食・農・環境: 2014年3月アーカイブ

2014年3月26日

『日本食文化ナビ』 の完成


前回、堰さらいボランティアを呼び掛けさせていただきましたが、

長い日記の最後につけたため少々不安あり、

改めてご案内させていただきます。


里山の自然を満喫しながら、思いっ切り汗を流してみませんか。

新規就農者と語り合ったり、地元の人たちとの交流も楽しいものです。

申し込みの基本は、直接浅見さんの ブログ からお願いします。

注意事項はしっかり読んでね。

東京方面から参加してみたいという方は、

大地を守る会・戎谷 にご連絡いただいても結構です。

席が空いていれば、車に同乗も可能です (お約束はできませんが)。

行程は以下の通り。

 5月3日 : 早朝都心発 -大和川酒造店立ち寄り(酒調達) -現地で前夜祭・公民館泊

 5月4日 : 早朝から堰さらい作業 -温泉 -夕方から交流会・公民館泊

 5月5日 : 山都散策(チャルジョウ農場訪問) -帰京

  ※ ただし、ゴールデンウィークの渋滞を覚悟してください。

お問い合わせは、戎谷まで。

 ⇒ ebisudani_tetsuya@daichi.or.jp 


続いて本題に。

昨日、農林水産省から、待っていた制作物が届いた。


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送っていただいたのは、農水省大臣官房政策課・食ビジョン推進室から。

