自然エネルギーの最近のブログ記事

2014年6月11日

進めよう! 地域がつくる自然エネルギー社会

 

6月に入って、少々気持ちの落ち着かない状態になってしまっているので、

前回のブログ以降の動きを手短に辿ることでお許し下さい。

 

「ご当地エネルギー協会」 設立で盛り上がった一週間後の

5月31日(土)、場所は同じ 「Daichi & keats」 にて、

「大地を守る会 自然エネルギー食堂」

なる企画が催されたので参加する。

主催したのは 「顔の見えるエネルギーコンペ事務局」 のスタッフたちで、

すでに 「大地を守る会の活動レポート ブログ大地を守る」 にて

レポートされているので、詳細はそちらに譲りたい。

 

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第一回のテーマは 「地域がつくる自然エネルギー社会」。

前半は、持続可能なエネルギー社会に向けて、

現在の流れや方向について学ぶ。

講師は、 NPO法人環境エネルギー政策研究所の古屋将太さん。

 

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後半は交流会。 

僕がこの会に出なければと思ったのは、二人の生産者に会うためだった。

大内督さん(下写真右) と近藤恵さん(同左) 。

昨年実施した 「顔の見えるエネルギー・コンペ」 で

最終選考まで残った

「二本松有機農業研究会」(福島県二本松市) のメンバーだ。

 

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支援先としては選ばれなかったのだけど、

提供した奨励金(50万円) をもとに、実に精力的に各地を視察し、

学んできた。

二人がいま考えているのは小水力発電なのだが、

水系利用となると地域の理解と協力が必須となる。

「なかなか道のりが遠くて・・・」

と大内さんは笑いながら語る。

そこで長野でのミニ水力発電の成功例を紹介し、

見に行ってみないかとお誘いした次第である。

 

二本松有機農業研究会自慢の有機人参ジュースが

ウェルカムドリンクとして配られ、

研究会の野菜を使ったオードブルやサラダ、玄米おにぎりなどを頂く。

二人はテーブルを回りながら参加者と語り合う。

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時間はかかっても、何とか形になるまで

二人を応援し続けたいと思う。

 

二日前の 5月29日には、喜多方で会津電力(株) による

雄国太陽光発電所の建設が始まった。

敷地面積 2万 6千 ㎡、太陽光パネル 3740枚、

最大出力 1000kW(1メガワット)、年間売上見込みは約 3400万円。

冬季の積雪対策のため地上約 2.5メートルの高さに設置する。

自然エネルギーの体験学習施設も併設予定である。

 

起工式の安全祈願祭で、

かま入れをする佐藤彌右衛門社長。

 

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(福島民報ニュースから)

 

続いて市長や議員さんたちによるくわ入れが行なわれ、

雪が降る前の10月末には、雄国山麓にメガ級の発電所が出現する。

後発隊のためにも成功させなければならない。

彌右衛門さんのほんとうの戦(いくさ) はこれからだ。

僕の 「種蒔人」 消費量も上がっていくばかりである。

 



2014年5月25日

人格権を保証するエネルギー革命を!

 

「 生存を基礎とする人格権は、

 すべての法分野において最高の価値を持つ。」

「 多数の人の生存に関わる権利と電気代の高い低いの問題とを並べた

 議論自体、法的に許されないと考える。」

 

関西電力大飯原発(3、4号機) の再稼動差し止め訴訟に対する

福井地裁による画期的判決の余韻冷めやらぬ二日後( 5月23日)、

東京・丸の内にある千葉商科大学丸の内サテライトキャンパス(Galleria商.東京) で、

「全国ご当地エネルギー協会」 の設立総会が開かれた。

 

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発起人幹事の飯田哲也さん(環境エネルギー政策研究所代表)

による開会挨拶に続いて議長選出があり、

定款・規約・役員構成の説明など、議題はすべて承認・決議された。 

 

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2014年 5月 23日、

「全国ご当地エネルギー協会」 は一般社団法人として正式に発足した。 

北海道から九州まで、9ブロックから地区幹事が選出され、

代表幹事には会津電力(株)代表・佐藤彌右衛門さんが担ぎ出された。

挨拶する彌右衛門さん。

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フクイチ原発事故の後、こらえきれない怒りを満身で発散させながら、

ここまで走ってきた。

「ホラが現実になったよ」 と本人は照れているが、

機運をつかみ、人をつなげ、形にしてきた。

内心はしてやったりと言ったところだろう。

市民サイドでの電事連の旗揚げだと一層気合も入る。

 

9地区の地区幹事を紹介する飯田哲也さん。

この中から 5人の副代表幹事が選ばれた。

なんと、すべて女性である。

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皆さん、3.11までは電力のことなどまったくのど素人で、

ゼロからの出発だったと口を揃える。

コミュニティ・パワーは女の力があって活性する。

いや、まったく。

 

ちなみに大地を守る会からは、

代表の藤田和芳が 「消費者幹事」 として選任された。

(で、仕事をさせられるのはワタクシ。。。)

 

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総会後、その場で行なわれた記者会見の様子。 

関心は自ずと今後の展開と、そして財政など運営体制に集まる。

 

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予定のプログラム終了後は、

我が 「Daichi & keats」 にて祝賀会。

しかもご当地の銘酒・名産品持ち寄りによるパーティとなる。

お店の定員をかなりオーバーした人数が集まって、

内心ヒヤヒヤしたが、まあ何とか収まった。

「過去最高の売上です!」 と店長からお礼を言われ、

ちょっといい気分になったりして。

 

設立を祝って、好きな飲み物で乾杯!

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並べられたご当地名産品の数々。 

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歌まで飛び出して、大いに盛り上がったのだった。 

 

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自然エネルギーの全国ネットワークが、ついにできた。

もちろん問題は山積だけど、

明らかに加速することは間違いない。

 

地域が主体となって組織され、

プロジェクトの意思決定もまたコミュニティを基盤に行なわれ、

便益は地域に分配される。

持続可能で自立した地域社会の実現に向けて、

相互支援と協働が、これから始まる。

 

昨年の9月、日本で唯一稼動していた大飯原発が定期検査に入って、

現在この国では原発からエネルギーは産み出されていない。

出されているのは汚染物質のみである。

国民はとても高い代償を払わされているし、

さらに長い年月払い続けなければならないというのに、

原発がないと電気代が上がるというのは、まったくのマヤカシでしかない。

彼らが恐れているのは、利益の分散化である。

いつまでも吸い上げ続けたいのだ。

 

人格権を保証するエネルギーはいま、

全国で見える形になって生み出されつつある。

これは革命である。

後戻りさせるわけにはいかない。

 

全国ご当地エネルギー協会の HP はこちらから。

 ⇒ http://communitypower.jp/

一人でも多くのご支援をお願いしたい。

 



2014年5月 6日

「全国ご当地エネルギー協会」 設立総会のご案内

 

皆さん GW は楽しまれたことでしょうか。

わたくしは、4月29日の夜に広島に入って、

30日から 5月1日と島根県邑南町を訪ね、帰ってきてから 1日おいて

5月3~5日は例年通り、

喜多方市山都の堰さらいボランティアに参加してきました。

ブヨに吸われた跡が激しく痒いです。

 

この二つの報告をする前に1件、案内を挟ませていただきます。

4月27日付本ブログで報告した 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)

設立総会の概要が決定しました。

ただしこれは 「総会」 ですので、

地域で自然エネルギーの取り組みを進めている団体で、

協会に加盟して他の地域と連携したい(その検討をしたい)

という団体の方が対象となりますので、趣旨ご理解ください。

 

【1】 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) 設立総会

日時 : 2014年 5月 23日(金) 15:30~16:20 (開場 15:10~)

場所 :千葉商科大学丸の内サテライトオフィス Galleria商.Tokyo

     東京都千代田区丸の内 3-1-1 国際ビル1階 (お堀側)

       http://www.cuc.ac.jp/access/

主催 : 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)発起人一同

     コミュニティパワー・イニシアチブ

プログラム : 発起人幹事・事務局から定款、活動計画等の提案

          設立総会決議

          代表幹事および各地区幹事からのメッセージ等

【2】 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) 設立記者会見

日時 : 2014年 5月 23日(金) 16:30~17:15

      - 引き続き同会場にて -

 

【3】設立記念パーティ

日時 : 2014年 5月 23日(金) 17:30~20:00

場所 : 農園カフェ&バル 「Daichi & keats」

     東京都千代田区丸の内1-4-1 丸の内永楽ビル地下1階 iiyo!! 横丁内

       http://www.daichi-keats.jp/access.html

会費 : 5000円(飲み放題)

