稲作体験の最近のブログ記事

2014年5月19日

25年目の「稲作体験」

 

「大地を守る会の稲作体験」

が、今年もスタートした。

1990年から始まって、ついに 25回目到達。

ここまでくれば、押しも押されもせぬ伝統行事だ。

大地を守る会の " 顔 " のひとつ、と言ってもいいだろう。

 

5月18日(日)、暑くなりそうな予感のなか、

待ちに待った 「田植え」 を迎える。

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千葉県山武市沖渡、佐藤秀雄さんの田んぼ。

今年は若干少なめだけど、

それでも 70名ほどの親子が集まってくれた。 

すっかり顔馴染みになったリピーターあり、初参加あり。

子どもたちは田んぼに着くや、生き物探しに取り掛かる。

子どもたちの生物に対する関心は本能のようなものだ。

 

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水を入れ、きれいに代かきをやって鏡のような田んぼになると、

蛙たちが産卵にやってくる。

しばし田んぼは虫たちの楽園となる。

天敵は人間の子ども、か。

 

例年通り、田植え指導は綿貫直樹さんから。

お父さんの栄一さんから引き継いでもらっている 2代目指導者。

「伝統」 はこうして築かれていく。

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説明を聞いている間にも、うずうずしている人たちがいる。

顔で分かる。

では、一斉にスタート。

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田植えって何で楽しいんだろう。

いよいよ本田(ほんでん) での米作りが始まる

新学期のようなワクワク感。

人生の本番ともいえる厳しいフィールドに移される早苗たちに、

逞しく育てと願う親のような気持ち。

田植えってやっぱ、希望の作業なんだよね。 

加えて、温んだ泥の感触から何か大事なものを取り戻していくような

蘇りの感覚が、嬉しい。

 

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秋になれば君は、ひと回り逞しくなっている。 

間違いなく。

 

慣れた手つきのお父さんもいる。

子どもたちに一度でも体験させておくこと、

これ必須アイテムだと、体が伝えている。

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紙マルチも例年通り。

こちらは真ん中で向かい合って、下がりながら植える。 

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毎年やっていても、ずれる時はずれる。

調整しながら、まあ何とかやり遂げる。

 

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虫とりに熱中する男子。

でもまだそんなにいろんな虫がいるわけではない。

しかも畦で探しても、見つからないぞ。

 

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田んぼの中に入って、じっと目を凝らしてみれば、

コオイムシや小さなゲンゴロウも見つけられる。

この田んぼなら。

 

もう外せないプログラムになってしまった

「陶(すえ) さんの生き物講座」。

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蛙の種類について、その棲み分けと生態について、

生き物が食べ合い連なりあって豊かな自然が形成されていること。

 

稲作体験が 25年を迎えたということで、

ご指名がかかり、初めてこの企画に挑戦したときのことなど

話させていただく。

でも、いろんな思いが涌いてきて、ちゃんと話せなかった。

 

人が集まってくれるかビビリながらも、新宿からバスを仕立てた。

やるからには草取りも経験しなければ無農薬の米作りは学べないと

草取り作業を間に組み込んだ。

初年度の田んぼを借りた生産者は故今井征男さんで、

毎朝、自分の畑より先に田んぼの見回りをしてくれた。

「無農薬の米作り」 を失敗させるわけにいかないと、

とても緊張していたと後で奥様から聞かされた。

今井さんが亡くなったのは、その年の冬だった。

 

続けるかどうか悩んだが、

「今井さんがあんなに頑張って成功させてくれたんだ。 続けるっぺよ」

と山武農協睦岡支所長(当時) の下山久信さんのひと言で決心がついた。

 

2年目から借りたのが佐藤秀雄さんの田んぼ。

秀雄さんも還暦を過ぎて、腰痛とたたかう毎日だ。

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秀雄さんと掛け合いで、田植えまでの工程や、

これからの生育のポイントなどについて聞き出していく。

陸苗代(おかなわしろ:畑で稲の苗を育てる) がやれる人は、

もう少なくなった。

しかも手植え・無農薬なので、大きめに育てる。

しっかりした健苗を育てるのが、無農薬でやるための最大の胆(きも) なのである。

 

無農薬で 24年。

いくつかの希少生物まで発見される田んぼになって、

生物多様性を育むという有機稲作の思想まで喋らせていただいた。

「 害虫は益虫の餌として適度に存在し、そのバランスが取れたとき、

 害虫は害虫でなくなります。 この世に無用な生き物などいない。

 有機稲作は平和の思想なのです。」

「 それは、まっとうな値段で食べてくれるだけで

 守り続けることができます。」

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美しい風景は生命によってつくられている。

たかが 4回の作業体験だけど、

何かを感じ取っていただけたなら嬉しい。

 

25年前、数人の消費者の手を借りて、職員一人で始めた「稲作体験」。

それが毎年々々若手職員たちでリレーされ、四半世紀を迎えた。

やってよかったと、本当に思う。

今年が豊作であれば、なお良し。

 

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2013年9月24日

『大地を守る会の稲作体験』田、24回目の収穫

 

放射能連続講座のレポートを続けている間にも、

イベント(行事・事件) は起きている。

トピックだけでも拾って、残しておきたい。

 

まずは、9月8日(日)。

千葉県山武市の 『大地を守る会の稲作体験』 の田んぼは、

早くも稲刈りとなる。

ついこの間(5月12日)、かわいい苗を植えたと思っていたら、

もうここまで育って、子孫を残した。

1 粒から 1000 粒*) の種を。 ( ・・多めの概算です。)

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たった4ヶ月という時間だけど、季節は春から夏・秋と移っていて、

看板にもそれなりに風雨にさらされた跡が見える。

陽光を浴び、梅雨に打たれ、草と競い合い、

虫たちの攻撃には独自の戦法で対抗し、酷暑にも台風にも耐え・・・・

稲には稲の逞しい営みがあった。 

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僕らはその生命をいただいて生き延びる。 

自然の恵みに感謝する、そんな気持ちも生まれてくるというものだ。

 

最初はおっかなびっくりだった子どもたちの手つきも、

コツさえ覚えれば一気に得意げになる。

君は今日から  " 鎌を使える子 "  になったんだね。

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心配していた雨にもたたられず、稲刈り終了!

田植え-草取り2回-稲刈りと、皆勤賞の人には

やり終えた満足感が湧き出す瞬間。

それにしても草が多いね。

オモダカとコナギだけでも何とかしたい。

これらも刈り取って帰ってくれると有り難いのだが・・・

 


昼食後の交流会では、

毎回人気の 「陶(すえ)さんの生き物教室」。

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いろんな虫の生態や植物との関係など、

陶ハカセのネタは尽きない。

へえ~ とかオオッ とか感心させながら

  " この世に無駄な生命はない "  ことをさりげなく教える。

生物多様性を育む農業は、平和の思想だからね。 

 

佐藤秀雄さんのお話を聴く会。 

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消費者に見えないところの農作業の話など、

こちらは  " だっぺよー "  が入るとなぜか説得力が増すから不思議だ。 

 

みんなで制作した 「でっかい絵日記」 をバックに、

家族ごとに記念撮影。

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今回は野村さやか実行委員長の友人のカメラマンが友情出演で

写真係を引き受けてくれた(手前の方)。

どんだけ違うんだろう、と思っていたけど、

さすが、とてもイイ表情を捉えている。 出来が全然違う・・・・

稲作体験 Facebook  からぜひアーカイブを。 

 ⇒ https://www.facebook.com/DWMKinasakuT

 

お。 出たな、亀吉 Tシャツ軍団。 

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「ボス、今年の出来はどうッスか」

「ちょっと少ない・・・かなあ」

「はっきりしないッスね」

「うっせぇんだよ、むずかしんだよ! オレくらい色あせるまで着てから言え!」

と言ってるんだかどうだか知らないけれど、

後日、収穫量は 450㎏(7俵半) と判明。

この体験田の平年収量はだいたい8俵あたりだから、

やはりちょっと悔しい数字ではある

(面積が 13a なので8俵自体少なめだけど。 去年は9俵半だった)。

紙マルチが剥がれたりズレたりして欠株が出たこと、

そしてやっぱり草(が多い) かなあ。

 

ま、何はともあれ 『大地を守る会の稲作体験』 24回目も、

無事収穫。

皆さま、今年の田んぼは楽しかったでしょうか。 

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空模様を気にしながら、記念写真を撮って解散。

写真は届くお米のラベルになる。 

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あとは、美味しいお米に仕上がっていることを祈るのみ!

おっと、もう一回、オプション企画の収穫祭があったね。

少なくても嬉しい、僕らが育てたお米、楽しみましょう。

 

何回やっても、今年の稲作は1回しかない。

思い出も積み重ねて24年。

バトンをつなぎ続けてくれたスタッフたちに、

初代実行委員長として、深く深く、感謝したい。

来年は25回め。 やるしかないよね。

 

すみません。

トピック三連発といきたかったんですが、ここまで。

明日の夜は長崎。

ホテルで続きを書く決意で眠らせていただきます。

 



2012年9月 9日

今年の稲作体験は、久しぶりの豊作!

 

「大地を守る会の稲作体験」 -23回目の収穫がやってきた。

 

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この田んぼで22年 (「稲作体験」2回目の1991年からこの田んぼ)、

有機栽培(無農薬・無化学肥料) による米づくりを完遂させてきた。

もちろん地主・佐藤秀雄さんの支えのもと、素人の 「体験」 レベルではあるけど、

若手職員によるボランティア・リレーによって、

苦しくも連綿と受け継がれてきた、伝統のイベントである。

 

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豊作への願いを込めた案山子は、いつの頃からか必須アイテムになった。

効果のほどは不明だが、案山子を立てることによって 「田んぼに気が入る」 というか、

ま、遊び心としての、最終ステップに入る儀式のようなものか。

でも、不思議と鳥害はない。

 

去年は放射能対策やら何やらに追われて、ついに参加できなかったけど、

今年は何とか立ち会うことができた。

ここの収穫を見届けることはやっぱ、

僕にとって秋の陣に向かう 「案山子が立つ」 スイッチのようなものだと思うのだった。

この黄金色の風景は、僕の必須アイテムなのだ。

 


育ったのはイネだけではない。

雑草たちも (失礼、そういう名の草はないか)、しっかり子孫を残そうとしている。

オモダカの花。

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こちらはコナギ。

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いずれもイネにとっての強力なライバル。

申し訳ないが、ここに種を残してもらっては困るんだよね。

きれいな花が咲いてる~ なんて言ってないで、容赦なく取りたい。

特にコナギは、咲き始めと咲き終わりの2度にわたって自家受粉するという、

独自の生き残り戦略を持っている。

お前とは、永遠にたたかう関係なのか。 いっそ有効利用の道を考えてみようか。

 

虫たちの行動も旺盛である。

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ジョロウグモ?

いや、こいつはナガコガネグモという美しい名前を持っている。

この田んぼにもたくさんのクモがいる。 こいつらは益虫なんだ。

生物多様性の世界をたしかめる、ひとつの指標でもある。

子どもたちは、バッタは取るけどクモは敬遠する。

来年はちゃんと彼らの地位を回復させてやりたい。

ほら、触ってみればいいんだよ、愛が生まれる。

 

参加者も集まってきて、さあ、稲刈りの開始。

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佐藤秀雄&綿貫直樹の、仲が良いのか悪いのかよく分からないコンビの

レクチャーを受けて、作業開始。

子どもたちも大人と一緒に、鎌を使って稲を刈っていただく。

これが 「大地を守る会の稲作体験」 の流儀である。

ケガをする子は、平均 0.75人(4年に3人) くらいか。

でもその子は、間違いなく成長する。

 

お母さんお父さんも、頑張って教えようとしてくれる。

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鎌をうまく使えなくて、嫌気が差してきた子に声をかけて、

後ろから手を持って、切り方を伝える。

2~3度やっているうちに、だんだんコツを覚えてくる。

何度目かに、スッと切れる。

「お母さん! サクッと切れた!」

と叫ぶ瞬間が、喜びである。 こちらも思いっきり拍手してあげる。

今日のその男の子は、しかも言い直したのだった。

「サクッ、じゃない。 ザクッ、だ。」

いいなあ、この感じ。

 

よくできました。 イイ笑顔です。

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頑張れ!

