食・農・環境: 2010年4月アーカイブ

2010年4月25日

アースデイ・ちば

 

4月22日はアース・デイ、「地球の日」。

地球の環境を守ろうよ、そんな気持ちをみんなで表現する一日。

40年前にアメリカ・ウィスコンシン州の上院議員の提唱から始まった

このムーヴメントが日本に上陸したのは88年頃だったか。

今では175ヶ国、5億人が参加する一大イベントになっている。

 

先週(4/17~18日)、東京・代々木で開催されたアースデイ東京には、

約13万5千人の参加があったとのこと。

大地を守る会も出店したが、当方は三番瀬でのアオサ回収もあって出られなかった。

 

一週間後の今日、千葉でも開催されたので、駆け足ながら覗いてみた。

会場は千葉市美浜区、「幕張海浜公園」。

京葉線・海浜幕張駅から南に15分ほど歩けば突き当たる。

我が本社からも歩いて行ける範囲にある公園だ。

e10042501.JPG

海浜公園の先にある幕張の浜。

海浜幕張の街自体が埋立地だから、ここは昔の遠浅の海だったところになる。

 

では、「アースデイ ちば 2010」 の様子です。

e10042510.JPG

このところの天候が嘘のような、暖かい祭り日和になった。

 

餅つきは自然の恵みを祝う際の定番か。 日本人のDNAが騒ぐ。 

e10042503.JPG

 

フリースペースでは、ダンスの講習(?) でしょうか。 みんなで楽しく踊っている。

e10042504.JPG

 

大地を守る会も出店しました。 

e10042505.JPG

今回は、専門委員会の 「おさかな喰楽部」 と 「原発とめよう会」 が中心になって

準備にあたってくれた。

東京湾アオサ・プロジェクトや宅配のPRも。


e10042508.JPG

ブースを訪ねてくれた方にいろいろ説明する農産チーム、秋元浩治 (写真左)。

風土に根づいた種を守る企画 「とくたろうさん」 を担当している。

なんか・・・熱っぽく語ってるねぇ。。。

 

海産物や加工品、せっけんの販売も行なう。

e10042506.JPG

 

こちらはミニ・コンサート。 子どもたちが飛び跳ねている。

e10042507.JPG

 

おや、お久しぶり。  「オリジナルTシャツ 亀吉」 の小畑麻夫さん。 

e10042511.JPG

アパレル会社の役員を辞して、2003年、夫婦で千葉県いすみ市に移住した。

米と野菜を作りながら、地域の人たちともつながって、

移住希望者のための情報発信などに取り組んでいる。

彼が制作した 「おコメのTシャツ」 は、大地内でもファンが多い。

彼が着ている新作が気に入って、1枚購入。

これでコメのTシャツは3枚目だ。

 

小畑さんから、いすみへの移住希望者向けのガイドブックを頂戴する。

いろんな分野から移ってきた人たちの、生き生きした暮らしぶりが紹介されている。

魅力ある地域づくりは、伝統や地域文化への敬意と新しいセンスによる創造との融合によって

進化していくんだね。

 

向こうに見える建物は、千葉マリーンスタジアム。

タイガース・ファンには悪夢の球場である。

e10042512.JPG

 

出店者ものんびりと、自分のペースでイベントを楽しんでいる。

 

e10042513.JPG

 

「アースデイ ちば」 は今年で9回目になる。

規模は代々木公園ほどでなくても、全国各地で開催されるようになって、

それぞれに人や団体のつながりができてきているようだ。

 

e10042514.JPG

 

ただちょっと物足りなかったのは、なんだろう。

トーンが全体的にヒップな印象で、広がりがもう少しという感じが残った。

しかし、これまで続けてきた人たちに、初参加でそんなことを言う資格はないか。

あんたも眺めるだけじゃなく、もっと伝えていってよ、ということだね。

 

e10042509.JPG 

菜の花だって本来は、観賞してもらうためじゃなく、

種 (次世代) を残すために咲いているわけだし。

 



2010年4月23日

田植えを前に、水路を清める

 

桜は散ってもなかなか春の実感が涌いてこないのだけど、

それでも新学期に入ってゴールデン・ウィークの声が聞こえてくると、僕にとっては、

会津の山あいを縫って水を運ぶ、あの堰(せき) の清掃日が近づいてきたことを意味する。

 

福島県喜多方市山都町の本木・早稲谷地区で、毎年5月4日に行なわれる

本木上堰の清掃作業、通称 「堰浚(さら) い」。

地元では全戸総出で行なわれるため、「春の総人足」 とも呼ばれている。

 

e07071002.JPG

 

参加するようになって、もう4回目のGWを迎える。

主催は 「本木・早稲谷 堰と里山を守る会」。

事務局の浅見彰宏さんからの案内を転載することで紹介に代えたい。

 


