あんしんはしんどい日記: 2009年1月アーカイブ

2009年1月29日

「稲作を守る会」 の麦

 

1月25日(日)、福島からの帰り途。

宇都宮から在来線に乗り換え、石橋という駅に降りる。

ここにも有機稲作の技術を語るに外せない、一人の指導者がいる。

NPO法人 民間稲作研究所」  代表の稲葉光圀さんである。

高校教師の時代から、無農薬・無化学肥料、除草剤も使わない稲作技術を追い求め、

それを 「技術体系」 へと高めてきた研究者であり、実践者。

 

でもこの日の目的は、米ではなくて、麦、なのである。

昨年、小麦の販売のお手伝いをしたのがきっかけで、

今年はその安定化に進められるかどうかを確かめたくてやってきた。

 

稲葉さんは、NPOの民間稲作研究所とは別に、実際の生産者集団として、

(有) 日本の稲作を守る会という会社をつくっていて、今回の訪問先は、

正確には稲作を守る会ということになる。

 

これが有機栽培の小麦畑。

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種を蒔いて、踏んで踏んで強くして、土寄せすることで病気を防ぐ。

慣行栽培は、その寄せる空間がなく、密植で、病気予防は薬に頼ることになる。

「麦の有機栽培は十分可能なんです。 誰でもできるんですよ。」

そういいながら、稲葉さんは、普及に努めている。 

 

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稲葉先生を知る皆さん。 稲葉さんはちゃんと農作業もやってます。

 


稲葉さんの栽培体系は、米-麦-大豆の2年3作の輪作をとっている。

マメ科の大豆を入れることによって、空気中の窒素が土壌に固定され、

米の肥料代も軽減される。

加えて、これで米、味噌汁、しょうゆの自給率も上がるってわけだ。

 

稲葉さんは栃木県唯一の民間の種籾生産者でもあるらしい。

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周辺との交配を避ける地理的条件だけでなく、

その栽培技術が品質的にも信頼されていることが窺える。

 

下の写真の左端の台地では、研修施設が建設中である。

若者が常駐して有機農業を学び、また消費者と交流できる施設。

ここにも有機農業推進法をカタチにする取り組みがある。

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その手前の栗林の一角に、益子焼で焼いたパン焼き釜を設置して、

100羽ほどの鶏も飼って美味しい卵に鶏糞も確保して、、あそこはこうして・・・・・

と、稲葉さんの夢は尽きないようだ。

目の前のスペースは、稲の苗代作りのためにとってあり、苗を植えたら、

消費者に開放して野菜作りの体験ほ場にする計画とのこと。

講演会やシンポジウムなどで会うより、ずっと生き生きしている。

 

そんな稲葉さんを悩ましているのは、米の生産調整 (減反) のための

書類作りだという。

先に書いたとおり、稲葉さんたちは米-麦-大豆と回すので、

米は2年に1作となり、単純計算で50%の生産調整、つまり減反超過達成農家となる。

しかしこれは米の生産調整に協力してやっていることではなくて、

稲葉理論における有機栽培体系であって、なんでわざわざ面倒くさい書類を

出さないといけないのか、というわけだ。

でも書類を出さないと、減反非協力者となり、地域に補助金が下りない。

 

有機農業推進が進められる一方で、

非民主的なやり方での強制も厳然とまかり通っているのが、この国の農政である。

 

米を作らせないために補助金 (税金) を使う。 しかも地域的縛りを利用して。

そんなお金があったら、麦や大豆・飼料作物の生産にもっと進んで取り組めるよう、

あるいは地域の特性に合わせて、地域が活性化するためにこそ使うべきだろう。

 

生産調整を進めるためのお題目である、

「米が過剰になったら価格が下落して、農家がやってゆけなくなる」

という理屈は理屈ではなく、農家を馬鹿にしたものとしか思えない。

けっして生産調整のおかげで米の価格が守られているわけではない。

むしろ意欲や創造性の芽を摘んでいる。

このマーケティングもない論理は、裸の王様のようなものだ。

もちろん今の制度下で反旗を翻すことは容易ではないことも分かっているつもりだ。

ただ、稲葉さんの自主作付のように、創造的に乗り越える道筋を

みんなで考えていきたいと思うのである。

 

ちなみに、稲葉さんたちの小麦は、埼玉県神泉村のヤマキ醸造さんに

ご協力いただいた。

今年もすでに取引の継続が約束されてきている。

 

有機農業を底支えするネットワークも、一歩ずつ強化されていっている。

 



2009年1月27日

「流通の大義」・・

 

「人と人のネットワークという流通の大義」

なんて、昨日は簡単に書いてしまったけど、これには注釈が必要だったと反省する。

 

