あんしんはしんどい日記: 2009年7月アーカイブ

2009年7月23日

女子大で講義

 

横浜は緑園都市にある 「フェリス女学院大学」 の校門に立つ。

な、なんで、エビが女子大に・・・・・・

e09072301.JPG

いえいえ、けっして悪さをしに来たわけではありません。

国際交流学部・馬橋憲男教授からお招きをいただき、

大学生相手に講義をすることになったのです。 

テーマは 「食の安全を考える」。 

日本の食糧の安全保障の現状と改善策について、また私たちはどのように行動すべきか、

について喋れ、という大胆な要請。

 

オレみたいなのが入っていいのかなぁ、なんて

ちょっとドキドキしながら受付にて馬橋教授への面会を求めると、

「ああ、エビスダニさんですね。 うかがってますよ。 どうぞ」

と言われ、ホッとする。

生まれて初めて、堂々と女子大の中を歩く。

右手と右足が同時に出そうになったりしながら。


授業はといえば、生徒さんは25名。 与えられた時間は90分。

これまでこの講座では、日本や世界の食糧事情から食のロスについて、

魚がいなくなっているという話、遺伝子組み換え食品、フェアトレードなどをテーマに

学習してきたという。

それらを受けて、さあどうする、というところでおハチが回ってきたワケで、

結論は見え見えなんだけど、ここは一点集中ではなくて全面展開で臨むことにした。

それに若者相手だと最初のツカミが肝心だと、

駅前のスーパーでトマトを一袋買って乗り込む。

 

まずはヒトの生存にとってゼッタイに欠かせないものを確認する。

水と空気と食べもの、ですね、はい。

では、それらは何によってつくられるか。 あるいは得られるか。

すべての源は太陽エネルギーであり、植物の光合成であり、土であり、

壮大な生命のネットワーク (生態系) によって維持されているのであります。

 

さて、このトマトはどうやって実をつけたのでしょう。

ただ種を蒔けば実が成るわけではありません。

受粉 (セックス) というプロセスが必要です。

人工授粉やホルモン剤を使う方法もありますが、基本は虫に花粉を運んでもらう、です。

普段私たちが口にする野菜や果物のおおよそ8割が

他家受粉 (自力ではなく他の力をかりて受粉する) 植物です。

それは様々な外敵や自然の驚異から種を守るための植物の戦略なのです。

そこで重要な役割を果たしているのが、ハチです。

そのミツバチが今、地球上のあちこちで忽然と姿を消す、

という現象が起きているのをご存知ですか (一人だけ手が上がった)。

私たちは今、知らず知らずのうちに、生存のための絆 (ネットワーク) を失いつつあります。

 

そこで生物多様性の話につないで、

日本列島の特徴、そして得意の有機稲作の話へと進む。

「この世に用なしの生き物はいない。 有機農業は平和の思想なのです」

(ここでこのココロが伝わらないと、授業は失敗。)

 

食べるとは、つながる行為なのです。

さあ、あなたは誰 (何) とつながりますか。

 

わが国の食料自給率が40%というのは、すでに学んでおられることでしょう。

しかしこの国では、埼玉県に匹敵する田畑が耕作を放棄され、

国内の農業生産額に匹敵する食料 (2000万トン強) が生ゴミとなって捨てられ、

(その殆どが輸入食料です)、国土は超メタボ状態になっています。

つまり、自由貿易とかグローバリゼーションとかの名の下で、

私たちは " 奪う " という形で世界とつながっていると言えます。

 

国際交流学部で学ぶ諸君なら、

日本の環境や気候風土と、それを土台にして形成された食文化を語れる人になってほしい。

経済のグローバリズムで、収奪する自由主義の行く末が見えるだろうか。

食は地球とつながっていることを自覚するグローバリストこそが平和を築くのです。

 

後半は時間が気になりだして、早口になって一方的な語りとなってしまった。

自己採点は67点。

我が人生を象徴するような点数ですねぇ。

 

またやって欲しい。今度は1回だけじゃなく-

と教授から言ってもらえたことで、何となく満足して帰る。

生徒さんたちと記念撮影でもしたかったのだけど、恥ずかしくて言えなかった。

 



2009年7月18日

『雪の大地』 復活劇を始めようと思う。

 

今日は静岡・掛川の 「つま恋」 で開催されている一大イベント

ap bank fes '09 』 に、今年こそ参加する手筈だったのに、

なぜか出社して仕事に追われている始末。

せっかくの招待状も台無しにしてしまった。

3月にやったワークショップでご一緒した皆さん、すみません。

 

このところ、日記も書けないでいた。

忙しい、忙しい、貧乏暇なし、は若い時からの口癖だけれども、

ホンモノの忙しさというのは、どうやら周期的にやってくるように思うな。

あとで振り返れば、なんであんな程度で忙しいなんて言ってたんだろう、

とか思ったりするし、要するにこの周期というのは、単純な仕事量の問題でなく、

自分の能力にとっての今の壁の、胸突き八丁に来てるってことなんじゃないか。

やっぱ山登りの縦走のようなものですね、人生は。

しかも、こういう時に限って複数の難題が同時に押し寄せてきたりするから、

不思議なものです。

いま進行中の難題については、ここではまだお話しできませんが、

この4月から受け持つことになった外販 (卸し) で、

これまで経験したことのない新規営業に挑戦しているのです。

しかも複数、しかも同時に佳境に入った、みたいな。

いつか自慢げに報告できるよう、このプレッシャーに挑んでいこうと思うのであります。

運動はハッタリではないのである! と言えるように。

そしてそんな間にも、管理者としてのデリケートなお勤めも逐次発生して・・・・

いや、これはやめておこう。 情けない愚痴になるので。

 

さてここで、書けなかったネタの中から、この間のトピックをひとつ。 

7月8日(水)の夜、六本木で提携米研究会の会議があって、

そのあと残った十数人で、

庄内協同ファーム・斉藤健一さんを偲ぶ一周忌の会を開きました。 

e09070901.JPG

健一さんと一緒につくった純米酒 「雪の大地」 の最後のストックを空けながら-

 

思い出を語り始めては、つらくなる。

でも彼を抜きには、飲めない。

「健一がそこにいて、ニコニコしながら飲んでいる」

なんて、誰かが言う。 泣かすなよ、こら! なんて言いながら、飲む。

 

自他ともに認める健一さんの弟子、佐藤和則と語る。

斉藤健一が、農の魂を表現したいと思って作った酒・・・・

-復活させたいな、「雪の大地」 を。 このまま終焉じゃ申し訳が立たない。

-俺はもう、そのつもりで米作ってっから! エビさん、ゼッタイやってよ!

彼の弟子が、俺を睨んで決意をうながすようになった。

引くわけにはいかない。

「雪の大地」 第二幕を、始めようと思う。

健一さんがホントにニヤニヤしながら脇にいてくれてたんなら、嬉しい。

 

でもオレ、今ちょっと忙しいんで、ちょっと待っててね、健ちゃん。

 

 



大地を守る会のホームページへ
とくたろうさんブログへ