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いいねえ。逞しくすら感じさせる。

涙腺のゆるいオッサン、見ているだけで泣けてきちゃうよ。

 

稲刈り、終了。

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ハザ(稲架) が、例年より一本多い。

久しぶりの豊作の感触。

佐藤秀雄の読みは、「9俵(玄米で540㎏) はいくと思うよ」。

今年は、草対策を優先して日程を組んだ。

これは稲作りの基本だってコトだね。 

 

午後の交流会。

いつもの 「陶さんの生き物講座」。

今回は、バッタのお話。

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陶ハカセの人気は、衰えることがない。

子どもたちは、命あるものに本能的に関心を示すのである。

 

佐藤秀雄さんを囲んで、今年の講評。

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山武のゴローちゃん (ドラマ 「北の国から」 で田中邦衛が演じたゴロー)

こと秀雄さんも、なかなかお話上手になった。

 

子どもたちが田植えのときに描いた 「未来へのメッセージ」。e12090920.JPG

 

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今日は、この絵を持って家族ごとに記念撮影という趣向。

スタッフは年々入れ替わりながら、毎年いろんなことを考えてくれる。

職員も育てられているのだ、と思いたい。

 

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すっかり出番のなくなった初代実行委員長は、たそがれながら

それなりに満足している。

 

収穫量はまずまずのようだが、こんなに暑い稲刈りは今までにない。

品質が心配なところ。

美味しい米でありますように。 

 



2012年6月 5日

田んぼは草と格闘の季節

 

麦秋の季節。 

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一方、田んぼは緑一色。

田植えから3週間が経ち、草との生存競争が始まっている。 

 

森も含めて、20数年変わらない風景。

それは人の手入れが欠かさず続いている証拠だ。

まだまだニッポンは、美しい。

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米は輸入できても、風景や環境は輸入できない。

もちろん田んぼという装置も。

これは夕方のTPPトークでも用意しているキーワードでもある。

 

6月3日、日曜日。

「稲作体験 2012」 の米づくりも、段々と佳境に入ってくる。

草との格闘、米づくりの最大のハードルである。

 


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地主の佐藤秀雄さんがデモっているのが、伝統の「田車」(たぐるま)。

ゴロゴロ押しながら草を根っこから浮かせていく。

 

田に水を蓄えるのは、稲が水を要求する湿性の植物だからだけど、

水を張ることによって陸生植物 (表面が乾燥状態にある陸地に生える草) の発生を防ぎ、

また草を抜きやすくしてくれるメリットがある。

実は草取りを楽にするためでもあるのだ。

水とは、ほんまに有り難い。

 

いつも指導にあたってくれる綿貫直樹さんが今回用意したのは、熊手。 

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直樹さんは地元小学校の米づくり体験にも田んぼを解放していて、

そこでも使っているとのこと。

 

では、いざ。 

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人がワイワイ言いながら田に入ることで、根に酸素が送られ、

稲も元気になる。

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みんなの会話は理解できなくても、イネは気を感じ取っている。

科学的には立証されてないけど、これは農の世界では真実である。

冷害のときは 「頑張って」 と励まして回る篤農家を、僕は知っている。

それは伝統技術なのである。

 

たくさんの虫たちとも出会い、田んぼの総合力の一面を感じ取ってもらう。

米づくりを通じて、メンタリティも育まれる。

 

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みんな見過ごしている害虫がいる。 

稲はこの時期、ドロオイムシに散々チューチュー吸われているのだ。

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有機稲作では農薬は使わない。

こいつは梅雨が明ければいなくなる。

それまで負けないだけの苗にしたはずだ。

「我慢」 の季節でもある。

 

作業終了後の、お昼と交流のひと時。

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皆様、お疲れ様でした。

 

佐藤つや子さんが用意してくれた、本日のメニュー。

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陶ハカセの生き物講座が始まる前に、

あとは実行委員諸君に任せて、渋谷に向かうこととする。

 

次回は4週後に2回目の草取り。

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イネは草や害虫とたたかいながら成長し、株を増やしていく。

しかも人の手作業だと、虫も草も適度に生き残る。

けっして一網打尽にはできない。

でも無農薬の田んぼにはいろんな生き物がやってきて、害虫は益虫の餌になり、

" この世に無用な生き物はいない "  世界が生まれる。

前にも書いたけど、僕は有機農業を 「平和の思想」 と呼んでいる。

この思想は、お金に換算できない。

だってこれは、命と同義だから。

 

この米づくりはもちろんプロの作業ではない。

でも田んぼの価値を伝えるには、田んぼに入って、

田の世界を体感してもらうのが一番なんだよね。

頭で理解しなくても、無意識の記憶の中に 「いのち」 への愛が生まれるのが、

草取りのシーズンだと思う。

 

今夜はマイクに口を近づけ過ぎないようにしなければ・・・

 



2012年5月14日

大地を守る会の 「稲作体験」、23回目の田植え

 

大地を守る会の連続イベントとしては、

もう長寿の仲間入りをしたと言っていい数字だね。

千葉県山武市での 「稲作体験」 が23回目の米づくりを迎えた。

 これを超えて更新中のイベントは、

「大地を守る東京集会」(36回)、岩手県山形村のべこツアー(今年で30周年)

しかない。

 

世の中の記録というのは、力で更新されるものだけではない。

持続させることで達成される記録というものがある。

こればっかりは、天才でも乗り越えられない。

誰でも意志があれば達成できる 「凡人たちの非凡なる記録」 である。

世代を継ぎながら、大地を守る会があり続ける限り、

「農」 に触れる入門編として進化しつつ続くことを願いたい。

なんたって水田稲作は、同じ場所で同じ作物を作り続けることができる

不滅の長寿(持続可能) 技術、文明の礎なんだから。

連綿と持続させてきたのは、凡にして非凡なる 「農」 の民たちである。

 

しかもこのイベントは、一日で終わるお祭りではない。

植えてしまったら収穫まで責任を持たなければならない。

素人のポイント体験とはいえ、半年間の 「生産活動」 でもあるのだ。

 

今年もまた同じ作業が始まった。 少しずつ人が入れ替わりながら。  

5月12日(土)、田植え前日、

スタッフたちは朝から現地に入って準備を進めてくれた。

僕が到着したのはお昼頃だったが、すでに

畑で植えた苗 (陸苗代-おかなわしろ-という) が抜かれて、

田んぼに移動されている。

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しっかりした、大きめの成苗(せいびょう) に育てるのがコツ。

多少バラつきもあるが、ま、これはしょうがない。

 

年々増える雑草対策が今年の課題である。

地主の佐藤秀雄さんは、

「今年は3度うなった(耕耘した) から、草は少ないはず」 と言ってくれる。

 

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田んぼは、子供も育ててくれる。

 


お昼を食べて午後、

紙マルチを田んぼの幅に合わせてカットする作業に入る。 

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終われば、この幅に合わせて田んぼに紐を張っておく。

これで準備完了。

 

明けて5月13日(日)。

天気に恵まれ、絶好の田植え日和となった。

今年もたくさんの親子が参加してくれた。 

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佐藤秀雄さんの挨拶から、「稲作体験2012」 のスタート。 

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右は、2年連続実行委員長の大熊俊之。

 

田植え指導は綿貫直樹さん。

30cm四方の線を引き、交差点に植える 「尺角植え」 で進める。

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いつも通り、畦に並んで一斉にスタート。

今年も始まったよ、という感慨が涌いてくる。

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真面目に植えてくれる子。

虫やカエル取りに夢中になる子。

泥におびえる子、3回目にしてやっと入れた子。

子どもにとっては、どれも貴重な  " 田んぼ体験 "  だ。 

 

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母も頑張ります。 

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紙マルチ区は、紙を敷きながら指で穴を空け、

後退しながら植えてゆく。 

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ここは植え直しがきかないので、慎重にやっていただく。

 

正午過ぎ、無事、13アールの田んぼに稲が植えられた。

さて、今年は何俵取れるだろうか。

去年は6俵半(玄米 390㎏) という成績。

草にやられたし、2回目の草取りの段階で出穂が始まっていたということは、

おそらく肥料切れだったのだと思われる。

「やっぱ、8俵は取りたいよね」 と、綿貫さんと肥料の相談をしたりする。

13アール=1反3畝(せ) - プロなら10俵は取るところだろうか。

 

田植え終了後の交流会。

いつも大人気でやめられなくなった 「陶(すえ) さんの、田んぼの生き物講座」。

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こちらも年々少しずつ進化している。

 

今回の初登場は、ミニ太陽光パネル。

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太陽の光と熱は、この星のすべてのエネルギーの源。

地球に降り注がれる太陽エネルギーの1万分の1を捕獲できれば、

地球上からエネルギー危機はなくなる、とまで言われる。

節約だけでなく、少しずつでも自給力を高める工夫も必要だ。

 

帰り間際、家族で記念の一枚。

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次は6月3日。

草取りも来てね、大事な作業なんだから。

 

解散前に、今年の実行委員会スタッフ集合。 

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秋の収穫まで漕ぎ着け、米を参加者に頒布して、地主に謝礼を払って、

気持ちよく終わるまで足抜けはできないので、ヨロシク、です。

 



2011年6月28日

稲作体験2011-第1回草取り編

 

この日の報告をしておかなければ。

6月18日(土)、

午前中は千葉・山武 「稲作体験」 田での草取り、

午後は東京・芝増上寺でのキャンドルナイトという、長かった一日の話。

写真で雰囲気だけでも感じとっていただければ幸いです。 

 

まずは、稲作体験2011-第1回草取り編。

朝10時過ぎには八街駅からの送迎バスが到着。

人数が少ない気がするが、深く考えても仕方がない。

公民館で着替えて、田んぼに整列。

ま、少ないけど、労働の実感を得てもらうにはちょうどいい感じかしら。

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各馬一斉にスタート。

泥を掻きながら、とにかく稲以外の草は取って埋め込んでいく。

 

子供たちの関心は、すぐに生き物へと向かう。 

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草を取っているようで、実は何か見つけたようだ。

 

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心配した空は何とか持って、曇り空の下、そう暑くならず、

これまたちょうどいい感じ。

みんな、よく働きました。

 

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無農薬で21年となる田んぼには、生き物も豊富だ。

これまで確認しただけで、

動植物合わせて約150種の生き物リストが出来上がっている。

 

お姉ちゃんの虫かごには、 コオイムシがたくさん。

オスが卵を背負って守っている。

準絶滅危惧種にリストアップされている。 

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どういう経路でこういう習性を持った虫が現われ、生き延びてきたんだろう。

生命の歴史とは不思議なものだ。

 

生き物ハカセ・陶武利センセーは、引っ張りだこ。

 

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みんな、自分が見つけた生命の名前を知ろうとする。

それが、存在を認識するという作業なのだ。

 

この田んぼには、他にも希少種がいる。

今年もしっかりと現われてくれたイチョウウキゴケ。

一度、絶滅危惧Ⅰ種に指定されたが、今は準絶滅危惧種。 

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デリケートで、農薬に弱い。

どんなマークより、この存在こそ無農薬の証し、

指標植物だと主張する生産者もいる。

 

こちらは 「生きた化石」 とも 「草取り虫」 とも呼ばれる、

カブトエビ。 

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乾燥と湿潤を繰り返す大地に対応しながら、

何万年も生きてきた、ヘンなヤツ。 

 

稲は、というと、

いつもこの時期はドロオイムシとのたたかいである。

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皆さん、ただ泥が撥ねただけかと思ってか、あまり注意が払われないけど、

つまんでよくよく見れば、たしかに 「虫」 なのだ。 

梅雨が明け、夏らしい夏が来れば、彼らはいなくなる。

ここを我慢して、乗り切る。

 

作業も終盤戦の様子。

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正午半頃には、無事、作業終了。

いつも感じることだが、稲が少し元気になった気がする。

そう思わないと、やった甲斐がないし。

 

顔や手足を洗って、着替えて、お昼と交流会が始まろうとする頃、

スタッフにあとを頼んで、一足先に上がらせていただく。

子どもたちにも挨拶する。

「次はホタルが見えるぞ~、来るんだよ~」

手を振ってくれる笑顔が嬉しい。

 

千葉・幕張に車を置いて、増上寺に向かう。

俺たちにスローな夜は、今年もやってこない。

 



2011年5月16日

進化する伝統 -『稲作体験』

 

『第22回 大地を守る会 稲作体験』

毎年々々同じ作業の連続のようでいて、少しずつ何かが変わっていく。

 

22年前に社員スタッフ一人で始めた稲作体験だったが、

今年の実行委員会には、何と28人も集まってくれた。

大地を守る会に入社した社員は必須の登竜門と言われるまでになって、

若者たちのセンスでいろんなプログラムが組み立てられる。 

いやなかなか頼もしい。

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作業のあとの交流会もそう。

プログラムごとに進行役が割り振られ、ヒヤヒヤする場面もあったりするけど、

まあよくやってくれる。

 

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交流会では必須となった 「スエはかせの生きもの講座」 もそう。

今年は新しい相棒が登場した。

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シュレーゲル青ガエルのチョロ吉 (?) だったっけ。

「ぼくらは田んぼと一緒に生きてるんだよ。」

「農薬を撒かない農家がいてくれることが、本当にうれしいんだ。」

カエルくんが子供たちに語りかける。

生きものハカセがついに、カエルに人間の言葉を教えた! オオーッ!!! 

