食・農・環境: 2011年8月アーカイブ

2011年8月28日

みんなの力で 「第4の革命」 を進めよう!

 

8月18日(木)、

「脱原発と自然エネルギーを考える全国生産者会議」。

二人目の講師は、飯田哲也 (てつなり: 環境エネルギー政策研究所所長) さん。

用意されたタイトルは-

 

     -3.11フクシマ後のエネルギー戦略-

  自然エネルギーによる「第4の革命」

 

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テレビの討論番組などで、すっかりお馴染みの顔となった飯田さん。

論点は一貫している。

- 今は日本近代史における第3の転換期。 人類史での第4の革命が始まっている。

- 世界は大胆に自然エネルギーにシフトし、世界市場は急拡大しているのに、

  かつての自然エネルギー技術先進国・日本は取り残され、逆にシェアを縮小させてきた。

- 自然エネルギーは唯一の 「持続可能なエネルギー」。

- 自然エネルギーは豊富すぎるほどある(1万倍以上)。

- 「自然エネルギー100%」 は、すでに 「if」(仮定) ではなく、

  「when,how」(いつまでに、どのように) の議論になっている。

- 自然エネルギーは普及すればするほど安くなる。

  かたや原子力・化石燃料コストはどんどん高くなっている。

- ポイントは 「全量買取制度」。 当面の 「負担」 は 「将来への大きな投資」 となる。

- 東北は自然エネルギーの可能性に満ちている。

  東北での 「2020年に自然エネルギー100%」 は可能だ。

- 新しい 「エネルギーの地域間連携」 で、地域でお金が回るようにしよう。

  地域のオーナーシップを発揮させ、便益は地域に還元する。

  自然エネルギーの雇用創出力は原子力よりはるかに高い。

- 無計画停電から戦略的エネルギーシフトへ。

  持続的な 「地域エネルギー事業」 を推進するときが来ている。

 

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お二人の講演を受けて、戎谷より、

大地を守る会のこれまでの活動報告とともに、

次の展開に向けての野望も提出させていただく。

 

「 ここからは、我々が考える時です。

 大地を守る会の生産者・メーカーの総力を挙げて、

 脱原発と自然エネルギー社会を創造していくことを、この場で確認したい。」

無理矢理(?)、拍手で確認。

 

食の安全確保に向けて、水際でのチェックも放射能除染対策も、

我々の手でやれることはすべてやろう。

そして、データを蓄積するとともに、国の暫定基準をどう決着させるか、

という議論に入っていきたい。

できるならば、かつて、1970年代に原子力発電の危険性を訴えた物理学者、

武谷三男さんが唱えた 「がまん量」 の考え方も思想的に超えたい。

 

夜は大地を守る会の生産者たちの食材とお酒で語り合い、

翌日は、各地での実践例を出し合い、議論を深めた。

 

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「放射能除染対策から地域再生へ」

事例1-岩手県久慈市(旧・山形村)、JAいわてくじ・落安賢吉さん。

      日本短角牛の里で取り組む除染対策。

事例2-福島県須賀川市、ジェイラップ・伊藤俊彦さん。

      水田での様々な除染試験から総合対策へ。

事例3-福島県二本松市、ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会・佐藤佐市さん。

      動き出した 『里山再生・災害復興プログラム』 構想。

 

【資源循環・エネルギー自給に向けて】

事例4-山形県高畠町、米沢郷牧場・伊藤幸蔵さん。

      「自然循環・リサイクルシステム」 からの展望。 

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事例5-宮城県大崎市、蕪栗米生産組合・千葉孝志さん。

      「冬みず田んぼに太陽光発電」 から次の課題を考える。

事例6-群馬県高崎市、ゆあさ農園・湯浅直樹さん。

      ここまできたエネルギー自給農園。

 

意見交換では、互いの知恵を共有し新しい試験もやりたい、という提案も出され、

おそらく皆、希望と勇気をもらったのではないだろうか。

司会をしながら、少し熱くなる。

「私たちは今、先端の場にいて、未来を共有しているのです。」

 

午後はオプションで、希望者による習志野センター見学。

放射能測定の説明をするのは、品質保証グループ長・内田義明。

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ここにガンマ線スペクトロメータが4台。

現在、週120検体のペースで測定を続けている。

さらには現地(福島県須賀川市) に1台。

こちらでは、ジェイラップががんがんデータを取ってくれている。

そして月末には、ゲルマニウム半導体検出器がやってくる。

 