もともと交易は、物質的欲望によって生まれ発展してきたたとも言えるわけで、

それ自体は、善とか悪とかで考えても仕方がないと思っている。

流通それ自体は、社会のニーズという  " 見えざる手 "  に誘導される側面を

宿命的に持っている。 大地を守る会の宅配もその呪縛から逃れられるものではない。

でも、ですよ。 今こそ、この意味をようく考えなければならない時なのではないか

とも思っているのです。

 

原始の時代から交易の進化とともに等価交換ツール (お金) が発明され、

それによって欲望もまた拡大して、

そのツールの意味をよく理解したほうに差益 (儲け) が集中していって、

圧倒的優位性を持った動力 (エネルギー) を獲得する力まで得るに至って、

他人の土地や文化を勝手に収奪したり、植民地的支配や差別・格差も拡大した。

(資本主義の教祖-アダム・スミスも泡吹いて倒れそうな今の投資スタイルは

 その究極の姿だと思う)、

結果として今日ある姿は、市場のグローバリゼーションという名での奪い合いであり、

「儲ける (何にでも交換できるお金を持つ) が勝ち」 の価値観に世界が蹂躙される

ところまで来てしまった。

みんなが等しく享受すべき 「幸せ」 までわずかな人の懐に集金されていっている。

しかも生命を支え続けた元金 -資源の再生産と循環システム- は失いつつ・・・

これを 「自由」 と呼んでいいのだろうか。

 - というような感じで (ざっくりといえば) 僕は今、世界を解釈しているのです。

 

多様な生物 (人の多様性も含めて) が生きるのが、この星の生命維持システムの

根源である以上  (これは世界共通認識になりつつある)、

今を支配しているグローバリゼーションに対するアンチ・テーゼ (対置する論理)

もまた、必然的に発展する。

新しい、オルタナティブな (替わり得る) 交易が用意される必要がある。

それは資本主義とか共産主義とかいうような既存の論理の向こうを指向していて、

その世界観に基づいた感覚で、僕は自分の仕事である 「流通」 というものを、

  " 人と人を (その価値を守りあうものとして) つなぐ

  =自分の持っている資源 (流通力) を使ってネットワークする=社会的基盤を変換する " 

そのような使命を果たすことによってこそ意味がある、

というふうに置き換えて働いてみたい、とずっと思ってきたのです。

僕にとっての " 流通の大義 "  とは、その価値に対する、油を使うものの仁義、

のようなものとしてあります。

右でも左でもなく、俺たちは前に進む。 そのために。

 

で? ・・・・・すみません。 疲れてきました。

以上を前文として、福島からの帰りにもうひと仕事した話をしたかったんですが、

それは、また明日に。 寝ます。

 



2009年1月 5日

2009年、お詫びから再出発させて下さい。

 

皆さま

明けましておめでとうございます。

 

千葉・幕張から眺めた、夜明けです。

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本日 1月5日より仕事再開。

ワーカーホリックの真骨頂かしら、なぜか職場から日の出を拝んでおります。

けっして朝は強くないんですが。

 

厳しい時代に入りましたね。

世界経済はあっという間にカオスに突入して、環境問題もエネルギー問題も食糧問題も、

どっから切っても、私たちに求められているのは、

社会システムを作り変えるヴィジョンだと伝えています。

それもただの景気回復や、スローガンとしての 「チェンジ!」 ではすまない

レベルで迫ってきています。

今まで以上に時代を読み取る緊迫感のようなものを感じつつ、

でもぼくらがずっと 「希望」 の尻尾にいると信じてやってきた道筋が、

間違ってない! と、そんな確信にふるえたりしています。

生きてみたい、この時代を。

皆さんとも、これまで以上に希望を語り合いたいという欲求にかられています。

本年もどうぞよろしくご指導のほど、お願いいたします。

 

日の出の反対側は東京湾、その向こうには富士山の姿も。

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ちょっと薄いですね。

今度、いい夕日の時に撮り直してみます。

 

・・・と、新年の決意ふうに挨拶させていただきましたが、

やっぱり組織人である以上、いえ私にとって他部署ごとではない以上、

やっぱり、ここでも触れないで済ますわけにはいかないですね。

 

新年早々、会員の方々には、お詫びの文書を配布させていただきました。

加工品の原材料に想定外の産地のものが入っていたという事実が判明しました。

粘り強く築いてきたと自負していたトレーサビリティのシステムも、まだまだ不十分でした。

原料メーカーのせいにして済ますつもりはありません。

申し訳ありませんでした。 

 

迷いましたが、やっぱりここから入らないと、続けることができません。

深くお詫びし、懺悔から再出発します。

 



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