て、さすがにないか。

腹話術の練習はこっそり一人で励んだのだろうか・・・ 想像するとちょっとヤバイ。

大人は、、、笑ってあげるしかない。 

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田植えまでの作業や、苗作りの違いなどについて語る佐藤秀雄。 

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普段ぶっきらぼーなゴローちゃんも、女子が聞き役になると饒舌になる。

S 君が司会をやった時なんて、

「ま、そんなもんだ。」 「ん? なんもしねえよ。」 てなもんで、悲惨だったもんな。

 


さんぶ野菜ネットワーク代表の富谷亜喜博さんからは、

震災と原発事故の影響について話を伺う。

 

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千葉はまだいいほうで・・・ と言いながらも、

事故直後には県内一部の地域で暫定基準値を超えた葉物が出たりして、

やっぱり生産者には大きな衝撃が走り、不安が覆ったようだ。

そんななか、大地を守る会が企画した 「福島・北関東の農家がんばろうセット」 に

たくさんの申し込みがあったと聞いて、とてもうれしい気持ちになった。

 

「大地を守る会が25年前から原発反対の姿勢を崩さず主張してきたことは、

 改めてスゴイと思ってます。

 営業的にはけっこうマイナスにはたらいていたこともあったと思うんですが、

 今となってみれば、その骨太さに感心させられています。」

・・・ こんなふうに言ってもらえると、僕らも浮かばれるね。

 

庭では、子供たちを集めて、みんなでお歌の練習。

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曲目は昔の唱歌

『田植 (そろた 出そろた) 』

  http://www.youtube.com/watch?v=as1GtfFCVxo&feature=related

 

そろた でそろた さなえがそろた

植えよ 植えましょ みんなのために

これが宝だ 宝のくさを

植えりゃ 黄金の 花が咲く ♫

 

 - よく探してきたもんだな。

エビスダニさんなら知ってるでしょ?

 - 知らねぇよ、年寄り扱いすんな! でもちょっと聞いたことあるような・・・

 

編笠が似合い過ぎている子がいて、一枚ねだる。 

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子どもに好かれてしまうアマガエルは、本当に災難だ。

 

今年も子どもたちに手形を押してもらった看板を囲んで、 

スタッフで一枚。

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今年の実行委員長、大熊俊之 (看板の右、白いTシャツの君) の挨拶も

ちょっと熱かったぞ。

「 震災や原発事故があって、やっていいのか、ホントに悩みました。

 でも、決断しました。 

 たくさんの応募があって、ホント、嬉しかったです。

 みんなの手で、未来のために、希望の米を実らせたいと思っています。」

 

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どんな状況になろうが、生きている以上、ぼくらは食べることをやめられない。

いのちを支え続けてくれる田園を、手放すわけにはいかないのだ。

 



2011年5月15日

希望の米を!-『稲作体験 2011』 の始まり

 

今年もやってきたぞ。

ここは千葉県山武市沖渡(おきわたし)。

 

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 『大地を守る会の稲作体験2011』 。

この田んぼで22回目となる、無農薬による米づくり体験の始まり。

今年の合い言葉は、 " みんなの力で 希望の米を 収穫しよう! "

 

それにしても22年まったく変わらない景色。

ちゃんと手入れされているから、なんだよね。

 

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尺角植えの線を引いてくれるのも、いつもの人、

「さんぶ野菜ネットワーク」の綿貫直樹さん。

手前の苗は、田んぼの持ち主である佐藤秀雄さんが、これまた例年通り、

畑につくった苗代で大きく育ててもらったもの。

それを前日に実行委員会スタッフで苗取り作業をして準備してくれた。 

 

10時半過ぎ、首都圏各地から集まってくれた会員さんたち。

今年の参加者は約130人。 

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嬉しいね。 

実施を悩んだ経過があっただけに、今年は特に嬉しい。

 

挨拶する地主・佐藤秀雄さん。 

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田植え指導は綿貫直樹さん。 

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大熊俊之実行委員長の掛け声とともに、田植え、始め! 

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秋の稔りに向かって、進もう。

 


今日はもう疲れたので、余計なコメントは無し。

写真で雰囲気を感じ取っていただければ、と思います。 

 

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上の写真は、これも恒例の紙マルチ。

最初の頃は 「実験」 と称していたが、今では 「草取り」 の労苦を少しでも軽くしたい、

という理由が優先されている、かな・・・

実験ということでは、写真の左端で植え方の違いによる比較、

というのが試みられている。

これも科学的な検証というより、スタッフの素朴な疑問を確かめたい、に近い。

でもそれで納得できるなら、大いに結構。

 

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去年は一歩も入れなかった子が、今年は一歩入った。

去年は泣いていた子が、土の感触を楽しんでくれた。

土に触れながら成長する。 

そういう場を22年、ひたすら提供し続けてこれたことを歓びとしたい。 

ひたすらカエルと鬼ごっこ、も許す。

その感触を覚えてほしい。

できれば、自然に見守られているってことも。 

 

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作業を終えたあとのひと時。

陽の光が田んぼに注ぎ、いい感じ。

 

眠くなったので、今日はここまで。

 



2010年11月21日

稲作体験2010 無事終了

 

金沢から帰ってきた10日夜、

今年の 「大地を守る会の稲作体験 実行委員会」 の打ち上げが開かれたので、

合流する。

今年は、9月12日の稲刈り日は鳥取での夏季農業講座に呼ばれ、

10月16日の収穫祭は大和川酒造・安部杜氏の功労を祝う会に出るなど、

大事な仕上げのイベントで続けて欠品となってしまった。

今年の 「稲作体験」 の成功はすべて若手スタッフたちの手によるものだ。

みんなの労をねぎらい、感謝する。

 

遅まきながら、稲刈りと収穫祭の写真をアップしておきたい。

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今年の参加者は158名。 募集150名のところ240名の応募があり、

88名の方を泣く泣く落選とさせていただいた次第。 

春の話ではありますが、お断りしてしまった方々に、この場を借りて深くお詫びいたします。

 

今年の収穫量は玄米換算で500kg-約8俵半。

田んぼの面積は13アール(1反3畝) だから、反収6俵半てところ。

プロには笑われる数字かもしれないけど、

年々増える雑草とたたかい、かつこの夏の記録的な猛暑の中、

よくぞ、と言ってあげたい。

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無農薬で21年。

とにかく草を何とかしたいものだが、これまでとった各種の対策は

どれもなかなか功を奏していない。 すべてが中途半端なのだろうが、

決定的には自分たちで日常的に管理できないことだね。

野菜で忙しい地主さんにあれこれと面倒をお願いするわけにもいかないし。

 

お。 こんな可愛い写真もある。  

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覚えておいてほしい、この感覚を。

 


稲刈りから一ヶ月後、精米された 「体験田米」 を食べながら、

改めて収穫を祝う。 今年最後の田んぼでのイベントだ。 

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田んぼでゲームに興じる参加者たち。

ひこばえ (二番穂) も随分と勢いがいいね、今年は。

 

自分たちで育てたお米の味はやっぱり格別だったとのこと。 

少し粉にも挽いて、白玉だんご作りに挑戦。

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去年はワラ細工だったっけ。

稲は、実もモミも茎(ワラ) もいろんな形で使われながら生活の中にあって、

文化を育み、暮らしを支えてきた。 大昔から、家族の一員のように。

そんな土台も、防御なき裸の経済競争によって失われようとしている。

美しい景観も、安定した環境も道連れにして。

この子たちのシアワセはどのように保障されるのだろうか。

・・・いかん。 子どもたちの表情があまりに可愛くて、つい感傷に耽ってしまった。

 

ま、何はともあれ、21年目となった稲作体験も無事、成功裏に終えることができた。 

5月の田植えから始まって半年 (正確には3月末の苗作りから始まっているが)。

地主の佐藤秀雄・つやこ夫妻、さんぶ野菜ネットワークの生産者の方々、

そして強力な女性陣のバックアップに、心から感謝申し上げます。

 

13日(土)、自宅に戻れば、5月に 堰さらい のお手伝いをした

会津・山都町 「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」 から、今年もお米が届いている。

たった一日の、どれだけ役に立ったのか分かんないような労力提供なのに、

かえって申し訳ない気持ちになる。 

有り難うございます。 感謝して、いただきます。

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 懐かしい顔を思い浮かべながら食べるお米に囲まれている安心感。

これはやっぱ、何物にも代えがたい。

 



2010年7月18日

田の草取りと ホタルと 生命の輪

 

梅雨が明けた!

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夏だ! 草取りだ! 

 

というわけで、梅雨明け宣言の出た7月17日(土)、

「第21回 大地を守る会の稲作体験」 - 第2回草取り日となる。 

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田植えから3回目。 一ヶ月前に手をつないで田を囲んだ仲間たち。

雰囲気にも慣れてきて、

進行係の誘導を待つまでもなく、自然と畦に並んでくれる。 

やる気だ。 嬉しいね。

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草取りもこれで最後なので、きっちり取ってもらいましょうか。

 


一ヶ月で伸びてくれた草たち。

でも例年よりは少ない感じである。 

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一回目の草取りがだいぶ効いている。 これでもね。

例年の感覚が判断基準になっているので、プロの方は笑わないでください。

オモダカの花を 「キレイね~」 という人たちの集まりなのだ。

でもたしかに、これだけを見ると、なかなかに捨てがたい植物ではある。 

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「 何なら持って帰って、バケ田んに植えてみたら 」

とか言いながら、とにかく容赦なく抜いていただかなければならない。

 

作業の開始。  

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人には当然個人差があって、すぐに入ってはしゃぐ子もいれば、

田に足を入れるだけで3年かかった子もいる。 

毎年見ているうちに、「お父さん、焦らなくていいですよ」 と言えるようになった。 

僕も成長させてもらっているのだ。  

 

3年経って入った子の方が、田んぼの記憶と愛着が深くなるような気もする。

「待つ」 ことの大切さと、「きっかけ」 を与えることが教育の技なのか、と思ったりする。

僕はこの体験田を企画し、21年やってきたわけだけど、

毎年何かしら新しい発見があって、そのたびに

なんでもっと早く気がつかなかったのか・・・という悔しさも、募ったりするのだ。

 

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そして毎年おんなじ様な写真を撮っている。

だって子どもが頑張っている姿は、いつ見ても、どんな場面でも感動モンだから。

" 愛 "  だね、愛!だ。

 

田んぼ一面に、" 愛 "  が充満している。 

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さっきからじっと佇んでいる少女。

何を考えているのか、オヤジには想像がつきません。

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たくさんの人の気を感じてか、穂を出したヤツがいた。 

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開始前に見て回ったときには、出てなかったぞ。 

植物は動物の気配をたしかに受け止めて反応している。

よく見て回る田、いつも声をかけてやる植物は生育がいい、と聞いたりするが、

それはあり得る、と思う。

 

作業後は、例によって陶ハカセの生き物講座。 

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今日発見した生き物、そして今夜お目当てのホタルについての授業。

子どもたちがどんどん前に迫ってくるので、

ハカセはしょっちゅう 「もっと下がって、下がって」 と叱っている。

オイラなんか、「 もっと前に 」 なのに、ちぇっ!

 

次は、案山子(かかし) に着せるシャツにお絵描き。

いや、手形押し、か。

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ナマの手に絵の具をつけてがんがんやっちゃってくれている。  

こんな感じで完成。

 

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ホタル観察は日が暮れてからなので、もう少し時間がある。

次は、「生物多様性の輪」 というゲームに挑戦していただく。

 

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みんな何かの生き物になる。

イネ、カエル、ミジンコ、トンボ、サギ、ミミズ、などなど。

太陽とか風になる子もいる。 

それらが、食べる・食べられる、与える・もらう、といった関係がある者同士で手をつなぐ。

必ず右手と左手で、隣の人とはダメ、というルール。

風は桶屋を儲けさせる、みたいな理屈も通しながらやっていくうちに、

だんだん輪がもつれてくる。

 

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全員がぐちゃぐちゃになりながら、手をつなぎ終わったら、

次はもつれを解いていく。

跨いだり、一回転したりしながら・・・・・

最後は-

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一つの大きな輪になれば成功!

