エビ版「おコメ大百科」: 2008年2月アーカイブ

2008年2月15日

夜の自主講座-お米の勉強会

 

今夜はとてもいい気分である (日が変わって15日になってしまったが)。

若手職員たちが自主的に 「お米の勉強会を開きたい」 と言い出して、

勤務時間後に自主講座を開催したのだ。

 

開催は6時半からの予定だったが、定時(6時) に仕事を終えられる人は少ない。

それでも途中で切り上げたりしてパラパラと参集してきて、20人以上の参加者となった。

始められたのは6時45分くらいだったか。

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講師を引き受けてくれたのは、米の仕入担当・朝倉裕職員。

僕は、合い間にちょっと口を挟んだりする賑やかし係。

 

参加したのは、入社して2~3年未満の職員がほとんど。

日ごろ会員さんからの質問やクレームに対応したり、入会希望者のフォローをしてくれている人たち。

それだけに商品知識に対する渇望が強い。

会社としての正規の教育やトレーニングが足りないと言われればその通りだが、

勤務時間内にじっくり勉強会を開催できるほどの余裕はない、のが 「現実」 である。

そんな余裕(=お金です) をつくったら、かえって消費者に何言われるか・・・ と古株は本能的に思う。

 

ともかく、会社の懐具合に不満も言わず、貴重な夜の時間を使って勉強会を開く気概には、

大地の伝統は廃れていない! と胸を張りたいところだ。

お米からつくられたヒト向けバイオ燃料(お酒) なども、先輩面して差し入れたりして、

気持ちを表す。

 

朝倉職員の講義は、米の流通から始まって、大地でお付き合いのある産地の特徴、

お米そのモノの基礎知識などなど、広く浅く、進められる。

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職員から出される質問も、なかなか初心者的、あるいは極めて消費者的で面白い。

 

<Q> 「大地で一番おいしい米はどれですか」

 -消費者会員8万世帯強で、全国35の米生産者組織と取引しているというのは、

  ある種、異常なほどに米を大事にする団体である。

  おそらく、会員さんからよく聞かれる質問なのだ。

 

<A> 「おいしい」 という感覚は個人差のあるものです。

     大地では、北から南まで、個性派の生産者がそろっています。

     色々食べ比べながら、ご家族の好みに合う産地・品種をお探しください。

 

いや実際、何年か前に、新米の食べ比べというのを企画したことがあったけど、

目隠しテストの結果では、参加者の評価は見事に分かれたのだ。

けっして新潟のコシヒカリをみんなが推したわけではない。

やってよかったと思ったのは、

小学生の男の子が 「これがゼッタイ一番」 と推したのが秋田のアキタコマチで、

お母さんに聞くと、「いつも秋田の実家からアキタコマチが送られてきてる」 とのこと。

子どもの味覚はスゴイ!

あの子は今もきっとすくすくと育っているに違いない。 秋田のDNAを受け継いで-。

 

他にも、有機と非有機の違いについて、 大地でなぜササニシキが売れているか?

無洗米の仕組みについて、 なぜ米だけ除草剤1回の使用を認めているか?

七分とか五分米というのは? 無農薬と一般との収穫量の違いは?

価格の違いはどこから? 何で魚沼産の米は高いのか?

米の味の決め手は? 大地の米産地は後継者が増えているか?

今の世間の米の相場で生産者はやってゆけるのか? -などなど、

おそらく会員さんにとっても興味津々だろうと思われるような質問が続いたのであった。

朝倉君も僕も、答えが正しかったか、改めて検証しておいた方がいいかもしれない。

 

たとえばこんな話題もあった。

<Q> 玄米に青い米が混ざっているが、なんでそんな米が入るのか。

<A> それは未熟米だけど、お米の実は同時に成熟するわけではない。

     イネの花は、同じ穂でも順番に咲くのだ (おそらくどんな植物もそのはずだ)。

     収穫適期とは、全体の熟し加減によって判断されるが、

     その最適な時にも、青い実は残る。 少し残るのが、実は一番美味しい米とも言える。

 

考えてみれば、米づくりは知らなくても、植物の生理というか、ある意味で当たり前のことを

思い返せば、腑に落ちることもある。

 

先輩にとっても、こういう機会は新鮮な驚きや反省が生まれるものだ。

 

実はこの勉強会。 仕掛けたのは、毎年職員のボランティアで運営されている

「稲作体験」 の実行委員である。

「この勉強会は継続させたいと思います。 今度はイネの一生とかどうでしょう」

・・・嬉しいねぇ。 先輩冥利に尽きるってやつだ。

 

午後9時。

勉強会終了後、仕事に戻る職員もいたりする中で、

何人かが残って、今年の稲作体験をどう運営するか、話し合いを始めてくれた。

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もう一度、言いたい。

大地魂の伝統は、受け継がれています。

(注-もちろん居残りすることを推奨しているものではありません。 気持ちです、気持ち...)