地域に受け継がれてきた食文化を活用して地域を活性化したい。

その水先案内になるようなマニュアルを作成しようという委員会が昨年発足し、

約半年かけて 『地域食文化ナビ』 という制作物が完成した。

しかしホントに使えるものにするには幾つかの改良が必要だということになって、

改めて 委員会が招集された のが昨年の 8月。

いったん役目を終えた委員会を再度招集する意気込みが

霞ヶ関にあったというのは、ちょっとした驚きだったけど、

竹村真一座長の呼びかけに喜んで参加させていただいたのだった。


そしてバージョンアップして完成した 

『 日本食文化ナビ -食で地域を元気にする本 』

今回は、本体とダイジェスト版という構成でなく、

各地の事例や考えるヒント等を盛り込んだ 「BOOK」 という解説本と、

自身でチェックし書き込んでいける 「NOTE」 の 2本立てとなった。


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「NOTE」 は A5 版サイズの薄い手帳なので、

カバンに潜ませて持ち歩いてくれれば、との狙いである。


ケーススタディとして、以下の事例がレポートされている。

福井県小浜市、岩手県一関市、岩手県久慈市(旧山形村)、宮崎県西米良村、

石川県、山形県おきたま地域、栃木県、長野県長野市、新潟県湯沢町ほか、

三重県鳥羽市、高知県馬路村、島根県邑南町、熊本県玉名市ほか、

大分県日田市、沖縄県やんばる地域。

海外では、フランス・イタリア・韓国・オーストリアの事例が盛り込まれた。


地域食文化の特徴や魅力への気づき、「食」の循環を見渡してみる、

地域食文化を創造的にデザインしてみる、「食」をキーワードにどう価値を創造するか、

マーケットへの発信、地域全体で育み次世代に伝える、

といった視点でヒントになる素材が提供できたなら嬉しい。


僕なりに考えたいくつかの改善点も反映され、まずまずの出来ではないかと

思っている次第。

しかし大事なことは、我々の自己満足ではなく、

各地で地域おこしや宝物探しに悩んでいる人たちの役に立てるかどうか、である。

全国地方自治体の然るべき部署には送られたことと思う。

あとはさらに進化させてもらえることを願っている。


「BOOK」 の最後に、委員による 座談会 が収録された。

まあ僕はつまらないことしか喋ってないけど、

最初に細川モモさんが、現在の日本の食をめぐる問題点について、

かなり的確な論点整理をやってくれているので、

ここはぜひご一読願いたいところである。


大震災から、わずかながらも福島の再生に関わり、

昨年から 「地域の力フォーラム」 や 「食文化ナビ」 に付き合ってきて、

いよいよ僕の中で、「地域」 というテーマが大きな位置を占めつつある。

新しい年度に替わろうとする時に、抑え難く湧いてくるものがある。

お前に何ができるのか、、、

テッテー的に悩んでみたい、とナビをめくりながら思うのである。




2014年3月24日

地域の力と内発的復興のために-


お彼岸の日のお通夜に参列した帰り道、

大地を守る会の職員や OB、生産者と誘い合って飲んだ。

あえてなのか、みんな楽しく飲もうとする。

それが先に逝った仲間への弔いであると信じてるみたいに。

この輪の真ん中に道場さんもいて、

「お~い、ビールあと2本!」 を連発しながら笑っているんだと、

そんな気分で酒も会話も、彼に飲ませ聞かせるように進むのだった。

 

翌日(22日) は、下北沢の ふくしまオルガン堂 に出かけた。

福島・喜多方市の市長選をたたかった浅見彰宏さんから、

東京で応援してくれた人たちに御礼の報告会をやりたい

という案内をもらっていたので。

「喜多方から始めよう、浅見彰宏報告会」 と題して夕方から開催。

遅れていったところ、20人ほどの人が集まっていた。


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選挙の結果は、以前 にも報告した通り。

たった 3 ヶ月の準備と運動期間で、

ほとんど無名の候補者が約 3 分の 1 の得票を獲得した。

それだけ潜在していた 「変わらなきゃ」 の気運を動かしたということだ。

多くの人が大健闘だと称えているが、

中には 「これだけしか取れなかったのか」 という厳しい批評もあれば、

あと1カ月あれば・・・ という悔しさをにじませる声もある。

でも、今日の浅見さんは爽やかである。

それなりにやり切ったという思いと手応えが、次へと歩ませているのだろう。


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特に子どもたちが誇れるような地域をつくりたい。

たとえ都会に出ていかざるを得なくなったとしても、そんな若者たちのためにも

美しい故郷にしたい、と語る。

「四国から出てきたエビさん、どうですか?」

と突然ふられて、一瞬ひるんだけど、まさにその通りだよ。

「田舎が誇れるって、どっか自信につながっているような気がする。」

街に出るしかなかった小っちゃな漁村の三男坊でも、

あの海はいつまでも僕の骨としてある。 

子どもの頃、原発誘致計画をふたつ、潰した地域だ。 蹂躙する奴は許さない。


「喜多方の豊富な地域資源を活かした、最先端の田舎にしたい。」

浅見さんの力強い言葉に、

誰かから 「じゃあ 4 年後!」 の声も挙がる。

いや待て。 4 年後の選挙に出るかどうかよりも、

その時までにどんな地域づくりを進めるかだろう、みんなの力で。


ここで折角なので、報告できてなかった

2月 16日(日) に開催されたフォーラムのレポートも入れておきたい。

「 ~地域の力シンポジウム~

 3.11 東日本大震災と内発的復興

 -農山村と都市の新しい結びつきを考える- 

会場は渋谷区外苑にある 「日本青年館」。


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基調講演は、「地域フォーラム」委員長、出版社コモンズ代表の大江正章さん。

大江さんは、内発的復興に必要な 6 つの視点を提示された。

1.犠牲のシステムからの脱却

  地方、第一次産業、自然、環境に犠牲を押し付けないこと。

  ゲンパツはまさに犠牲のシステムである。

2.地域循環型社会の構築

  第一次産業と地場産業をベースに、商業・金融機関・地域メディアも一体となった

  経済の地域循環を築くこと。

3.経済成長優先主義から脱成長へ

  経済成長(お金) のみを物事の判断基準にしてはならない。

4.内発的な力と外来的な力の交響

  外部からの力を活かし融合させるような地域主体の形成。

  主役はあくまでも内側にあること。

5.自然観の転換

  自然とともに生きる、という思想を育みたい。

6.故郷への想いの継承

  人間関係や風景を含めて、いま暮らすかけがえのない地域こそが故郷である。

 

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そして地域の力を活かした内発的復興への取り組み事例として、

