自然エネルギー: 2013年7月アーカイブ

2013年7月10日

つながるコンペ

 

7月6日(土)、会津自然エネルギー機構シンポジウムと夜の親睦を終え、

翌7日は弥右衛門さんの案内で、

今が花盛りの 「大和川ファーム」 のソバ畑を見せていただく。

 

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喜多方市の東に位置する雄国(おぐに) 山麓で、

1970年から22年かけて開拓された国のパイロット事業が経営破たんし、

約 900ヘクタールの農地が宙に浮いた。

反骨の志士としては、相当腹に据えかねたのだろう。

弥右衛門さんは、子会社である農業生産法人 「大和川ファーム」 を使って

10ヘクタールの農地を買い取り、ソバを播いた。

 

標高 200~300m ほどの山麓に広がる一面のソバ畑。

会津盆地が眼下に一望できる。

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振り返れば、戦後の食糧難の克服と復員者の就労確保などを名目に、

「新農村建設」 を掲げて展開された戦後の開拓事業は、

その多くが破たんしたと言われている。

全国で約 45万ヘクタールが開墾され (山間の傾斜地が多い)、

約 21万戸が入植したとされているが、農業には適さなかった場所も多く、

たしか事業終了時には半分以上が離農していた、という結果だ。

残された土地は荒れ、

高度経済成長期にはゴルフ場や工業団地に変わっていった。

パイロット事業としては後発の雄国でも、

約 60ヘクタールが遊休地となって今も放置されていると聞く。

 

初めて案内してもらったのは15年くらい前だった。

以後、何度か来る度に、

弥右衛門さんから 「ここで大地を守る会の農場を開かないか」 と

真剣に誘われたのだったが、

「いや、主体は地元の人たちでなければ・・・」

とか言いながら曖昧に逃げた。

パイロット農場がうまくいかなかった理由のひとつは、

地域との折り合いをつけられなかったことではなかっただろうか。

農業をやるというのは、その地域で生きる(=死ぬ) ということだから、

軽々しく答えられるものではない。。。

 

ちなみに戦後開拓事業は、追っかけるように

農家の次三男の就農地確保 (人口増加対策) という意味合いも付加され、

国は 「世紀の大事業」 と謳われた八郎潟の干拓事業などに突っ走ることになる。

しかし夢の農村として誕生した大潟村も、

20年かけて工事が完了した時には、すでに減反政策の時代に入っていた。

この国は今では、戦後開拓どころか

明治維新以降に開田された田んぼをすべて失った計算になっている。

 

民からの国の立て直しを、もっとダイナミックに育てていきたいものだ。 

ソバの花に見とれながら、昨日の発言を反芻する。 

「だからこそ、僕らはつながらなければならない。」

 

大地を守る会が今回のシンポジウムのパネラーに呼ばれた意図も、

その一点にあったのだろう。

シンポで報告させていただいた

大地を守る会の  " 顔の見えるエネルギープラン・コンペ " 」 について、

最後に触れて、終わりにしたい。

 

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このコンペの趣旨と経過については、

すでに 大地を守る会の活動レポート でも報告されているのでそちらに譲りたい。

大地を守る会の生産者・メーカーに対して、

自然エネルギーへの取り組みを資金的に援助する仕組みを立ち上げたのが、

昨年の12月。

今年2月の 東京集会で説明会 を開催し、募集に入った。

締め切りまでに 19団体から 21件の応募企画が送られてきた。

一次審査を通過したのが 5団体。

二次審査として、その5団体によるプレゼンテーションが実施されたのが、5月19日(日)。

 

5団体による熱いたたかい、というほどの雰囲気でもなかったけれど、

プレゼンテーターはやはり緊張して臨んだことと思う。

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写真は、山口県上関町・祝島市場の山戸孝さん。

上関原発の建設に反対するだけでなく、

エネルギー完全自給の島を目指したいと熱く語る。

 

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二次審査に挑んだのは、他に以下の4団体。

〇 有限会社 アイ・ケイ・ビイ (神奈川県相模原市)

  『藤野電力 自然エネルギー充電ステーション事業』

〇 自然(じねん)耕房 株式会社 (群馬県前橋市)

  『循環再生、再利用、廃棄物ゼロへ』

〇 合資会社 大和川酒造店 (福島県喜多方市)

  『自然エネルギーでお米シャンパンづくり』

〇 二本松有機農業研究会 (福島県二本松市)