  喜多方市山都町本木および早稲谷地区は、

  町の中心部から北に位置する併せて100軒足らずの小さな集落です。

  周囲は飯豊連邦前衛の山々に囲まれ、

  深い広葉樹の森の中に民家や田畑が点在する静かなところです。

e09050507.JPG 

  そんな山村に広がる美しい田園風景には一つの秘密があります。

  それは田んぼに水を供給する水路の存在です。

  水路があるからこそ、急峻な地形の中、川沿いだけでなく山の上部にまで田んぼが拓かれ、

  田畑と森と民家が調和した風景が作られているのです。

  その水路は 「本木上堰」(もときうわぜき) と呼ばれています。

  早稲谷地区を流れる早稲谷川上流部から取水し、右岸の山中をへつりながら

  下流の本木地区大谷地まで延々6キロあまり続きます。

 

  水路の開設は江戸時代中期にまで遡り、そのほとんどは当時の形、

  すなわち素掘りのままの歴史ある水路です。

  深い森の中を済んだ水がさらさらと流れる様を目の当たりにすると、

  先人の稲作への情熱が伝わってきます。

 

  しかし農業後継者不足や高齢化の波がここにも押し寄せ、人海戦術に頼らざるを得ない

  この山間の水路の維持がいよいよ困難な状況となってきました。

  水路が放棄された時、両地区のほとんどの田んぼは耕作不可能となり、

  美しい風景も一挙に失われてしまうでしょう。

 

  そこでもっとも重労働である春の総人足のお手伝いをしてくれる方を募集しております。

  皆さん! 先人の熱き想いとたゆまぬ努力が築き上げたこの素晴らしき生活遺産を、

  そして山村の美しき田園風景を後世に引き継ぐため、ぜひご協力ください。 

 e07071003.JPG

 

作業日は5月4日ですが、早朝から開始するため、前日には現地に集合していただきます。

宿泊は公民館か山荘になります (現地の方にお任せ)。

3日の夜は前夜祭、4日の夕方には交流会が用意されています。

費用は、現地(JR磐越西線・山都駅) までの交通費、宿泊の集会所使用料実費分のみです。

作業着・着替え、軍手、長靴、雨具、洗面具をご用意ください。

 

もうGWの計画を立てられている方が多いかと思いますが、

もしまだ予定がなく、興味を持たれた方がおられましたら、どうぞお問い合わせください。

「堰と里山を守る会」 では会員も募集中です。

堰さらいボランティアに参加できない方で、ご支援いただける方はぜひ。

(メール・アドレスをつけてコメント投稿していただければ、お返事を差し上げます。)

 

大地を守る会の専門委員会 「米プロジェクト21」 では、

「種蒔人基金」 を活用して、この堰さらいボランティアに協力しています。

参考までに、過去の日記を貼り付けますので、読んでいただけると嬉しいです。

 ・2009年5月 5日・・・「 堰(せき) -水源を守る

 ・2008年5月 6日・・・「 水路は未来への財産だ!

 ・2007年7月10日・・・「 日本列島の血脈 」

 

さらに今年は、喜多方市の市民グループにも支援の輪が広がって、

福島県からもわずかながら助成が下りたとのこと。

そこで交流会でも、真面目なお勉強の時間を設けるとのことで、

なんと僕に、食と農と堰の関わりについて話をしろとのお沙汰である。

腰だけでなく、気まで重たくなっちゃったりして。

ご恩返しになれば幸いであるが・・・

 



2010年4月 2日

農政はともかく、農は国の礎である。

 

4月1日午後、久しぶりに東京・霞ヶ関に出向く。

桜がもう満開に近い。

国会議事堂周辺の桜はいつも早くて短いように思うのは、気のせいかしら。

 

警備員に守られた議事堂を横目に、お隣の由緒ある 「憲政記念館」 に入る。

ここで、『 「農」を礎に日本を創る国民会議 設立総会 』 という集会が開かれた。

e10040203.JPG

「 農を礎 (いしずえ) に、日本を創る、国民会議 」

いかにも硬く、まるで右翼のようなタイトルだが、

「農」 を国民生活を守る大本として育て直さなければならないという強い問題意識での

「国民会議」 結成の呼びかけである。 ケチをつけるのは控えておこう。

大地を守る会会長・藤田和芳も、呼びかけ人の一人として名を連ねているし。

中心となった団体は、NPO法人ふるさと回帰支援センター、全国農業協同組合中央会

パルシステム生協連合会、生活クラブ生協連合会、そして大地を守る会。

 

「農」 は国の基(もとい)。

「農」 が生む 「食」 なくして国民の命の存続はない。

「農」 は国民の 「礎」 である。

 

