放射能対策: 2012年6月アーカイブ

2012年6月30日

それぞれのポジションから、ひとつの目標に向かって

 

みんな集まれ!! 6月29日

電車に飛び乗れ!

首相官邸前だ・・・

 

6月29日。 今日も産地に向かうとするか、、、というお出かけの直前。

こんな呼びかけがネットから入ってくる。

作家・広瀬隆さんからのメッセージだ。

 


大飯原発の再稼動に反対する声が、どんどん広がっている。

" あじさい革命 "  なる言葉まで生まれたらしい。

先週金曜日の首相官邸前のデモには、5万人の人々が集まったという。

そして今夜、さらに大きな輪で首相官邸を取り囲もうと、

ネットでの呼びかけが、どんどん広がっている。

 

この首相官邸前デモをまともに報道しようとしないマスコミに業を煮やした

広瀬さんは、ついに100万円でヘリコプターをチャーターした。

俳優とサラリーマンの兼業となった山本太郎さんが空からレポートするという。

この計画の実行をカンパで賄いたい、と呼びかけている。

カンパ第1号は、カンパの管理を引き受けられた城南信用金庫の理事長、

吉原毅さん。 この方も、哲学を感じさせる人物である。

 

う~む・・・ 行かねば。 行かねばだけど、これから僕はある地方に向かう。

産地での放射能対策を支援することが、僕の本来の任務である。

運動はまだまだ続く。 今日で終わるわけではない。

ここはカンパで、と決めて産地に走る。

それぞれのポジションで、最大限できることをする。

その力をネットワークして、新しい時代を創出してゆくのだ。

若い頃、コワい先輩たちがよく使っていた言葉が、蘇る。

" それぞれの砲座から、ひとつの目標を撃て! " (レーニン)

 

夜帰ってから報道やネットをチェックすれば、

集まった群衆の数は、15万とも20万とも言われている。

1万7千という警察発表だって、スゴい数字だ。

 

とにかく、大飯原発再稼働は、暴挙である。

民意も踏みにじって、なりふり構わず稼働の実績づくりに突っ走っている。

いろんな意味で熱い " 夏の陣 "  になりそうだ。

 

既存報道がアテにならない今、みんなの力でヘリを出し、

空から全国に巨大デモの全景を伝えよう。

そうか。 100万円集めれば、ヘリが出せるのか。

そう思った方も多いのでは。

 

このヘリ・カンパにご協力いただける方は、下記へ。

  ◆城南信用金庫 営業部本店

    普通預金口座 822068

    口座名: 正しい報道ヘリの会 (命名者は吉原毅さん)

当日の様子をまだ見ていない方は、こちらからどうぞ。

⇒ http://www.youtube.com/watch?v=-ooBV4Lrg-k

 

来週は・・・ 行くしかないか。

 



2012年6月26日

科学者国際会議と現場の知

 

23日(土) から昨日まで、二泊三日で福島を回ってきた。 

23~24日は、猪苗代にある 「ヴィラ イナワシロ」 にて、

『市民科学者国際会議』 に参加。

でもってその帰りの足で、須賀川の「ジェイラップ」を訪問。

代表の伊藤俊彦さんと、米の対策の現状確認と、これからの作戦会議。 

秘密の会議とか言いながら、所はばからず、お互いでかい声で

深夜まで語り合った。

 

「ヴィラ イナワシロ」 - ここに来るのは2年ぶり。

e12062501.JPG

2年前の 『有機農業フォーラム』 では、総料理長・山際博美さんの手による

地産地消の料理に感動したのだったが、山際さんは昨年独立されて、

あの美しい料理に出会うことができなかった。

それどころか無残にも変貌していて、正直言ってがっかり、のレベル。

今回は特に海外からたくさんのゲストが来られたのだから、

自然豊かな猪苗代の風景とともに、和の料理を堪能してもらいたかった。

短期間で準備を進めた実行委員会を責めるつもりは毛頭ない。

哲学を持った一人の料理人、こういう人の存在の大きさを、

改めて実感した次第である。

 

e12062502.JPG

 

さて、『市民科学者国際会議』 。 

3.11以降、放射能汚染と被曝の影響を最小限にすべく取り組んできた

科学者と市民が一堂に会し、内部被曝の知見を持ちより、

放射線防護のあり方や今後の方向性について語り合う。

科学を市民の手に、市民のための科学を、そんな視点を共有する人々が

ヨーロッパ各国から、そして日本から集まった。

 