 



2008年2月11日

"この世の天国~" 大和川酒造交流会

 

2月9日(土)。

僕にとって一年で最もシアワセな一日、のひとつ。

会津・喜多方での 「大和川酒造交流会」 。

毎年2月第2土曜日に設定して、大地オリジナル純米酒 「種蒔人」 の

上槽(じょうそう:お酒を絞る) が行なわれる。

その完成の日にみんなで集まって、今年の新酒の出来を確かめ、祝うのだ。

 

種蒔人のファンが集まる。

原料米の生産者、「稲田稲作研究会」(福島県須賀川市) のメンバーも駆けつけてくれる。

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今年も、例年のリピーター含め36名が 「飯豊(いいで)蔵」 と名づけられた醸造蔵に集合。


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佐藤和典工場長の解説もそこそこに、

はやる気持ちで醸造室に。

  

今回もピッタリ、上槽の日に合わせることが出来た。

今しがた絞られて、タンクに入ったばかりの「種蒔人」、いわゆる「あらばしり」の試飲。

炭酸ガスのフレッシュなシュワシュワ感も、今日ここでしか味わえない。

 

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ウ~ン!今年もイイね! 例年より微妙にまろやか?な感じがする...

交流会常連のO氏の嬉しそうな顔。

 

大地のお酒ウンチク男・F氏の評を聞いてみましょう。

「ウン。辛さの中にも、米の味が残っていて、去年よりさらにバランスがよくなっている」

 

これで一週間ほど寝かせれば(「滓(おり)びき」という) 、炭酸ガスも抜け、味がなれてくる。

会員へのお披露目は、2週間後の 「大地を守る東京集会」 の懇親会である。

今年も間違いなく、樽の周りに集まった呑ん兵衛たちのニコニコ顔が見られる。

想像しただけで、嬉しくなる。

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醗酵中の大吟醸酒。 吟醸の華麗なまでの香ばしさ...

プクプクと泡が立って、こちらはあと数日か。

 

江戸時代から残る旧蔵に移動。

こちらは 「北方風土館」 の名称で、見学蔵に改造されている。

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昔の酒造りの道具などが陳列されている。

自社田で栽培された酒造好適米 「山田錦」 の稲穂も飾られている。

本来は西日本の米だが、他地方から買ってきて酒にすることは、

'会津の大和川'  の名折れとばかりに、自社の田んぼで育てている。

おそらくは 「山田錦」 栽培の北限ではないだろうか。

 

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大和川酒蔵店自慢のラインナップが並ぶ。

 

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こちらは貯蔵倉を改造した 「昭和蔵」。

温度管理に配慮した倉だけあって音響効果もよく、コンサートなどに利用されている。

 

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去年新しく、蔵の奥と二階を改造してつくられた 「天空回廊」 というスペース。

展示会やパーティなどに使われる瀟洒なつくり。

ここで吟醸酒を味わいながら、ゆったりと佇んでみたくなる。

 

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見学のあとは、風土館内に設えられたそば処 「良志久(らしく)庵」 で懇親会。

「種蒔人」 はじめ、新酒を何種類かいただきながら、会津料理に舌鼓を打つ。

料理人は、会津の食文化にこだわり続けてきた、クマさんこと熊久保孝治。

 (写真はいま修行中の方です。)

 

挨拶する九代目の当主、佐藤弥右衛門さん。

2年前に伝統の弥右衛門を襲名した。戸籍も変えたのだ。

先代の遺志を継いで、喜多方の文化保存や街づくりに尽力している。

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「身土不二、四方四里」 (体と土は一体のもの、周囲4里の地元のものを食する) を説く。

いよいよもって頑固な会津人になってきた。

 

初参加の方も、常連さんも、話はどんどん弾む。

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最後は、クマさんの打った蕎麦で締める。

 

これがまた美味い! 

酒といい、蕎麦といい、何ぼでもいけてしまう。

 

いつだったか、交流会に参加した会員さんのひと言。

「大和川交流会は、この世の天国みたい!」

以来、僕はこのセリフをずっと頂戴している。

 

いつのまにか生産者、消費者、誰彼となく話に夢中になってしまって、

あっという間にお開きの時間。

写真も最初のうちだけで......イイ顔がたくさんあったのに、スミマセン。

 

最後は、雪深い熱塩加納村の温泉宿で一献。

ここでも  'この世の天国'  を満喫して、ついに沈没。

 

翌日は、ふたたび飯豊蔵に戻って、

今度は、種蒔人を絞り終えたあとの、板粕をはがす作業。

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これも 「種蒔人の酒粕」 として販売される。

稲田稲作研究会が育てた、貴重な無農薬(栽培期間中農薬不使用) の 「美山錦」 の酒粕だ。

でも、こればっかりは酒の量に応じて残るものだけに、数量限定品である。

一週間で売り切れてしまう。

お酒も酒粕に応じて飲んでくれないと困るんだけど......

 

そんなこんなで、楽しい天国ツアーのシアワセな余韻に浸りつつ、酒蔵とお別れ。

  '帰ってゆくヨッパライ'  ってか。

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最後になったけど、

「種蒔人」 1本につき100円、また100円と、地道に積み立てられてきた 「種蒔人基金」

の額が、1月末現在で 1,015,186円となり、

ついに100万円を突破した。

 

『種蒔人が飲まれるたびに、田が守られ、水が守られ、人が育つ。』

このお酒の実力が発揮されるのは、これからである。

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 後ろ髪を引かれつつ、あとにする。

 



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