3 つの地域を上げた。

里山の再生から地域特産品の開発、新規就農者の学びの場としての

「あぶくま農と暮らし塾」 を誕生させた

「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」(二本松市東和地区)。

新しい産業づくりを目指してオーガニックコットンの栽培に取り組み、

コミュニティ電力事業を進めるまでにいたった

いわきおてんと SUN プロジェクト」(いわき市)。

壊滅的被害を受けながら、NGOや被災地支援ファンドなどの支援を得て、

漁師たちによる株式会社づくりや共同作業所、アンテナショップの経営

などに取り組む宮城県石巻市北上地区。


地域の魅力を再発見し、若者がその地域を好きになれば、

彼らが地域の元気の素をつくっていく気運が生まれる。

企業誘致や公共事業に依存しても失敗する。

地域は内発的にしか発展しない。


続いて特別報告者として発言したのが浅見さんである。

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大手鉄鋼メーカーを辞め、喜多方市山都町の山間地に移住して 17年。 

山間地農業の役割と現状での問題点を整理しながら、

山間部に残る水路の保全に取り組んだ思い、

そして堰さらいボランティアを受け入れた経過とその効果が報告された。


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地域の宝ものを発掘し、内と外の視点からその意味を再確認し、

担い手を育てる力にしてきたこと。

協働者(ボランティア) との交流から、都市と農村の互恵的な関係を築く。

そのためにはつなぎ役の存在が欠かせない。

新規就農者を取りまとめ、兼業でも生きていけるカタチをつくっていくことで、

後継者が育ち、地域に力が生まれていく。

この里山を慈しみ、誇りを持つ若者たちを一人でも多く育てること。

それが私の役割かな、と。 

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チャルジョウ農場・小川光さんのもとで学んでいた若者たちをまとめ、

「あいづ耕人会たべらんしょ」 の組織化を働きかけた者としては、

それなりに貢献できたか、という自負も密かに持っていたものだが、

いや実は、仕掛けにまんまと乗せられたのはオレの方だったのかもしれない、

いうことにも思い至らせられたのだった。 

もしかして、してやられたのか。。。

でもまあ、ほぼ狙い通りの答えを用意したとは思ってる。


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二人の報告の後は、

福島県有機農業ネットワーク理事長・菅野正寿産をコーディネーターに、

4人のパネラーによる活動報告。

広告代理店の立場で  " 農に触れる "  活動を展開する (株)博報堂の藤井久さん。

国士舘大学文学部准教授で、学生たちの農業体験や交流を続けながら

中山間地での地域発展を研究する宮地忠幸さん。 専門は経済地理学。

持続的な社会づくりのための調査・研究や地域開発支援に取り組む

一般財団法人 CSOネットワーク事務局長・黒田かをりさん。

そして流通という立場から戎谷。

福島の農産物との付き合いから学んできたことをお話しさせていただいた。

それぞれに5分や10分じゃ語り切れない思いを抱えているのだった。


さて、今年も堰さらいには行くしかない。

地域の力を掘り起こし、「内発的復興」 がどういうカタチとなって進むのか、

ここまできたら、とことん付き合うしかない。


最後にご案内。

東京方面から堰さらいボランティアに参加してみたいという方がおられましたら、

直接浅見さんの ブログ からお申し込みください (注意事項はしっかり読んで)。

あるいは大地を守る会・戎谷 にご連絡いただいても結構です。

席が空いていれば、車に同乗も可能です (お約束はできませんが)。

行程は以下の通り。

5月3日:早朝都心発 -大和川酒造店立ち寄り(酒調達) -現地で前夜祭・公民館泊

5月4日:早朝から堰さらい作業 -温泉 -夕方から交流会・公民館泊

5月5日:山都散策(チャルジョウ農場訪問) -帰京

ただし、ゴールデンウィークの渋滞を覚悟してください。

お問い合わせは、戎谷まで。

 ⇒ ebisudani_tetsuya@daichi.or.jp 




2014年3月 5日

ファイトメンテ! 記者発表

 