会場内での撮影や録音は禁じられたので、写真はなし。

丸二日間の会議内容は多岐にわたり、ここではとても整理し切れない。

いずれ細切れにでも触れてゆくことで、ご容赦願いたい。

概要は特設WEBサイトにて ⇒ www.csrp.jp

 


ここで僕の勝手な印象に基づく全体的な共通認識をまとめてみれば、

1.「(生涯被ばく量が) 100ミリシーベルト以下であれば人体への影響はない」

  という国際基準は、内部被曝の影響を極めて過小評価しており、

  核や原発を推進する立場からの、政治的な判断である。

2.低線量被曝の影響の大きさを示唆するデータはいくつも出てきているが、

  科学的エビデンス(因果関係の立証) を求められているうちに、

  たくさんの被害が抹殺されていっている。

3.放射能による健康危害はガンだけでなく、

  様々な疾病との関連から精神的影響まで、幅広く考えなければならない。

4.福島での国の対策は非常にお粗末なものであり、今も遅れたままである。

  救いは、民間レベルで必死の対策が取られてきたこと。

  医療や健康相談などでもたくさんの医師がボランティア的に支えていること。

  (その裏返しとして、国への厳しい批判や怒りの言動となって表われる。)

 

今回の座長を務められた

ドイツ放射線防護協会のセバスチャン・プフルークバイル博士が、

最後のまとめで語った言葉。

「(内部被曝に対する) 過大評価と過小評価の、両極端を乗り越える

 新しい方向に向かわなければならない。」

 

過小評価には 「そうしたいから」 という意図があり、

それが真実であったとするなら、「それはよかったですね」 ですむのだが、

逆の結果が明らかになってきた場合に対処できない恐れがある。

被害や影響は多少過大に見積もって、そこから対策を考えることで、

被害を抑えることができる。

ここに 「予防原則」 の意味がある。

 

福島県内から参加された方、あるいは福島から避難したという方々には、

科学者の厳密な論争はストレス以外の何物でもなかったようだ。

「あなた方は (福島の現状を前に) いったい何を議論しているのか!」

といった声が上がった。

手弁当でここまで来られた科学者や医者に向かって失礼な罵声だとは思ったが、

行政の対応などにイラ立ちながら暮らす人々からの、

切実な期待なんだと受け止めてもらうしかない。

 

科学と市民は、いつだって彼岸で対峙しているわけではない。

科学者が対立している間にも、その狭間で日々判断しながら暮らしている。

長い時間をかけて立証される疫学調査の、

結果が出るまで思考を停止しているわけでもなく、

疫学的思考は科学者だけが行なっているわけでもない。

市民は市民なりに  " 科学している "  のである。

科学者はそのレベルをよく理解して、知の橋渡しをする必要がある。

科学の言う  " リスクコミュニケーション "  がうまくいかない時というのは、

だいたい初動から相手を理解できていないことが多い。

 

報告の中で驚いたことは、

フランスで福島由来と判断されたヨウ素131が検出されていたという事実。

私たちが思っているよりずっと、外国は事態を冷静に分析していて、

僕らは本当に事実がちゃんと知らされているのだろうか、

という不安が捨てきれない。 このことこそが問題だ。

 

かたや、徹底的に事実を自分たちのモノにしたいと、

測定器を届けた途端に、何から何まで測り始めたジェイラップの生産者たち。

彼らは今、自分たちの土地の状態を、誰よりも把握している。

 

e12062503.JPG

学者も舌を巻いた、汚染MAP。

これをもとに対策を立て、今年はもっと高みを目指す。

 

本邦初公開。 田んぼごとの土質のマッピング。 

e12062504.JPG

 

e12062505.JPG

 

土質の違いによる養分吸収力も把握し、適正な施肥設計を立ててゆく、

というのが本来の目的だったはずだが、

これが放射能対策にも活かされることになる。

 

考えられるだけ考え抜いて、とにかく、実践する。

結果は何らかの形で、その行為に反応してくる。

伊藤さんはほとんど仮説に基づいて動く実践主義者なのだが、

僕はこれこそ科学者の資質だと思ったりするのである。

 

一人田んぼを見つめる伊藤俊彦がいる(左端の畦の上)。

e12062506.JPG

 

今年の成果が、思った通り! となるかどうかは、まだ判らない。

 

伊藤さんとの秘密会議の内容は、秘密です。

 



2012年6月15日

レンコン産地を守る " 7人の侍 " に

 

