あんしんはしんどい日記: 2010年12月アーカイブ

2010年12月30日

皆さまに感謝。 よいお年を。

 

本日を持って年内の仕事納めとさせていただきます。

本ブログをご愛読いただきました皆さま、有り難うございました。

ひぃひぃ言いながら、アップが遅れ遅れになりながらも、

何とか今年も続けることができました。

ひとえに皆さまの温かい感想や励ましがあったからこそです。

心より御礼申し上げます。

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今年は農産物にとっては荒波と逆風の一年でした。

春の低温、夏の異常高温(北海道は加えて連続的なゲリラ豪雨) の影響は、

今も不安定な出荷となって続いています。

米は不作になったにもかかわらず米価は下がり続け、

とどめといわんばかりのTPP (環太平洋戦略的経済連携協定) 圧力。。。

5年ぶりに出された 農林業センサス は恐ろしい近未来図を描いていました。

何とかしたいですね、ホント、何とかしたい。

 

大地を守る会は、3月の東京駅 「大地を守るDeli」 の開店、

9月の三越銀座店への2店舗の出店、Webストアの刷新強化など、

新しい販売チャンネルの開拓を積極的に進めました。

組織的にはNGOと株式会社の合併の提案もありました。

設立35年を経て、新たな挑戦を宣言した年になった気がします。

本気で社会を、いや世界を変えたい、という決意を持って。

 

e10123004.JPG    (工作舎刊,1800円+税) 

 

 35周年を機に出された藤田会長の本です。

その辺の意気込みが語られています。 ぜひ読んでほしい一冊です。

 

自分に任された分野では、いくつか新しい取り組みにチャレンジしました。

今までになかったような企業との連携も積極的に動きました。

お陰で思わぬ出会いと試練をたくさん経験しました。

時代は変わってきている、と肌で感じた一年でした。

人と人、価値と価値をつないで、1+1を 3 にする。

自分の仕事のイメージをより強く固めることができたように思います。

 

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たくさんの出会いがあり、また別れもありました。

すべてに手を合わせ、感謝して、一年を終えたいと思います。

 

新しい年が皆さまにとって良い一年になりますよう。

暴飲暴食に気をつけて (深く自戒を込めて)、楽しいお正月をお過ごしください。

 

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2010年12月22日

おきたま興農舎-ぶつかるプライドと醗酵の力

 

昼間の どぶ ● く は効いた。 「甘酒だよ~」 もないと思うが・・・

想定外の展開となった今回の出張。 しんどいけど、続ける。

あきらめも早いけど、しつこいところはかなりしつこいので。

 

12月12日(日)、午後。

蕪栗で千葉さんたちや専門委員会 「米プロジェクト21」 のメンバーと分かれ、

僕は大潟村・花咲農園代表の戸澤藤彦さん(米プロのメンバーでもある) の車で

古川駅まで送ってもらう。

そこから福島経由で山形新幹線に乗り換え、夕刻、高畠町に入る。

 

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次なるミッション(使命) は、

米・野菜・果物の生産団体-「おきたま興農舎」 の忘年会である。

忘年会といってもただ宴会をやるのでなく、昼からしっかりと勉強会も開いている。

農政の動きを分析したり、また地域での農業の活性化では実績のある先達、

JA北空知の元組合長・黄倉(おおくら)良二さんを北海道から招いて講演会を行なうなど、

なかなかに硬派の生産者組織である。

 

しかし僕が到着したのは、ちょうど勉強会が終わったところ。

トンネルを越えたら、そこはまた宴席だった・・・・みたいに。

しかもこれがまた濃い~い連中で、

二次会の途中からは生産者同士の熱い技術論議となり、いつ終わるともなく続いた。

僕はどうにもつらくなって、途中で轟沈とさせていただいた次第。

日頃から後輩に伝授している言葉を恥ずかしく思い出す。

「生産者より先に寝るんじゃない!  起きてくれている間はとことん付き合うのだ!」

くそッ、無念である・・・・・

 

興農舎代表・小林亮さんから後日届いた手紙には、こうあった。

 「飲むほどに酔うほどに、腕(技) に自信ありの強者の一言が印象的でした。

   - また一からやり直しだ -

  大粒ぶどうやりんごでは、県内屈指の技術を持ち、かの 江澤正平さん との交友も

  あった K 君の独り言に周りは頷きながら、また一口酒を運んでしまいました。

  来る年に向けて、陽に焼けた輝かな笑顔を取り戻すべく、

  また一歩前に進みたく存じます。」

 