  『中規模エネルギー会社設立のための調査研究』

 

審査員は以下の方々。

・ 加藤秀生さん (株式会社自然エネルギー市民ファンド 取締役)

・ 広石拓司さん (株式会社エンパブリック 代表取締役)

・ 松尾寿裕さん (全国小水力利用推進協議会 理事)

・ 三澤 海 さん (株式会社大地を守る会 CSR運営委員)

・ 藤田和芳 (株式会社大地を守る会 代表取締役)

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最終的に助成を獲得したのは3団体だったが、

惜しくも選考から外れた2団体にも奨励金が授与された。

 

受賞3団体のプレゼンテーター。

写真左から、アイ・ケイ・ビイの池辺潤一さん、大和川酒造店の工藤清敏さん、

祝島市場の山戸孝さん。

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ただし、会津のシンポで僕が伝えたことは、

「大和川酒造さん、おめでとうございます。頑張ってください」 では、もつろんない。

このコンペによって、5団体の人たちがつながったことだ。

控え室で、あるいは終了後の懇親会で、

たとえば福島県二本松と山口県上関町の次世代リーダーが語り合い、

意気投合し、アイディアを出し合い、互いにエネルギーを増幅させた。

 

1票の種を播き始めた者、草取りに精出している者、

何度もの収穫を繰り返しながら今も試行錯誤している者、

それぞれが 「一人じゃない」 ことを実感したのではないだろうか。

 

個々の取り組みへの支援以上に、

人と人がつながるコンペを実施できたことを、

誇りとして語らせていただいたのだった。

 

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自然エネルギーを推進するために寄せられた基金をどう役立てるか、

若手職員に預けたところ、アイディアがまとまらず、

到達したのがコンペ方式だった。

結果的に人がつながり、勇気と希望が伝播した。

このエネルギーは、残念ながら一次選考で消えた14団体にも

伝えていかなければならないね。

 

自慢の故郷を蹂躙された怒りをぶつけるかのように、

開墾し直し、ソバの種を播きまくった佐藤弥右衛門。

花はしっかり咲いているよ。

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畑を去る前に、記念撮影。

左から、

赤坂憲雄さん、佐藤弥右衛門さん、志澤昌彦さん、末吉竹二郎さん。

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志がつながれば、1+1 は 2 ではなくなる。

だからこそ、一票もまた大切なのだ。

 

POWER TO THE PEOPLE

POWER TO THE PEOPLE

POWER TO THE PEOPLE

POWER TO THE PEOPLE,RIGHT ON!

民衆にパワー(エネルギー) を、今すぐに!

 



2013年7月 8日

立ち上がる 「会津電力」

 

会津自然エネルギー機構シンポジウム。

第2部は座談会 -「地域主体の再生可能エネルギー事業の実現」。

 

「世界の潮流は、原子力からの撤退と自然エネルギーの急激な増加である。

 構造変化 × 加速度的変化が相乗的に進んでいる。

 しかし日本では逆向きの政治になってしまっている。

 このままでは日本は完全に取り残される。」

飯田哲也さんがハッパをかければ、

金融アナリスト末吉さんが落ち着いた口調で語る。

 

  先般、世界の投資家が香港に集った。

  話し合われたことは、お金(のため) だけで投資を考えない、ということだった。

  環境に配慮された事業に投資する方向へと世界は動いている。

  キーワードは、「ESGへの投資」。

  Eは Environment (環境)、Sは Society (社会)、Gは Governance (企業統治)。 

  ESG 要因を投資プロセスに組み込む。 

  EU ではすでに半分は ESG に配慮した企業に投資されるまでになってきているが、

  日本では 1 %以下である。

  アジア全体ですら 3 %に達しているというのに。

  アベノミクスには、将来の姿が見えない。

  20世紀型の  " 経済の成長 "  だけで中身がない。

  このままでは日本は前進できない。 国際競争にも勝てないだろう。

 

世界的金融アナリストの発言だけに、重いものを感じさせる。

まったく、廃炉への道筋も廃棄物の行方も見えないまま、

とにかく赤字脱却こそ最優先とばかりに原発再稼動に突き進む国だからね。

復興増税を電力会社に回したかと思えば、

除染予算は住民の意向より東電の顔色をうかがって溜め込んでいる。

ガバナンスは国家から崩れていってるようじゃないか。

このまんまにしてイイのか、若者たちよ。

ツケはどんどん君たちに回されているぞ。 

 