今日は、茨城は土浦にやってきた。

大地を守る会が契約しているレンコンの生産者たちに集まってもらって、

放射能対策の会議を開く。

 

レンコンは田んぼでの栽培だから、当然水が入る、しかもたっぷりと。

川は山からいろんな養分を運んできてくれるが、

いま気をつけなければならないのは放射性物質の移動である。

どう推移するかは予断を許さない。

漠とした不安を抱きながら過ごすより、しっかり現実を捉えながら、

できれば先手を打ってガードしておきたい。

 

古くからのお付き合いである 「常総センター」 の加工施設 「北斗の会」 事務所に、

レンコン契約農家7名全員が集まってくれた。

e12061501.JPG

 

我が方からは、これからの経過観察で協力をお願いした上田昌文さん

(NPO法人市民科学研究室代表)と、

対策資材の検討をお願いした資材メーカーの方をお連れした。

 


昨年の測定では、セシウムが微量ながらも検出された所と、

まったくされなかった所がある。

どうも水系や場所によって違いがある。

e12061502.JPG

 

そこで、全員の蓮田の位置を確認し、昨年のデータを突き合わせて、

これからの継続的測定を実施する場所を検討する。

そこで土と水の状態を確かめ、入ってくる水を継続的に測定する。

またセシウムを吸着する資材を選択し、施用して、比較試験を行なう。

合い言葉は、「今年のレンコンからはゼッタイに検出させない」。

 

 

人によっては、こういう対策や測定を行なうこと自体、

まるで汚染されているみたいに映って、また風評被害を生む、

という懸念を示す生産者もいる。 

しかし、現実をベールにくるんで 「安全」 を標ぼうすることはできないし、

ひとたび予想を超える事実が発覚した際に (それは想定外ではないはずだが)、

" 対策がとられていない "  ということのほうがずっとヤバイ。

それは昨年の経験で痛いほど感じたはずだ。

 

食べる人の健康に責任を持ちたい、

そう願う生産者であれば、現実に立ち向かっていくしかない。

声をかければ、「待ってたよ~、エビスダニ君」 と言って

一斉に集まってくれる生産者を持っていることは、誇りにしたい。

 

「よし、やろう。 良いもんなら試してみよう。 もっとデータがほしいな」

と常総センター代表・桜井義男さんは反応し、みんなにハッパをかけてくれる。

僕も、ゼッタイに成果を上げて見せたい、と決意を新たにするのである。

 

e12061504.JPG

 

この対策は、7人の農家のためだけではない。

秋になって、この一大産地に悲劇が起きてはならないのだ。

この地域を守る  " 7人の侍 "  になったくらいの気分でいきましょう。

人智を尽くし、胸を張って、美味しいレンコンの収穫を迎えたいと、切に思う。

 



2012年6月 4日

「放射能連続講座」スタート。 壁を見せつけられた第1回。

 

この土日(2日・3日) は結構ハードな週末だった。 

2日は、「放射能連続講座」 第1回の開催。

3日は午前中、千葉・山武で 「稲作体験」 田の草取りをやって、

夕方には渋谷・アップリンクで 「フード・インク」 上映後のトーク出演。 テーマはTPP。

頭を切り替えながら、何とかやり終えたって感じ。

では順次報告を。

 

6月2日(土)、

「大地を守る会の 放射能連続講座 ~『食品と放射能:毎日の安心のために』~」

第1回のテーマは、まずは入り口として、

「今後の影響をどう予測し、どう心構えをするか」。

講師は、NPO法人市民科学研究室・代表、上田昌文(あきふみ)さん。

質疑のコーディネーターは、 " やまけん "  こと山本謙治さんにお願いした。

会場は、杉並区立産業商工会館。

e12060401.JPG

会場キャパは160席のところ予約満杯となり、椅子の増設も許されず、

お断りせざるを得なかった方々には申し訳ありません。

 


上田さんのお話しは、

原発事故による放射能汚染によってもたらされた事態の重さから始まった。

放射能汚染によって地域の自然資源が利用できなくなったこと、

畜産と農業の連携で廃棄物=資源とする  " 循環 "  を断ち切ってしまったこと、

そして地域社会の絆の分断。

 

かつてないほど広範囲で長期の環境汚染によって、

ありとあらゆる食品が多少なりとも汚染されてしまった。

この実態をどう把握し、生産者の立ち直りと消費者の安全を確保するか。

しかも消費者にとっての守りの綱である 「食品基準」 自体に

深い疑義が生まれてしまっている状況において。

 

e12060402.JPG

 

