食・農・環境: 2012年1月アーカイブ

2012年1月12日

魚食文化の再興を誓う

 

今日は久しぶりに丸の内の話題で書く予定だったのだが、

その前に、おさかな喰楽部新年会の報告を終わらせなければ。

 

さて、ウエカツさんに続いて、次なる登場人物はこの人。

鮮魚の達人協会 」 理事長・山根博信さん。

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1961年、和歌山の漁師町に生まれる。

家の水産物仲卸業を継ぐも、魚には興味がなかった。

「継いだのは、トラックの運転ができるから」(笑)。

しかし26歳で結婚してから、考えるようになった。

自分はただ運んでいるだけで、魚を見ていなかったことに気づく。

そう思って市場を眺め始めると、魚の流通が変わってきていることに気づき、

このままではいけないと思うようになる。

 

浜ではたくさんの魚種が揚がるが、値がつかないものがたくさんある。

市場で値がつかない、動かない魚を売ってお金にして漁師に還元する必要を感じ、

2005年、鮮魚の達人協会を設立する。

 

鮮魚の達人協会。

卸業者や仲買業者など、魚を見極める専門家たちのあつまり。

漁業者と家庭を結び、美味しい魚を提供する。

旬の魚、美味しい魚を取り入れた健康的な生活を応援する。

魚についての知識や魚食文化の普及に努める。

海洋環境や地球環境の保全に努める。

 

今や漁業者は、魚の目利きだけでなく海洋環境まで目配りしなければならなくなった。

生きにくい時代になってしまったもんだ。

 


山根さんはハチマキ締めて百貨店の店にも立つ。

どんな魚でも、その特徴を伝え、食べ方を教え、味見させれば、絶対に売れる。

 - それが山根さんの信条である。

 

協会が認定した 「鮮魚の達人」 が、今は全国に50人余り。

その人たちをネットワークしながら、

美味い魚をちゃんと食わせる流通の新しい仕掛けを模索している。

彼らの被災地支援は、三陸の魚をしっかりと流通させること。

大阪でフェアなどを展開している。

 

ウエカツさんや山根さんとのつながりのなかで生まれたのが、

人気の 「大地を守る会の もったいナイ魚」 シリーズである。

さらにいろんな悪だくみ、いやもとい、熱い企画が検討されている。 

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左からウエカツさん、山根さん、弊社 「おさかな喰楽部」 担当・吉田和生。

この3人が並んで歩いていたら・・・ やっぱ人は避けて通るか。 

でも、思い切って目を合わせてみれば、分かる。 優しい男たちなのだ。

 

3人が語る。

山根さんのような人がいれば、売れない魚はない。

しかし、いない。

スーパーのバイヤーでも知識を持っている人は多いのだが、

売れるための工夫につながっていない。

たとえばサバは今が一番脂が乗っている時期だが、

スーパーの店頭には一年中あって、夏に塩焼きにしたって本当の美味いサバではない。

でも知らせていないから、いい消費に結びついてない。

いったん離れた消費者を取り戻すのは大変なことなのに。

サンマ一本70円なんて安すぎる! と言い張ろう。

もう一度、魚の旨みのるつぼに消費者を引きずり込む必要がある。。。。。

 

最後に指名されて登場したのが、モデルの Lie (ライ) さん。

魚を、海を愛するタレントやモデルさんたちで 「ウギャル」 を立ち上げる。

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 魚(ウオ) と海(ウミ) の ウ と ギャル をくっつけて、ウギャル。

ホームページを見てほしい (上の 「ウギャル」 をクリック)。

ニホンの食文化、海への感謝、若者の健康促進、魚食文化の発展を目指します

と堂々と宣言している。

Lie さんの特技は、魚をさばくこと。

復興支援にも積極的に動いている。

 

ウエカツさんの言う 「新しい芽吹き」 は、あるのである。

期待したい、などと他人事のように言っている場合ではない。

オジサンも頑張ってくれなくちゃ ♥ 、て言われてんのよ。

頑張らないわけにいかないっしょうよ、おっさん!

 

放射能の議論もあったが、これは簡単な道のりではない。

ただ、ゼッタイに海を見捨てるワケにはいかない、のである。

僕としては、獲る人が諦めない限り、彼らとともに歩きたいと思う。

僕にだって、漁村に育った矜持(きょうじ) は、残っている。

 

皆と飲んで歌って、帰ってから、

久しぶりに出刃包丁と刺身包丁を取り出して、研いだりして。。。

もっとも困難な時代にあって、魚食文化の再興を、誓う。

 



2012年1月11日

楽しく Re-Fish! 新年おさかな勉強会

 

1月8日、日曜日。 千葉県浦安市。

法事や宴会・仕出しなどで利用される料亭 「浦安 功徳林」 の御座敷。

ここにいかにも魚屋って感じの手荒そうな、いやもとい、たくましい男たちと、

お魚大好きという会員さんたちが集まった。

 