 ※ 全国各地からの銘酒・名産品の持ち寄り歓迎。

   もちろん手ぶらの参加で OK です。

 ※ こちらは事前予約制です。

 

本総会に関するお問い合わせは

ISEP (認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所) まで。

TEL : 03-5942-8937  FAX : 03-5942-8938

URL : http://www.isep.or.jp

 

全国各地で自然エネルギーへの取り組みを進め、

それらが連携しあうことで、新しい国の形がつくられていくことを願って、

大地を守る会も応援していく所存です。

 



2014年4月27日

「全国ご当地エネルギー協会」 設立に向けて

 

昨日は 3つの集まりをハシゴした。

 

まずは日比谷図書文化館地下にあるレストラン

(ライブラリーダイニング日比谷) で開かれた

「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) 幹事会に出席。

いよいよ協会設立に向けての組織要綱の確認と、

活動計画についての協議である。

協会代表には会津電力(株)代表・佐藤弥右衛門さんが推挙され、

併せて設立発起人団体が協会幹事としてスライドすることも提案されて、

いずれも特に異論なく承認された。

 

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地区は北海道・東北・関東・北信越・東海・近畿・中国・四国・九州

と全国を網羅する形で区分けされ、

それぞれに幹事団体が選出された。

事務局は ISEP (NPO法人環境エネルギー政策研究所) が担い、

大地を守る会は社長の藤田和芳名で消費者幹事をお引き受けした。

 

設立総会は 5月 23日(金) に決定。

総会後には、ご当地名産品や地酒を持ち寄っての

設立パーティを開催することも、一同 「異議なし」。

 

年間活動計画については、以下が確認された。

1.情報共有・・・ 各組織の体制や事業内容、ファイナンス、自治体との関係や

  土地利用の手法などを共有データベース化し活用する。

2.政策研究と提言・・・ 「コミュニティパワーラボ」 を年間 6回程度開催し、

  新しい社会スキームの研究とともに政策提言へと結びつける。

3.人材育成・・・ 「エネルギーアカデミー」 を開催し、知識・情報の習得から

  実際に地域で取り組むための事業化を支援する。

4.広報・・・ WEBの構築とニュースレターの発行を通じ、会員間の情報交換や

  一般への情報発信を行なう。

5.ネットワーキング・・・ 各地区幹事団体が中心となって、

  地域でのワークショップを全国的に展開する。

6.原産地認証・・・ ご当地エネルギーの認証制度を構築し、

  モデル事業まで発展させる。

 

幹事会の途中から、上のコンベンションホールでは

「日本全国ご当地エネルギー市民ファンド勢揃い」

なるイベントが始まって、会議終了後は上に合流して、

金子勝慶應大学教授らとともにトークイベントを行なう、という流れ。

しかも終了後には、「ソーラー酒蔵とご当地名産を楽しむ会」 という

実に美味しそうな会まで用意されたのだが、

僕は幹事会終了とともに次の集まりに向かう。

 

エビちゃん氏が酒の席を断るとは実に珍しいことなのだが、

楽しみにしていた会のお誘いを先に受けてしまっていたので、

しょうがない。

昨年 9月に報告した、川里賢太郎くんが登場する映画 がついに完成し、

関係者による試写会をやるから来い、という招待である。

詩人・谷川俊太郎さんも来られるということだし、

これは外すワケにはいかないよね。

 

自分が出るわけでもないのに、ちょっとドキドキしながら

日比谷から京橋まで移動したのだった。

続く。

 



2014年3月17日

おひさまスパーリングで、乾杯!

 

15日(土)夕方、

丸の内永楽ビル - iiyo!(イーヨ!)横丁にある農園カフェ&バル

「Daichi & keats」(ダイチ・アンド・キーツ) に向かう。

目的は、大和川酒造店が造った発泡日本酒

「おひさまスパークリング」 の完成を祝う乾杯パーティ。

 

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昨年春に実施した 「顔の見えるエネルギーコンペ」。

大和川さんはコンペ受賞後、

直ちに酒造蔵の屋根に太陽光パネル設置にとりかかり、

そのエネルギーを活用して発泡日本酒を完成させた。

一刻も早く意思を形にしたいという熱意が、この手際に表れている。

この冬の間にも、ひとつのモデルを示したかったんだろう。

ちなみに、「おひさま~」 の命名は大地を守る会の若手女子である。

 

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まずは佐藤和典工場長(兼 杜氏) のご挨拶。

酒造りの工程、その大元となる米づくりでのこだわりが映像とともに紹介される。

そして少しずつでもエネルギーの自給を進めたいという願いが

輪になって広がっていって、

こんな画期的なお酒が生まれたことに感謝したいと


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「とにかく、乾杯しましょう! 味わってみてください。」 

待ってましたとばかりにグラスに注ぐ時の、皆の嬉しそうな顔。。。

では、カンパイ! 

(こっちも嬉しくなって、写真撮るの忘れた。)


会員からの支援をもとに 「大地を守る自然エネルギー推進基金」 が設置され、

若手スタッフたちの発案によってコンペが開催され、

3 団体の企画に資金が提供された。 大和川酒造さんには 245 万円。

太陽エネルギーの力を借りて実現した発泡性純米吟醸酒。

これからの発展をまた、飲んで応援する。

こんな酒は、本当に他にない。

 

醗酵途上で粗搾りして瓶詰め。

瓶内醗酵によって発生する炭酸ガスがそのまま閉じ込められる。

よって開栓時は要注意。

溢れ出さないよう、ゆっくりと、

緩めては閉じ、緩めては閉じ、しながら開けること。

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口の中でプチプチ、シュワシュワと広がる炭酸。

適度の甘さにしっかりとしたキレがあって、雑味がない。

「美味しい!」 「これは進むね~」 の声が弾む。 

新しいバージョンの常備酒として、イイ酒が誕生した。


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料理長の中嶋知行さんが紹介される。 実は福島県の出身。

福島の復興に、自分も料理人として役に立ちたいと、ずっと考えてきた。

こういう楽しい形でつながれることができて嬉しいです。。。

中嶋さんもけっこう熱い人だった。

 

中嶋料理長の力作。 

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おひさまスパークリング・ムース仕立て。

北海道産タコのカルパッチョ。

半熟卵の醤油麹漬け。

新玉ねぎのロースト ・・・

美味しい料理、ウマい酒、楽しい仲間。

これが基本のシアワセ 3重奏ってやつ。

 

参加予定だった佐藤弥右衛門社長は、

北海道での自然エネルギーの集会に呼ばれたとかで欠席となった。

会津電力構想ももう後に引けなくなって、 

「東京電力から福島を取り戻す!」 宣言が、どんどん動き始めた。

では、全国を奔走する弥右衛門さんにもエールを。 乾杯!


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あっという間の 2 時間。

ここでも締めを指名され、昨夜に続いて、何を喋ったか正確に思い出せない。

とにかく思いっきりこの酒の意義を語ろうとして、

まとめられなくなってしまって、

工場長に三本締めの音頭を取ってもらったのだった。


勢いでもう一軒ハシゴして帰り道、

ここに満天の星空があれば、、、と思ったのを覚えている。




2014年3月11日

3月11日、「全国ご当地エネルギー協会」(仮称)の設立!

 

今日は 3月 11日。

あれから 3 年の月日が流れた。

お前はいったいどれほどの仕事ができたのか。

お前は今、どこにいるんだ。。。

僕は今、福島県郡山市のホテルの一室で一人悶々としている。

自問自答しているうちに眠れなくなって。

 