今回嬉しかったのは、古くからの大地を守る会会員で、

 「とくたろうさん」 のデザインや酵母の講座などでお世話になっている、

「ウエダ家」 の植田夏雄さんとご一緒できたことだ。

最初に来賓とかいう居心地の悪い席に座らせられたのだけど、

植田さんが隣だったこともあって、いろいろと酵母の話をうかがうことができた。

 

「ウエダ家」 さんはこのたび、

日本初の100%自然発酵フリーズドライパン種 -「乳COBO 88 おきたま」 を開発した。

  山形のおきたま興農舎とCOBOのコラボレーション。

  興農舎の無農薬米ササニシキをウエダ家が独自に自然発酵し、

  フリーズドライにしたパン種。

  自然発酵のフリーズドライは不可能と言われていた常識を覆したことで、

  一切の添加物を使わなくとも、自然な香りのある、あまみ、うまみのあるパンが実現。

  砂糖を使わなくとも、あまみがあり、

  ミルクやバターを使わなくても、自然発酵ならではの風味があります。

  しかも植物性乳酸菌のはたらきにより、雑味のない、胃もたれしない、

  消化吸収のよいパンづくりが誰でもできるようになった。

  パンは、日本人の食生活の第二の主食として、定着している。

  質の高いおきたまの米を使うことで、ごはんのように毎日食べられる、飽きのこない

  日本人の味覚とからだを育む無添加のパンがつくれる。 (HPより)

 

ウエダ家さんの主催する 「COBO 講座」 はチョー人気の講座だが、

最近は年配男性の参加も増えているのだそうだ。

僕もいずれ、酵母の奥深さを見極めてみたいと思ったりもするのだが、

まあ今の感じだと、、、定年後も生きていられたら、の話かな。

 

植田さんは、興農舎の無農薬米の 「生命力」 を、絶賛する。

こんな話も、会員の方に聞かせたいと思ったのだった。

 

翌13日(月) は、帰る前にラ・フランスの生産者、横山陽一さん宅を訪ねた。

11月にカタログ 「ツチオーネ」 の表紙を飾らせていただいたこともあって、

お礼も言いたくて伺ったのだが、あらためて話を聞くと、カタログで書いた宣伝文句も

けっして誇大広告ではないと思う。

 -山形県で洋梨栽培が始まった100年前から代々続く洋梨農家の4代目。

   的確なタイミングでの有機質肥料の投入や、

   数年先の理想的な樹の形までを考慮した剪定など、

   味に大きく影響する大切な作業を毎年ていねいに続けてきた~

「ラ・フランスを極めたい」 という横山さん。

農薬も相当に減らしてきた姿勢は、皆が一目置く 「ラ・フランスの師匠」 である。

 

課題として話題になったのは、洋ナシにかける袋のこと。

今では果物にかける袋には、だいたい農薬が塗布されている。

横山さんはそれも気にかけて、農薬処理されていない袋を探して使用しているのだが、

それは洋ナシ用のものではなく、薄くて撥水性も弱いようで、「どうもよくない」。

また色が白いので何故かカラスにつつかれるのだそうだ。

それによる被害は、「まあ、1割くらいはあるな」。

これはバカにならない数字だ。

大変な手間をかけてもこれでは、この袋で続けてくれとはなかなかに言いにくい。

「こちらもいろいろと情報を集めて、考えてみますから-」 といってお別れした。

打つ手は、ないわけではない。 動いてみよう。

 

技の話となれば果てしなく激論を交わし、

一方で緻密な努力を惜しまないプライド猛き生産者たち。

植田さんがいう 「生命力」 とは、込められた彼らの 「気」 だね、きっと。

彼らが 「オレのプライドにかけて」 というならば、

こちらも相応の気張りをもって応えていかなければならないということだ。

 

サル以下の、スキだらけの人生だけど、

ただ飲んだくれているわけではないっす、くらいは言っておきたい。

 



2010年12月20日

蕪栗視察・後編 -苦難のミッション

 

さてさて、楽しく飲んだ翌12日(日) のこと。

蕪栗視察団一行は、予定通り早朝のガンの飛び立ちを見るために早起きする。

しかし何故か・・・・・この朝の記憶が、ない。

ワタクシはガンを見たのでせうか。。。 ヤバイね、かなりヤバイ。 

 

