エビ版「おコメ大百科」: 2009年9月アーカイブ

2009年9月16日

コメニスト宣言

 

・・・・・て、なんよ偉そうに。

この秋、大地を守る会からの新しい提案です。

 

食べて守ろう!生物多様性

略して  " たべまも "  キャンペーンの始まり。

その第1弾。 米を食べることで田んぼを守る、コメニスト宣言

全国各地で、多様な技術を駆使して安全な米づくりに挑みながら、

水田と環境の調和を育んできた大地を守る会の生産者たち、 その数 65。

つくられている品種が20。

これら産地・品種の組み合わせを総計すれば、123種類にのぼる。

それぞれの産地にこだわりがあり、物語があり、自慢の風景 (環境) がある。

それらをひとつひとつ、毎週々々食べながら巡ってみる。

各地の生産者の顔ぶれ、取り組みの多彩さ、食べたことのない品種への驚きなど、

いろんな発見を楽しんでいただけたら嬉しい。

一回にお届けする量は、米の秤に合わせて1升 (1.5㎏) とする。

1週間に1升、これで全国の生産者に出会える。

食べた方から頂いた声は生産者にフィードバックして、品質や意欲の向上につなげたい。

 

大地を守る会のカフェ、ツチオーネ自由が丘店にて、

この  " たべまも "  キャンペーンの記者発表が行なわれた。

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新聞社、雑誌社などから20人ほどの記者が集まってくれた。

挨拶する藤田会長。

「食べながら、楽しみながら、生産者を応援し、環境や生物多様性を守っていく。

 守るための否定 (●●はダメ、●●はするな) ではなく、しなやかな活動として

 展開していきたい。」

 

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" たべまも " のロゴもできた。

 


 

この企画づくりに協力してくれたマエキタミヤコさん (サステナ代表) も

出席して、このコンセプトに賛同された思いを語ってくれた。 

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「手をつけないで保護するより、利用しながら里山や山間地と共存し、

 多様な生き物を育んできたのが、日本人の自然との付き合い方だった。

 食べて守る生態系。 来年の秋、名古屋で開催される生物多様性条約の

 COP10 (第10回締約国会議) に向けて、私たちはこの価値をこそ

 世界の人たちにちゃんと伝える必要があります。」 

 

ゆったりとした雰囲気で、説明を聞いてくれる記者さんたち。

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このキャンペーンの主旨は、実はべつに新しくつくられたものではなく、

これまで大地を守る会が訴えてきたこと、そのものである。

「コメニスト」 企画も当初は、まだ食べたことのない産地や品種も知ってもらいたい、

一度は試してもらえる企画を用意して裾野を広げたい、

という思いで米の担当者が発案したものだ。

練っていくうちに、米を食べて守る 「コメニスト」 たちのお米、へと発展した。

 

さて、記者の皆さんに実際に食べてもらう。 

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用意した米は、4種類。

千葉の新米以外は、北海道・山形・福島の昨年産米だけど、評価はいい。 

取締役の長谷川が、いろんな産地の写真を映しながら、

それぞれの取り組みの特徴や魅力を紹介する。

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高知県土佐町の棚田でヒノヒカリを無農薬で栽培する式地寛肇さん。

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この美しい棚田も、食べる人がいることで支えられているのです。

それによってきれいな水源が維持され、災害からも守っています。

 

長谷川が自慢している。

「どうです。北海道のふっくりんこも美味いでしょう。

 生産者は金子さんという方です。」

記者さんも頷いている。

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コメニストは、10月5日の週からキャンペーンが始まる。

1週間に1升といっても、定番のお米を買っている人には、" もう1升 "  は

なかなかにきつい量ですね。

ご近所の方やお友だちと一緒に分け合うなど、工夫して、

一度は試してもらえるとありがたいのだけれど・・・と願っています。

 

コメニストの次は、鹿肉を食べて森を守ろう、である。

記者さんのなかには、こっちのほうに強い興味を示した方もいた。

どっちでもいいので、食べて守る、の奥深さを、どうか伝えてほしい。

 

 



2009年9月 9日

減反問題を考える

 

" 1週間の夏休みを頂戴し- " というと、まあ日本のサラリーマンとしては、

いちおうはちゃんと取れた、ということになるのだろうか。

しかしその間も業務自体は動いているわけで、中間管理者にとっては、

会社に戻ればいきなり " 地獄が待っていた " 状態に突入ってことになる。

溜まった書類に宿題の数々、そして果てしなく続く未処理メール・・・・・

これが嫌だから、休み中もこまめに会社に電話したり、

携帯やパソコンでメールをチェックしたりするわけなんだけど、

これって、はたして休暇をもらったことになるんだろうか。

と、そんな疑問を抱くこと自体、せんないというか、中間管理職には禁物である。

働き蜂は立ち止まってはならない。

 

9月に入って、がむしゃらに遅れ (??) を取り戻しておりました。

それでも1週間も間隔が開くと、「元気?」 といったメールも入ってきたりして、

そろそろ何か書かなきゃ・・・・・

 

というわけで、気を取り直して-

話は前後するが、ひと足遅れの夏休みに入った8月22日(土)、

ひとつの勉強会を開いたので報告しておきたい。 -という感じで本題に。

 

テーマは、米の減反政策について。 

講師は提携米研究会事務局長、牧下圭貴さん。 参加者28名。

残暑の陽射し厳しい中、それにも増して暑苦しいテーマにもかかわらず

お集まりいただいた方々には、深く感謝申し上げます。

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農水大臣が減反政策の見直しを語って農業界 (?) に議論が巻き起こり、

