あんしんはしんどい日記: 2011年2月アーカイブ

2011年2月24日

異常気象は現場で起きてるんだ~

 

 - というサブタイトルでいきたいんですけど・・・

 

「 2011だいちのわ 大地を守る東京集会

 大地を守る会のオーガニックフェスタ

実行委員、Oからの野望が語られた。

 

ふ~ん、別にオレはいいけど。 でも、こだわるわりにはパクリっぽいよね。

ハァ、まあそうなんですけど、これでいきたいんです・・・

 

2月27日(日)、今年の東京集会で僕に与えられた仕事は、

13時から17時まで連続的に展開される

「大地を守るカフェトーク」 のなかのプログラム -生産者が語る 『異常気象レポート』

という30分コーナーの司会である。

いつもこんな役回りで声がかかるのが気になるところだが。

 

トーク・コーナーを担当する実行委員のO君から提示されたサブタイトルがこれ。

~異常気象は会議室で起こってるんじゃない! 現場で起こってるんだ!~

気持ちは分かるけどね・・・

 

で、本番まで残すところ一週間となって、ようやくこちらも東京集会モードとなってきて、

バタバタとスライドの確認やイメージの整理に取り掛かってみれば、

改めて事の重大さをかみしめざるを得ない、という次第である。 

 

そもそも 「異常気象」 とは  - から頭の整理は始まるのだが、

昨今の世界の気象動向を振り返ってみるだけでも、

食糧供給の問題にとどまらず、こんにちのアラブの騒乱から原油の高騰にまで

つながっていることが浮き彫りになってくる。 

 

たとえば、これが気象庁データにある昨年1年間の世界の天候異変現象のMAPである。

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地球の反対側の現象が私たちの暮らしを直撃してくる。

グローバル時代の危うさを示している。

 


温暖化の真偽についてはまだ専門家の間で複雑な議論があるようだが、

地球の気温はこの数十年、上昇の一途にあることは間違いなく、

しかもそれが自然要因以外によることも間違いないようで、

それが気候変動を激しく、不確実なものにさせている。

これからさらに変動の振幅 (=自然災害の規模) は大きくなることが予想されている。

 

温暖化は食料の供給(&価格) を乱高下させる要因にもなっている。

動植物の単純な変調に留まらず、生態系そのものを不気味に狂わせつつある。

加えて、人口増加と耕地面積の減少、地力の低下、オイルピークの問題

などなども相まってきて、投機マネーまでが自己増殖を目的として侵入してくる。

食料はますますもって戦略物資と化してゆくことだろう。

人の動きも荒れてくる。 それは今、まさに起きている。

TPPなんて、とてもとても暴挙としか思えなくなる。

 

そして異常気象はますます頻繁に発生する。

それは、進行形として現場で起きているのである、たしかに。

 

去年の夏にレポートした、北海道中富良野・太田農園の玉ねぎ畑。

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去年の夏の出来事、ではすまないのかもしれない。 

写真を送ってくれた石山耕太さんに登場願うこととした。

もう一人お願いしたのは、鳥取県境港から岩田健二郎さん。

この冬の豪雪は尋常じゃなかった。

" 現場で起きた "  生の報告を聞いてもらおう。

 

たった30分でも、しっかり伝えたいと思う。

このブログを読んでくれている方には、お決まりの結論になると思うが。

いっそ、アル・ゴア (アメリカ元副大統領) の言葉を引用させてもらおうかな。

 

  未来世代が私たちにこう尋ねているところを想像してみてほしい。

  「 あなたたちは何を考えていたの?

   私たちの将来のことを心配してくれなかったの?

   自分のことしか考えていなかったから、地球環境の破壊を止められなかったの?

   ――止めようとしなかったの?」

  私たちの答えは、どのようなものになるのだろう。

                            ( 『不都合な真実』より/枝廣淳子訳 )

 

2011年2月27日、「大地を守る会のオーガニックフェスタ」。

どなたでもOK。 ぜひご来場ください。

 



2011年2月19日

15回目のあらばしり体験-大和川交流会

 

一週間の間が空いちゃったけど、アップしておきたい。 

お前はこの日のために生きているのか、と言われても否定しない、

年に一回の 「大和川交流会」。

大地を守る会オリジナル純米酒 「種蒔人」 の新酒絞りに合わせての

酒蔵での交流会である。

このお酒が造られた最初の年が1994年 (当時の銘柄名は 「夢醸(むじょう)」 )。

3年後の97年から、新酒完成を祝う交流会が欠かさず続いてきた。

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2月12日(土)、会津・喜多方にある 「飯豊(いいで)蔵」。

30年ぶりとも言われる豪雪に包まれながら、寒仕込みの真っ最中だ。

 

今年の交流会参加者一行は、挨拶もそこそこに、

発酵途上のお酒を試飲して回る。

純米吟醸、純米大吟醸、大吟醸・・・・これはあと10日、こっちはあと20日。

う~ん、たまりませんな、この至福。

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そして今まさに絞り中の 「種蒔人」 。

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絞りたて、荒ばしり(新ばしり、とも) ・・・を一献。

よし! 今年もいい酒になった。

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真剣な顔あり、「予は満足じゃ」 ふうあり。。。。

 

厳しい夏を乗り越えてくれた原料米・美山錦と、

飯豊連邦に育まれた水に、今年も感謝!