今日はいろんな催しの案内を頂いていた。

それも記念行事のようなイベントではなくて、

シンポジウムとか放射能対策に関する大学の研究発表会とか。

自分の足取りが見てとれるようだ。


加えて、直前になって入ってきたのが、

「全国ご当地エネルギー協会(仮称) 発起人総会」 の呼びかけである。

東京集会のレポート で書いたあの流れで、

一気に全国組織の立ち上げとなった。

短期間で会場が設定され、「3.11 は参議院議員会館に参集せよ!」 との連絡。

大地を守る会も発起人に藤田和芳代表が名を連ねた関係で、

ISEP(環境エネルギー政策研究所) 代表の飯田哲也さんから、

誰か一人出せ、との指令である。

しかし藤田も戎谷も予定が入っていて、若手も含めて代打を出そうとしたが叶わず、

その旨伝えたところ、「では、メッセージで参加するように」。

そんなワケで、昨日急いでメッセージを書いて、託したのだった。

ちゃんと読んでもらえただろうか。



協会設立が無事承認されたなら、

立ち上げ宣言文を大和川酒造店代表・佐藤弥右衛門さんが読み上げたはず。

手元にその宣言文案がある。


  3.11 以降、日本全国で多くの自然エネルギー事業が立ち上がっています。

  しかし、その大半が地域外資本による 「植民地型開発」 であるほか、

  数少ない地域主体の事業の多くは、資金調達や人材確保、

  事業モデルの選択などに多くの課題を抱えているのが現状です。

  私たち 「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) は、

  これらの事業者や協議会、個人がつながり、情報共有や共通の課題の解決をとおして、

  地域主導型の自然エネルギー普及を加速させ、

  それを基盤とする持続可能な地域社会づくりを目指しています。


  私たちは、2014年 1月 31日から 2月 2日まで開催された

  「コミュニティパワー国際会議 2014 in 福島」 において、

  「福島コミュニティパワー宣言」 を採択し、

  そこで新しいネットワークを立ち上げることを約束いたしました。


  二度と東京電力福島第一原発事故のような破局的な事故や環境影響を起こさないため、

  将来世代にこれ以上の放射能汚染や気候変動への対処を負担させないため、

  今ここから歴史的な転換を実現するという思いをこめて、

  東日本大震災からちょうど 3 年目にあたる本日、

  「全国ご当地エネルギー協会」(仮称) を立ち上げることを

  発起人一同で宣言します。

 

遅まきながら、福島の片隅から賛同の拍手を送っておきたい。

宣言文にある コミュニティパワー国際会議 2014 in 福島」 では、

僕も一つのセッションにパネラーとして参加したのだが、

最後に採択された 「福島コミュニティパワー宣言」 は、

ぜひ多くの方に読んでもらいたいと思う。

文案を執筆したのは、民俗学者・赤坂憲雄さんである。


  巨大な原発事故が起きた。

  いま、怖るべきモラルハザードが始まっている。

  ・・・・・・・・・

  傷付き、足掻いている福島は、あくまで前向きにみずからの将来を創造してゆく、

  そのための始まりの土地になりたいと願う。

  ・・・・・・・・・

  再生可能エネルギーとは、風土とテクノロジーの結婚である。

  ・・・・・・・・・

  いま、ここから歴史を変える


会議最終日となった 2月 2日、「喜多方プラザ」 での様子。

外は雪でも、中は熱気にあふれていた。

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日は経ってしまったけど、

何とか記録としてアップしたいと思っている、のだが。。。


発起人総会をパスして福島に来ているにはワケがあって、

実は IFOAM(国際有機農業運動連盟) 理事長、アンドレ・ロイ氏の来日にあたり、

福島での放射能対策の先進地を視察したいとの希望が上がって、

須賀川・ジェイラップの案内役を引き受けてしまったのだった。

ロイ氏の行程の都合から、事もあろうに 3.11 しかないと。

今夜はとりあえず郡山に入り、

和食・懐石料理と温泉を堪能していただいた次第である。

ロイ様のジェイラップ訪問記は、明日。


3月11日。 

の日を、どれだけの日本人が、どんな思いで過ごしたのか、、、

南半球・オーストラリアからやって来た有機農業のリーダーに、

僕は何も伝えることができないでいる。




2013年7月10日

つながるコンペ

 

7月6日(土)、会津自然エネルギー機構シンポジウムと夜の親睦を終え、

翌7日は弥右衛門さんの案内で、

今が花盛りの 「大和川ファーム」 のソバ畑を見せていただく。

 

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喜多方市の東に位置する雄国(おぐに) 山麓で、

1970年から22年かけて開拓された国のパイロット事業が経営破たんし、

約 900ヘクタールの農地が宙に浮いた。

反骨の志士としては、相当腹に据えかねたのだろう。

弥右衛門さんは、子会社である農業生産法人 「大和川ファーム」 を使って

10ヘクタールの農地を買い取り、ソバを播いた。

 

標高 200~300m ほどの山麓に広がる一面のソバ畑。

会津盆地が眼下に一望できる。

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振り返れば、戦後の食糧難の克服と復員者の就労確保などを名目に、

「新農村建設」 を掲げて展開された戦後の開拓事業は、

その多くが破たんしたと言われている。

全国で約 45万ヘクタールが開墾され (山間の傾斜地が多い)、

約 21万戸が入植したとされているが、農業には適さなかった場所も多く、

たしか事業終了時には半分以上が離農していた、という結果だ。

残された土地は荒れ、

高度経済成長期にはゴルフ場や工業団地に変わっていった。

パイロット事業としては後発の雄国でも、

約 60ヘクタールが遊休地となって今も放置されていると聞く。

 

初めて案内してもらったのは15年くらい前だった。

以後、何度か来る度に、

弥右衛門さんから 「ここで大地を守る会の農場を開かないか」 と

真剣に誘われたのだったが、

「いや、主体は地元の人たちでなければ・・・」

とか言いながら曖昧に逃げた。

パイロット農場がうまくいかなかった理由のひとつは、

地域との折り合いをつけられなかったことではなかっただろうか。

農業をやるというのは、その地域で生きる(=死ぬ) ということだから、

軽々しく答えられるものではない。。。

 

ちなみに戦後開拓事業は、追っかけるように

農家の次三男の就農地確保 (人口増加対策) という意味合いも付加され、

国は 「世紀の大事業」 と謳われた八郎潟の干拓事業などに突っ走ることになる。

しかし夢の農村として誕生した大潟村も、

20年かけて工事が完了した時には、すでに減反政策の時代に入っていた。

この国は今では、戦後開拓どころか

明治維新以降に開田された田んぼをすべて失った計算になっている。

 

民からの国の立て直しを、もっとダイナミックに育てていきたいものだ。 

ソバの花に見とれながら、昨日の発言を反芻する。 

「だからこそ、僕らはつながらなければならない。」

 

大地を守る会が今回のシンポジウムのパネラーに呼ばれた意図も、

その一点にあったのだろう。

シンポで報告させていただいた

大地を守る会の  " 顔の見えるエネルギープラン・コンペ " 」 について、

最後に触れて、終わりにしたい。

 

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このコンペの趣旨と経過については、

すでに 大地を守る会の活動レポート でも報告されているのでそちらに譲りたい。

大地を守る会の生産者・メーカーに対して、

自然エネルギーへの取り組みを資金的に援助する仕組みを立ち上げたのが、

昨年の12月。

今年2月の 東京集会で説明会 を開催し、募集に入った。

締め切りまでに 19団体から 21件の応募企画が送られてきた。

一次審査を通過したのが 5団体。

二次審査として、その5団体によるプレゼンテーションが実施されたのが、5月19日(日)。

 

5団体による熱いたたかい、というほどの雰囲気でもなかったけれど、

プレゼンテーターはやはり緊張して臨んだことと思う。

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写真は、山口県上関町・祝島市場の山戸孝さん。

上関原発の建設に反対するだけでなく、

エネルギー完全自給の島を目指したいと熱く語る。

 

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二次審査に挑んだのは、他に以下の4団体。

〇 有限会社 アイ・ケイ・ビイ (神奈川県相模原市)

  『藤野電力 自然エネルギー充電ステーション事業』

〇 自然(じねん)耕房 株式会社 (群馬県前橋市)

  『循環再生、再利用、廃棄物ゼロへ』

〇 合資会社 大和川酒造店 (福島県喜多方市)

  『自然エネルギーでお米シャンパンづくり』

〇 二本松有機農業研究会 (福島県二本松市)

  『中規模エネルギー会社設立のための調査研究』

 

審査員は以下の方々。

・ 加藤秀生さん (株式会社自然エネルギー市民ファンド 取締役)

・ 広石拓司さん (株式会社エンパブリック 代表取締役)

・ 松尾寿裕さん (全国小水力利用推進協議会 理事)

・ 三澤 海 さん (株式会社大地を守る会 CSR運営委員)

・ 藤田和芳 (株式会社大地を守る会 代表取締役)

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最終的に助成を獲得したのは3団体だったが、

惜しくも選考から外れた2団体にも奨励金が授与された。

 

受賞3団体のプレゼンテーター。

写真左から、アイ・ケイ・ビイの池辺潤一さん、大和川酒造店の工藤清敏さん、

祝島市場の山戸孝さん。

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ただし、会津のシンポで僕が伝えたことは、

「大和川酒造さん、おめでとうございます。頑張ってください」 では、もつろんない。

このコンペによって、5団体の人たちがつながったことだ。

控え室で、あるいは終了後の懇親会で、

たとえば福島県二本松と山口県上関町の次世代リーダーが語り合い、

意気投合し、アイディアを出し合い、互いにエネルギーを増幅させた。

 

1票の種を播き始めた者、草取りに精出している者、

何度もの収穫を繰り返しながら今も試行錯誤している者、

それぞれが 「一人じゃない」 ことを実感したのではないだろうか。

 

個々の取り組みへの支援以上に、

人と人がつながるコンペを実施できたことを、

誇りとして語らせていただいたのだった。

 

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自然エネルギーを推進するために寄せられた基金をどう役立てるか、

若手職員に預けたところ、アイディアがまとまらず、

到達したのがコンペ方式だった。

結果的に人がつながり、勇気と希望が伝播した。

このエネルギーは、残念ながら一次選考で消えた14団体にも

伝えていかなければならないね。

 

自慢の故郷を蹂躙された怒りをぶつけるかのように、

開墾し直し、ソバの種を播きまくった佐藤弥右衛門。

花はしっかり咲いているよ。

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畑を去る前に、記念撮影。

左から、

赤坂憲雄さん、佐藤弥右衛門さん、志澤昌彦さん、末吉竹二郎さん。

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志がつながれば、1+1 は 2 ではなくなる。

だからこそ、一票もまた大切なのだ。

 

POWER TO THE PEOPLE

POWER TO THE PEOPLE

POWER TO THE PEOPLE

POWER TO THE PEOPLE,RIGHT ON!