これが生き物たちのつながりなんです。

一つでも欠けたら、命の輪が途切れてゆきます。

感じてくれたかな。

 

夜は、ホタル観察会。

今年は 「裏年」 とあって、ホタルの数は少なかったけど、

それでもチラホラと見ることはできた。

夜の田んぼに、ふわっと光が上がってきて舞い始める。

この光景を見るだけで、大切なものは何かを感じさせてくれる。

写真はまたも失敗。 残念。

 

夜遅くまで、皆様お疲れ様でした。

次は9月。 稲刈りです。

 

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今度来た時には、この緑の田園が黄金色に染まっています。

豊作になりますよう。

 



2010年7月 6日

ぼくらの田んぼは、美しい!

 

あっちこっち出歩いている間に、

我らが 「大地を守る会の稲作体験2010」 も一回目の草取りを終えていて、

実行委員会から写真が回ってきた。

 

おお! これはすごい。 いい光景だね。

みんなで手をつないで田んぼを囲んでいる。

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田んぼの広さをはかってみよう! という趣向らしい。

体験田の広さは13アール (1300㎡) ある。 25m プールにして約4個分。

それを約140人の参加者が輪を作って、実感する。

漠然と見ているより、きっと広く感じたことだろう。

しかも、これだけの数が集まったから囲むことができた。

連帯感も、" 私たちの田んぼ "  という感覚も、増したのではないだろうか。

実際に 「もう少し参加者が少なかったら、ヤバかった」 とか。

 

いやあ、見ていて飽きないね。

稲も一緒に気を感じてくれているに違いない。

僕らの田んぼは、美しい!

 

つらいはずの田んぼの草取りも、

これだけの数での人海戦術となると、一撃だったようである。

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こちらとしては、腰が痛い、とか、農家の苦労が少しは・・・

というセリフを期待する日なのだが、「ちょっと物足りなかった」 だって。

 

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仕事とはいえ、おいてけぼりにされた少年のような一抹の寂しさや嫉妬とともに、

いろんなアイディアを繰りだしてくる若い実行委員会諸氏に、感謝したい。

 

そうこうしているうちに、もう2回目の草取り(7月17日) が近づいてきている。

今度のお目当ては、蛍か。 

いっぱい出てくれるといいが、蛍の数も隔年で増えたり減ったりするらしい。

今年は不作の年にあたるが、さて。

 



2010年5月23日

「稲作体験2010」のスタート

 

大地を守る会の 「稲作体験2010」。

21回目の米づくりも、いよいよ畑の苗代から田んぼ に入る日を迎えた。

田植えというのはいつも心が弾むね。 小学校の入学式に向かう子どもみたいに、

輝やかしい未来が待っているような気分になる。

お天気も、小雨模様ではあるが、何とか持ちそうだ。

 

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毎年書いている気がするが、本当に21年、見事に変わらない風景である。

木々の高さまで変わらないように見えるのはなぜなんだろう。

彼らに比べ、我々の持っている時間のなんと儚いことか。 大事にしなくちゃ。

 

例によって綿貫直樹さんが線を引いてくれる。

 

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お父さんの栄治さんから引き継いで、線引き2代目。

縦だけでなく横も引いて碁盤の目にしてくれる。 いわゆる尺角植え。

道具も21年変わらないねぇ。 年に一回、この日のために取っておいてくれている。

 

10時を過ぎて参加者到着。

今年は田んぼを1枚に戻したことで、つらい抽選となってしまった。

落選された方々には、ホントに申し訳ありません。

すべてボランティア・スタッフで運営する我々の力量の限界ということで、お許しください。

 

着替えをすませた人たちが畦に降りてくる。

ここでさりげなくお手本を見せるのが、さんぶ野菜ネットワーク常勤理事、男・下山久信。

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「早くやんないと日が暮れっちまうよ」 も決まり文句。

大丈夫。 160人の手にかかれば一撃です。

 

さあ、一列に並んで、いざ。

 

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お父さんもお母さんも子どもたちも、一緒になって田植えのスタート。 

ウキウキ感もここで絶頂に至る。 何度見ても、壮観です。

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初めての田んぼの感触は、いかがだったでしょう。 

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泥は泥でも、生きている土壌は生命循環を支える土台だからね。

これが生命の星・地球の皮膚だ。 汚していいはずがないよね。

精一杯、感触を楽しんでほしい。 

 

こちらは経験者? さまになっている。 

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紙マルチは真ん中で向き合って、

後ろに下がりながら植えていく。 これの問題は植え直しが出来ないことだ。

丁寧さと前後左右への気配りが求められる。

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エビが選んだ今回の稲作DNA大賞。

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キマりすぎてるぞ。 昭和を彷彿とさせるような・・・

それに苗も、アジアって感じで、いい。 

 

こちらは、カエルを捕まえて、ご機嫌です。

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田植えの後の交流会では、もはやこれなしではすまされなくなった

陶(すえ) ハカセの生きもの講座。

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捕まえたカエルや虫をスコープで拡大してモニターに映し出す。

道具も年々進化してきている。

みんなの注目はアマガエル。 ホント、子どもはアマガエルが好きだ。

ハカセ曰く。

  渡り鳥のために冬にも水を張る田んぼが増えてるけど、鳥たちだけでなく、

  2月から3月に卵を産むカエルも田んぼで生きることができます。

  もっと増えるといいですね。

うなずく子どもたち。

きっとエビではうなずかないな。 ハカセへの信頼は絶大なのである。

 

交流会では、誰が考えたのか、

 「未来の自分あての手紙」 を書いてみよう、というプログラムも用意された。

面白うそうだね。。。 

内容は・・・ 追ってご紹介させていただくことにしたい。 このテーマで1回書けそうだし。

 

地主、佐藤秀雄さんの話を聞く。 

今日はわりとご機嫌な感じで、舌も滑らか。

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今年は寒い日が多くて、苗づくりは苦戦した。 いつもより苗の本数も少なかった。

でも、そのぶん、間に合ってよかったという気持ちも強いのだと思う。

 

今年の看板。 新しい手形を押して完成。 

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かなりきれいに植えられました。 パチパチパチパチ。

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向こう側の、地面が白く見える部分が紙マルチ区。

そしてその向こうには、数列の新しい実験区が作られた。

苗1本で植えた列と10本くらい植えた列。 

最終的に収穫量がどう違ってくるのかを確かめたいのだそうだ。

それにまったく草を取らなかったらどうなるか、だと。

佐藤秀雄、絶句!

種が落ちちゃうべぇ よぉぉぉ~~と独りごちながら、まあ好きにしろと言うしかない。  

 

ほとんど出番の無くなってきた我が輩は、

こそこそと田んぼスケープに投稿したりしていたのだった。

よろしかったら覗いてみてください。

 http://www.tanbo-scape.jp/

 



2010年4月 4日

「稲作体験田」 の種まき

 

4月に入り、こちら千葉・山武での 「稲作体験2010」 の米づくりも、

いよいよ本格始動。

田んぼをお借りしている佐藤秀雄さんの畑にて、今日、種を蒔きました。

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秀雄さんから教わっている苗作りのやり方は丘苗代 (おかなわしろ) と言って、

田んぼの中に苗代をつくるのでなく、畑に蒔きます。

種籾は、無消毒のコシヒカリ。

これをただ蒔くのでなく、最初に塩水選による種籾の選別から始まり、

温湯による消毒をやってから、1週間水に漬け、

次にぬるま湯に漬けて、ハト胸状に膨らんでちょこっと芽が出た状態まで持っていきます。

こういった前段の作業は、プロである秀雄さんにやっていただいています。

 

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さて、苗代となる畑をきれいに掃き清める秀雄さん。

雑草の種などが落ちてない土であることがポイントです。

 

そして、種まき。

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パラパラと、できるだけ均質になるように蒔きます。

 

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今年はどうも発芽の調子がよくない、と秀雄さんは心配しています。

長年同じようにやっていても、年によって違うのでしょうか。

それでも、「まあ、出るっぺよ」 と、そこは素人にはよく分からない判断がはたらくのでした。

 


種が蒔き終わったら、土をふるいにかけながら、薄くかぶせていきます。

秀雄師匠に怒鳴られながら、実演するのは今年の実行委員長、石川遼、

じゃなかった、 栗本遼くん。

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土をかぶせ終わったら、パイプを半円形に刺して、

ビニール、じゃなかった、ポリエチレンのシートをかけます。

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風で飛ばされないようにロープで縛って、

周りに土を寄せて、作業終了。

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これから日々、苗の状態や温度を見ては、シートを空けて調節したりしながら

育てていきます。

「苗半作」 とか、人によっては 「苗七分作」 とか言われるほど、

苗づくりがその年の出来を左右する、大事な仕事です。

 

今日も気温が上がらず、肌寒い一日でした。

これからの天候が心配です。

 

念のために補足すると、

この苗づくりの方法では、田植え前の苗とりが手作業になります。

そして田植えも手で植えることになります。

「稲作体験」 は、消費者の方々に体験してもらう企画なので、

あえてご当地の伝統的な手法にのっとってやっています。

 

田植えは、5月23日(日)。

どうか順調に伸びてくれますように。

 

栗本実行委員長の種まき姿を 「田んぼスケープ」 にもアップしてみました。

高知からはもう始まった田植えの様子が、

宮城からは千葉孝志さんのソーラーパネル設置完了の写真がアップされ、

こちらもだんだんと賑わってきている今日この頃であります。

 <注>

「田んぼスケープ」 にアップされた写真は、順次更新されています。

過去の写真を見る場合は、画面下のカレンダーのところをクリックして下さい。

また 「田んぼスケープ」 に投稿される場合は、ケータイからお願いします。

パソコンからでは、まだはじかれる可能性がありますので。

 



2009年10月17日

「稲作体験」 20周年の収穫祭

 

今年で20周年を迎えた 「稲作体験」 については、

5月の田植えから草取り、稲刈りと随時お伝えしてきたが、

20年という数字の威力だろうか、予定外のオプション企画が必然のように生まれた。

現地で収穫を祝う交流会が準備されたのだ。

田んぼを2枚に増やしたことといい、こういう  " 勢い "  は、

やっぱり若いスタッフでないと出てこないなぁ、とつくづく実感する。

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稲刈り(9月13日) から1ヶ月を経過した体験田。

まだ育つだけの温度もあってか、どの株にもひこばえ (二番穂) が出ている。

 

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これから寒くなるので、さすがにちゃんとした実になるのは少ないが、

すぐに穂(子孫) を作るところに、自然のサイクルを感じ取る生命の本能を感じさせる。

減反が始まった頃は、これも刈って金に換えたといった話を、

ある地方で聞いたことがある。 真偽のほどは確かめてないけれど。

 


いつもの公民館で、炊きたての新米を味わいながら、

交流会が行なわれる。

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半年の共同作業を経て、随分とアットホームな感じになるのが嬉しい。

 

なお田んの米(左) と、ひで田んの米(右) を食べ比べてみる。

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まったく同じに炊いたものだが、微妙に違う。

モチモチ感を選ぶか、スッキリした食べやすさを選ぶかは、それぞれの好みだね。

 

いつも顔を見せてくれる

 「さんぶ野菜ネットワーク」 の富谷亜喜博さん (大地を守る会理事) の挨拶。 

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20年前の、最初の稲作体験を振り返ってくれた。

山武に有機部会をつくった先達、故今井征夫さんの田んぼから始まったのだ。

そんな話なども出て、ちょっと遠目になってしまう。

 

ネットワーク女性陣たちが用意してくれたおかずの数々。 

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おいしかったです、ホント。 ご馳走様です。

 

みんなで写真を見ながら振り返り、感想などを語り合う。

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さんぶのゴローちゃん、佐藤秀雄も人気者になって、なんだか饒舌である。 

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楽しかったね。 

 

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綿貫直樹さん(左) は、今年の功労者だ。

お陰さまで、希望者全員受け入れることができました。

 

生産者の岩井正明さん。

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生産者も手でイネを植えたり、鎌で刈るなんてことはもうないわけで、

「この稲作体験を手伝うことで、日本人のDNAつうのかね。 そんな深いものを

 取り戻すことができたように思ったよね」 なんて、嬉しいことを言ってくれる。

 

食事のあとは、2班に分かれて、外に出る。

ひとつは、陶(すえ) 博士による自然観察会。

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そこかしこで生き物たちがヴィヴィッドに活動している姿を発見しながら、歩く。