汚染の実態や放射性物質の挙動の 「把握」 と 「対策」 を

適切に関連させながら並行して進めていく必要がある。

様々な測定データを集め考察しながら、問題点を洗い出し、

低減化対策に活用し、また検査の実態や課題も冷静に判断しながら、

個々の農産物の計測の濃淡を合理的につけて、

それを消費者にきちんと知らせていくことによって

「風評被害」 と言われるような事態を乗り越える道筋が見えるのではないだろうか。

 

リスク管理の観点で見るならば、例えば発がんを恐れるあまり、

セシウムだけゼロを求めて他のリスク因子を摂り入れては意味がなくなる。

リスク因子は多様にある。

しかし今の放射能汚染が、他の化学物質や例えば「塩」(ゼロでも摂り過ぎても危険)

などのリスクと決定的に異なることは、

状況が正確に見えず、したがって 「危険度」 も見えない、

という不安が先行していること。

また低線量曝露の影響についての科学的見地が分かれていることもあって、

「曝露ゼロ」 が 「安全」 を確保する唯一明確な防護手段だととらえられてしまう

傾向になってしまうこと。

 

上田さんは、各種のデータを紹介しながら、

まずはこの間出されている測定データや、農地での低減化対策を検証し、

今の状況をできるだけ正確に把握することを勧める。

その上で、汚染食品の内部被曝リスクの低減化に向けての課題を上げる。

・汚染状況と流通状況に応じた 「低減化のためのガイドライン」 が必要。

・合理的な計測体制 -やみくもな測定から、状況を踏まえた選択と集中へ。

・給食への特別な対応 -地域内の学校同士のデータ共有など。

・妊婦と乳幼児のための厳しめの摂取制限の設定。

・海産物検査態勢の強化 (ストロンチウム含め) と全データの公開。

・内部被曝評価では、「平均」 で見るのではなく、例外的に高くなっている場合の究明が肝心。

 

「風評被害」 的状況を乗り越える取り組みでは、

とにかく、個々の食品の計測によって汚染の濃淡を合理的につけていき、

それを消費者にきちんと知らせていくこと、

そして生産者や消費者といつでも対話できる状態を築くこと。

 

e12060403.JPG

 

時々裏方にいたりしたので、断片的な整理でご容赦願いたい。

詳しくは USTREAM の録画 をアップしてますのでご覧ください。

 

後半は、やまけん にバトンタッチ。

大地を守る会の測定の現状なども説明する必要があるのでは、

という彼のアドバイスも受けて僕も壇上に上がり、上田さんと3人でのディスカッション、

そして質疑応答、と進めた。

 

しかし僕が登壇したことで、 上田さんの講演内容に対してより、

大地を守る会への質問が増えてしまったように思う。

僕も必死で答えようとして、話が長くなってしまったりして。

また説明しようとすればするほど、

こちらの考えを押し付けようとしていると受け止めた方もいたようだ。

コミュニケーションとは、実に難しい。 

 

今回はネットで中継して、ツイッター等で視聴者からの声を拾う、という手法も試みた。

そこで仕掛け的に、ひとつの同じ質問を冒頭と最後に用意した。 

 「検査して、ND(検出限界値以下)が確かめられたものであれば、

 福島県産の野菜を購入しますか? YES、NOでお願いします。」

講座開始冒頭での回答は、両者互角、 5:5 という感じ。

最後での回答は、YES=5.5、NO=4.5 、いやもっと僅差、10:9 という感じ。

放射能という問題の根の深さを思い知らされた格好になった。

 

ツイッターでこんな声が届いた。

「 " 食べられない "  という人を、責めないでほしい」

責めてなんかいない。

ただ、頑張っている生産者を支援してほしい、と訴えているのだけど、

これも押しつけのように聞こえてしまっているのだろうか。

難しい、いや実に。

 

つながりの修復を目指して、模索を続けたい。

次回は、7月7日(土)、時間は同じ午後1時半から。

場所はタワーホール船堀。

講師は白石久二雄さん。 コーディネーターは鈴木菜央さん。

テーマは、「正しい食事こそ最大の防護」 。

詳細はHPにて ⇒ http://www.daichi-m.co.jp/cp/renzokukouza/

 

最後に、アンケートの中に、次の一文を発見。

「戎谷氏、マイクに口近づけ過ぎ。」

つい一生懸命になっちゃう性(さが)。 反省・・・・・

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