エビ版「おコメ大百科」: 2008年5月アーカイブ

2008年5月23日

生物多様性農業

 

夕べはちょっと過ぎた。

二日酔いの重たい頭を引きずって、朝から東京・大手町まで向かう。

JAビルで開かれた 『NPO法人 生物多様性農業支援センター設立総会』

なる集まりに出席する。

 

全国各地に広がってきた 「田んぼの生き物調査」 という活動を基盤にして、

より幅広く、生物多様性を支える農業を支援するための事業活動に発展させたい、

という呼びかけである。

「田んぼの生き物調査プロジェクト」 という名称で活動してきたJAや生協の方々、

このブログでも何度か紹介した福岡の宇根豊さん、

大地の米の生産者会議などでお招きした研究者ら、よく知ったお顔が集まってきている。


このテーマは、私にとっては昨日の社内勉強会のテーマとも、実は重なっている。

栽培上の条件として定められた規格・基準との整合性だけでなく、

その生産者の、その農業が、どれだけ環境に貢献しているのかを

可視化する (最近は 「見える化」 なんていう言い方もあるが)、その手法を自らの手にする。

「田んぼの生き物調査」 にはそういう意味がある。

 

この田んぼで毎年農薬を使わずにお米を育ててきた結果、

今ここに、どれだけの生きものが棲み、生態系のバランスがどうなっているかを、

実直に調べてみる。

そこから見えてくる世界は、実に奥の深い、底なしのような生命の系 (つながり) である。

「生きもの曼荼羅」 と呼んだ人もいる。

農民が、自らの手で編み出した、自らの生産活動の豊かさを示す、

たしかなひとつの指標として、育てられてきた。

 

農水省が昨年7月、『生物多様性戦略』 というのを策定したことは前に書いたが

その後11月には、『第3次生物多様性国家戦略』 なる政策が閣議決定されている。

今年10月に韓国で開かれるラムサール条約第10回締約国会議では、

" 水田は、米を生産する機能だけでなく、水鳥にとっても大切な場である " という

水田決議が採択される 「予定」 だと聞いている。

 

いよいよ僕らは、次に向かうときが来ている、と言えないか。

世界が食糧争奪戦に入っている中で、

ただ米が余っているからといって生産調整 (減反) を強化するなどという愚かな政策は

もうやめなければならない。

埼玉県の面積に匹敵する農地が耕作放棄地となって荒れている。

いったい誰のために行なっているのだろうか。

水田を活かした、豊かな未来が見えてくるような創造性ある政策をつくり出したいものだ。

 

「生物多様性」 という視点から農業の重要性を導き、

生産者と消費者の力で育てていく。

そんな活動を支援しようと、今日のNPO設立の運びとなったわけだが、

実際に提示された事業計画は、正直言って心許ない、というか、苦しい。

いくつかの生協さんとも一緒に、これから育てていくことになる。

会長の藤田も理事就任を受ける。 使われるのはオイラなんだけど。

 

生命の誕生から40億年。

この地球 (ほし) に存在する生命は、約3000万種と推定される。

その生命が、どんどん消滅していっている。

新たな種が見つかっては、絶滅危惧種としてレッドデータに登録されていく。

人知れず消えた種もあるだろう。

私たちの生存条件が、細く、弱くなってゆく・・・・・そんな時代での、

田んぼからの挑戦である。

 

「生物多様性農業」

この言葉にはまだ定義がないが、この思想の対極にあるのが、

GMO -遺伝子組み換え種子ということになる。

これだけは早く整理しておきたいと思っている。

 



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