 

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オオカマキリの卵。 

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こういうのにも、なんでか感動したりするのだ。

 

これは見せてはいけないのかしら。

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トリ●●トの花。 形が兜に似ているところから名づけられた。

サービス心旺盛なマルハナバチもやってきてくれて、パチリ。

 

もうひとつの班は、ワラ細工の講習会。

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先生は、綿貫栄一さん。

直樹さんのお父さんで、体験田の田植えの線引きを長く勤めていただいた方だ。

昭和ひとケタの世代には、祖父の記憶、つまり明治からの教えが受け継がれている。

 

今日の作業は、基本の基である縄を綯 (な) うところから。 

そして草鞋(わらじ) づくりに、米俵の蓋編みに挑戦。

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「この蓋の数が多いほど、収穫が多いことを表していたんだよね。」

栄一さんも子どもの頃、ワラを編みながら、今年の収穫量を誇ったりしたのかな。

 

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直樹さんもご指南。 こうやって受け継がれるDNA。

イネは捨てるところがない。

ワラはエネルギー (バイオマス燃料・エタノール) だって産み出すことができる。

田んぼの総合力はスゴイのだ。

なのに平気でワラを野焼きしたりしているのが、この国の現実である。

田んぼを減らしながら。

 

気がつけば、帰ってきた自然観察班が、田んぼでゲームを始めている。

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それぞれが鳥になり、カエル (鳥の餌) になって、食べ合う。

食べあいながら、それぞれに生き残り、子孫を残す。 それが共存の世界である。

 

なんだか、みんな真剣だね。 大人も本気になって逃げ回っている。

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サギにすっかり囲まれてしまったカエルちゃん。 絶体絶命。

 

最後に、みんなでお絵かき。

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今年の稲作体験を振り返りながら、コラージュが出来上がっていく。 

こうして  " ボクらの田んぼ "  が、君たちの記憶に刻まれるのだ。

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おまけの企画も、いいもんだね。

ありがとう。 みなさんに感謝。

 

アキアカネが乱舞する日本の秋の、楽しいひと時でした。

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2009年9月13日

稲作体験20周年-稲刈りに到達!

 

ATJ20周年のあとの酒宴の名残りを頭の奥に残しつつ、千葉・山武へ。

次は我らが 「稲作体験」 の20周年。 いよいよ稲刈りの日を迎えた。

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若干薄い(少ない) 気もするが、天候不順や草とのたたかいにもめげず、

よくぞ稔ってくれた我らが体験田。 

 

上の看板も、下の案山子も、今日のために、

地主・佐藤秀雄さんのお連れ合い、つや子さんが作ってくれたものだ。

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200人を超す会員親子が、5月の田植え、6月・7月の草取りを経て、

新しい鎌をもって続々とやってくる。

みんなウキウキしている感じで、こちらも嬉しくなってくる。

こうしていつの間にか、秋には連帯感のようなものが生まれるのだ。

 

では、いざ! 稲刈りスタート。

 


ベテランの人も、初めての人も、せっせと刈り取り。 どんどん進む。 

子どもたちも頑張っている。

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毎年思うことだけど、この半年弱のうちに、子どもたちはひと回り逞しくなっている。 

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今年は記念の年だということもあって、希望者全員を受け入れたいと

2枚の田んぼを借りた。

僕は毎回、いつもの佐藤秀雄さんの田んぼ (通称 " ひで田ん " )

のほうに割り振られていたのだけど、

今回だけはもう一つの綿貫直樹さんの田んぼ ( 通称 " なお田ん " )

にも回ってみる。 

 

こちらは前日の雨で、相当ぬかるんでいる。 足が埋まり、作業も苦戦気味。

写真撮ってる暇はなく、助っ人に入る。

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数百メートル離れるだけで、こんなに田んぼの性格が違ったりするものなんだと、

改めて実感する。

山林に面しているため日照時間も違う。 当然、生育速度も異なってくる。

実は2日前まで、同時に刈れるかどうか、迷いに迷っての決行となった。

やっぱ、少し早かったか・・・・・。 

しかし来週には延ばせない、というのも生産者とともに下した 「判断」 である。

参加者の皆様、どうかご了解をお願いしたいところです。

2枚の田んぼでやることの難しさ、課題、教訓をいっぱいもらった20周年。

これは次の10年に向かえ (これで終わるな) ということなのだろう、きっと。

 

ケガ人もなく、無事、稲刈り完了。

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この光景を見るたびに、ああ今年も何とかやり切ったか、という安ど感が湧いてくる。

そしていつも思い出してしまう歌を、心の中で口ずさんでしまう。

 

    この土地に生きている わたしの暮らし。

    わたしに流れる 人たちの歴史。

 

    この土に わたしのすべてがある。 

    この国に わたしの今がある。

 

    この国の歴史を 知ってはいない。

    この国の未来を 知ってはいない。

 

    けれどもわたしは ここに生まれた。

    けれどもわたしは ここに育った。  ~~

 

皆様、お疲れ様でした。

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秀雄さんも、お疲れ様でした。 今年もお世話になりました。 

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すっかり子供たちのチョー人気者になった、陶 (すえ) ハカセ。 

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虫や草のこと、なんでも答えてくれて、ありがとう。

君はもう稲作体験に欠かせない必須アイテムなので、これからもヨロシク、です。

 

なお田ん班はきつかったようですね・・・・・ 

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お昼寝も気持ちイイことでしょう。 

 

最後の挨拶と記念撮影で、集合。

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なんとなく表情が晴れやかに見えるのは、錯覚じゃないですよね。 

 

では、皆様。 今年も収穫到達! やったね! おめでとう!

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解散後、実行委員の諸君も、1枚撮っといてあげよう。

前に寝っ転がっているのは、もう一人の地主・綿貫直樹さん。

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2月から準備が始まるという長丁場の企画だというのに、

仕事をぬっての作業、夜のミーティング、そして土日返上でのイベントの遂行、

みんなボランティアでやり切ってくれた。

年々少しずつメンツは変わっていくけれど、君たちがつないでくれたから、

20年続けてこれた。 もう立派な  " 大地の伝統 "  と言っていいだろう。

20年間の、すべてのスタッフに感謝したい。

 

そしてもちろん、佐藤さん夫妻、綿貫さん親子、さんぶ野菜ネットワークの生産者の皆さん、

いつもおいしい豚汁やおかずを用意していただいた女性部(?) の皆様。

お陰さまで20年、です。

本当にお世話になりっぱなしですが、この場を借りて深く感謝申し上げます。

これからもよろしくご指導のほど、お願いします。

 

最後に、参加された消費者会員の皆様。

実は皆さんの力も大きいのです。 

年を経るたびに参加者が増えてくる。

このフィールドで、米づくりを楽しんでくれる。 草も一生懸命取って-。

生産者が、この地区の空中散布は何としても止めようと言ってくれ、

何年かかかりましたが、それは達成されました。

生産者と消費者のつながりの、底力というものを感じたものでした。

20年で、おそらくは延べ 2,500人くらいにはなるでしょうか。

こちらも延々とつながって、田んぼを支えて頂きました。

本当に、心から感謝します。

 

    いくたびか春を迎え、いくたびか夏を過ごし、

    いくたびか秋を迎え、いくたびか冬を過ごし。 

 

    わたしがうたう 歌ではない。

    あなたがうたう 歌でもない。

    わが 山々が わたしの歌。

    わが 大地が わたしの歌。  ~~

 

以上、笠木透の 「わが大地の歌」 の一節でした。

ちょっと舞い上がって書いてますが、いいよね、今年くらいは。

 

では、次の10年に、向かうぞ!!

おっと、その前に、今年はオプションで、10月に収穫祭をやります。

晴れていれば、田んぼの中で体験田のお米をみんなで食べましょう。

 

とにかく皆様、お疲れ! です。

 



2009年7月26日

草取りの季節

 

昨日 (7月25日) は、『大地を守る会の稲作体験2009』 2回めの草取りが行なわれる。

例によって20年変わらぬ風景。

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ここに180人近い人々が田んぼの草取りに集まってくれた。

今年は2枚の田んぼを借りたので、作業は2班に分散して行なわれている。

 

年々草が増えてくる佐藤秀雄さん (通称 「ひで田ん」 ) の田んぼ。

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特にコナギの増殖が激しい。

こいつは強害草といわれるほど、イネとの競合植物である。

 

こちらは今年から借りた綿貫直樹さんの田んぼ ( 通称 「なお田ん」 )。

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こちらもコナギは生えているが、ひで田んほどではない。

株の姿もしっかりしている感じがする。

 

しかし驚くことに、ひで田んのイネは、すでにパラパラと穂が出始めているのだった。

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この現象には、地主の佐藤秀雄の表情も曇っている。

「今年は取れない (=収量が上がらない) かも知んねぇ。」

 

挨拶する秀雄さん。

「草もいっぱいあるけども、まあ20年皆さんが無農薬でやってきた結果ですので、

 頑張って取ってください。」

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作業開始。

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手を熊手にして、取っては埋め、取っては埋める。

頑張る会員さんたち。

「大地の会員さんは真面目な人が多い」 というのは、

イベントをやるたびに言われる生産者からの評価である。

加えて、子どもたちの性格がいい、というのも定説になっている。

20年この作業を続けてきて、ぼく自身もまったく異論がない。

事務局として、いつも気が引き締められる。

 

ぼくはひで田ん班に編成されたので、なお田ん班の作業は見れなかったのだけど、

あとで写真を見て、感心した。

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草をリレーで外に出している。

草が少なく、かつ人手があるからできることだろうが、

それにしてもいいね、こういう田んぼの中のチームプレー。

 

ちなみに次の写真は、田植えの時には紹介できなかった、

なお田ん班の田植え風景。

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直樹さんの苗は、写真左下にあるセル苗である ( 3月28日日記 参照) 。

二つの田んぼの生育の違いは、土質や水環境、日当たり具合の違いもあろうが、

苗作りによるところが大きいのではと思われる。

 

私たちはここで、実に甘い計算をしていたことに気づかされるのだった。

イネを抜いて比較してみる。

すでに穂が出てきた田んぼと、まだ茎の中ほどに穂を孕み始めた田んぼ。

これでは......稲刈りは同時にできない! ということだ。

さて、どうするか・・・・・・20年目の実行委員会は試練続きである。

 

作業終了後の昼食・交流会風景。

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公民館の駐車場に4張のテントを設営して、こちらは生産者の話を聞き、交流する。

 

「これからの田んぼの作業は、水管理、に尽きます。」

と説明する、綿貫直樹。

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公民館の中では、子どもたちのカリスマとなった生き物博士・陶武利さんの

「田んぼの生き物講座」。

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とにかく子どもは虫が好きだ。

生態系とか生物多様性とかの理屈なんか関係ねぇ。

とにかく虫というものに夢中になる。

そして陶さんの 「この虫は、実は・・・・」 の話に聞き入る。

ぼくももういっぺん幼少の頃に戻ってみたいと思ったりする。

 

日が没したところで、昨年に続いての夜の生物観察会。

お目当ては当然、ホタルである。

 

今年もカラスウリの花を見ることができた。

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この時期の夜にしか咲かない。

夜行性の蛾を引き寄せ、蜜を与えるかわりに受粉の手伝いをさせる。

だから夜でも光るがごとく、輝く白である。

宮沢賢治の未完童話 『銀河鉄道の夜』 にも、

銀河の祭りの夜にカラスウリのあかりを川に流す、というくだりが出てくる。

「今夜はみんなで烏瓜のあかりを川へながしに行くんだって。 きっと犬もついて行くよ。」

 

しかもこの花は花筒が長く、スズメガのような長い口吻を持つ蛾でないと花蜜が吸えない。

なぜカラスウリとスズメガが、このような関係を築いてきたのか・・・・・

生命のネットワークと共進化は、実に神秘だ。

 

かんじんのホタルは?