民衆にパワー(エネルギー) を、今すぐに!

 



2013年7月 8日

立ち上がる 「会津電力」

 

会津自然エネルギー機構シンポジウム。

第2部は座談会 -「地域主体の再生可能エネルギー事業の実現」。

 

「世界の潮流は、原子力からの撤退と自然エネルギーの急激な増加である。

 構造変化 × 加速度的変化が相乗的に進んでいる。

 しかし日本では逆向きの政治になってしまっている。

 このままでは日本は完全に取り残される。」

飯田哲也さんがハッパをかければ、

金融アナリスト末吉さんが落ち着いた口調で語る。

 

  先般、世界の投資家が香港に集った。

  話し合われたことは、お金(のため) だけで投資を考えない、ということだった。

  環境に配慮された事業に投資する方向へと世界は動いている。

  キーワードは、「ESGへの投資」。

  Eは Environment (環境)、Sは Society (社会)、Gは Governance (企業統治)。 

  ESG 要因を投資プロセスに組み込む。 

  EU ではすでに半分は ESG に配慮した企業に投資されるまでになってきているが、

  日本では 1 %以下である。

  アジア全体ですら 3 %に達しているというのに。

  アベノミクスには、将来の姿が見えない。

  20世紀型の  " 経済の成長 "  だけで中身がない。

  このままでは日本は前進できない。 国際競争にも勝てないだろう。

 

世界的金融アナリストの発言だけに、重いものを感じさせる。

まったく、廃炉への道筋も廃棄物の行方も見えないまま、

とにかく赤字脱却こそ最優先とばかりに原発再稼動に突き進む国だからね。

復興増税を電力会社に回したかと思えば、

除染予算は住民の意向より東電の顔色をうかがって溜め込んでいる。

ガバナンスは国家から崩れていってるようじゃないか。

このまんまにしてイイのか、若者たちよ。

ツケはどんどん君たちに回されているぞ。 

 


末吉さんは、5月に設立されたばかりの

一般社団法人 グリーンファイナンス推進機構」 の理事長に就任された。

金融が健全な社会づくりの推進力となるために、

末吉さんが挙げる 21世紀の金融行動原則がある。

ひとつは、地域の本当の問題解決を図る、その意思をもった企業であるか。

もうひとつは、社会の進むべき方向に沿っているか、正しい軌道に乗っているか。

新しい社会的事業は最初は反対されるものだが、

むしろ少数派だからこそやる意味がある。

転機はたった一票の差によって訪れる。

流れがクロスし、51 対 49 となった時に、決定的な転換が起きるのだ。

 

金融の世界からこういうメッセージが聞けること自体、

時代が変化を必要としているということなのだろう。

僕が言えたことは、わずかな補足程度だった。

この国のまやかし、カラクリを解体させ、地域の主体性や自治を取り戻すための

突破口のひとつが  " エネルギー "  であること。

底辺から、現場から、国づくりを再編させていく作業は、

新たな雇用あるいは仕事の代替案を創り出すものであるべきこと。

したがってそれは、楽しくなければならないこと。 

末吉さんが示した数字に重ねて言うなら、

今はまだ 51票には遠く 30票くらいかしら、とか思ったなら間違いである。

僕の感覚では、それはすでに 60票を超えている。

ただそれぞれがまだ、種であったり早苗であったり穂孕み期だったり、なのだ。

だからこそ、僕らはつながらなければならない。

そこで大地を守る会で実施した 「顔の見えるエネルギープラン・コンペ」

の紹介をさせていただいた。

若い職員たちが出してくれたアイディアである。

その話は最後に触れたい。

 

パネラーや会場とのキャッチボールを経て、

「会津電力 株式会社」 発起人たちが壇上に立つ。

ついに彌右衛門さんのホラがリアリティを持って迫ってきた。

 

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  私たちは様々な議論を重ね、会津地方から、

  原子力に依存せずに再生可能エネルギーの利用を事業の中心とした

  会津電力株式会社を設立することといたしました。

  この会社は一部の投資家のためのものではありません。

  エネルギーの在り方を考えて次世代に引き渡すために、

  個人や企業、組織の方々に呼びかけて、資本参加をいただきます。

  この会社の基本になる理念と運動は会津自然エネルギー機構が受け持ち、

  具体的な事業は小水力や太陽光発電など

  再生可能エネルギーによる発電事業が大きな柱となります。

  8月の設立に向けて有志により準備会を立ち上げました。

  発起人として参加いただき、

  また善意の出資としても、また地域の自立に向けた未来への投資として

  ご出資いただければ幸いです。

                          -設立発起人代表 佐藤彌右衛門

 

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「顧問」 としての参加予定者に、

飯田さんや末吉さんとともに金子勝さん、坂本龍一さんといった名前があり、

藤田和芳(大地を守る会代表) も入っている。

「本人と確認した?」

「いや、まだ。 エビちゃんから言っといて。 よろしく。」

社長というのは、どうもヤな共通項があるね。

 

会津が変わらなければ、日本は変わらない。

福島が苦しむ姿しか子供たちに見せられなかったら、

福島に生きる者として恥ずかしい。

 ・・・ 熱い思いが語られる。

 

変化への、リアリティのある一歩を見せましょう。

応援します。

発起人、パネラーで記念撮影。

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彌右衛門 (「彌」 という字が正しい) さんと飯田さんの顔は大きい

と密かに思っていたけど、やっぱ大きい。

そして今回、飯田哲也氏はラーメンが好き、というのも発見した。

 

二次会は、大和川酒造・北方風土館の2階バルコニーにて。

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さらにギョウザ屋さんにて三次会。

未来に向けての話は尽きない。 

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続く。

本編あと一回、おまけを。

 



2013年7月 7日

地域の自立と再生可能エネルギー

 

6月の24日だったか25日だったか、

大和川酒造・佐藤弥右衛門(やえもん) 代表から電話があって、

急きょ 会津自然エネルギー機構 主催のシンポジウムを開くことになったのだが、

ついては藤田社長にパネラーをお願いできないか、

との依頼である。

日程を聞けば、7月6日(土)。 なんと 2週間後ではないか。

「藤田さんが駄目だったら、エビちゃんでもいいよ。」

「でもいい」・・・かよ。

 

この嫌な予感はほぼ当たるだろうと思いながら、藤田に連絡する。

「もう予定が入っていて × 。 お前が代わりに行け。 以上。」

「断れ」 ではなくて 「行け」 という指示。

やっぱりね・・・

 

オレだってヒマじゃない。

7日は朝から 「稲作体験」 の草取りの日だ。

しかし抵抗の余地はない。

実行委員に頭を下げ、稲作のほうはパスさせていただく。

「(いなくても) 大丈夫で~す。 頑張ってきてくださ~い」

若手職員の台詞が力強くもあり、寂しくもあり・・・。

 

というわけで昨日(6日) は、予定を変えて喜多方に向かう。

「会津は、この手で守る!」

  - 八重に同化しちゃったオヤジたちで溢れる、いま日本で一番熱い国・会津へ。

 