昨年6月に開催した「放射能連続講座」 でお呼びした

麻布医院院長・高橋弘さんが提唱する野菜の力-「ファイトケミカル」。

講座の後も、何度か医院に出向いては

アドバイスをいただいているうちに、

部署を横断した社内プロジェクトに発展して、

ファイトケミカルをテーマにしたいくつもの商品群が開発されるまでに至った。

 

冷凍スープが 3種類、冷凍スムージーが 3種類、

野菜と組み合わせたドライフルーツが 3種類、

ファイトケミカル基本野菜に人参の葉を加えた粉末スープ、

ティーバック・タイプのベジティー、

そして基本 4種の野菜セット。

これらが何と、一斉同時発売!となったのである。

商品開発はまだこれからも続くとあって、

このシリーズには、「ファイトメンテ」(造語) という冠がつけられた。

 

大地を守る会の新しい商品シリーズの誕生!

ということで本日、少々気合いを入れて記者発表となった。

場所は東銀座の時事通信ホール。

 

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ロビーでは、試飲試食コーナーが設けられた。 

それぞれ3種のファイトケミカル・スープにスムージー、

ドライフルーツ&ベジタブル・・・と並ぶ。

3種とは、ビューティ(抗酸化作用)、リズム(解毒作用)、エナジー(免疫力アップ)

のコンセプトを指し、

例えば、「8種の野菜と大豆のスープ (ビューティ)」 「緑のスムージー (リズム)」

といった格好で展開されていくのである。

 

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参加されたメディア関係者、特に女子の間で

「なにこれ、美味しい!」 「えっ、これイイね。 どこで買えるの?」

といった声が聞こえてくる。

どこで・・・って、大地を守る会に決まってるじゃないスか。

なんて嫌われるようなセリフは吐かず、知らん振りして通り過ぎる。

 

しかし僕が主張したいのは、やっぱこれ。

高橋弘先生推奨、4種の基本野菜セット。

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カボチャ、人参、玉ねぎ、キャベツ。

これを各100g、テキトーに切って、水でコトコト煮て、

スープを飲めば OK! 原体(野菜そのモノ) を買ったほうがお徳なんだし。

忙しい時には、この4種+人参の葉を使った

「ファイトケミカルプラス」 の携帯がおススメ。

普段は畑で捨てている葉っぱを、捨てずに集めてくれたのは、

さんぶ野菜ネットワークの皆さんだ。

 

ま、いろんな形があってもいい。

とにかく、野菜を食べよう!野菜の力を取り込もう。

そのためには野菜は無農薬を選びたい。

人参は皮ごと使うのが基本だからね。

 

次の開発予定のピューレもスタンバイ。

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これらのラインナップによって、少しでも野菜のすごさが伝わればいい。

そして生産者の経営支援につながるなら、言うことはない。

 

発表直前。

スタンバイしたTVカメラは、7台。

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まずは藤田社長の挨拶。

 

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 続いて、山口取締役から

「ファイトメンテ」シリーズの説明。

 

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本シリーズの全体監修は、高橋弘さん。

そして商品開発とレシピ監修が、

アンチエイジングレストラン 「リール」 オーナーシェフの堀知佐子さん。

 

「ではここでスペシャルゲストをお呼びして、

実際に食べていただきましょう」 と司会の斉藤たかこさん。

登場したのは、タレントの水沢アリーさんと岡田圭右(けいすけ) さん。

 

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さすがプロ。 絶妙の掛け合いでファイトケミカルを PR してくれる。

聞くところによると、水沢アリーさんは、

浦和レッズだったかのサッカー選手とラブラブ中 だとかで、

「ジュニア・アスリートフード・マイスター」

の資格取得に向けて 勉強中とのこと。

どうもそっちのネタ狙いで来たメディアもあったようだ。

まあ、それでも明るく 「ファイトメンテ」 を連発してくれて、

仕事意識は外さない。

(アップの写真もたくさん撮ったのだけど、ブログ等での使用は一週間限定

 と釘を刺されたので、遠目のを一枚のみ。)

 

そんなこんなで、僕が今年度のテーマとした ファイトケミカルは、

もはや手に負えないほどの企画 「ファイトメンテ・シリーズ」 となって、

少々派手な船出を果たしたのでありました。

たくさんの人の健康に貢献できれば嬉しい。

 