末吉さんは、5月に設立されたばかりの

一般社団法人 グリーンファイナンス推進機構」 の理事長に就任された。

金融が健全な社会づくりの推進力となるために、

末吉さんが挙げる 21世紀の金融行動原則がある。

ひとつは、地域の本当の問題解決を図る、その意思をもった企業であるか。

もうひとつは、社会の進むべき方向に沿っているか、正しい軌道に乗っているか。

新しい社会的事業は最初は反対されるものだが、

むしろ少数派だからこそやる意味がある。

転機はたった一票の差によって訪れる。

流れがクロスし、51 対 49 となった時に、決定的な転換が起きるのだ。

 

金融の世界からこういうメッセージが聞けること自体、

時代が変化を必要としているということなのだろう。

僕が言えたことは、わずかな補足程度だった。

この国のまやかし、カラクリを解体させ、地域の主体性や自治を取り戻すための

突破口のひとつが  " エネルギー "  であること。

底辺から、現場から、国づくりを再編させていく作業は、

新たな雇用あるいは仕事の代替案を創り出すものであるべきこと。

したがってそれは、楽しくなければならないこと。 

末吉さんが示した数字に重ねて言うなら、

今はまだ 51票には遠く 30票くらいかしら、とか思ったなら間違いである。

僕の感覚では、それはすでに 60票を超えている。

ただそれぞれがまだ、種であったり早苗であったり穂孕み期だったり、なのだ。

だからこそ、僕らはつながらなければならない。

そこで大地を守る会で実施した 「顔の見えるエネルギープラン・コンペ」

の紹介をさせていただいた。

若い職員たちが出してくれたアイディアである。

その話は最後に触れたい。

 

パネラーや会場とのキャッチボールを経て、

「会津電力 株式会社」 発起人たちが壇上に立つ。

ついに彌右衛門さんのホラがリアリティを持って迫ってきた。

 

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  私たちは様々な議論を重ね、会津地方から、

  原子力に依存せずに再生可能エネルギーの利用を事業の中心とした

  会津電力株式会社を設立することといたしました。

  この会社は一部の投資家のためのものではありません。

  エネルギーの在り方を考えて次世代に引き渡すために、

  個人や企業、組織の方々に呼びかけて、資本参加をいただきます。

  この会社の基本になる理念と運動は会津自然エネルギー機構が受け持ち、

  具体的な事業は小水力や太陽光発電など

  再生可能エネルギーによる発電事業が大きな柱となります。

  8月の設立に向けて有志により準備会を立ち上げました。

  発起人として参加いただき、

  また善意の出資としても、また地域の自立に向けた未来への投資として

  ご出資いただければ幸いです。

                          -設立発起人代表 佐藤彌右衛門

 

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「顧問」 としての参加予定者に、

飯田さんや末吉さんとともに金子勝さん、坂本龍一さんといった名前があり、

藤田和芳(大地を守る会代表) も入っている。

「本人と確認した?」

「いや、まだ。 エビちゃんから言っといて。 よろしく。」

社長というのは、どうもヤな共通項があるね。

 

会津が変わらなければ、日本は変わらない。

福島が苦しむ姿しか子供たちに見せられなかったら、

福島に生きる者として恥ずかしい。

 ・・・ 熱い思いが語られる。

 

変化への、リアリティのある一歩を見せましょう。

応援します。

発起人、パネラーで記念撮影。

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彌右衛門 (「彌」 という字が正しい) さんと飯田さんの顔は大きい

と密かに思っていたけど、やっぱ大きい。

そして今回、飯田哲也氏はラーメンが好き、というのも発見した。

 

二次会は、大和川酒造・北方風土館の2階バルコニーにて。

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さらにギョウザ屋さんにて三次会。

未来に向けての話は尽きない。 

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続く。

本編あと一回、おまけを。

 



2013年7月 7日

地域の自立と再生可能エネルギー

 

6月の24日だったか25日だったか、

大和川酒造・佐藤弥右衛門(やえもん) 代表から電話があって、

急きょ 会津自然エネルギー機構 主催のシンポジウムを開くことになったのだが、

ついては藤田社長にパネラーをお願いできないか、

との依頼である。

日程を聞けば、7月6日(土)。 なんと 2週間後ではないか。

「藤田さんが駄目だったら、エビちゃんでもいいよ。」

「でもいい」・・・かよ。

 