シンポジウムのタイトルは

「地域の自立と再生可能エネルギー」。

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コーディネーターは、福島県立博物館館長の赤坂憲雄さん。

学習院大学教授で、「ふくしま」会議代表も務める方。

パネリストには、環境エネルギー政策研究所代表の飯田哲也さん、

国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEPFI) の

スペシャル・アドバイザー(特別顧問) 末吉竹二郎さん、

小田原で全国初といわれる、官民協働によって設立された

市民参加型エネルギー事業会社 「ほうとくエネルギー株式会社」 の志澤昌彦さん、

という錚々たる面々。

ちなみに 「ほうとく」 とは、

小田原が生んだ偉人・二宮尊徳の教えである 「報徳思想」 からきている。

「道徳なき経済は犯罪である。」

聞かせてやりたいね、どこかの国の電力会社に。

 


まず、 「一般社団法人 会津自然エネルギー機構」 の

新たな代表理事になった五十嵐乃里枝さんからの挨拶。

 

「 東日本大震災と東京電力福島第1原発の事故から 2年4ヶ月。

 地震と津波の甚大な被害から立ち直りつつある地域もありますが、

 福島県では依然として原発事故と放射能汚染の影響を受けています。

 3.11以降、多くの人が、もうこれ以上原子力発電に依存する社会はやめよう、

 と思い至りました。

 人類がコントロールすることができない危ういエネルギーの代わりに、

 身近で再生可能な自然エネルギーによる社会の構築を、この会津からはじめよう、

 という合意のもとに 「会津自然エネルギー機構 AiNEF」 は設立されました。

 

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 私たちが目指すのは、たんに電力を原子力から自然エネルギー発電に変える

 ということではありません。

 これまで原子力に依存してきたグローバル経済的な、

 搾取し搾取されるようなエネルギーのあり方を問い直し、

 エネルギーを自分たちの手に取り戻すことによって

 地域が自立していく仕組みづくりを始めようとしています。

 会津にある山と水という豊かな自然の恵みを循環させることによって

 エネルギーを手に入れ、

 地域が潤う経済活動につなげていく 「エネルギー自治」 を、

 ここ自由民権運動発祥の地・会津から始めようということです。

 

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 原発事故によって傷つけられた福島という地が再生するということは、

 傷をなかったことにするのではなく、

 また傷に絶望することでもなく、傷に正面から向き合って

 乗り越えていくことに他なりません。

 AiNEF は、エネルギー自治に向けた活動を、皆さんと共に進めていきたい。

 次代を生きる子供たちに、社会は自分たちの手で変えることができる

 という実感とともにこの地域を手渡していくことが、

 いま福島に生きる私たち大人の責務なのではないでしょうか。」

 

力強い挨拶の後、

第1部は映画 『 パワー・トゥ・ザ・ピープル  ~グローバルからローカルへ~

の上映会。

ジョン・レノンのメッセージ、 " Power To The People "  が蘇る。

1971年、レコード発売時の邦訳タイトルは  " 人々に勇気を!"  だった。

 

10年かけて自然エネルギーによる100%の電力自給を果たした

デンマークのサムソ島。

そこでは電力だけでなく、住民がお金を出し合う基金によって助け合う

新たな保険制度までつくられている。

地域でエネルギーもお金も循環する、顔の見える 「小さな社会」。

人々が活き活きと暮らす新しい経済システムへの移行、

自立型の社会建設が、いま世界のあちこちで始まっている。

勇気を持って、未来を選び取りたい。

 

すみません。 続きは明日。

曇り空の会津から帰ってくれば、東京の蒸し暑いこと。

こりゃ今日の草取り部隊はバテたに違いない。

オジサン、もしかしてラッキーだったかも。。。

 



2013年4月 7日

フラーの言葉

 

前回の日記で、

" 「子どもたちの姿は、私の未来」-そんな台詞を残したのは ~ "

とテキトーな記憶で書いたのが気になって、確かめたくなった。

記憶の原文は、こうだった。

バックミンスター・フラー著、芹沢高志訳、

『宇宙船地球号 操縦マニュアル』(ちくま学芸文庫、2000年10月発行) から。

 

  太陽から貯めるのに何十億年もかかった化石燃料を燃やして、

  そのエネルギー貯金だけに頼って生きるのか、

  あるいは地球の原子を燃やして私たちの資本を食いつぶして生きるのか、

  どちらにしても、それでは後の世代の人間たち、そして彼らの前に広がる日々に対して、

  まったく無知、そして完全に無責任というものだ。

  私たちの子供たち、そして彼らの子供たちが、私たちの未来なのだ。

  全生命を永遠に支えることができる私たちの潜在的な能力を包括的に理解して、

  花開かさなければ、私たちは宇宙のなかで破産する。

 

数年ぶりにパラパラと読み返してみて、

工学者としての理系の解説は相変わらず難しいままだが、

たくさんの啓示的な言葉に再会する。

 


  おとなになるにしたがって生まれてくる偏狭さとは反対に、

  自分たちが抱えているできるだけ多くの問題に対して、

  できるかぎりの 長距離思考 をつかってぶつかっていくということに、

  私はできれば 「子供じみた」 最善を尽くしたい。

 

  絶滅は過度の専門分化の結果である

 

  進化は、無数の革命的な出来事からなる。

 

  宇宙船地球号はあまりにも見事にデザインされた発明なので、

  知られている限りで200万年はこの船の上にいるというのに、

  私たち人類は船に乗っていることに気づきさえしなかった。

 

  宇宙船地球号に関してはとりわけ重要なことがある。

  それは取扱説明書がついていないということだ。

 

  私が描く今日の人類の姿とは、まさに一秒前に殻を破って、

  外に歩みはじめたというところ。

  無知や試行錯誤を許してくれた栄養もすでに尽き果てた。

  私たちは宇宙とのまったく新しい関係に直面している。

  知性の翼を広げて、飛び立っていかねばならず、

  さもなければ死んでしまう。

 

  私たちは 「どれだけ大きく考えられるか」 と問うべきだ。

 

  宇宙はシナジェティックだ。 生命はシナジェティックだ。

 

  即刻解決しなければならないそのような問題の典型は

  一般的な意味での汚染であり、

  つまり空気とか水の汚染だけでなく、

  私たちの頭のなかにたまった情報の汚染をも含めた汚染なのだ。

  これでは冥王星(プルート) じゃないが、

  この惑星を 「汚染(ポリュート)号」 と名付けなおす日も近い。

 

  マクロには包括的に、ミクロには先鋭的に、

  その解決を図っていけば、そんなに費用がかかるものではない。

 

  人間は富とはなんであるのかわかっちゃいない

 

  富とは未来に向かってエネルギーの再生がうまくいくようにする私たちの能力

 

  私たちのメイン・エンジン、つまり生命の再生プロセスは、

  風や潮汐や水の力、さらには直接太陽からやってくる放射エネルギーを通して、

  日々膨大に得られるエネルギー収入のみで動かねばならない。

 

まだあるけど、これくらいで。

「現代のレオナルド・ダ・ヴィンチ」 といわれ、ノーベル平和賞候補にも挙がった

フラーは、19世紀末に生まれ、1983年に亡くなっている。

彼が初めて 「宇宙船地球号」 と呼んだのは 1951年 のことだ。

「原子力発電なんて馬鹿げている」 と見抜いていた稀代の発明家。

3年後のチェルノブィリ原発事故を目にしていたなら、

彼の 「地球号」 メッセージと予言は、どんな怒りに変わっただろうか。

あるいは悲哀に満ち満ちたものになるか。。。

あれから四半世紀が過ぎてなお、惨劇は繰り返され、

僕らはまだ翼を広げて飛び立てないでいる。

 

外は強風が荒れ狂っている。

どうやったら飛べるのだろう、僕たちは。

書を捨て、この風に叩かれてみるか。

 



2013年2月22日

「会津自然エネルギー機構」 設立!