 

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 「種蒔人」 新酒が会員の前にお目見えするのは27日、

大地を守る東京集会-大地を守る会のオーガニックフェスタ2011-

懇親会の鏡開きにて。

どなた様もどうぞ奮ってご参加ください。

 

さあ、交流会へ。

 


昭和の時代まで、大和川酒造の酒づくりを支えた蔵。

今は「北方風土館」と名を変えて、見学蔵になっている。 

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当時のたたずまいを残し、酒造りの道具などが陳列されている。 

見学コースの最後にはテイスティングルームも用意されている。

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今年の交流会は、餅つきから。 

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9代目、佐藤弥右衛門さん。

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弥右衛門襲名なんて、時代がかっていると思ったもんでしたが、

名乗ってみるとその重さも感じてきましてね。

地域の文化や伝統を守ろうと走り回っていた先代の遺志も

ボチボチと継いでいかなきゃって、ま、色々やってます。

 

原料米生産者、ジェイラップ代表・伊藤俊彦さん。

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ずっと食べ続け、飲み続けてくれる消費者のお陰で、私たちも進化して今日があります。

昨年は本当に厳しい米づくりでしたが、そのぶん強い米に育ったと思います。

よくぞ頑張ったと褒めてやりたい。

いい酒に仕上がって、今年の感動はひとしおです。

 

乾杯の音頭は、「稲田稲作研究会」 会長、渡辺義勝さん。 

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あとはもう、解説なし。 

会津料理に舌鼓を打ちながら、

できたばかりの種蒔人に大和川自慢の清酒の数々をいただく。

なんと鑑評会出品作品まで登場して、場はどんどん盛り上がる。

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毎年書いているような気がするが、

いつの年だったか、参加者が漏らしたひと言

「この交流会は、まるでこの世の天国!」 を、今年もまた実感いただけたようで、

主催者としては望外の喜びである。

 

交流会後も、熱塩加納村の宿で、深夜まで語り明かす。

空いた一升瓶が、、、ウン本。

 

朝の青空がまぶしい。

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大和川交流会が終われば、鏡開きまで2週間。

モードは一気に東京集会となる。

 



2011年2月 9日

大作さんの玉ねぎ

 

2週前の1月24日~28日、

宅配会員の方々に1枚のチラシを入れさせていただいた。 

「 緊急入荷 大作さんの玉ねぎ (慣行栽培) の販売について

 

北海道の玉ねぎの大不作によって、春までの玉ねぎがショートする。

北海道の作柄が概ね見えてきた晩秋に入った頃の、ぞっとするような報告。

それなりの余裕も持って総量で約250トンの玉ねぎを道内7産地と契約していたのだが、

はじき出された供給見込みは170トンという数字になった。

流通者の使命としては当然、肩を落としている場合ではなく、

各産地に対して契約分以上の出荷のお願いや新規の産地開拓にもあたるのだが、

僕ら(農産グループ) は、もうひとつの選択を社内に諮った。

「大作(おおさく) 幸一さんの減農薬の玉ねぎを仕入れたい。」

 

大作さんとのお付き合いは大地を守る会設立時代にまで遡る。

じゃが芋の金井正さんとは義理の兄弟で、35年より前に、

二人は互いに明かすことなく無農薬栽培に挑戦し始めた。

入社当時に聞かせてもらった話。

 

  ・・・だってね、戎谷くん。 無農薬で野菜を作るなんて言ったら、周りから何言われるか。

  そんな時代だったんだ。 だけどこんなに農薬かけてちゃいずれダメになるんじゃないか、

  と思ってね。 誰にも言えずに、こっそり一人で始めたわけさ。

  兄 (金井さん) にも言えなかったな。

  それがある日、金井から 「実は・・・」 て聞かされて、オレもだよ! となってね。

  それで大地を紹介してもらったっていきさつさ。

 

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                         (大作幸一さんと息子の淳史さん) 

 