気候変動や新興経済諸国の台頭によって、世界の食糧需給が逼迫してきているなかで、

日本は未だ食糧危機に極めて弱い状況にある。

にもかかわらず農業人口の減少と高齢化、耕作面積の縮小に歯止めがかからず、

市場原理主義の拡大と世界的不況は、農業経営をさらに悪化させている。

国の基である 「農」 を再生させ、日本の 「食」 を安定的に確保するために、

農業・農村を元気にすることが必要であり、市場原理主義と規制緩和を見直し、

食料自給率の向上をはかるとともに、

食料安全保障を国家戦略として明確に位置づけることが必要不可欠である。

                                  (「国民会議」設立趣旨から要約)

 

赤松広隆農林水産大臣が来賓として来られ、賛同のエールが贈られた。

設立趣旨や規約、活動方針案が提案され、承認を受ける。

活動方針案を読み上げる藤田会長。

e10040202.JPG

 


主な活動計画は、

1.食料安全保障政策を立案し提案すること。

2.それを社会のコンセンサスとするため、

  各界への働きかけやシンポジウムの開催等を展開する。

3.生産、流通、消費の各分野に 「国民会議」 への参加を呼びかける。

4.情報発信、メディア対策、出版の検討、など。

 

役員の選出では、

早稲田大学副総長の堀口健治氏はじめ6名の役員が選任された。

大地を守る会からは野田克己専務理事が入る。

役員会から委嘱の形で5名の顧問が選出され、藤田が常任顧問となる。

 

総会終了後、

首都大学東京(旧東京都立大学) 教授、宮台真司氏による記念講演が行なわれた。

テーマは、「日本の農業と食料安全保障 ~若者にとっての農村回帰の意味」。

e10040204.JPG

宮台真司氏。 サブカルチャーや若者文化論から天皇制まで語る気鋭の社会学者。

メディアにもよく登場し、著書も多い方である。

 

宮台氏は語る。

「農業の再生」 と言うが、社会はつまみ食いができない、ということを忘れてはならない。

「農業」 だけを切り取って 「再生」 するのは不可能で、

社会の様々な側面も同時に変えていかなければならない。

先進国最低水準の食料自給率は社会指標のひとつであるが、

他にも自殺率の高さ、労働時間の多さ(=社会参加の低さ)、

家族のきずな度、幸福度などの指標も、日本はかなりの低水準である。

幸福度調査では日本は90位以下。 

物質的に貧しい、将来的に危ない、といわれる国の人たちのほうが、

日本人より、シアワセ感が高いとはどういうことか。

この国の社会には大穴が開いている。

 

農業を保全しなければならない理由は3つだと思う。

国家の安全保障と、国民への  " 食の安全 "  の確保、そして国土保全、である。

日本では安全保障の概念が理解されておらず、

危機に対する思考を持った政策をつくれる人がいない。

食の安全の観点も、ただ有機栽培とか無農薬といったレベルで考えるのでなく、

食の安全思想の基本は、「みんなのために-」 というモチベーションではないだろうか。

ヨーロッパのスローフード運動には、共同体思想が根幹にある。

国土保全とは、単なる景観でも多面的機能とかでもなく、

社会のホームベース (人が帰れる空間) を分厚くする、ということだ。

日本は経済(お金) だけを追い求めてきた結果、

人や地域との絆、つまりホームベースを壊して、ただ便利なところに流れている。

 

アメリカだって、本当は市場原理主義の国ではない。

共同体的自己決定の思想と市場原理をどう折り合いつけていくかを考えているのが、

アメリカやヨーロッパである。

日本は市場原理主義こそが権威と勘違いして、生き残れるはずの思想を失った。

日本農業の再生の真の意味は、自給率や食の安全や就業人口を増やすことなどが

個々に課題としてあるのではなく、

" つながり・絆 "  をベースにした安心度の高い社会の再生、にあるのではないか。

 

僕流に解釈してしまったところもあるかもしれない、と断りつつも、

随所で、なるほど、そういうことか、と感じさせられた。 さすが、である。

 

「では、どうしたらいいのか」 という会場からの質問に対する宮台氏の答えは、

「単純な解はない」 と明快である。

まあ、これは俺たちが可視化していくしかない、ってことだね。

 

今日、地方紙の新聞記者さんが、

4月1日からスタートした戸別所得保障制度についての考えを聞きたい、と取材に訪れた。

この制度については、僕は一切のコメントを控えてきた。

「農業の再生」 という観点からはマイナスにしか見えない、と思いつつも

今後の動きが読めないし、とにかくよう分からんところがあり過ぎるのだ。

今日は宮台氏から頂いた視点をちょこちょこと拝借し、はぐらかしながら、

最後は持論で締めさせていただいた。

農業の外部経済 (生産された食べ物の値段以外のたくさんの価値) を理解できる

民意づくりこそが大切であり、そのための政策が必要である。

食の安全保障は、農民の所得を保証する前に、消費者の問題だからである。

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