 

「SEED FREEDOM」 ~ " 種子を守り抜こう "  と

バンダナ・シバ博士の講演を聞いて、記念写真の光栄に浸っている頃、

会津若松では、「一般社団法人 会津自然エネルギー機構」 の

設立記念講演会が開かれていた。

会場となった 「会津稽古堂」 には人があふれたようである。

同機構の代表に就任した大和川酒造9代目・佐藤弥右衛門さんが facebook で

その模様を報告されているので、ぜひ覗いてみてほしい。

http://www.facebook.com/yauemon

 

思いから始まり、ハッタリもかましながら人をつなげ、

形にしてきた弥右衛門さんの力技には、感服するしかない。

これからいろんな難問や高い壁がいくつも立ちはだかってくることだろう。

頑張ってほしい。

大和川交流会で、弥右衛門さんから

「エビちゃん。 自然エネルギー機構東京支店、よろしく!」

と言われ、やや腰を引きながら

「は。。。 ま、出来る範囲で~」 とヤな返事をしている自分が恥ずかしい。

せめて 「出来ることはすべて~」 だろう。

これはゼッタイに結果を出さなければならない挑戦なのだから。

 

さて今日は、農林水産省の 「地域食文化活性化マニュアル検討会」 の

最終回に臨んだ。

最終回と言っても、まだ仮称 「マニュアル」 は完成していない。

仕上げまであと少し。

この報告は、またのちほど。

 



2013年2月13日

再生は、自立と自給から!-「種蒔人」で連帯する

 

第17回 大和川酒造交流会、後編。

 

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夕方からの懇親会は、

昔の蔵を見学・イベント用に改造した 「北方風土館」 に移動し、

その中にある 「昭和蔵」 にて開催。

1990 (平成2) 年に現在の 「飯豊蔵」 ができるまでは、

ここに樽が所狭しと並べられ、昔ながらの酒造りが営まれていた。

漆喰が塗り直され、温度湿度の調節だけでなく音響効果も良いため、

今ではコンサートなどにも利用されている。

 

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歓迎の挨拶は、大和川酒造店9代目代表社員、佐藤弥右衛門(やえもん) さん。 

 会津電力構想 の話をお伝えしたのは12月だったが、

2ヶ月を経て、「社団法人 会津自然エネルギー機構」 を設立させるまでに至った。

酒蔵の親分というよりは、ここまでくると

会津の自立に賭ける  " 志士 "  の趣である。

 

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 「 これまでの会津は、まるで東京の植民地だった。

  しかしここ会津は、食料自給率 1,000% はあるであろう豊かな地である。

  東京にモノを送るばかりの時代から、自立を目指す時が来た。

  足元を見れば、エネルギー資源は満ち満ちている。

 

  福島県(議会) は脱原発を選択した。

  「 原子力に依存しない安全で持続的に発展可能な社会づくりを目指し、

  新しい福島を創る」 と謳った以上、私たちが果たす責任は重い。

  少なくとも10年以内に、県内のエネルギーを再生可能エネルギーで供給する

  体制を創りあげたい。

  会津の持つ水資源、地熱、太陽光、森林資源、風力や雪の利用研究を促進し、

  投資を行ない、地域に安全で安価なエネルギーを供給することで

  地場産業の活性化や産業の振興に寄与したい。

 

  16万人の 「原発難民」 を生んだ福島に、原発との共存はあり得ない。

  東電と福島県の 「契約」 は破綻した。

  東京電力さんには撤退していただくしかない。

  猪苗代湖を東京電力から取り戻してみせよう。

  会津の自立と独立の精神を持って

  「一般社団法人会津自然エネルギー機構」 を設立し、

  会津から福島、そしてこの国の再生に臨む。」

 

2月20日には、記者会見と設立記念講演会を開催する段取りになっている。

ゲストには、末吉竹二郎氏 (国連環境計画・金融イニシアチブ特別顧問)、

赤坂憲雄氏 (福島県立博物館長、学習院大学教授)、

飯田哲也氏 (NPO環境エネルギー政策研究所所長) が名を連ねている。

この方々には顧問に就任してもらう策略である。

 

清酒 「種蒔人」 の原料米生産者である、稲田稲作研究会から

代表して伊藤俊彦さんが挨拶に立つ。

こちらは福島県の中通り、須賀川の地で

やはりエネルギー自給構想を練っているところだ。

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昨年10月に開催した 自然エネルギーの生産者会議 に参加した伊藤さんは、

その後改めて仲間を連れて、那須野ヶ原土地改良区の視察に行っている。

やるしかない、前に進むしかない、その思いは弥右衛門さんにも負けてない。

 

「種蒔人」 は人と人、人と環境をつなげ、「前 (未来)」 へと進む。

蒔かれた種が芽を出し、花を咲かせて、実を結ぶまで、

僕らも一緒に歩み続けなければならない。

 

今年は、喜多方で会津料理づくしの店を営む 「田舎屋」 さんが

出張って来てくれて、絶品の料理が並べられた。 

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そして新酒 「種蒔人」。 

 

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" この世の天国 "  の役者が揃ったところで、乾杯! 

 

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あとはもう、写真など撮っている場合ではなく、

飲み、食べ、語りあい、、、 

良い酒と良い食は、人を良くつなげる。 

イイ仲間との語らいは、明日の活力を生む。

「種蒔人」 はつねに人の和を醸す酒でありたい。 

 

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最後は熱塩温泉 -「山形屋」 で仕上げ。

極楽。

 

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この国の再生を、福島から。

みんなが立つなら、「種蒔人」 も、連帯に迷いはない。

 



2012年12月 7日

「会津電力」 で 独立運動!

 

「 脱原発ができるできないと、国は右往左往しているが、

 福島にはそんな暇はない」

こんな書き出しの新聞記事が目に飛び込んできた。

『 自然エネで  " 独立運動 "  』 と、過激な見出しが躍っている。

 

12月3日付・東京新聞、「こちら特報部」。

コメントの主は、大地を守る会オリジナル日本酒 「種蒔人」(たねまきびと) の蔵元、

「大和川酒造店」 9代目・佐藤弥右衛門(やえもん) さんである。

2面にわたって掲載されている。

 

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弥右衛門さんは近隣の仲間とともに研究会を結成し、

11月、エネルギーの地産地消を目指す 「会津電力」 構想をぶち上げた。

「独立運動さながらの熱意で全会津の結集を呼び掛ける」 と、

記者までがアドレナリンを噴出させているかのような書きっぷりだ。

 


弥右衛門さんは、すでに7月18日、

全国新酒鑑評会での金賞受賞を祝って池袋で開催された

郷酒(さとざけ) を楽しむ会」 の席でも、

「福島はエネルギー自給を達成してみせる!」 と気炎を上げていた。

その構想がいよいよ動き出したわけだ。

 

「 小水力でも太陽光でも、できるところから始めたい。

 いずれ東京電力が持っている猪苗代湖などの水利権も買い戻す」

と鼻息が荒い。

この決意の裏には、つねに東京に収奪されてきた歴史への反骨がある。

原発事故は、その会津DNAにさらに火を付けた。

「 福島の土地を汚した東電は責任を取ってもらなきゃならないが、

 われわれも会津の歴史や自然を次代に伝える責任がある。

 どんなに困難であっても自然エネルギーに転換するしかない。」

「 自分たちの電力は自分たちでつくってこそ、地方は自立できる。」

 

県も 「2040年には県内需要の100%を自然エネルギーで賄う」

という目標を掲げている。

洋上風力発電、温泉熱を利用した地熱発電、間伐材を使ってのバイオマス発電

などのプロジェクトも県内各地でスタートしている。

会津は何と言っても  " 森と水 "  であろう。

震災直後から一升瓶に水を詰めて飯館村や相馬に走った弥右衛門さんの、

これは人生を賭したたたかいになるのだろうか。

 

福島・中通りの須賀川では、ジェイラップ・伊藤俊彦が具体化に向けて動いている。

県内各地で狼煙(のろし) が上がっている。

具体的なアドバイスで奔走してくれているのは、

環境エネルギー政策研究所(飯田哲也代表) の研究員、浦井彰さんである。

 

血が騒ぐ。

「種蒔人」 を注ぐ手にも、つい力が入る。。。

 

さてそこで、

日頃より 「種蒔人」 をご愛飲いただいております会員の皆様。

来年の 「大和川酒造交流会」 は、例年にも増して熱い夜になることでしょう。

日程は2月9日(土)、宿はいつもの通り熱塩温泉(10日朝解散)。

この日に搾りを合わせて、これから醸造に入ります。

原料米生産者(稲田稲作研究会) ともども新酒完成を祝い、

未来を語り合いたく思います。

どうぞ奮ってご参集くださいますよう、お願い申し上げます。

( 会員の方には、年明け配布の 「NEWS大地を守る」1月号で募集します。

 非会員の方は、本ブログのコメントをご利用ください。

 その場合、アドレスをお忘れなく。 このコメントはアップされません。)

 

みんなで飲んで、飲んで、

飲むたびにチビチビと貯めてきた 「種蒔人基金」 も

今こそ活用の時が来たのかもしれない。

しかし・・・ もっと飲んでおけばよかった。。。

 



2012年11月10日

「米と電気は自分で創りたい!」

 

小林教授による小水力発電の基礎講座を受けた次は、

現場で様々な困難とたたかってきた方のお話し。

那須野ヶ原土地改良区連合 (別称 「水土里ネット 那須野ヶ原」)

参事、星野恵美子さん。

 

