローソン・山口英樹さんを、

静岡県函南町の (株)フルーツバスケットにご案内する。

ジャムやケーキの工房の他、酪農王国の施設をご覧いただき、

代表の加藤保明さんも交えて、今後の農産加工の展開について意見交換する。

産地を下支えできる農産加工の進め方について。

視察と会談後、

山口さんはさらに焼津のほうに流れ、自分はとんぼ返り。

 

6月13日(木)

福島県須賀川市、ジェイラップ(稲田稲作研究会) を訪ねる。

 

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代表の伊藤俊彦さんの車で回りながら、

去年と微妙に違う様子に、少し胸が震え、慎重に尋ねた。

「田んぼ、増えてない?」

耕作地が増えたんじゃないか、という意味だ。

風景が、美しくなっている。

「 ああ、増えましたね。 俺たちがやってきたことが間違ってないと

 地域の人たちが認めてくれた結果です。」

 


震災と原発事故に見舞われた一昨年は、120 町歩(= ha ) を除染し、耕した。

昨年は 150 町歩の除染に取り組んだ。

ゼオライトをすき込んでの反転耕 (天地返し)。

下に沈んでいたミネラルが表に出てきて、有効土層が深くなった。

堆肥を入れなくても収穫量が伸びた。

反転耕のあとにしっかり踏み込むことで機械も入れるようにした。

 

伊藤さんは地域の指導に呼ばれるようになっていた。

JA や自治体の説明会には顔を出さない地元の人も、伊藤さんの話は聞く。

「もう除染はやらなくてもいい」 という空気が広がる中で、

なぜ徹底する必要があるのかを伊藤さんは説く。

米を売るためだけじゃない。

春先の風が吹く頃に、背の小っちゃな子どもたちが

少しでも吸引して内部被ばくしないために、未来のために、

子孫からよくやったと言われたいために、

良い死に方をしたいために、オレはやる!

 

あの2011年という年の稲作研究会の取り組みに寄り添いながら、

このたたかいは地域を救う道しるべになると、

そう書いたのは、2011年の暮れ のことだった。

あの時の確信通りに進んできている。

いま地域全体での反転耕の実施へと広がり、

市役所がジェイラップへの作業依頼を取りまとめるまでになった。 

 

今日も測定は丹念に続けられている。

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大地を守る会とカタログハウスが提供した測定器が仲良く並んで、

働いてくれている。

 

昨年秋、収穫後の全袋検査を実施したことで終わらせず、 

彼らは今も日々、

精米調整前の玄米 - 精米後の白米、と何度も確かめている。

妥協しない彼らの信念を支えているのは、未来への責任である。

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このご時世にあって、田んぼが復活し、 

美しい風景が蘇っている。 

 

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このプロセスに立ち会っているのは、僕だけじゃない。

食べる人たちの声援もまた、この風景に貢献している。

 

伊藤さんに、一枚の連絡便(会員さんからのお便り) をお渡しした。

「 備蓄米、待ってました!

 福1 の原発事故から 1年、の去年。

 注文しようかどうしようか迷いに迷いました。 申し訳ないですけど。

 でも、カタログを通して、生産者の方々の血のにじむ努力を見て、

 注文させていただきました。

 ふっくら炊きあがったご飯を食べた瞬間、

 注文してよかった、とうるうるしながら思いました。

 今年もよろしくお願いします!!」

 

春先から低温が続き、かつ雨不足もあって、

田植えができなかったという場所があちこちに発生しているなかで、

この地では、希望が蘇ってきている。

美しい田園を支えるのは、何よりも未来への希望なのだ。

 

稲田から帰ってきて、16日の日曜日。

今度は二本松の菅野正寿さんから呼び出され、都心に出かけた。

その話は、次回に-

 



2013年6月26日

「耕す」 農場

 

放射能講座のレポートを続けている間にも、

あちこち出歩いたりもしていて、いくつかトピックを拾っておきたい。

 

一ヶ月も前の話になっちゃったけど、

5月31日(金)、千葉県は木更津にある農場を訪ねた。

名前は、農業生産法人 「株式会社 耕す」 という。 

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ap bank と言えばご存知の方も多いことと思う。

音楽プロデューサーの小林武史さんと Mr.Children の櫻井和寿さん、

音楽家・坂本龍一さんが拠出し合って設立した、

環境プロジェクトに融資を行なう市民バンク。

その ap bank が 2009年、

「融資」 という枠を超えて、プロジェクトそのものに関わる

「明日(あす)ラボ」 というセクションを立ち上げた。

そこで翌10年の3月に設立されたのが、この農業生産法人 「耕す」 である。

 

ご覧の、山に囲まれた盆地一帯が 「耕す」 の農場。

面積にして 30 ha(約9万坪)。 東京ドーム 6 杯分ある。

20年前に閉鎖された牧場の跡地で、

荒地となっていたところを開墾し、農地として再生させるところから始めた。

スタッフは農業の経験もない若者たちである。

 


現在耕作できているのはまだ 4 ha ほどだが、

有機の認証も取得して様々な野菜をつくっている。

大地を守る会では、7月からのナスと

秋に収穫される 「小糸在来」 という在来種の大豆(枝豆) を契約している。

 

写真手前、南側斜面には

発電量 1 メガワットという太陽光発電が設置されている。

太陽電池モジュール 4164枚。 壮観である。

 

農場を案内してくれたのは、

農場長の豊増洋右(とよます・ようすけ)さん (写真左)。

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豊増さんとは、数年前の ap bank fes の実行委員会だったかで

一度会ったことがあるのだが、

彼がここの農場長になっていたとは全然知らなかった。

「 農業経験はまったくなかったです。

 自分から農場をやろうと提案したんです。

 この3年、がむしゃらに勉強しましたよ。」

山本太郎似のマスク全面に、やる気が溢れている。

 

ちなみに、上の写真の右のネクタイの方は、山口英樹さん。

株式会社ローソンの 「エンタテイメント・ホームコンビニエンスグループ CEO補佐」

という肩書きの方。 CEO とは 「最高経営責任者」 の略。

7月には我が社の常勤取締役となる予定である。

ローソンと大地を守る会の事業提携がどんな新しい価値を生み出すのか、

我々の挑戦は静かに進んでいる (わが特販課はまったく静かではないけど)。

 

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プロ農家から見ればもったいないくらいの農地なのだが、

「早く若者を育てられる体制にしたい」

という豊増さんの言葉から、

この国の農業への危機感とともに、方向性も感じさせられる。

実は千葉県は耕作放棄地がどんどん増えている地帯なのだ。

 

この日は、「耕す」 の野菜を引き受けている (株)kurkku (クルック) の

スタッフさんたちも顔を見せた。

こちらも小林武史さんが代表を務める会社で、

表参道や神宮前エリアを中心に 6 店舗のレストランやカフェを運営している。

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しっかり教えてるじゃない、豊増さん。 なかなか。

 

しかしこれだけの農場規模を運営するのは、ただ事ではない。

ap bank の融資がいくらで、返済計画がどうなっているのか、

までは突っ込んで聞かなかったけど、

若者たちのお遊びだった、と言われないよう、頑張ってほしい。

 

とりあえず、いいナスが届くことを祈ってるよ。 

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