この嫌な予感はほぼ当たるだろうと思いながら、藤田に連絡する。

「もう予定が入っていて × 。 お前が代わりに行け。 以上。」

「断れ」 ではなくて 「行け」 という指示。

やっぱりね・・・

 

オレだってヒマじゃない。

7日は朝から 「稲作体験」 の草取りの日だ。

しかし抵抗の余地はない。

実行委員に頭を下げ、稲作のほうはパスさせていただく。

「(いなくても) 大丈夫で~す。 頑張ってきてくださ~い」

若手職員の台詞が力強くもあり、寂しくもあり・・・。

 

というわけで昨日(6日) は、予定を変えて喜多方に向かう。

「会津は、この手で守る!」

  - 八重に同化しちゃったオヤジたちで溢れる、いま日本で一番熱い国・会津へ。

 

シンポジウムのタイトルは

「地域の自立と再生可能エネルギー」。

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コーディネーターは、福島県立博物館館長の赤坂憲雄さん。

学習院大学教授で、「ふくしま」会議代表も務める方。

パネリストには、環境エネルギー政策研究所代表の飯田哲也さん、

国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEPFI) の

スペシャル・アドバイザー(特別顧問) 末吉竹二郎さん、

小田原で全国初といわれる、官民協働によって設立された

市民参加型エネルギー事業会社 「ほうとくエネルギー株式会社」 の志澤昌彦さん、

という錚々たる面々。

ちなみに 「ほうとく」 とは、

小田原が生んだ偉人・二宮尊徳の教えである 「報徳思想」 からきている。

「道徳なき経済は犯罪である。」

聞かせてやりたいね、どこかの国の電力会社に。

 


まず、 「一般社団法人 会津自然エネルギー機構」 の

新たな代表理事になった五十嵐乃里枝さんからの挨拶。

 

「 東日本大震災と東京電力福島第1原発の事故から 2年4ヶ月。

 地震と津波の甚大な被害から立ち直りつつある地域もありますが、

 福島県では依然として原発事故と放射能汚染の影響を受けています。

 3.11以降、多くの人が、もうこれ以上原子力発電に依存する社会はやめよう、

 と思い至りました。

 人類がコントロールすることができない危ういエネルギーの代わりに、

 身近で再生可能な自然エネルギーによる社会の構築を、この会津からはじめよう、

 という合意のもとに 「会津自然エネルギー機構 AiNEF」 は設立されました。

 

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 私たちが目指すのは、たんに電力を原子力から自然エネルギー発電に変える

 ということではありません。

 これまで原子力に依存してきたグローバル経済的な、

 搾取し搾取されるようなエネルギーのあり方を問い直し、

 エネルギーを自分たちの手に取り戻すことによって

 地域が自立していく仕組みづくりを始めようとしています。

 会津にある山と水という豊かな自然の恵みを循環させることによって

 エネルギーを手に入れ、

 地域が潤う経済活動につなげていく 「エネルギー自治」 を、

 ここ自由民権運動発祥の地・会津から始めようということです。

 

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 原発事故によって傷つけられた福島という地が再生するということは、

 傷をなかったことにするのではなく、

 また傷に絶望することでもなく、傷に正面から向き合って

 乗り越えていくことに他なりません。

 AiNEF は、エネルギー自治に向けた活動を、皆さんと共に進めていきたい。

 次代を生きる子供たちに、社会は自分たちの手で変えることができる

 という実感とともにこの地域を手渡していくことが、

 いま福島に生きる私たち大人の責務なのではないでしょうか。」

 

力強い挨拶の後、

第1部は映画 『 パワー・トゥ・ザ・ピープル  ~グローバルからローカルへ~

の上映会。

ジョン・レノンのメッセージ、 " Power To The People "  が蘇る。

1971年、レコード発売時の邦訳タイトルは  " 人々に勇気を!"  だった。

 

10年かけて自然エネルギーによる100%の電力自給を果たした

デンマークのサムソ島。

そこでは電力だけでなく、住民がお金を出し合う基金によって助け合う

新たな保険制度までつくられている。

地域でエネルギーもお金も循環する、顔の見える 「小さな社会」。

人々が活き活きと暮らす新しい経済システムへの移行、

自立型の社会建設が、いま世界のあちこちで始まっている。

勇気を持って、未来を選び取りたい。

 

すみません。 続きは明日。

曇り空の会津から帰ってくれば、東京の蒸し暑いこと。

こりゃ今日の草取り部隊はバテたに違いない。

オジサン、もしかしてラッキーだったかも。。。

 



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