後になって参加者から聞いた情報を総合すると、こんな感じだったらしい。

朝5時半、宿のロビー集合。 僕はその前にしっかり歯を磨いていた、らしい。

太陽光パネル設置のキーマンとなってくれた (株)日本エコシステムの

本田一郎取締役も深夜から宿入りしてくれていて、一行は元気よく寒風の中出発した。

ところが僕はカメラを忘れて車中でひと騒ぎ。

しかしあきらめも早い性格ゆえ、 「引き返せ!」 などとヒンシュクを買うようなことはせず、

観念したあとはフツーに楽しく会話した、らしい。

現地・蕪栗沼に到着するや、颯爽とドアを開け車から降りたところ、

千葉さんから 「夜明けまで車の中で静かに待つ」 と教育的指導を受けた。

夜明けとともに数万羽のガンたちの飛び立ちが始まる。

僕はただ両手を広げてガンに手を振り続けていた、らしい。。。

たぶん口も開けっ放していたことだろう。 こういうヤツはいずれ路上で死ぬのだ。

 

宿の部屋に戻った途端に布団の上に倒れ、朝食タイムは爆酔、じゃなく爆睡状態で、

今度は出発する直前に起こされ、本田さんから

「カメラがロビーに落ちてましたよ」 と渡された。

ここからの記憶はある。

嗚呼、僕は雁と交感することはできたのだろうか。

 

そして次なる苦難 (?) が待ち受けていた。 

10時から、千葉さんたちが地元集落で取り組んでいる

「農地・水・環境向上対策事業」 の集まりに、僕らは招かれていた。

この補助事業には 「消費者との交流」 というのが事業計画の細目にあって、

今回の視察はしっかり地元の 「交流事業」 に組み込まれてしまっていたのだった。

千葉孝志(こうし) のしたたかな段取り、あなどれない。

まあ、地元の方々にとってはいつでもやれる企画ではないし、

交流できる機会を用意していただけることは、我々にとっても有意義なことである。

 

 - という建て前論はいいんだけど、

「簡単な挨拶を」 と千葉さんから言われてたのが、

いざ来てみれば 「30分用意してあるから」 とのこと。

神社の鳥居の中にある集落センターに集まってくる軽トラ軍団を見て、

俄かに高まる緊張感。 

開き直ってからが勝負という人生を送っていても、、、頭が働かない。

ようやく気づく。 これは楽しい視察ではない。 仕事、重要なミッションなのだと。

 

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日曜日ということもあって、子供たちも遊びに来る。

ロールベールサイレージらしきものに 「歓迎 大地を守る会」 とある。.

子供たちの落書きが始まる。

上手い・下手とか関係なく、自由に描けるうちに好きなだけ描くといいね。

 

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で、会議が始まる。

僕と本田さんとで1時間。

時々頭の中が白くなりながら、壊れつつある脳に鞭打って、

なんとか言葉をつないでいく。

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大地を守る会の概要の紹介から始まり、

今回の視察の目的、そして千葉さんの先進的取り組みへの敬意と感謝を述べ、

食の安全だけでなく地域環境や生態系の保全まで意識されて活動される

当地に対し、しっかりと食べることでつながらせていただきたい。

厳しい米価に加え、TPPやら何やら、いろんな問題が押し寄せてきているけれども、

生産と消費を強い信頼でつなぐことで、

「安全」 だけでなく、将来に向けての 「安心」 の土台を守り育てていきましょう。

そのためにも、地域の環境向上のために取り組んでいることを、

皆さんの口で積極的に語っていただきたい。

千葉さんの太陽光パネルの設置は、個人ではなかなか真似できないかもしれないけど、

それぞれに自分の手でできること、そして地域でできること、を編み出していってほしい。

・・・・・というようなことを語ったつもりだが、頭と口がつながっていたかは定かでなし。

 

本田さんは、夜の便で駆けつけてきただけあって、気合いが入っている。

国の自然エネルギー政策を批評し分析しつつ、未来社会づくりに向けての

太陽光発電の可能性とメリットを訴える。

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「もし少しでも関心を持っていただけたなら、お配りしているアンケートにご記入いただいて、

  大地を守る会さんにFAXしてください。 あとは戎谷さんがきちんと対応しますから。」 

- そうきたか。

この場を借りて訂正申し上げます。

戎谷ではなく、我が自然住宅事業部が責任と誠意をもって対応させていただきます。

 

会議のあとは、楽しい交流会。

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 「農地・水・環境向上対策」 事業も、来年から政策が変更されることになっている。

集落単位ではなく、個人の取り組みに対しても助成が下りる形になる。

やりやすくなる面もあるだろうが、地域単位で取り組んできた事業にとっては

どんな影響が出るのか、気になるところではある。

戸別所得補償の是非やTPPなど、生産現場の感触もうかがって、

意見交換するつもりだったのだが・・・

お餅と一緒に出された 「甘酒」 にやられ(ドブロクだった) 、

不覚にも目をつむってしまったのだった。

 

さて、が続くが、

お昼過ぎに千葉さんや現地の方々と別れたのだが、

苦難のピークは、このあとにやってきたのだった。

しんどすぎる・・・・・。



2010年12月 8日

「都市の食」 ビジョン

 

時間は矢のように過ぎて、巷の空気はもう Merry Xmas だ。

30回目のジョン・レノンの命日がやってきて、街に HAPPY XMAS の曲が流れている。

老いた人も若い人も、肌の黒い人も白い人も、金持ちの人も貧しい人も ~

A very Merry Xmas , And a Happy New Year ~

War is over!