ただ北海道の大面積をすべて無農薬でやるのは厳しい。

大作さんは耕作面積の半分を無農薬で栽培するが、

除草にかかる人手の確保や家族労働の限界から、

その半分はいわゆる減農薬栽培という形で営んできた。

しかし除草剤の使用もあって、当会の生産基準には適合しないため、

大地を守る会で仕入れることは、これまでなかった。

にもかかわらず大作さんは、たとえ他と同じ 「北海道産玉ねぎ」 として一般市場に流れる

ものであっても、できるだけ農薬を減らしたいという努力を惜しまなかった。

今は北海道の慣行栽培の約7割減である。

この姿勢は立派なものだと、僕は心底から思っている。

しかも、これによって大作さんの経営の半分が支えられてきたということは、

大作さんの無農薬玉ねぎを維持させてきた 「弟分」 のようなものではないだろうか。

 

数年前に奥様 (金井さんの妹さん) が亡くなられた時、大作さんは伝えてきた。

「少し無農薬の作付を減らしてもらってもいいかい。」

除草作業のパートさんたちを上手に仕切ってくれていた奥さんの力は大きかったのだ。

肯定も否定もできなくて、つらかった。

 

この期に及んで新規の産地をかけずり回るより (それもするのだけど)、

大作さんのこの玉ねぎを会員に問いたい。

 

しかし、、、生産基準とはイコール取り扱い基準であって、これまではどんなときでも、

足りなくなったからといって基準外のものを仕入れたことはなかった。

これは禁じ手ではないか・・・

 

迷いはなかなか吹っ切れなかったが、ここで素直に告白すれば、

この判断を下したのは単純な自問自答だった。

もしも基準内の玉ねぎがなくなったら、

もし我慢できずに次を選択するのなら、食べるべきは、

大作さんの経営を陰で支えてきたこの玉ねぎだと、お前は思っているのだろう。

仮に有機JASの玉ねぎがスーパーで手に入ろうが、

大作さんの玉ねぎを食べることが自分の果たすべき仁義だと思っているのだろう。

 

会員には欠品にして、陰で取り寄せることはただしい行ないではない。

「皆さんも、この玉ねぎを一緒に食べてくれないだろうか」 と言うべきだろう、と思った。

無農薬玉ねぎを支えるためにも。

選択の権利が残っているときに 「基準外です」 と宣言して扱おう。

無農薬の玉ねぎをできるだけ長く引っ張るためにも、

僕は大作さんの減農薬玉ねぎを食べることを明らかにしておきたい。

他の減農薬のものと区別する必要もあり、化学肥料の問題もあるので、

ここは潔く、大作さんの普段の言い方に倣って 「慣行栽培」 とした。

 

それにもうひとつ、僕をつき動かした世の中の流れがあった。

このまま自社基準の高みから眺めている場合じゃないんじゃないか、

という焦りのようなものか。

 


 

天候不順で北海道産の玉ねぎが2年連続の大不作となって、 

相場も高騰しているのだが (1月の情報で前年比35%高)、

こういうときには決まって輸入が急増する (それによって価格が安定?する)、

というのが近年の動向である。

昨年11月ですでに、前年の年間輸入量を42%上回った。

前年も不作で、その前の年に対して13%増だったので、

2年前に比べて60%輸入が増えている計算になる。

国内流通に占める割合は20%を超えたようだ。

不作を輸入で補っているうちに、世間は関税撤廃!TPP!ときた。

農協はTPP反対を唱えながら、商社と提携関係を強化している。

 

「厳しい基準」 は守りながらも、それではすまない事態が進行している。

水面下で進む土台の崩壊を、対岸の火事にしてはならない。

いや、これは対岸の話ではないワケで、大作さんには笑われるかもしれないけど、

大作さんの経営を全面的に支えるくらいの行動を起こしたい。

 

この選択と提案は、「大地を守る会の生産基準」 に胸を張ってきた者としては、

禁断の果実に手をつけたのかもしれない。

よってチラシは、戎谷の署名でお願いした。

仕入の責任者として首をかけるくらいの構えでいきたいと思ったので。

 

チラシに書いた  " セカンド・ベストの提案 "  というのも、

流通者としては当然の義務と言われるような話なのだが、

僕らにとっては初めての表現である。 狡猾と言われれば返す言葉もないけど、

大地を守る会としての 「農業を守る」 ためのひとつの提案とさせていただいた。

会社の定款である 「一次産業を守る」 に従ったとか言ってしまうと、

開き直りも過ぎるだろうか。。。

今回の提案を "考える素材" として受け止めていただけたなら、 本望としたい。

 

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札幌黄(さっぽろき) という貴重な品種を、種を採りながら守り続ける大作さんの

生き方を、食べることでもっと深くつながり、支援したい。

正しかったかどうかは、我々のこれからの仕事で証明するしかないと思っている。

ご批判はすべて甘んじて受けたい。

 



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