三番瀬・アオサ: 2008年5月アーカイブ

2008年5月25日

高校生たちへのお詫び

 

5月17日 (土) に行なったアオサ回収大作戦に参加してくれた

船橋市内の高校の生徒さんたちから感想文が届けられた。

それを見て、

僕は今、自分の感性を少々恥じ入っているのであります。

 

当日の日記では、ダラダラやっているとか、いやいや連れてこられたと思ってんじゃないかとか、

性格の悪いオヤジぶりを発揮してしまったが、

なかなかどうして、彼らは真面目に考えてアオサ拾いをやってくれてたのである。


   ・アオサの役割を知れて、とっても楽しかったです!!

   ・先輩との関係もより深くなり楽しく行なえた。 生物観察会では、

    知らなかった知恵や生物たちの名前を覚えられて、いい勉強になってサイコーでした。

   ・地球にはたくさんの生き物がいる。 東京湾は広かった。

   ・白いアオサは死んでいるのです。

   ・アオサをたくさん取りましたが、散乱していたゴミも取りたかった。

   ・磯の生物が海や砂浜の役に立っていることを知り、感動しました。

    もっと海のことが好きになりました。

   ・ボランティアは初めてで大変でしたが、やってみたら楽しかった。 

   ・思った以上にアオサの量があり、回収していくうちに、たくさん集めれば

    肥料やトリのエサになり、生き物のためにもなると思うと、もっと回収しなきゃと思いました。

   ・アオサの利用範囲が意外と広いことを知った。 エサとか肥料になるってすごい!

   ・取っても取っても減らないアオサに、少し疲れました。

   ・どこまで行ってもアオサが落ちていて、地球のためにも、また拾う機会があったらいいな。

   ・アサリなどの貝が水を浄化する力は凄いと思った。

   ・生きるのってのは、知恵もいっぱい! 

    海と生物は大切で、循環しているんだなと思いました。

   ・アオサを食べてみたいかも。

   ・船はやっぱり風が気持ちよかった。 スッキリする。

   ・ゴミが多かった。 アオサ回収は最初は楽しんだが、すぐあきちゃいました。

   ・フジツボが生きてたっ!

 

素直な感想が並んでいる。

僕はどうも、" 今どきの高校生 "  に対して、

もっとスレッカラシのようなイメージを持ちすぎていたかもしれない。

幼い感じは否めないが、ちゃんとポイントは見てくれていたようで、

ありがとう、と言いたくなる。

いやその前に、印象だけで判断していたようでゴメン、と謝っておきたい。

 

海の広さを感じて、自然と生命のつながりを発見して、

ヒトの所作から出たゴミに何か思って・・・

どうか、そのまま終わりにしないで、思考と想像力を深めていって欲しいものだ。

オベンキョーは苦行かもしれないけど、学びというのはゼッタイに面白いのだよ。

 

先生からは、今回の活動が深く心の中に残ったこと、

今後も日程が合えば参加を続けたい旨の手紙が添えられていた。

 

今度来たら、ちゃんと名前を覚えてあげよう。

想像力を刺激する仕掛けも、なんか用意して。

 



2008年5月17日

高校生たちと一緒にアオサ回収

 

予想を超える 『カンブリア宮殿』 の余波がずっと続いていて (良い反響という意味です)、

問い合わせの対応に追われる職員を横目に、ちょっと複雑な心境の男が一人。

加えて、4月の日照不足に続いて5月に入ってからの低温で、野菜の出荷が芳しくない。

仕入担当部署としては、どうにも気分の晴れない日々である。

野菜同様、ブログのパワーもすっかり落ちてしまっているのが、我ながら分かる。

 

そんな中で、土日連チャンのイベントに突入する。 

 

ここはひとつリフレッシュといくか、と気合い入れ直して、朝6時前から始動。

向かったのは 「ふなばし三番瀬海浜公園」 の砂浜。

4月19日に予定していたアオサの回収作業が、天候事情で中止となり、

今日に延期となったものだ。

しかし公園からの事前情報では、潮干狩りの団体予約も多数入っていて、

浜は間違いなく満杯になるだろう、とのこと。 

たしかに、それを見越して6時半に到着したにもかかわらず、すでに屋台まで開店しているではないか。

天気も良くなってきて、本当に出足が早い。

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ほとんどが潮干狩り目当ての来場者たち。

アサリだけじゃなく、目の前の浜の様相も見て欲しいものだが...... 