夕方まで風が強かったせいか、ちょっと少なかったけど、しっかり飛んでくれました。

闇の中に流れる光の幻想的な軌跡には、どんな人も心を動かされるに違いない。

そしてきっと、大切にしたいと思うだろう。

写真はまたも失敗。

 

田んぼの草取りという労働のあとで、自然や生命の奥深さを感じとる。

草取りⅡは、すっかりホタルに合わせた日程になってしまった。

来年もこの日程でやるなら、一層の知恵と工夫と労働が必要だ。

 



2009年5月17日

20年目の 『稲作体験』-200人の田植え

 

見よ! 稲作農耕民族のDNAを受け継ぐ者たちの雄姿を。

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今日は大地を守る会の 「稲作体験2009-田植え編」。

すでにお伝えした通り、20周年となった今年は、できるだけたくさんの希望者を

受け入れたいと、田んぼを2枚借りての実施となった。

設定した定員が200名。 そんでもって応募者数は、247名。

この数字にひるみつつも、実行委員会は敢然と 「全員受け入れ」 を決定した。

「無謀にも」 という形容詞のほうが適切かもしれない。

いろんな事態を想定しつつ、慎重にシュミレーションが行なわれて、

打ち合わせのたびに準備項目が増え、緊張感が増してきているのが分かる。

 

そして、いよいよ田植え当日。


現地は、早朝こそ激しい雨が降ったが、だんだんと小降りになってくる。

前日からの準備で泊まり込んでいたスタッフは、内心ドキドキしたことだろうが、

空を見上げながら、「やれる、やる!」 と自らを奮い立たせるのだった。

電話がかかってくるたびに、「やります。こちらは大丈夫です」 と対応する。

聞けば東京は土砂降りらしい。

 

最後の打ち合わせをするスタッフたち。

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「エビスダニさんは、そこら辺にいてください。」 -もうオイラは年寄り扱い。

 

そんなあいにくの空模様のため、辞退された方もあったが、

それでも185名の方が、続々と集まって来てくれた。

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着替えて集合して、生産者の挨拶から。

まずは19年引き受け続けてくれた、佐藤秀雄。 

山武のゴローちゃん (ドラマ 『北の国から』 で田中邦衛が演じた主人公) と呼ぶ人もいる。

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続いて、綿貫直樹さん。

この人が田んぼを提供してくれなかったら、200名は受け入れられなかった。

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そして、二班に分かれる。

佐藤秀雄の田んぼ組は -「ひで田ん班」。

綿貫直樹の田んぼ組は -「なお田ん班」。

私は初参加者中心に組まれたひで田ん班に回される。

田植えの要領の説明をし、畔に並んで一斉に開始する。

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黙々と作業に集中する人もいれば、楽しそうにお隣の人と会話しながら進む人もいる。

子どもに手を焼きながらもどこか興奮気味のお母さん。

子どもに植え方を注意されるお父さん。

みんな楽しい。 とにかく田植えは心が弾む。

このフィールドで、今日、人生(イネ生?) の本番が始まる。

その青春感のようなものだろうか。

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この光景には、なんでだろう、

意外にラテン・ミュージックが似合うような気がしてならない。

 

恒例の紙マルチによる田植え。

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人数が多いものだから、初参加でいきなり紙マルチ区に回された親子。 

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「田植えってね、紙を敷きながらやるんだよ」

とか幼稚園で言い出さないかと、ちょっと心配。

 

お疲れ様でした。 

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楽しい作業はあっという間に終わる。

天気も何とかもってくれて、よかった、よかった。

 

田植えの余韻を楽しみつつ、昼食と交流会。

断続的に降る小雨の影響を心配して、急きょ生産者の富谷亜喜博さんが

ご自宅の倉庫を開放してくれたことで、3ヵ所に分かれての交流会となる。 

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こちら、今日はいつもより張り切って語るゴローちゃん。

虫博士の陶 (すえ) 武利さんには、「こっちにも来てくれ!」 というSOSが入ったりして、

結局3会場掛け持ちで回って、カエル講座となる。

「オレは、すえハカセの話を聞きに来たんだよう」

なんていう生意気なガキもいたりして、私を嫉妬させる。

 

最後に、これまた恒例となった、看板の手形押し。

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頂戴しました、みんなの笑顔。

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なお田ん班の人たちは分散しての交流会となってしまったので、

この手形押しは次回とします。 お楽しみに。

 

正直言って、みんなが満足してくれたかどうか、どうもよく分からない。

大人数による初めてのオペレーションも多々あったし、天候にもかなり翻弄された。

これらは、たび重ねるスタッフにとっては訓練だろうけど、参加者にとって

不愉快な記憶は、たった一度でも " 決定 " 的であったりする。

参加者の皆さん。

どうぞ忌憚なく、ご意見をください。

次の草取りも、笑顔で会い、別れたいので。

 

今度は草取りですね。

作業はきつくなるし、田植えのようなワクワク感はないけど、

やり遂げたあとの " 達成感 " という実感が、待ってます。

 

子どもたちがイネと一緒に逞しくなる季節に向けて、

実行委員会の反省会もきっちりやろう。

 



2009年3月28日

「稲作体験2009」 始動

 

WBCもドラマチックに終焉して、甲子園では高校球児たちが熱戦を繰り広げ、

世間は春の気分に向かいつつある時節。

我々も短いシーズン・オフを終えて (年々オフが短くなっているような気がする)、

今年の米づくりが、いよいよ始まった。

 

恒例の、大地を守る会の 「稲作体験」 シリーズ。

今年はついに20年目に入った。

企画の打ち合わせと下見のために、千葉・山武(さんぶ) を訪問する。

花冷えというのはまだ先の言い方なのかもしれないけど、

ここに来てちょっと寒くなって、桜の開花も遅れ気味になってきている。

千葉・幕張では昨日、雹が降った。

山武は夕べ霜が降りたとのこと。

 

我らが体験田の地主、佐藤秀雄さんが種モミの準備をしてくれている。

温湯処理のあと水に漬けている段階。

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種子消毒していないコシヒカリ。 よく見ると、かすかに芽が出始めている。

 

この種モミを、来週の4月5日(日) に畑に蒔く。

陸(おか) 苗代のやり方。

秀雄さんは、すでに畑の準備も完了してくれている。 

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雑草の種を丁寧に取り除いた土で、整地されている。

「バッチリだっぺよ」

「あとは、もうちっと温度が上がってくれれば大丈夫だな」

 


田んぼは荒起こしされた状態。

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今年も変わらない風景が、うれしい。 

 

さて、今年は 「稲作体験」 20周年である。

毎年ボランティア・スタッフを募って結成される 「実行委員会」 には、

なんと20人近い若手職員が手を挙げてくれた。 これまた、うれしい。

その彼らから、「今年はできれば抽選なしでいきたい」

という大胆な提案が挙がったもんだから、勢いというものはコワい。

昨年は、定員120名のところに200名の申し込みがあって、

頑張って150名ほどを受け入れたのだが、

「来年も来たい」 という声に抽選で応えるのは、けっこう辛いものがあった。

みんなを受け入れたい・・・・・

そりゃ気持ちは分かるが、それには田んぼがもう一枚必要だし、

いろいろと考えなければならないことがある。

 

そんな彼らのはやる気持ちに応えてくれたのが、

いつも作業の手ほどきなどで手伝ってくれている綿貫直樹さんだった。

「じゃあ、オレんとこの田んぼを使えばいい。」

 

ここが、その田んぼ。

いつもの体験田から歩いて10分弱。 面積は1反 (10アール) 。

 

ついに、田んぼ2枚を使っての 『稲作体験』 か。

準備や施設のキャパなど、検討しなければならないこともいっぱい増えるけど、

20年目の増反挑戦、やってみようか。

 

思い返せば、スタッフがなかなか集まらなくて、

終わるたびに、「もうやめようか」 と漏らしていた時代もあった。

その度に支えてくれたスタッフがいて (泣かれたこともあったな)、

なによりも参加者の笑顔や子どもたちの 「来年も来るう!」 に励まされてきた。

20年・・・・・これだけは、誰がどんなに頑張っても

ひとつずつしか伸ばせない数字である。

やり続けてここまできた。 いや実に、感慨深い。

 

実行委員たちのプランは、いろいろと膨らんでいって、

米づくりの勉強会だの、記念誌の発行だのと張り切っている。

それをただニヤニヤしながら、見ているのだった。

 

ちなみに、綿貫さんにつくっていただく苗は、セル苗という。

地域の小学校の子どもたちに教えているやり方だというので、

それでやっていただくことにした。

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写真の、1センチ四方に区切られた黒い碁盤のマスのなかに、

種を3粒ずつ落として、苗を育て、田植えの際はそのひとマスずつ抜いて植えていく。

植える間隔は30センチの尺角植えとする。

佐藤さんは佐藤さんで、綿貫さんは綿貫さんで、手法がある。

お任せしますよ、プロに。

 

20年にして、地主が二人になった 『大地を守る会の稲作体験』 。

どうぞよろしくお願いします。

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 (左が綿貫直樹さん。 右が佐藤秀雄さん。

  3月6日に開かれたさんぶ野菜ネットワークの総会にて。)

 

田植えは、5月17日 (日)。

来週から、参加者募集に入る。 定員は200名に設定。

田んぼが2枚になったとはいえ、キャパ以上の申し込みがあった場合は、

どうしても抽選せざるを得なくなってしまうけど、そこは

田んぼを増やした気持ちに免じて、お許し願いたい。

 



2008年10月18日

稲作体験米を食べる会

-という集まりが開かれる。

大地を守る会六本木分室の会議室を解放して行なわれた。 

今年の 『稲作体験』 の田んぼで獲れたお米を食べながら、体験作業を振り返り、

みんなで感想を語り合う。 稲作体験19年の歴史で初めての企画である。

これも実行委員会が充実してきたからこそ、できることだね。 

体験田の地主である佐藤秀雄さんに、田植えから協力してくれた綿貫直樹さん、

 『いきもの博士』 の称号がすっかりはまった感のある陶武利さんも参加してくれて、

アットホームな雰囲気で、楽しく行なわれた。

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田植えから稲刈りまでを振り返るスライドショーで、思い出にひたるひと時。

 


映像を見て、田んぼに帰ったような気分になって、

みんなでカードに感想やメッセージを書いてもらう " 思い出コラージュ " タイム。

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楽しかったよ !!

豊作おめでとう。

また行きたい。 

カエルや虫の絵を描いてくれた子もいる。

 

綿貫さんが、さんぶ野菜ネットワークさんが作ってくれたアルバムを持参してくれた。

懐かしそうに見入る親子。 

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話し込む、生産者 (右:佐藤秀雄、中央:綿貫直樹) と消費者。 

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ご飯のお供に用意したのは、塩、梅干、海苔、佃煮、お漬物・・・・・

これはこれで大地を守る会で扱っている品々の味見や比較ができる格好に。

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お味は、いかがでしょうか。

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さすが新米とあって、通常の水分量では多かったか、

柔らかく炊き上がってしまった。

炊飯器がレンタルということもあって、ちょっといつもと加減が違ったとの弁も。

 

でも皆さん満足されたようで、主催者としてはひと安心。

実はね・・・内心、ドキドキしてたんですよ。

 

こんなラベルを貼ってお届けします。

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新米ですので、お水は若干少なめがよろしいようです。

 

食べ終わったところで、ゲストのお三方を囲んで、

田んぼでの交流会では聞けなかった話や質問を出し合う。 

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米作りの話から、野菜へと、はては子どもの頃の風景へと、

どんどん話が広がっていく秀雄ワールド。

陶さんには、子どもたちから、「いつからハカセになったんですか?」の鋭い質問。

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・・・・・え~と。 実は小学校2年の頃から虫ハカセとか言われてました。

休み時間には、いつも水路に行っては虫を眺めてました。

算数の時間に机の上を水浸しにして、カタツムリの動きをずっと観察してたことがあります。

あれを許してくれた先生がいなかったら、僕は今頃・・・・・(ホントだよ、良かったねぇ。)

いい (忍耐強い?) 先生に出会えるってことは、とてもシアワセなことだ。

しかし、君たちが真似して、どうなっても、オラ知らないからね。

 

逆に直樹さんから、消費者の方々に質問。

「体験田での、一番の思い出はなんですか?」

答えは - 裸足で田んぼに入った時の感触、あれが一番だった。

 

この回答は、とても嬉しいものだ。

実は、こんなことを言う専門家がいるのである。

-昨今、米作り体験とか称して、手で田植えをする体験教室が流行りだが、

 時代錯誤もはなはだしい。 今の農業は田植え機で植え、コンバインで刈ってるんだから、

 やるならそういう今の時代の農作業を教えるべきだ。

 だたの牧歌的、懐古趣味的な体験では、間違った現実を伝えることになりかねない。

 

こういう人は、ただ机上で教育論を考えているだけで、

農業体験の意味や価値が、どうもお分かりでないように思う。

いや、本来当たり前にあるべきなのに忘れてしまったもの、

僕らが取り戻さなければならないもの、について考えてないのだ。

 

農業の土台とは、土であろう。 実際に土に触れることが大切なのだ。 

そして虫や雑草とも、彼らの目線で眺めたり触れ合ったりすることで、

生態系 (生命のつながり) を体感し、

農業の持っている豊かさや魅力や大切さへの想像力が養われる。

田んぼが愛おしくなった、の感想以上に価値ある言葉があるだろうか。

そこから生産と消費が紡ぎ直されてゆく。 今の時代に喪われたものを・・・

僕は農家でもなく農学者でもない。 

これは稲作体験19年の経験からくるものでしかないけど、

延べにして2千人を超える人たちを田んぼに案内して得た確信ではある。

この確信がなかったら、続かなかっただろう。

詳密な技術論やコンバインの操作は、本気になってからでいいんだよ。

 

たった一ヶ月ぶりの再会なのに、

とても懐かしくて、ちょっと気恥ずかしくもある同窓会のような 「食べる会」 だった。

来年もゼッタイ参加します、という感想は、

抽選になってしまっている昨今、事務局にはつら過ぎるものでもある。

 



2008年9月15日

収穫の歓び-体験田の稲刈り

 

今日だけは、病んだ世の中の事象は忘れて、楽しみたい。

大地を守る会の 「稲作体験2008」 最終ラウンド-稲刈り編。

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 5月の田植えから約4ヵ月。

か弱かった苗も、風雨や干ばつや低温や酷暑に耐え、立派に育ちました。

参加者も、待ちに待ったって感じで続々と集まり、

思いっきり稲作農耕民族のDNAを炸裂させてくれる。

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私が植えたイネが、実った! 