2014年3月 4日

有機農業こそ復興の鍵

 

「第9回 農を変えたい!東北集会 in ふくしま』

の続き。

 

3月1日(土)夕方、相馬市松川浦 「ホテル夕鶴」 に、

東北を中心に南は九州から、集まった参加者は 150人くらいか。

1 日目は、お二人による基調講演。

新潟大学教授・野中昌法さんからは、「現場と協働した放射能測定と復興」 と題して

二本松市東和地区、南相馬市大田区、飯舘村大久保地区で

地域住民と一体となって取り組んだ測定と対策の経過が報告された。

 

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野中さんの師は、足尾鉱毒事件とたたかった不屈の賢人・田中正造と、

水俣病患者に寄り添い続けた熊本大学の原田正純さん(一昨年没) である。

講演はいつも、原田正純さんが残した言葉から始める。

「弱者の立場で考えること。 そして現場に学ぶこと。」

 


調査・対策の主体はあくまでも、現地の農家である。

農家が主体的に取り組むことで成果が上がる。

研究者はそのサポート役としてある。

生産者・消費者・流通・学者・企業が一体となって理解を深め、

様々なバリアフリーを作ることが大事である。

 

まずは徹底した汚染マップを作成し、実態をつぶさに見通すこと。

田畑 1枚ずつ、あぜ道一本、森林、河川と詳密なデータを取り、

それぞれの汚染の状況に応じた対策を一つ一つ組み立て、実践していくこと。

やっかいな森林では、ウッドチップを用いるなど、

新しい除染試験にもチャレンジした。

そしてデータを取り、成果と課題を確認し、次につなげる。

 

作物へのセシウム移行の理屈が見えてきて、

丹念に土づくりをやってきた有機農業の力も確認された。

今後注意すべきは、ダムから流れてくる農業用水の継続的チェックか。

 

二人目は、東北大学教授の石井圭一さん。

浜通り(相馬、南相馬、いわき、他 7町 3村) のなかでも

南相馬市を中心に調査し、住民の動態(激しい人口減、特に子どもの減少)、

除染の遅れ、鳥獣害の拡大、生産意欲の減退や農業者間の連携不足など、

営農復興への厳しい状況が報告された。

 

そこで石井さんが期待するのは有機農業である。

強い意欲(チャレンジ精神)、技術の多様性、消費者とつながるコミュニケーション力、

横につながっていくネットワーク力、その総合力こそ

浜通りに求められているものではないか、と石井さんは説いた。

 

二日目は、会場を相馬市総合福祉センターに移し、

中島紀一さん(茨城大学名誉教授) の基調講演に始まり、

福祉センターで講師をされている平出美穂子さん(元郡山女子大学) から、

福島県3地方(浜通り・中通り・会津) の食文化が紹介された。

それぞれの地域に残る郷土料理と 「和食」 の豊かさ、

地産地消の価値、なぜ有機農法がよいか、

会津農書が教える伝統野菜の価値、そして21世紀はファイトケミカル!だと。

放射能対策にも役立つ東北野菜の栄養素を見直し、

自然を見つめて師とし、本物の作物を食べてこそ

人間は健康に、死ぬまで元気に生きられる、と結ばれた。

死ぬまで元気に生きる ・・・・僕もそうありたい。

 

次の分科会では、「都市と農村の交流と地域づくり」

というセッションに参加した。

 

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最初の事例発表として、

喜多方市の浅見彰宏さんから、山都町の堰を守る活動のなかで

都市の消費者との輪が広がってきたことが報告された。

当初、堰さらいに都会のボランティアを受け入れることに対しては、

村の人たちには相当の抵抗感があった。

しかし来る人来る人が、水路に感動し、自然に感動し、地元料理に感動し、

リピーターが年々増えてくるに連れ(最初 7名、今 50名)、

地元の人たちは誇りを取り戻すようになってきた。

江戸時代から守ってきた「堰」 が人々をつないだ。

 