土地改良区というのは、農地のほ場整備を実施したり、

ため池や水路など農業用水利設備の維持管理を行なう組合で、

地区内の農家や水利の利用者が組合員となって運営されている。

10年前に 「水土里(みどり) ネット」 という愛称が付された。

 

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土地改良区の目的の根本は、農業生産の基盤整備によって生産力の向上

=農家の経営安定に、つまりは農業の発展に貢献することにある。

しかし米価を始め農産物価格が低迷し、生産力が衰えていく中で、

土地改良区としてもただ漫然と水利の管理等をやっているだけでなく、

もっと農家のためにやることがあるのではないか、と星野さんは考えてきた。

そこで様々な取り組みを提唱し、実践されてきたのだが、

「すべてことごとく  " 抵抗勢力 "  とのたかいでしたね」 と言い放つ。

 

抵抗勢力と言っても外部のことではない。

組合であったり、上司であったり、行政であったり、

要するに身内の事なかれ主義とのたたかいである。

「余計なことをするな」 「赤字になったらどうする」・・・

「ハンコは押すが、くれぐれも問題を起こさないように」 と市長に念を押されたり、

「何かあったらあんたが責任を取れ」 と言われて、

どう責任取っていいか分からないまま 「ハイ、分かりました」 と答えながら、

ゼッタイに成功させてみせるという覚悟と根性で乗り切ってきた。

 

いや実に迫力の方である。

笑顔の奥からもドスの利いた圧力が感じられる。

どうも最近、行く先々でスーパー・ウーマンに遭遇しているような気がする。。。

しかも女性から  " 覚悟 "  とか  " 根性 "  とかの台詞を連発されると、

「お前はいったい何をしているのだ、この根性なし!」

と叱られているような気になってくる。。。

 

ま、そんな軟弱男のコンプレックスはともかくとして、

ここは日本の三大疎水の一つと言われる那須疎水の地。

かつて水の確保もままならなかった瓦礫の原野で、

明治から1世紀にわたる先人の苦労によって

那須野ヶ原用水が築かれ、豊かな農村地帯になった。

「水を求め、水を大切にする」

- その精神と歴史的背景を継承し、水や環境保全に対する意識を啓発し、

農村と都市・人間と自然の共生を図り、

自分たちの手でこの地域の未来を創っていこう。

そんな理念のもと、星野さんのたたかいは実に多岐にわたるのである。

 


那須野ヶ原の家畜糞尿や生ゴミ・木質によるバイオマスエネルギーの実証実験。

太陽光エネルギーにより水素を製造し、燃料電池で発電を行なう実験。

森林保全を目的としての森林資源調査や、

機械による生産性向上を探るモデル間伐の実施。

間伐親子体験イベントなどによる環境教育。

「水は森からのおくりもの」 といったパンフレット作成など様々な広報活動。

田んぼの学校、総合学習プログラムづくり・・・等など。

そして小水力発電事業である。

 

星野さんは 「米と電気は自分で創りたい」 と力説する。

特に食糧は命をつなぐもの。

質も大事だと、星野さん自身、無農薬での米作りを実践されている。

エネルギー政策の目標は、「農家の電気代をタダにしたい」。

上に挙げた通り、小水力発電はその手段のひとつである。

 

那須野ヶ原は約40,000 ha の複合扇状地で、

扇央部から扇頭部までの距離が約30 ㎞、標高差約480 m の勾配がある。

この急峻な落差による水勢を利用した発電所が、3ヶ所に計7基。

最大出力が合わせて1,000 kw、CO2 削減量 3,090トン/年。

 

これが蟇沼(ひきぬま) 第一発電所。

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最大出力360 kw の横軸フランシス水車。

 

こちらが百村発電所。 立軸カプラン水車。

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用水路に沿って4基、設置されている。

 

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30 kw × 4基=120 kw。 

一般に有効落差は3 m 必要と言われていたなかで、

星野さんたちは落差 2 m での発電を実現させた。

後ろに見えるのが那須岳。

 

小水力発電を効率よく、かつ長く持たせるには、

こまめな点検とメンテナンスが必要となる。

厄介なのは水と一緒に流れてくる落ち葉などのゴミらしい。

ゴミの量や質など、その場所の実情に合った対策がポイントだと、星野さんは語る。

しかも低コストでやり切らないと採算が合わなくなる。

手探りで、改良を重ねながら、

今も進化の途上にある除塵システムがあった。

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環境学習の場としてつくられた 「那須野ヶ原用水ウォーターパーク」。 

ここに水車が3基、太陽光パネルと風力の発電装置が14基、設置されている。

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ガラガラ水車。

古代メソポタミア時代に発明された、最も古くてポピュラーな形。

ここでは水の流れを水車の下側に作用させて羽根車を回す下掛け式。

出力1.8 kw。 落差1.15 m。

 

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カラコロ水車 (クロスフロー水車)。

1.8 m の段差に同じ水車を2台横に並べて設置してある。

羽根車の外周部から中心部に入り、再び外側へ流れ出る構造で、

羽根車に2回作用することで発電効率が上がる。

出力8.0 kw。

 

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ぞうさん水車 (サイフォン式プロペラ水車)。

段差に取水設備を設けて流水を外の水槽に導き、サイフォンの原理を利用して

疎水に水を流して、配管内に組み込まれたプロペラを回す仕組み。

出力2.2 kw。

 

それぞれの水車の特徴と、場所の落差や流量、周囲環境といった条件によって

水車を選定すれば、いろんな場所での発電を可能にできる。

 

とにかく小水力のメリットは、その利用効率の高さである。

太陽光だと12%と言われるが、

ここでの小水力の利用効率は78%に達している。

 

e12110905星野スライド①.JPG

 

小水力発電を成功させるカギは、やる気と諦めない気持ち(根性)、

そして人材育成。

思いを共有できる人ができたら、積極的に資格を取らせる。

資格を取るとモチベーションも上がる。

星野さん自身、第一種電気工事士、宅地建物取引主任者、二級小型船舶操縦士、

第一種自家用発電設備専門技術者、第二種ダム水路主任技術者・・・等など

9つの資格を取得している。 「恐れ入りました」 と言うしかない。

 

資格を取得することでスタッフにプロ意識を持たせ、

できるだけ外注に頼らず、自分たちでつくる。

困難な課題に対しては、ひたすら考える。

それが採算を合わせる近道だということである。

 

そして、大元の森づくり構想。 

e12110906星野スライド②.JPG

1000年の森を育てるプロジェクト。

いよいよ本格的な活動期に入っていく。

 

参加された生産者は、どちらかというとマイクロ水力発電的な、

等身大の技術と規模で少しでもエネルギー自給率を上げたい、

という発想で来られた方が多かったようだった。

どのように次に生かされるかは分からないけど、

それぞれに刺激を受け、あるいはヒントを得て、

明日からの一歩を踏み出してもらえたなら、嬉しい。

 

星野さんから、夢を実現させるにはもう一つ 、

「バカになることね」 と言われた。

これだけは自信があるのだが。。。 

 



2012年11月 9日

「小水力発電」 を学ぶ生産者会議

 

備蓄米収穫祭での感動の余韻にとっぷりとひたっている余裕もなく、

10月30日は那須塩原に。

塩原温泉の老舗、多くの文人が愛したという 「和泉屋旅館」 にて、

生産者会議 「小水力発電研修会」 を開催する。

 

この地を選んだのは、農業用水路を利用した小水力発電の先進モデルが

ここにあるからに他ならない。

お呼びした講師は、茨城大学教授の小林久氏と、

那須野ヶ原土地改良区で小水力開発を牽引してきた星野美恵子参事。

集まった生産者は、青森から長野までの14団体の方々。

 

まずは小林久教授の講義から。

e12110901会議風景.JPG

 

エネルギーを考える上での最初の基本は 「節電」 である、

と小林教授は切り出す。 

「節電」 はある意味で電力を生み出すのと同じ、という発想である。

小林家では、昨年の3.11以降、(苦労せず) ちょっと意識して

電気を使う (=節約する) ようにしただけで、電気代が半分になった。

「どんな家庭でも、少なくとも2~3割は減らせるのではないでしょうか。」

 

次に、電気はかなりの部分が熱利用 (暖房や湯沸かし等) に回っている

という事実を頭に入れること。

それらを踏まえた上で、自然再生エネルギーを考えるようにしたい。

 

e12110902小林教授.JPG

 

<エビ注>

「小水力発電」 の厳密な定義はなく、

だいたい1万kw 以下の発電規模のものを指して語られていることが多い。

一方で、新エネ法 (新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法)