楽しいね、ホント。

 


助っ人兼指導者としてやって来てくれた、さんぶ野菜ネットワークの生産者たち。

すみませんね、出荷日に。

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稲刈り作業の手ほどきは、綿貫直樹さん。

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今日は鎌を使います。 聞く方もさすがに集中する。

 

いざ稲刈り開始。 子どもたちも活躍、です。

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よし! 上手。 成長の一瞬。

 

いても立ってもいられず、カメラなんか置いて、自分も作業に入る。

 

1時間強くらいで、13アールの田んぼの稲刈りを終える。

今年は、天日干しのはざ架けの竿が去年より一本分多い。

8俵 (480kg) はいきそうだ。 何とか面目立ったかな。

 

刈った束を全部竿にかけて、作業終了。

さあ、みんなで記念撮影しましょう。 この写真が、米袋に貼られることになります。

 

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ジャーン!って、君ねえ。 早く並んでっつってるでしょ。

 

ハイ、皆さま。 お疲れ様でした。 パチリ。

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作業のあとは昼食と交流会。

さんぶ野菜ネットの奥さんたちが、いろいろとおかずを用意してくれる。

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出荷からはじいた小さな里芋を使った 「おっぺし芋」 が美味い。

料理屋では 「衣かつぎ」 として出される立派な料理である。

 

毎回、田んぼの生き物の解説をしてくれた陶武利さん。

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生き物調査の結果をグラフにまとめ、

僕らが除草対策で失敗したと思っていた米ヌカ区で

イトミミズが増えていることを実証した。

来年の課題が見えてくる。

 

我らが地主、佐藤秀雄。 

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参加された会員から、「秀雄さんの顔が見たくって来ています」 なんて、

泣けてくるような落とし文句が出たりする。

こいつのどこがいいんだよ、とちょっと嫉妬したりして・・・

ま、「さんぶのゴローちゃん」 (※) に、ここは譲らざるを得ない。

     (※)倉本聡さんのドラマ 『北の国から』 の、田中邦衛が演じた主人公の名前。

 

帰る前に、子どもの記念写真を撮るお母さん。 「楽しかったね、田んぼ」 。

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来年もぜひ、来てください。

子どもの成長を見るバロメーターにもなる稲作体験です。

 

最後に、今年の実行委員の面々に感謝。

みんな休日返上のボランティアです。 

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ありがとう。 君たちのお陰で、もう僕の出番はほとんどなくなっちゃいました。

一人でガイドしてた19年前を振り返ると、ホント、よくここまで来たと思う。

来年は 「稲作体験20周年」 だからね。 ヨロシク!

 



2008年7月20日

田んぼの草取り-2回戦

 

いつの間にか梅雨が空けて、

昨日も暑い中で、 「稲作体験田」 の2回目の草取りが行なわれた。 

前回から一ヵ月が経ち、稲の葉もだいぶ強く伸びて、 

夏らしい生き物も、そこかしこに確認される。

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それにしても、この草はなんだ!

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 ビッシリと生えたコナギの群生。

ひえ~! 勘弁してくれぇ! の悲鳴が上がる。

無農薬で19年目のこの田んぼには、最大の難敵・ヒエは生えない。

ここ数年の敵は、コナギである。

 

カメラのアングルが悪くて、ちょっと分かりにくいかも知れないけど、下の写真、

真ん中から左が米ぬかを撒いて草を抑えようとした 「米ぬか区」。

右が紙マルチ区。

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今年も米ぬかは失敗したか・・・・・

やっぱり、米ぬか施用はタイミングが重要なのである。

- 『 水田に米ぬかを撒くと乳酸などの有機酸が発生し、コナギの発根を阻害する 』

この原理を利用するには、僕ら 「農業体験」 組には根本的な欠陥がある。

日常的な観察と記録である。 ポイントはふたつ。

 ・ 水温がコナギの発芽温度 (19℃) を上回っているか。

 ・ コナギの発根時期と米ぬか投入時が合っているか。

 

田植え直後に撒いても、上記の条件が合っていなければ意味がない。

僕らは基本的に土曜日曜中心に作業イベントを組んでしまうのだが、

それは作物を育てる基本技術とは、相入れない。 分かっていることではあるが。

 

悔しいなぁ・・・・・・草を見るたびに、来年に向けての決意は深まるのだが、

毎年やっぱり後手に回ってしまう。

 

しかし、そんな思案などしている暇はない。 問題は目の前の草だ。

気を取り直して、気勢を上げて、いざ、田んぼに入る。

黙々と草取り作業を始める120名の参加者たち。

みんなエライ! 稲作農耕民族のDNAを受け継いでいる。 

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さすがにこれだけの人が総がかりでやれば、

13アールの田んぼも1時間ほどでやり切れる。

 

 ↓ 作業後の田んぼ。

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いや、スゴイ。 きれいになったでしょ。

 

そして職員を中心に、今回も田んぼの生き物調査をやってみる。

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ウ~ン。 イトミミズがまだ少ない。

まあいい。 こういう作業はコツコツと続けて、データを蓄積することで、

田んぼの世界が見えてくるのだ。

今年の結果は、次回に。

 

こちらは、調査のようだが、まあ 「探検」 ということにしておこう。 

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田んぼワールドというのは、懐が深いのであって、これくらいは許す。

僕が19年の経験で、秘かに立てている仮説がある。

 -「田んぼは、ヒトがたくさん入れば入るほど、イネの生育もよくなる」

この子たちは、遊んでいるようで、土中に酸素を供給してくれる

でっかい虫のような存在だ。

しかも、子どもたちの楽しい嬌声は、植物をも楽しくさせている。

この仮説はオカルトだろうか。

僕は、これこそ21世紀中に解き明かしてほしい、

生命進化の謎にアプローチする科学的テーマだと思っているだが。

 

夜は、昨年からチャレンジしている 「夜の自然観察会」 という名の、蛍見会。

自分は、道々の解説者として路地に立ったので、

今回も撮影はままならなかったけど、今年もホタルは僕らの前に姿を見せてくれた。

去年に比べてちょっと少なかったのは、春からの天候不順の影響だろうか。

その辺はよく分からないけど、

農薬で絶滅するのではないかといわれた

ホタルのかそけき光に感動する機会を用意できただけでも、

何かができた一日、ではあるだろう。

 



2008年6月14日

稲作体験2008-草取りⅠ編

 

千葉・山武での 「稲作体験2008」 シリーズ、今回は草取りの一回目。

集まってくれたのは100人くらいか。

どうも田植えより少なくなるが、まあ色々と事情も発生するのだということで、

深くは考えない。 集まってくれた方々に感謝する。

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田植えから4週間が経ち、稲は他の草どもとのたたかいの真っ只中に入っている。

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作業用に着替えて、畦に並んで、さあ、スタート! 人海戦術による草とりが始まる。

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昔ながらの田車を押すのは、さんぶ野菜ネットワークの下山久信さん。

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もうほとんど使われることもなくなったが、

這い蹲って草をとる側から見たら、充分にスグレモノである。

長い長い稲作の歴史の中で編み出された道具には、先人の知恵と工夫が凝縮されている。

普段は使わないくせに、何やら自慢げにデモンストレーションする下山氏であった。

 

頑張る男の子。

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こちらは虫取りに興じる子どもたち。 これはこれで貴重な経験だ。

記憶にしっかりと残して欲しい。

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コオイムシも帰ってきてくれた。

環境省のレッドリストでは 「準絶滅危惧種」 に指定されている。

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絶滅に向かわせているのは農薬である。

ひとつの種の絶滅は、生態系のバランスを保たせていたひとつの小さなブロックがなくなることを意味する。

これを文明の進化といってよいのだろうか。

 

オスの背中にメスが卵を産みつけ、オスがそれを必死で守っている。

孵化するまで2~3週間、飛ぶこともできず、ただ卵を守って逃げ回る。

なんといじらしき生命よ。 抱きしめたくなるね。

 

こちらは "生きた化石" と呼ばれるカブトエビ。 昨年から登場している。

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3億年前から姿を変えることなく、この地球に生きている。

大陸の乾燥地帯からやってきた進入種だが、日本では田んぼでしか見つかっていない。

土をかき回してくれるので、雑草の発芽を抑制する効果がある。

 

彼らの存在こそが、農薬を使わない田んぼの力を証明してくれている。

 

さて、紙マルチ区の様子。

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田植え直後の強風で、我らが体験田のマルチも剥がれたり、ずれたりした。

めくれて稲を覆っている場所などもあり、隙間を縫うように入って修復する。

 

米ヌカ区は、はたして・・・・・

何もしてない区とほとんど変わりない雑草の繁茂状態であった。

そこで再度、撒くことにした。

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結果は、来月に判明する。

 

作業終了後は、今や定番となってきた感のある

陶 (すえ) 武利さんによる 「田んぼの生き物講座」 。

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今回はマイクロスコープを持ち込んで、生物の拡大画像をお見せする。

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写真に写っているのは、これまた希少な植物となった、イチョウウキゴケ。

日本で唯一、水面に浮遊するコケ類で、環境の変化に弱い。

無農薬田んぼを象徴する生き物のひとつである。

 

こんなふうに、体験田で発見された色んな虫を拡大して、見る。

稲の葉を吸うドロオイムシ (正式名は 「イネクビホソハムシ」 ) の泥を払うと、

ちっちゃなカブトムシの幼虫のような虫の姿が登場する。 そう、カブトムシの仲間なのだ。

 

こいつの天敵は、クモである。

農薬をふると、クモもやられてしまう可能性がある。

したがって、ここは 「我慢」 とのたたかいとなる。

 

それにしても、子どもたちは何だ。 画像より道具の方が面白いようだった。

 

解散後、スタッフで、ある練習にトライする。

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何やってるかというと、田んぼの9ヵ所から土を取って、

それを洗って泥を落とし、

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白いバットに移して、手分けして虫の数を数える。

ポイントは、イトミミズである。

枯葉などを土と一緒に食べて、土を出す。

土をつくる生き物であり、かつ他の動物の餌ともなる。

田んぼの食物連鎖を支える " 神 " のような存在だ。

 

これまではたくさんの生き物の種を探して、リスト化してきた。

これらの生命のつながりに想像力を働かせるのは楽しい。

今年はさらに、これに科学的調査の手法を取り入れて、この田んぼの価値と意味を

より深く検証してみようというところまで進みだしている。

 

今回はまだ練習という気持ちでやってみたが、

これをデータとして蓄積していった先に、さて何が見えてくるだろうか。

 



2008年5月18日

稲作体験2008-田植え

 

ありきたりの、なんてことはない里の田園風景だが-

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ぼくはこの風景がとても好きで、美しいとさえ思っている。

何度眺めても、気持ちがいい。 19年変わらない佇まいである。

前にも言ったかしら。 この風景は、生き物で構成されている。

そして、荒れ地がない。

 