専門委員会 「おさかな喰楽部」 主催による新年勉強会。

「水産庁のウエカツさん、鮮魚の達人・山根さんと楽しく Re-Fish!」

知る人ぞ知る、分かる人は分かる、分からない人には何のことか分からない、

けど何やら楽しげなタイトル。

 

水産庁のウエカツさん。 本名、上田勝彦。

島根県出雲市出身。 長崎大学を出て漁師になって、

その後水産庁に引っ張られたという異色の経歴。

魚の伝道師とも呼ばれ、

NHKの朝番組 「あさイチ」 にため口で登場してからブレイクしちゃったとか。 

現在の正式の所属・肩書は、水産庁増殖推進部研究指導課、情報技術企画官。

「 ひと言でいえば、資源管理ですわ。

 逆に言えば、魚をどうやって売っていくか、でもある。」

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" なぜ私たちは、魚を食べ、漁業を守らなければならないのか " 

以下、伝道師・ウエカツが一気にまくしたてる。

 


魚離れが言われて30年。

消費量は減り続け、

魚をよく食べる年齢も戦後の年齢構成の変化とともに上昇を続け、

今は50代以上になってしまっている。

寿司屋に人は入っているではないか、と言われるかもしれないが、

それは魚が嗜好品になってきているということである。

学校給食でも魚が出ることはない。 

 

では、魚離れがなぜ問題なのか。

人の食習慣や食文化は、本来、地理的な環境要因によって規定されている。

日本は狭い国土だと言われたりするが、

海岸線の距離はどれくらいか知ってますか。 米国より長いんです。

( エビ注・・・約3万4千㎞。 約3万㎞というデータもあるが、いずれにしても世界第6位。

 米国の1.5倍以上、中国の2倍以上。 ロシアは第4位の長さだが、

 北極海は冬に凍結する。 水が循環する海岸線ではロシアより長い。)

 

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日本は世界有数の海岸線大国、然るべくして海洋国家なのである。

狭い面積でたくさんの人口を養ってきた力は海洋、つまり魚食である。

(エビとしては、「水田稲作」 も追加したい。

 ちなみに面積は世界第61位。人口は世界第10位。)

健全な魚食を維持することが、国民を養う上でもっとも合理的な方法なのである。

 

生物の世界には食物ピラミッドというのがある。

ヒトはその頂点に立っていると思っている方もおられようが、実は違う。

ヒトは下位の生物から上位の大型生物まで食べている動物である。

つまりピラミッドを崩さない食べ方をすることで安定する、それが人間なのだ。

この社会を持続可能にするためには、

食物ピラミッドを維持させながら食べることが大切になる。

 

したがって日本人は、魚食文化を維持することこそが賢明な選択となる。

魚食の崩壊は、祖国存亡の危機だっつうの!

 

魚は長く無主物として扱われてきた。

(エビ注・・・「無主物」=持ち主がいない。

 最近の活用事例では、降ってしまった放射性物質は 「無主物」 だから返されても困るし、

 金を払う義務もない、という電力会社の主張があった。)

つまり、獲った者勝ちだったわけだ。

しかしだんだんと、人類共有の財産という考え方になってきている。

みんなで守らないといけない時代になっているワケです。

 

そこでこう思うのである。

生産者というのは、食べる人 (消費者) の代行者である。

代行して獲る。 と同時に、代行者として、絶やさないという責任も負う。

だからこそ消費者は、買って食べて生産を支える、そんな関係にある。

その生産と消費のバランスを調整するために、加工や流通の使命がある。

 

昨年の勉強会で、俺はこう言った。

「今年を魚食復興元年にしよう! Re-Fish! でいこう」 と。

( Re-Fish  ・・・魚の復興とか魚食に帰ろう、といった意味合い。)

しかし3.11を経験してきた今、

今年のテーマは 「原点回帰!」、これだね。  以上。

 

いやいや、実に歯切れがよい。

しかもウエカツさんの水産資源管理と魚食文化論は、

「資源」 という概念の本質まで突いてきているように思えた。

そもそも 「日本は資源のない国」 という論は、

昭和初期の、軍が強力になって外に侵出するのと機を一にして出てきた主張だと

最近知らされた次第である (佐藤仁著 『 「持たざる国」 の資源論』 より)。

その意識は今だ根強く、この国は国土や環境(資源の土台) を

荒らしまくりながら、裸の自由貿易へと走ろうとしている。

一方で、エネルギー資源の発想はドラスティックに変わろうとしているのだ。

このテーマ、たっぷりと議論する必要がある。

 

続いて、もっと強面(こわもて) なお父さんが登場するのだが、

本編続く、でごめんなさい。

 



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