政党がこぞって農業政策をマニュフェストで競っている時も時。

牧下さんも、今回の講演依頼は、このタイミングでこのテーマを整理する

いい機会になったと言ってくれる。

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おかげで話は、単なる政策の解説にとどまらず、いわゆる全面展開。

合いの手入れる暇もなく、1時間半の予定が2時間半におよんだ。

「すっかり時間をオーバーしちゃいましたが、僕は満足です」

ときたもんだ。

 

話は世界の食料事情から説き起こされた。

世界では今、69億人のうち10億人が栄養不足に苦しんでいる。

2007年秋の穀物の不作の時、輸出国はこぞって輸出を規制した。

当たり前のことながら、いざという時にはどこも自国内の供給を優先させる。

特に米は自給的性格が強い作物で (生産量の割には貿易に流れる割合が少ない)、

輸出国の不作は、一気に国際価格の高騰を招く。

そこで金にあかせて確保すれば、さらに貧しい国には行き渡らなくなってしまう。

自らは生産量を調整しながら " 食料を奪う " -それでいいのか。

 

一方で、日本の自給率は40% (カロリーベース) である。

歴史的推移をみると、米の消費量が減って、肉と油の摂取量が増加するとともに、

自給率は減少してきた。

これは食生活のスタイルの変化とともに自給率が落ちてきた、ということでもある。

戦後の米の増産運動から、1970年を境に一転して米の生産調整 (減反政策) が

始まり、それが40年にわたって今なお継続してきた背景が、ここにある。

 

生産調整は、作付面積の調整 (米を作る田んぼの面積を減らす=減反)

によって行なわれてきた。

しかも法律的根拠を持たないものであったにもかかわらず、

地域におりる補助金などと絡めて強制力を持たせて実施されてきた。

協力しない農家は村八分的な扱いを受け、また一方で農家は、

農薬と化学肥料によって単位面積当たりの収穫量を上げることに汗を流した。

「米の過剰で価格が暴落するのを防ぎ、農家経営を維持させる」

という目的は達せられず、米価は下がり続け、後継者は育たず、若者たちは離れていった。

耕作を放棄された田んぼが増え、今や農家の平均年齢は65歳に至っている。

あと10年すればどうなるか・・・・・。

 

そんな状況下にあって、

昨年より生産調整は面積でなく生産量でカウントされるようになり、

また法的根拠まで作られてしまった。。。なんでやねん! -政治である。

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世界の食料需給は、人口増加と耕地面積の減少、異常気象の激化

などなどと相まって、かなり危険な様相を見せてきている中で、

未来を失いかねない政策に、いつまでも税金を使っていてよいのか。

「農家を守るため」 と言いながら税金が投入され続けてきたが、

米価は維持されず、農家はいなくなっているではないか。

 

とはいっても、でもって本当に減反政策をやめたら・・・・

みんなこぞって米を作り、米価は一気に下がり、結果的に農家は壊滅するのではないか。

そういう前提で政策維持の必要性を訴える農民団体もあるが、

農水省がはじき出したシミュレーションは、実は少し様相が異なっている。

一気に下がった後に、徐々に戻る、である。

逆に生産調整を強化すれば・・・・米価は高めに維持されるが、

生産量は年々減ってゆく、というものだ。

つまり米の生産力 (自給力) は落ちてゆき、米は高値で推移する。

これは誰のためになる政策なのか。

 

ここで牧下氏のトーンが上がる。

「本当は、米や農業を守るのは  " 消費者のため "  のはずなんですよ。

 消費者こそ、食料を守ってもらわないと困るんです。

 そのために税金をどう使うか、を考えなければならないんです。」

 

私たちは今すぐにでも、生産者も消費者も一緒になって、

米なる食料をこれからどうするのか、本気こいて築き直さなければならない。

 

参加者からは選挙前らしい質問も飛び出したが、

牧下氏の答えは、「どっちにしろ、問われるのは私たちの意識です。」

 

ちなみに今回の講演は、決して独断や私見ではない、ということを伝えるべく、

すべて国 (農水省) から出されている資料やデータをもとに展開された。

参加者からは、「ますます分からなくなった」 という声も上がったけど、

それはおそらく、減反政策の本当の意図とか意味とか政治的背景とかを

もっと深く知りたくなった、からだと思う。

そのへんは生産者も交えて、本音で語る場が必要かもね。 考えましょう。

 

それから、「消費者がもっと米を食べなきゃいけない、っていうことでしょうか」

という素朴な疑問に対しては、いま出せる答えはこのようである。

 - ご飯中心の食生活を楽しみましょう。

 

僕はもう一つの答えを持っている。

 - 全国の田んぼを有機農業に転換させよう。

   1反歩 (10アール)-10俵 (600kg/玄米) 獲るために農薬を撒くのでなく、

   有機栽培にして7~8俵で安定させる。

       もう少しの消費の拡大と、しっかりした備蓄体制と、

   水田稲作の多面的な活用による自給力の強化

   (田んぼは家畜の餌だってエネルギーだって生み出せる社会資本である) と、

   そして有機農業への転換、それだけで生産調整はいらなくなるはずだ。

   水系を含めた自然環境や生物多様性の保全にもつながる。

   減反と増産意欲で帳尻の合わない世界を、安定と調和の世界へ。

もちろん理屈はもっと精緻に組み立てなければならないけれど、

大きくは間違ってないはずだ。

 

危険を恐れてじりじりと後退するか、未来像を描き直して前に進むか。

答えは、 前に! しかないだろう。

 



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