提携米・減反問題: 2008年7月アーカイブ

2008年7月 5日

減反への怒り収まらず...

 

7月4日 (金) 。

米の生産者会議を終えて、残ってくれた生産者ら20数名と一緒に

佐原から高速バスに乗り込み、我々一行は霞ヶ関・参議院議員会館へと向かった。

用意されていたのは、減反政策についての意見交換会。

 

世界的に食糧が高騰し、米の国際需給も逼迫する中で、

日本では減反政策がさらに強化されている。

地域も、農民も、田んぼの生き物たちも、息苦しい圧力に押さえつけられている。

みんなの本音を国会議員にぶつけてみようじゃないか、という集まりだ。

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議員会館を用意してくれたのは、民主党のツルネン・マルティさん。

有機農業推進法の成立に尽力された超党派の議員連盟の事務局長でもある。


冒頭で挨拶するツルネン議員。

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「民主党も減反政策には反対しています。 しかし米の政策をどう進めるかは、

 まだまだ意見の分かれるところもあり、皆さんの意見も充分にうかがって、

 今後の政策づくりに活かしていきたいです」

ツルネンさんは最後まで残って、みんなの声を聞いてくれた。

 

まずは、秋田県大潟村 「ライスロッヂ大潟」 代表の黒瀬正さんが、

減反政策 (生産調整) の歴史や問題点を整理して語る。

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1969年、当初は米余り対策のための緊急措置として始まった 「生産調整」 という名の

減反政策が、恒常化する中で農民団体の態度も変化し、

絶対反対!を唱えていた人々が、いつの間にか周囲を監視し、減反を守らない農民を

糾弾する組織へと変わっていった。 お前が作るから米価が下がるのだ、と。

その生産調整を達成するために、莫大な補助金 (税金) が投入された。

しかもそのお金は自治体や地域単位に落とされたために、

集落の中に反目が起こり、相互監視、相互不信の状況が生まれていった。

地域共同体を崩壊させ、米を作ることを誇りとして生きてきた農民の主体性が否定された。

これこそが減反政策の最大の罪である。

 

さらに今日、原油や国際穀物相場の高騰に加え、穀物在庫率が減少するなかで、

米の (価格維持のための) 「緊急対策」 と称して、

生産調整未達成農家へのペナルティが堂々と政策として打ち出されてきている。

 

黒瀬さんの口調は段々と熱を帯び、司会者に 「時間がきたら止めてくれ」 と頼みながら、

喋るほどに怒りが増してくるようであった。

 

続いて戎谷から、米緊急対策の問題点を、いわゆる 「ペナルティ条項」 を中心に

解説・補足するとともに、流通および消費の観点から問題提起させていただいた。

 

こんな時代になってもなお、地域の共同性を利用して、みんなで手を縛りあう制度が

まかり通っている。 しかも地域によっては4割減反とかいう数字である。

経営に対する主体性が発揮できない。

水田の持っていた多面的機能が減退する。

共同体機能を使っているようで、実は破壊している。 人心を貧しくさせている。

民主主義の政策とは到底言えない。 これは変異の恐怖政治 (ファシズム) ではないか。

私の怒りも収まらなくなってきた。

 

そもそも40年にならんとする減反政策で、米価が守れたのか?

-答えはノーである。

 

流通の立場から言えば、すでに国内の米の在庫も極めてタイトになってきているのを、

どうも国は正確に把握できてないフシがある。

 

今年も各地で気候変動の影響が垣間見える。

今この国は、93年の米パニック前夜の兆候すら見せている。

そんな中で、農民の手をさらにきつく縛っているのだ。 

 

思いっきり、言ってみる。

-減反政策には、マーケティングがない!

  にも拘らず莫大な税金が使われている。

  流通・消費の立場からみても、断固として許しがたい愚策である。

 

政府は米の消費拡大キャンペーンにも力を注いでいると言っている。

曰く- 「食育の一環として、朝食欠食の改善を目指した 『めざましごはんキャンペーン』 を

      はじめ、米の消費拡大のための国民運動を効果的に進める」

下の写真が、それである。

6月18日、仕事中の移動で乗ったJRの電車で、中吊り広告を発見した。

見渡せば、車両まるごと買い取っている。

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しかも幾種類ものバージョンで制作されている。

  朝食を抜くと集中力が低下!

  ニッポンの朝に元気をとりもどそう。

  お父さん、家族そろって夕ごはんを食べましょう。 ・・・・・

 

広告主は農林水産省。 これが国民運動の実態なのか... 

この制作費は税金である。

特に最後のコピー。

夕食時に帰れたことのないオイラとしては、喧嘩売られた! の心境となる。

 

そこでこの場を借りて、もうひとつ、言い放ってしまう。

油や食品がどんどん上がり、一方で格差社会が拡がっている。

消費拡大というなら、広告代理店やJRに税金を落とすのではなくて、

まさに 「消費 (者) 」 支援に回すべきなのだ。

「食べましょう」 ではなくて、「食べることを応援」 することではないか。

そこで、国民への食料供給の安定のために、また生産力の維持と環境を守るために、

私は、国産米には消費税をかけない! というのを提案したい。

政治の仕事は、金持ちであろうが貧しかろうが、国民に等しく食べものを供給することだ。

しかも食べれば食べるほど、農業と環境が守られるのだ。

お笑いの提案かもしれないが、根幹を突いているとは言えないだろうか。

少なくとも、それくらいの想像力をもって政策づくりを進めてもらいたいものだ。

私は笑われてもいい。 しばらくは言い続けてみたいと思っている。

 

参加した生産者も、めいめいに怒りを語る。 あるいは苦しみを。

-認定農家を取り消すと脅されている。 取り消されたら借りた資金は繰り上げ償還だと。

-減反に協力しなかったことで、自治体からの有機への補助金が打ち切られた。

 

これはもう、おいそれとは引き下がれない。

私の腹の中は、斉藤健ちゃんへの弔い合戦のような火がついている。

 

最後に、おまけの2枚を-

10日ほど前に、5月に水路の掃除を手伝った福島県喜多方市山都を訪ねた。

棚田も健在で、稲が気持ちよさそうに風にそよいでいた。  e08070505.JPG

 

汗まみれになって泥を浚った水路には、しっかりと水が流れてくれていた。

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減反政策は、この風景にも、これを支えてきた人々の歴史にも、価値を認めていない。

 



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