さて今日は、楽しい田植えの日。

天気もすっかり回復して、暑くなりそうな朝だ。

早苗も気持よさそうに待っている。 

手植え用に大きめに育てた苗。 というより苗をしっかりつくるのは、無農薬の最初の鍵である。

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田植えが楽しいのは、

ここから実りに向かってスタートするというワクワク感のようなものがあるからだろうか。

米づくり自体はすでに1ヶ月以上前から始まっているのだが、

改めてスタートラインに立った、新学期の初登校日の少年のような気分になる。

かたや稲刈りは、楽しいというより、喜びだね。


聞けば、早くに植えた田んぼは、初旬の低温で枯れたところもあるらしい。

北のほうだけでなく、関東も影響は受けていたのだ。

今日は、ちょうどよいタイミングになってくれた。

 

田植えの線引きをしてくれる綿貫直樹さん。 さんぶ野菜ネットワークのメンバー。

線引きは一昨年までお父さんの栄一さんがやってくれてたのだが、代替わりとなった。

でも線引きの道具はずっと受け継がれている。

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10時半。着替えもすませて、全員集合。

さんぶ野菜ネットワーク代表の雲地康夫さんや田んぼの持ち主・佐藤秀雄さんに挨拶いただき、

 

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植え方の手ほどきをして、

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(さりげなくお手本を見せる佐藤秀雄)

 

いざ、開始。

13アールの田んぼに150人。 作業はどんどん進む。 

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今回は200人を超す応募があって、「稲作体験」19年にして初めての抽選となった。

選に漏れてしまった方々には、本当に申し訳ありません。

もう一枚田んぼを増やすとかできればいいんですが、職員のボランティアでの運営では、

これが限界なんです。

 

これは紙マルチ試験区。

紙を敷きながら、指で穴を開けて植えていく。

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これで雑草が生えてくるのを物理的に抑える。

紙は2ヵ月もすればパルプに分解されて土になるという寸法。

まあここの場合は、試験というより、草取りの労力軽減の意味合いの方が強いのだが・・・

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無農薬での試験ということでは、もうひとつ区切りをして、田植え後に米ヌカを撒いた。

米ヌカから発生する乳酸などの有機酸で草の発芽を抑える、

という効果を期待して撒いているのだが、

量やタイミング、温度との関係など、メカニズムはけっこう微妙で、

過去3年、あまりうまくいった試しがない。

僕らは何年やっても、素人の耳学問の域を出ない。

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これが米ヌカ区。 その向こうが紙マルチ区。

 

楽しい作業というのは、なぜか早く終わる。

いや何たって150人だもんね。 一撃である。

 

終わった後の交流会風景。

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昨日の三番瀬での磯の生物観察会に続いて、陶 (すえ) センセー登場。

今日は、田んぼの生きものの話。

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アマガエルとシュレーゲルアオガエルの違いって、分かるかな?

 

地主・佐藤秀雄さんからは、田植えまでにやってきた作業の解説。

ここまでくるのにひと仕事もふた仕事もあったんです。

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私もちょっと、有機・無農薬での栽培技術について、偉そうに解説させていただく。

全国各地で有機稲作を実践する農民たちの手で、いろんな工夫や技術が編み出されてきている。

でも根本は-

生きものがたくさんいて、バランスよく (食ったり食われたりしながら) 共存する、

そんな田んぼをつくることが、実は有機稲作の根幹技術なのです。

ただ 「農薬を使わない」 ではなく、「農薬を不要とする」 田んぼ。

「害虫」 と呼ばれる虫も、そこでは天敵である益虫の餌として存在する 「大切な虫」 となる。

この世に無用な生命などないのです。

僕はいつも 「有機稲作は、世界に冠たる平和の思想と技術なんです」 と言うことにしている。

この思想と技術を、僕らはフツーにご飯を食べることによって支えている。

 

こどもって本当にカエルが好きだね。

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虫かごから出しては手に乗せ、また虫かごにしまい......

そして最後は田んぼに返してくれる。 また合えるからね。 みんなイイ子たちだ。

 

帰る前に、恒例となった感さえある、看板への記念の手形押し。 

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手にベットリと絵の具 (自然素材です) を塗って、ベタッと押す。

これがけっこう楽しいようなのだ。

 

掃除をして、最後に残った実行委員で一枚。

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実行委員はほかにも10人ばかりいて、

別なところで仕事をしてくれていたことを、彼らのために付記しておきます。 

土日返上でのボランティアに手を挙げてくれたみんな。 ありがとう。

今年もたのんます。

 



2007年9月12日

大地の稲作体験・稲刈り編 -収穫の歓び

 

台風報告のあとに心苦しいけど-

 

9月9日(日)

今年の 『大地を守る会の稲作体験2007』 も収穫を迎える。

暑さ寒さを乗り越えて、台風にも負けず、稔ってくれた田んぼ。

ちょっと色が濃いのが気になるところだが・・・

 

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実りの秋!到来。

というわけで、今回も120人を越す参加者が集まり、鎌を持っての稲刈りに、いざ!

 

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今回は能書きよりも、写真で雰囲気を楽しんでいただきましょうか。

 

まずは技術指導。さんぶ野菜ネットワークの綿貫直樹さん。

若手のなかの、理論家の一人である。

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作業はどんどん進む。

鎌を持っての手刈りだが、怪我人は出ない。

 

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体験田の地主であり師匠でもある佐藤秀雄さん。

密かに「さんぶのゴローちゃん」(TVドラマ「北の国から」の田中邦衛に似てる?)と呼ばれる。

バインダーを使っての稲刈りを実演してくれる。

 

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お父さんについて、子どもも頑張る。

 

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頑張る。

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「子どもが何だか成長してたくましくなったような気がする」
そんな感想が聞かれる。嬉しい瞬間である。

 

ぼくらの稲! イェーイ!

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どんな年でも、この田んぼは倒れたことがない。


93年の大冷害の年も、フツーに実った田んぼである。


今年も収穫、終了!

 

楽しいけど、意外とキツイのが稲刈りである。

ひと仕事終え、充実感あり。

カンパーイ!

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生き物ハカセ・陶(すえ)先生の、最後の「田んぼの生き物」授業。


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今年も新たに13種の生き物が確認され、リストに追加された。

その中には希少種・ヤマサナエも含まれる。

これで体験田で発見された生き物リストは133種となった。

生き物を育む田んぼの力を、感じてもらえただろうか。

 

今年は、田んぼの一角で古代米(赤米・黒米)も植えてみた。

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こちらも量は少ないけど、何とか収穫にこぎつける。

 

最後に全員で記念撮影。

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皆様、お疲れ様でした!

 

あとは脱穀-籾すり-精米-袋詰め、という作業を経て、参加者の元へお届け。


届いてからの感想が、実はけっこうドキドキなのである。


どうも僕らは、安全性や生き物の多様性という観点が強く、


味まで追求するプロの技術がまだない。これは認めざるを得ない。

 

ともあれ、今年もイベントとしては無事終了。

 

夜の生き物観察会(蛍見会)の実施や、

インターネットを使っての参加者間のコミュニティサイト(SNS)の試験など、

新しい試みにチャレンジしてくれた実行委員諸君。

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土日を返上してのボランティアの連続。お疲れ様。

だんだんオレの居場所(存在価値)がなくなりつつあるのが気になるところだけど、

来年もさらにレベルアップさせてくれたら、

苦節18年、この企画を続けてきた者として、こんな嬉しいことはないです。

目指せ20周年!かな。

 



2007年7月24日

田んぼの草取り&ホタル観察会

 

全国後継者会議で若者たちとシコタマ飲んで、帰ってきた翌日(21日)、

今度は千葉県は山武での「大地を守る会の稲作体験'07-第2回草取り」である。

かなりバテバテ。

で、ちょっと日も経ってしまったけど、外すわけにはいかないので、記しておきたい。

 

とにかく、ひどく草だらけの我らが体験田でありました。

コナギの天下のような田んぼ。オモダカは花を咲かせている。

先月の草取りは、かなりバッチリやったはずなのに...絶句状態。

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こんなにはびこられては、

私はとても庄内の佐藤秀雄の心境には立てない(7月2日の日記参照)。

これは取らねばならない。

参加者が多かったのが救い。

 

皆さん真剣に、最後まで草と格闘してくれ、

ちゃんと草取らないと、夕飯抜きだからね!」と、

伝統的手法で娘を叱る母もいたり(だいぶ疲れが出てきてたのでしょう)、

今はただ、'大地の会員はエライ!'という感想のみです。

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とにかく皆様、お疲れ様でございました。

 

しんどい作業のあとには、楽しい企画も-

ということで、若手スタッフたちが今日のために特別目玉企画を用意してくれた。

 

第二部-「夜の自然観察会」

みんな狙いどころを実に要領よく押えていて、ただ「蛍見会」と略して(?)呼んでいる。


作業のあと、生産者の話を聞きながら休憩をとり、

日が暮れ始めたあたりから第二部となる。

 

まずは、大地の会員で、専門委員会「米プロジェクト21」のメンバーでもある、

生き物博士・陶(すえ)武利さんの座学から-

テレビのモニターにいろんな虫や植物を映し出して、問題を出したり解説したり。

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ホタルの源氏と平家の違いは...、オスとメスの違いは...

フムフムなるほど、と私はただ感心するばかりだが、

子供たちの反応がすごい。よく手が上がる。するどい質問も飛ぶ。

陶さんはテキパキと答える。さすがだなあ...。

オタクもここまでくると、いや失礼、ハカセでした。

 

作業の疲れをしばし忘れ、感覚モードが虫や植物の世界にはまったところで、

6班に分かれて、順番に観察に出発する。

 

要所要所にスタッフが立ち、班がやって来るたびに、そこで見える植物のガイドをする。

解説のポイントは事前に陶さんからレクチャーを受けている。勉強になったね。

 

竹やぶを通れば、竹と笹の違いを解説し、

落花生の畑の前を通れば、夜になると葉っぱが閉じている姿を眺めてもらい、

ヤシの仲間のワジュロの木の前では、温暖化でこいつが静かに北上している話。

 

「これが烏瓜(からすうり)の花です。夏の夜に咲く花。夜ですので蛾が受粉役になります。

 この白いネットが雄花と雌花を結ぶ蛾の標識になります。秋には赤い実がなります。」

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そうこうしながら、夜の谷津田に入る。

静まりかえった森と森の間に田んぼが佇んでいる。

森と田んぼの間には沢が流れているが、それは見えない。

子どもが口を開くのを皆で制しながら、夜道を進む。

そして、眼を凝らしてみれば-

 

田んぼの向こう、その沢沿いに、やさしく点滅するホタルを一匹発見!

あ!いた。見えた!見えた!

あ!あそこにも!ここにも!

え!え!.........いっぱい、いるじゃん!

 

改めて視界を広く取れば、幕が開いたかのように、フワ~っと出現したいくつもの光。

田んぼにも、沢伝いにも、森の木の上にも。

止まって点滅する光もあれば、優雅に舞いながら流れる光も。

こういうのを幽玄の世界というのだろうか。

 

間隔を置いて歩いていたはずの班が、谷津田を見通せるところで団子になってる。

誰も進もうとしない。

ただただ感嘆の声を小さく上げながら、かそけき生命の輝きに見入っている。

この光景は、もはや僕には表現できない。

 

生まれて初めて見たホタル。子どもももちろん初めて。何だかとても幸せな気持ち。

そんな方がたくさんいた。

 

やってよかった。

若手職員の、夜なべしながらの準備も報われたね。

もちろん陶さんには感謝の一語に尽きる。

 

「こうしてホタルがたくさんいるのも、農薬の空中散布とかがないからです」

との補足は忘れない。

 

体験田の地主・佐藤秀雄さん(庄内の佐藤さんとは別人)も、それを受けて語る。

「この地域で空中散布を全~部やめてっからさぁ、ホタルが戻ってきたんだよぉ。

 最近すっごく増えてきたっけよー」

 

生き物のゆたかさ、生命の静かなにぎわい、これはゼッタイにモノに変えてはいけない。

このゆたかさの上に、私たちの暮らしをつなげておきたいよね。

 

今日の汗水たらしての草取りも一挙に報われたような気分になる。

ホタルも感謝して舞ってくれているよ

 --なんてことはないけど、とりあえずそう思っておきたい。

 

三脚も使って写してみたけど、ホタルは一枚もとらえられなかった。

こういう時は、やっぱ一眼レフかなあ。

え?腕? そうね。それもある。

しかし、残念。

ここに写真を貼れないのが、とても悔しい。

 

最後に-

大地を守る会の機関誌『だいちMAGAZINE』8月号にて、

この稲作体験という企画が18年も続いてきたことの意味合いなどについて、

私なりに整理してみました。

ホタルと稲作体験は実は深くつながっています。

読んでいただけると嬉しいです。

 



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