交流を続けられる鍵は 4つだと、浅見さんは語る。

地域の宝を守ること、つなぎ役がいること、

担い手が育っていること、協働者(支援者) がいること。

 

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分科会コーディネーターの谷口吉光さん(秋田県立大学) が、

東北各県で展開されるようになった 「オーガニックフェスタ」 の

意義と概要を紹介し、

それを受けて、3人の方が各県でのフェスタの報告を行なった。

皆、大地を守る会に米や野菜を出荷してくれている生産者である。

なんだか、誇りたくなる。 

 

岩手・大東町有機農産物等生産組合の小島幸喜さん。 

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秋田県有機農業推進協議会の相馬喜久男さん(大潟村)。 

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山形からは、おきたま興農舎(高畠町)の小林温さん。

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共通して語られたことは、県内の有機農業者をつなげたこと。

県内の消費者に、有機農業が地域に存在することを知らせたこと。

「 来場された秋田の人から 『私は大地を守る会から買ってる』 と言われて、

 それはショックでしたよ」(相馬さん)

・・・って、相馬さんだって「大地」 に米を出荷してるんじゃん。

そこで笑いをとるかぁ。 僕も笑ったけど。

 

「 ほとんどの日本人が農と離れて暮らしている。

 なぜ交流が必要かと考えると、

 いのちを実感するというか、生きる力を与え合うっていうか、

 食の距離を縮めることができるからだと思う。

 農業は、コミュニティをつくるんですよね。」(小林さん)

 

有機農業が目指す社会・世界を表現し、人をつなげる。

そのために新しい 「祭り」 が生れている、ということ。

「オーガニックフェスタ」 という祭りは、2004年に東京で始まり、

2008年に鹿児島に飛び火し、そして東北各県で花開きつつある。

まだまだいくぞ。 広げなくてはね。

 

午後にはミニ・シンポジウムがあり、

この二日間で作られた輪だろうか、「若手の会」 や 「女性の会」 から

交流の成果が発表された。

 

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最後に、実行委員長・渡部よしのさん(「あいづ耕人会たべらんしょ」メンバー)

から大会宣言が読み上げられた。

 

   困難に取り囲まれている福島の人々が懸命な復興の努力をされ、

   そこから無数の希望が生れていること・・・

   「オーガニックフェスタ」をはじめ地域の新しいネットワークと

   都市と農村の新しい関係が生まれていること・・・

   逆風のなかで新しい新規就農者が生まれ、地域で受け入れていること・・・

   こうした農の営みから生まれる人と人の新しいつながりを大切にし、

   経済至上主義や TPP の波に対抗して、

   農の持つ価値を若い世代に伝え、人とふるさとが輝く地域の力を

   東北から発信していきましょう。 

 

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『人とふるさとが輝く東北へ

 -食と農の再生をふくしまから-』 終了。

 

なにかあるたびに福島に足を運ぶのは、

福島への連帯という以上に、

自分自身の行動原理をたしかめるためでもある。

この地の再生・復興を果たして未来に残すことは、

我々世代の義務だと思う者であり、したがって

このつながりを捨てることは、諦めることは、

" 私自身の敗北 "  (赤坂憲雄さんの言葉) を意味するからだ。

 

二日目の全体会場で、

ローソンと資本提携した大地を守る会を非難する発言もあった。

指摘された事実がメチャクチャな誤認に基づくものだったので、

そこはしっかり訂正させていただいた次第だが、

これからの行動はみんなが注視していることを忘れてはいけない、

ということなんだろう。

ちょっとしたことで世間は誤解し、悪意で噂が広がる、ということもある。

襟を正しつつ、見てろ! と言うしかない。

 



2014年3月 3日

農を変えたい!東北集会 in ふくしま

 

土日のイベントや出張が続く。 これで 6週目。

3月1日(土)~2日(日)は、

「農を変えたい!東北集会 in ふくしま」 に参加した。

「農を変えたい」 東北シリーズも各県持ち回りで 9 回目を数え、

今年は福島県相馬市での開催の運びとなった。

浜通りの現状を見てほしいという思いを込めて、

あえてこの場所にした、と主催者から聞かされた。


3月1日午前10時半、仙台駅から貸切バスにて出発、

仙台東部道路を南下する。

名取川に差し掛かった瞬間、あの日の津波の映像が蘇る。

名取市から亘理(わたり) 町にかけて、

整地された地面の上にハウスの団地が立ち並ぶ光景を目にする。

かすかに映る中の影は、イチゴの水耕か高設栽培に見えた。

農が土から離れていく・・・・

 