波うち際にビッシリと打ち上げられ、敷き詰められた緑の絨毯。

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去年の秋 (07年10月28日付) も報告したが、

これが東京湾に流れてくるチッソやリンを吸収して大量に繁茂する海藻・アオサである。

景観が損なわれるだけでなく、これが海に大量に発生することで

漁師からも 「やっかいもの」 と蔑(さげす) まれている。

でもそれはアオサが悪いんじゃなくて、過剰に流されてくる栄養分のせいなのだ。

したがって、これを回収して資源として循環させる。

2000年から船橋の漁師さんたちと取り組んできたプロジェクトである。

 

今回は嬉しいことに、船橋市内の私立高校の生徒さんたちが参加してくれた。

そこで、高校生向けに解説する。

  こいつらは東京湾をメタボから守ってくれているのです。

  これを畑の肥料や家畜の飼料として再生させます。

  それによって栄養分が海と陸を循環して、環境のバランスが維持され、

  東京湾の生態系も守られます。

  三番瀬の干潟は、その貴重な場所なんです。

 

ちょっとひ弱に見えるも、意外と真面目に、でもちょっとダラダラと、

アオサ拾いに協力してくれる高校生たち。

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そして、実はこの日、環境省の委託を受けた映像制作会社の取材も入った。

環境省が策定した 『生物多様性国家戦略』 のシンポジウム用にデモ映像が作られていて、

生物多様性を守るための取り組みの事例として紹介したいとのことである。

環境省の生物多様性戦略・・・・ふ~ん。

どんなもんか、じっくり見させていただきましょう、とか言いながら協力する我々。

アオサの回収や利活用の取り組みは他にもあるが、

「漁師と農家の連携で循環型社会づくりを」

という我々のコンセプトが、今回の映像撮りのポイントになったようだ。

 

アオサを拾う高校生にカメラが迫り、感想なんか聞いたりしている。

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無理やり連れてこられた、とか言ってるんだろうか......

 

楽しそうにやってくれる子たちもいる。

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やってる意味を分かってくれたのかどうか......でもまあ、話はちゃんと聞いてくれたし、

そこそこ取ってはくれたので、よしとしよう。

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上の写真、後方右から3人目のダンディな親父が、

一緒にこのプロジェクトをやっているNPO 「ベイプラン・アソシエイツ」 の代表、大野一敏さん。

『東京湾で魚を追う』 という著書もある、船橋漁業協同組合の組合長さん。

実際の東京湾の広さ、豊かさ、そして海の大切さを分かりやすく語ってくれた。

 

「ボクたちはね、地球を食べてるんだ。 その地球といつまでも共存していくために、

 今日、みんなはスゴイ仕事をしたんだよ」  -カッコいい! 

 

さて次は、お馴染み(?) となった生きもの博士・陶武利さんによる、磯の自然観察会。

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東京湾の位置の確認からはじまり、周辺の暮らしとのかかわりが語られ、

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干潟の生きものを観察し、彼らが果たしている役割を伝えてゆく。

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このアオサも、いつの間にか、消えてなくなる。

それはここにたくさんの小動物がいて、食べてくれているから。

その小動物を鳥が食べ、糞を分散させて、自然界の帳尻が合う。

掃除屋といわれる微生物や小動物がいなくなったら、

この世界は 「糞と死骸」 だらけの世界となる。 いや、生命はすべて死骸となって終わっている。

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手に持っているのはサンゴ。

海の植物や貝たちは地球のCO2を閉じ込めてくれる、とても大切な働きをしているのです。

それを最後に実験で確かめる。

 

生徒さんたちは、ちゃんとレポートを書きます、と言ってくれた。

すっかり環境教育の授業となった、今日のアオサ回収でありました。

 

さて、アオサをトラックに積んで、

同僚の吉田 (専門委員会 「おさかな喰楽部」 担当理事) が

埼玉の養鶏農家・本田孝夫さんちまで走るのを見送ったあと

(アオサはTHAT'S国産卵の醗酵飼料の材料として活用される)、

わが方 (専門委員会 「米プロジェクト21」) は、今度は山武へと向かう。

 

明日は、いよいよ今年の 『稲作体験』 の田植えである。

若手職員のスタッフが、すでに現地でその準備に入っている。

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田んぼに着いたときには、もう苗の準備 (畑の苗代から移した状態) ができていた。

今年は手際がいい。 苗もまあまあだ。

残りの作業をやって、田んぼに設置する看板をつくって、

地主・佐藤秀雄さんの納屋でバーベキュー。

美味い日本酒をキュッとやって、蛙の声など聞きながら、車で寝る。

 



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