ただ到着した食品の安全性を確認するためだけではない。

生産者にとっての安心と、意図しない2次汚染を防ぐためでもある。

各種の試験データは次の有効な対策につながるだろう。

帰りがけに、伊藤幸蔵さんが言ってくれた。

「こういう体制を作ってくれるのは、本当にありがたいです。」

試行錯誤だけれど、一緒に前を見る仲間がいる。

こんな嬉しいことはない。

 



2011年8月 3日

いつか孫に褒めてもらえる仕事をしたい

 

7月23日のレポートを書いている間にも、そしてその後も、

日々めまぐるしく動きはあるのであって、

もうこんな日記の調子ではとてもついてゆけない。

でも、どうにもスタイルを変えられないでいる。

つらいつらいと言いながら、まだこだわりが残っているか。。。

ま、取り急ぎ、この間の行動を振り返ってみよう。

 

7月26日(火)、東京・竹橋で開催された

「2011夏期学校給食学習会」 の模様を覗かせていただく。

「全国学校給食を考える会」 と 「東京都学校給食栄養士協議会」 の主催で、

毎年夏休み期間に、全国から栄養士さんや調理師さん、教員が集まって

開かれている学習会である。

 

今年は 「震災・津波・原発事故後の学校給食を考える」 というテーマで、

講演や実践の報告会、そして意見交換会が展開された。

 

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僕がこの学習会に久しぶりに (10年ぶりくらいか) 参加することになったのは、

3名の方の報告を聞くためであったが、最後に行なわれた意見交換会では、

実に重たい話が語られていた。

 

福島の方からの報告。

人の転出・転入が続いていて、学校は今も落ち着かない状況である。

福島県では来年は教員採用がなくなったそうだ。

給食現場では、放射能 「検出せず」 の野菜を選択したいが、

自主的な判断はできない。

子どもの被曝検査は県内でできず、県外の病院に頼んだが断られた。

みんな風評被害を恐れていて、

余計なことはするなという雰囲気になっている。

 

そんなつらい空気を吹き飛ばすかのような発言をしたのが、

ジェイラップ (稲田稲作研究会/福島県須賀川市) の伊藤俊彦さんだ。

 


「安全」 を語るには科学的根拠が必要になっている。

徹底的に現状を調査して、必要な除染対策を立て、前に進みたい。

目標があれば頑張れる。

幸い大地を守る会から高精度の測定機を貸し出してくれることになったので、

できることなら全部の田んぼと米を測りたい。

自分の子供に食べさせたくないものは、消費者にも届けたくない。

「こういう人が作ったものなら安心だ」 と言われたいし、

いつか孫に褒めてもらえるような仕事をしたい。

今の現実から、新しい、福島ならではのイノベーションを起こしたい。

 

今年の 「大地を守る会の備蓄米」 は、

こんな伊藤さんの思いがぎっしり詰まったものになる。

食べてほしいなぁ、たくさんの人に。

 

続いて、千葉・さんぶ野菜ネットワークの下山久信さん。

この日は 「食と農の再生会議」 事務局長の肩書で登場。

 

将来を見据えながら、この3年で15人の新規就農者を育てた。

しかし、これから秋冬の作付が始まる中で、

取引先から計画の20~30%減という販売予測が伝えられてきている。 

このままでは希望を持って就農した若者たちもやっていけなくなる。

いま野菜を測ってもほとんどND (検出せず) なのだが、

降った放射能は土壌には残っている。

我々も、ポイントを決めて、毎月土壌検査を始めている。

 

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茨城県八郷町(現石岡市) から来られた 「提携米研究会」 代表、橋本明子さん。

23年前に東京から移り住み、仲間とともに地域の有機農業を育ててきた。

原発事故は自分にとって、そんなこれまでの時間をすべて呑み込んだ大津波だった。

深い絶望で農作業ができなくなった。

それでも食べてくれる人の励ましと、若者たちの農業継続の意思に勇気づけられた。

この先、放射能汚染がどうなっていくのか、何も分かってないが、

みんなの力を信じてやっていこうと、ようやく心が定まってきた。

健康なくして教育はあるでしょうか。

子どもたちの健康を守る学校給食を、どうか築いていっていただきたい。

 

切実な現場報告に、全国から集まってきた栄養士さんたちも

最後まで真剣な面持ちで意見交換が行なわれていた。 

 

すでに私たちは地球が汚染されてしまった時代にいて、

ある種の覚悟が求められている。

福島だけが当事者ではない。 

原発は各地にあり、老朽化が進んでいるのだ。

みんなの力で、原発は止めるしかない。

子どもたちの未来のために、それぞれの現場で、やれることを進めましょう。

 



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