福島県新地町に入ると、

地元のおじちゃんやおばちゃんが 5人ほど乗り込んでくれた。

当時の様子や復興の現況を聞かせてもらいながら、

被災現場を見る。

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人の気配なく、地盤だけが暮らしの形跡を留める。

こんな場所がいたるところに、まだ残っている。

 

破壊されたままの防波堤。

内側も海水に浸かっている、というか

海の中に捨てられた瓦礫のようだ。

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東北学を提唱する民俗学者、赤坂憲雄さんの言葉を思い出す。 

昔は潟として存在していた海縁の場所が、

人口増加とともに埋め立てられて、

人々は海へ海へと生活域を広げていったのだが、

津波はそのような場所をことごとく飲み込んで、

3 年経った今でも湿地状態のまま、というところが多いらしい。

 

「潟に返してやればいいんじゃないか」

と赤坂さんは語っていた。

(『3.11から考える 「この国のかたち」』 新潮選書、および

 『被災地から問う この国のかたち』 イースト新書/玄侑宗久さん・和合亮一さんとの共著)


3 年前の3月にあった境界は、その時点のものでしかない。

それを太古から決められた境界であるかのような前提に立って、

その線引きでどデカい防潮堤を築くことへの違和感が、

どの程度の割合かは分からないけれど、

被災地の人々の心にくすぶり続けていることを、

赤坂さんのひと言が物語っている。

 

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荒涼とした風景に、参加者の会話も続かない。

ため息ばかりが伝わってくる。

 

電車が走ることもなくなった常磐線の線路。


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「今でも一時停止してしまうんですよね。」

笑えない・・・

 

しばらく瓦礫の海と化していた農地も、

遠くは横浜や北海道あたりから土が運ばれ、

だんだんと修復されてきている。

しかしその土も、黄色かったり強酸性だったり、

農地に適さない土が入れられたという。

これはただの土木仕事であって、農業土木の技術ではないと。

・・・なんでこうなるんだろうね。

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一見きれいに整地された田んぼだが、

これから先、はたして作る人がどれだけ残っていくか、

という声も聞かれる。

かたち的には修復されつつあるのだが、

 3.11 前の風景とは違うものに変質していってるような、焦燥を感じる。

 

南相馬市に入り、

大田村地区での試験水田を視察。

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農地除染をやれてない水田で、

新潟大学の野中昌法教授らの支援のもと、

コメづくりの試験栽培が行なわれたのだが、

なかなか思うような結果に到達していない。

試験を続ける必要がある。 しかし農家の体力が・・・・


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除染を兼ねて油脂作物(ヒマワリやナタネ) の栽培を続ける

杉内清繁さん。

賠償金の対象からはずされても、農地回復に挑み続けている。

未来のために。

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あてのない避難ほど辛いものはない。

年寄りは帰ってきたが、若者たちは帰ってこない。

4年続けて作付できないとなると、、、

もう取り戻せないかもしれない。 そんな言葉が重く響いてくる。


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福島の復興なくして、日本の復興はない。

多くの人が言い続けてきた言葉である。

しかし風景は、厳しいままだ。

希望は人の心からしか生まれないのだが、

思いと現実の乖離が埋まらないまま、

時間というやつが無情にその芽を摘んでいってるようだ。

 

それでも信じている人たちがいる以上、

僕らは歩みを止めるわけにはいかない。


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視察後は、東北各地から集まってきた参加者とともに、

相馬市松川浦で操業再開にこぎつけた 「なぎさの奏 ホテル夕鶴」 に参集。

二日間にわたるセッションに入る。

テーマは

『人とふるさとが輝く東北へ -食と農の再生をふくしまから-』。


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続く。




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