など日本の法律では1,000kw 以下を 「新エネルギー」 と分類していて、

今年7月からスタートした再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度 (FIT) では、

3万kw 未満 ~ 1,000kw のものに対して 25.2円/kw

(1,000kw 未満 ~ 200kw =30.45円、200kw 未満 =35.7円)

の買い取り価格が設定された。

これらの法律事情によって、1,000kw 未満を 「小水力」 と区分する場合もある。

 


小水力発電は、上から下へと落ちてゆく  " 水の流れ "  を利用することになるので、

必然的にその水系に関わる地域全体の問題になる。

つまり水は地域のエネルギー資源であり、

したがって地域内に事業体をつくることが、

公益上望ましい (地域に利益が還元されるようにすること)。

 

小水力発電の特徴と、メリット・デメリットは次の通り。

日本は水大国である (降水量は世界平均の倍近くある) が、

降った水はいったん山に蓄えられ、沢などを伝って集まりながら密度を高めてくる。

したがって山がしっかり管理されれば (という条件付きであるが)、

その 「変動」 幅が緩和(=調整) される。

また稼働時間が長い(風まかせ、お天と様まかせではない)。

CO2 を排出することがないので、温暖化対策の切り札でもある。

設備の寿命が長い(50年持っているのがザラにある)。

 

ただしその原理ゆえに適地が限定される。

また上に挙げたように関係者が多くなるため、合意形成や調整に手間取る。

そして開発量に限界がある。

小林教授の試算では、日本では100万kw くらいが限界だろうとのこと。

 

しかし 「小規模分散型」 にならざるを得ないなら、

むしろ日本はその地形上、まだまだそのポテンシャルは大きいとも言える。

都市でいえばビル内の循環水を使う方法も考えられる。

先進国ドイツでは水力発電所が8千ヶ所あるが、そのうち

実に 7,300ヶ所が 1,000kw 以下のものだ。

それでも発電で飯を食っている人もいる。

 

小林スライド②.JPG

 

現在日本では化石燃料に頼ってしまっているが、

海外から購入している石油代がなんと23兆円。

これは日本からの 「富」 の流出以外の何物でもない。

自然エネルギーで地域の電力需要を賄えば、

そのぶん富が地域に返ってくる (=回ってくる) 格好になる。

たとえば1万世帯の小都市で、仮に100%エネルギー自給が達成できたなら、

電気代の世帯平均10万円/年 で計算すると、

10億円の収入が地域内で循環することになる。

自給率を上げれば上げるほど地域が潤うことになるワケだ。

 

小水力発電はまた、あらゆる分野の人が関われるので、

地域の人々の意識も変えることになるだろう。

エネルギー生産と消費が 「我が事」 になって、

地域を作り直す作業に発展する可能性を秘めている。

水資源の維持は、必然的に森や生態系も含めた環境の保全との調和を求める。

持続可能な社会の仕組みをもたらす力が、水の 「発電」 にはある。

 

小水力発電はまた、地場産業の発展(仕事づくり) にも貢献できる。

ふたたびドイツの数字を上げれば、

フライツブルグという都市では、チェルノブイリ後、

自然エネルギーの拠点づくりを目指して研究施設などを誘致してきた結果、

新たなエネルギー関連の仕事が生まれ、

3%の住民が関係する事業で雇用されるまでになっているという。

それは働きがいのある人間らしい仕事 -  " グリーンジョブ "  と言われる。

日本では、農村の暮らしに若者たちが憧れても、仕事がない。

(残念ながら、有機農業の世界でも、暮らしの受け皿づくりは容易ではない。)

小水力発電は、新しい雇用の創出と、

自慢できる郷土づくりに貢献できるはずだ。

 

今年7月からスタートした FIT (固定価格買い取り制度) によって、

小水力発電導入の難問であった 「初期投資の壁」 も

クリアできる道筋がつくられた。

e12110903スライド.JPG

 

これによって経営計画が立案でき、プロジェクト・ファイナンスが可能になった。

すでに多くの銀行が融資の枠を設けてきている。

 

ちゃんと管理すればするほど利用価値が上がり、

環境保全と持続可能性が高まる。

世界は急カーブで、加速度的に自然再生エネルギーに向かっているのに、

日本は完全に出遅れてしまっていた。

FIT によってようやく政策的なバックボーンが得られた、という流れである。

 

・・・・・

なかなか気合いの入る話だったが、現実に進めるとなると、事はそう簡単ではない。

ここで様々な抵抗勢力とたたかってきた女傑、いや先達の登場となる。

続く。

 



2012年8月26日

稲田を自然エネルギーの郷に・・・

 

連続講座・第4回を整理している間にも、

世の中は動いている。

今年の暑い夏のピーク時でも、電力は余裕を持って供給されたことが判明した。

関西電力管内も、大飯原発の再稼動がなくても

電力会社間の融通で足りただろうという結果である。

 

政府が3択で問うた原発割合に対する国民の回答は、

討論型世論調査で47%、意見聴取会で68%、パブリックコメントでは90%が、

「原発0%」 を支持した。

 

もはや 「勝負あった」 と言わざるを得ない。

当初の読みが外れた方々は、

「意見を言う人は反対派に多い」 とか、「偏りがある」 とか、

恥ずかしい強弁を始めたようだが、

上記の3形式で国民の声を聞いてエネルギー政策を決める、

と言ったワケなんだから、その方針に沿って進めてもらわねばならない。

 

さて、僕らも前に進まなければならない。

8月23日(木)、福島県須賀川市・ジェイラップを訪問して行なった

小さなミーティングの報告をしておきたい。

同行していただいたのは、環境エネルギー政策研究所(ISEP) の研究員、

浦井彰さん。 

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ジェイラップ代表・伊藤俊彦さんとずっと話し合ってきたことを、

いよいよ実行に移そうという魂胆である。

「ここ稲田地区を、エネルギー自給率100%の郷にしよう。」

 


構想は、太陽熱・風力・水力・バイオマスのベストミックスであるが、

まずは、自分たちでできるところから始めよう。

ジェイラップの施設の概要を浦井さんに見てもらい、

太陽光パネルの設置について検討する。

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屋根の方角から耐荷重の問題、電線の位置などチェックし、

「これなら相当できる」 という感触を確かにする。

 

しかもセンターの倉庫は、屋根にスプリンクラーが設置されていて、

井戸水を汲み揚げて水を散水する仕組みになっている。

夏に倉庫内の温度を一定に保たせるための工夫で、

たしかに倉庫内は涼しく快適なのだ。

「これでパネルを冷やせば発電効率はぐんと上がりますよ!」 と

浦井さんも嬉しそうに話す。

 

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こんな感じ。

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こちらは、例の食品の乾燥工場。

南向きの屋根も、なにやら主張していないか。。。

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丘の上から全体を眺めながら、会話が弾む。 

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問題は、風力・水力・バイオマスとなると、

地元住民合意の上で、地域一体型で進める必要がある。

そのための具体的プランを描かなければならない。

ま、そこはダテに何度も酒を酌み交わしてきたわけではない。

イメージはできている。

 

今回同席いただいた上の写真左の背中の方は、

水道や浄化槽のメンテナンス業を営む 「(株)ひまわり」 という会社の、佐藤博社長。

須賀川で取り組まれている 「菜の花プロジェクト」 のリーダーであり、

今年4月に開催された 「第12回全国菜の花サミット in ふくしま」 (※) の

実行委員長も務められた方である。

  (※) 過去のブログ参照 ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/blog/ebichan/2012/04/29/

                   http://www.daichi-m.co.jp/blog/ebichan/2012/04/30/

 

休耕田や転作田を使って菜の花を栽培し、

ナタネ油を絞って学校給食や家庭で利用してもらい、

廃油を回収してディーゼル燃料 (BDF) に精製して、ゴミ収集車を走らせる。

昨年3.11の直後にガソリンがなくなったときも、

須賀川では3台の収集車がいつも通り回っていたという話である。

 

すでに基盤はあるのだ。

こういった地元の静脈産業や企業・自治体・住民を巻き込んで、

エネルギー自立の町を、フクシマに建設する。

  バイオマスでは 森林除染に貢献できるものにしたい、というのが野望である。

  環境再生とともに、食の安全もはかられる。

  長い道程になるだろうが、誰かが始めなければ進まないし、

これは、稲田の米が当たり前に生産し続けられる(=食べてくれる) ことで、

実現することなのである。

 

(株)ひまわりで、廃食油の精製プラントの説明をしてくれたのは、

総務部長の岩崎康夫さん。 

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なんと、大地を守る会の備蓄米の生産集団である 「稲田稲作研究会」 の元代表、

岩崎隆さんの弟さんである。

こういうつながりを発見するのは、本当に楽しい。

 



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