If you want it  

War is over! Now!

歴史的アルバム 『イマジン』 と同じ年(1971年) に発売された、

ジョンとヨーコの 「愛と平和」 のメッセージ。

「 あなたが望むなら  戦争は終わる! ハッピー・クリスマス  ジョン&ヨーコ 」

 

願いの込められた Merry Xmas を聞きながら、

昨日は午後から丸の内での会議に出向いていた。

新丸ビル10階 - いつもの 「エコッツェリア」。

ここで 「丸の内地球環境倶楽部 都市の食ワーキング・グループ」 という集まりがあって、

今年の春より 「都市の食」 のあるべき姿をビジョンとガイドラインにまとめる作業を進めてきた。

一方で丸の内シェフズクラブによる 「食育丸の内」 が展開されてきたことは、

この間お伝えしてきた通りである (直近では 10/18の日記 をご参照ください)。

 

「都市の食」 ガイドライン策定では、

『 " 食 "  を通じた 「都市」 と 「生産地」 による持続可能な環境共生型の地域づくり 』

を目的として、次のようにポイントが整理された。

◆消費者のために・・・ ①おいしい食 ②安全・安心な食 ③身体にいい食

◆つながりを取り戻す食・・・ ④自然とつながる食 ⑤人とつながる食 ⑥地域とつながる食

◆大丸有だからできる食・・・

  ⑦本物を知る食 ⑧創造力を育てる食 ⑨世の中を変える食 ⑩自分でつくる食

 

このガイドラインを形にしてゆくために、提供者・流通者がそれぞれに行動指針を持ち、

具体化に向けた検討の段階へと進む。

昨日はそのための、改めての検討会の立ち上げである。

第1回  『 「都市の食」 ビジョン具体化に向けたまちづくり検討会

            -大丸有 食の低炭素化と自立に向けて- 』

予定では2月の第3回までの間に骨格をつくり上げる計画だ。

いわば第2ラウンド、根幹となる物流の仕組みづくりとなり、

僕はステークホルダーとかいう立場で引き続き関わらせていただくことになった。

ビジョンに賛同する生産者とレストランを、それぞれの立場や都合をマッチングさせながら、

しかも効率や環境負荷にも考慮しながら、結ぶことができるか。

価値のネットワーカーでありたい、などと偉そうなことをほざいてきた者の

まさに真価が問われる場になってきた。 血が騒ぐ・・・

 


検討会の座長は金沢工業大学産学連携室コーディネーター・小松俊昭さん。 

ステークホルダーには、環境省や農水省、東京都も参画している。

第1回目の検討会はお互いのイメージや課題を出し合うような形となったが、

次からいよいよ本格的な議論になる。

 

会議終了後、ビジョンとガイドラインに沿った食材の試食会が持たれた。

東京都内の生産者の野菜、八丈島の海産物を、

フレンチのお店 「イグレット丸の内」(新丸ビル5F) の市川健二シェフが

素材の特徴にあわせて調理してみせてくれた。 

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そして大地を守る会は、テッテイして国産にこだわった食材の提供として、

東京駅エキュートのお弁当・お惣菜店 「大地を守る Deli 」 からのケータリングで協力。

 

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国産素材だけで色々なラインナップが可能です、という提案。 

ただ Deli はケータリングの体制を持ってなく、また初めての年末体制ということもあって

神経ピリピリ状態だったのだが、何とかイレギュラーなオペレーションをこなしてくれた。

容器等は一般品でご容赦願う。

 

産地・生産者グループが特定でき、フードマイレージも表示できる。

フードマイレージについては、広報室・大野由紀恵が説明する。

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畑とレストランそして消費者を結ぶ、しかもガイドラインで示された理念を体現する形で。

自給率の向上に、食文化の発展に、そして食べる人の健康や豊かさの実感にも貢献する

新しい仕組みづくり。

いろんな視点での  " 結び "  の作業が、これから始まる。 

 



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