あんしんはしんどい日記: 2012年1月アーカイブ

2012年1月15日

哀しい、農の始め

 

くそッ、俺としたことが、、、久しぶりに風邪を引いてしまった。

咳とくしゃみが治まらず少々熱っぽい。

 

昨日は楽しみにしていた横浜パシフィコでの脱原発世界会議はパスして、

厚労省が出した放射性物質の新基準値案に対する、

共同テーブルとしての声明文案の作成を進めることにした。

4団体での合意に持っていかないといけないので時間はかかるが、

24日までに仕上げる、というゴールラインを決めてある。

ぐじゅぐじゅとパソコンに張り付く、情けない週末。

 

新聞をめくれば、昨日の脱原発世界会議の開会式で、

福島から避難してきている小学生が壇上に立ったことが紹介されている。

彼は訴えている。

「国の偉い人たちに聞きたい。 大切なものは命ですが。 それともお金ですか。」

こんなことを子どもに言わせてしまう社会を、僕らはつくってしまったのか。

悔しい。。。

 

机の上には、NPO福島県有機農業ネットワーク理事長で二本松市在住の

菅野正寿(すげの・せいじ) さんから届いた賀状がある。

『農(の) の始め 』 と題した詩が書かれている。

 

  山に木を植えることが、略奪の文明と対峙する道と

  山の神はいう

  春の柔らかな土に種を蒔くことが

  暴走した科学に対峙する道と

  田の神はいう

  原子の鬼を土のふところに 塊として埋葬する技を

  自然の治癒力として耕す

  耕す農の営みは 花を咲かせ実を結び

  彩りが里山をつつみ

  老いも若きも おだやかな顔をあらわす

  未来永劫へと続く農の道は 美しい国への道しるべ

  山の神 田の神が降りてきて

  共に五穀豊穣の酒宴をする 農の始め  (2012.1.2)

 

実は、菅野さんからは、年末に悲痛なメッセージが

関係者に向け発せられている。

 


「年の瀬にあたり、ふくしま有機ネットからの訴え」

 3.11大震災・原発事故に揺れた2011年の年末にあたり、

 この1年の温かいご支援、ご協力に心から感謝を申し上げます。

 

 年の瀬のこのときに、

 伊達市(霊山町) のイチゴ農家、二本松市(東和町) のりんご農家が

 自ら命を絶ちました。 もうこれ以上農民から犠牲者を出さないでください。

 福島県の米は農協の倉庫に業者の倉庫にそして農家の納屋に

 生き場をなくして年を越す状況にあります。

 

 とくに消費者との産直で取り組んできた有機米、減農薬米の生産者の

 「これでは年を越せない」 との悲痛な声に耳をかたむけてください。

 

 すでに報道されているように、検査の結果100ベクレル以下は95% (不検出は85%)

 であり、基準値を超えたのは0.3%です。

 もちろん検査し、不検出の米のみの支援をお願いするものです。

 出荷停止となっている伊達市小国地区などの地域は特異な例であり、

 それをもって福島県産米が否定されることは悲しくてなりません。

 セシウムの米への移行が極力少ないことが検証され、

 来年の米づくりに光が見えてきているこのときに、

 この希望の芽に心を寄せてください。

 責任は東電にあり、農民を責めることができるでしょうか。

 

 原発のない新しい次代を創るために今こそ、

 都市と農村の新しい関係を構築していくこと、

 私たち農民も農の営みを続けて、

 さらに安全安心はふくしまを再生していくことを約束して、

 緊急に米のご支援を訴えさせていただきます。

 2011年12月30日

 

大地を守る会としても、ジェイラップややまろく米出荷協議会など、

契約産地の米を販売するのに一杯々々という状況にあり、

菅野さんのネットワークの米まではどうにも手が回らない。

「産直とはなんだったのか・・・」 の声が、つらすぎる。

 

他からもいろんな依頼が舞い込んでくるが、我々にも限界があって、

応えられないことは多い。

 

鼻水すすりながら考え込む日曜日。

あれこれ考えあぐねても、答えは 「王道でいくしかない」。

粘り強く徹底的に対策を進め、

有機農業の力によって 「ふくしま復活宣言!」 までもっていくことだ。

そのプログラムを持とう。

 

ああ、こういう時は、思いきって横浜パシフィコにでも

出かけたほうがよかったかもしれない。

 



2012年1月 4日

" 希望の復興 " を始めよう

 

皆様、明けましておめでとうございます。

本年が皆さまにとって  " 希望 "  を実感できる一年になりますよう

祈念して、仕事を再開します。

 

歴史はかなり大きな激動のステージに突入しています。

しかし目の前の動きは今だ道標(しるべ) を求めさ迷う龍のようでもあり、

3.11後を経験したにもかかわらず、

さらに奈落に向かっている危うさすら感じさせます。

必要な変化なら勇敢に立ち向かいたいものです。

 

春にはすべての原発が停止します。

2012年を、正真正銘の 「脱原発元年」 にしたい。

新しいエネルギーの構想は色々と提示されているのに、

「現実的ではない」 とか 「説得力がない」 とか 「コストが合わない」 とか

「温暖化が進む」 とか、否定する人たちがまだ厳然と存在します。

しかも流れを潰そうとするから困ったもんです。

しかし、もはや老朽化してきた原発に 「安全保証」 を預けるわけにはいかないし、

手に負えない有害ゴミを排出し続ける未熟な技術に優位性がないことも、

すでに明らかです。

次世代技術を切り開く者にこそ光は当てられる。

そんな時代に入っていることを確認して、エンジンを加速させましょう。

 

有機農業の力を信じるワタクシとしては、

「この星の生命体を支えるエネルギーの根源は、太陽と植物の光合成である」

から出発したい。

石炭や石油だって、

もとは太陽エネルギーを変換させて増殖した太古の生命体の化石だし。

 

しかもそもそも、エネルギーとは電気だけではない。

生命活動を支える力を、

たとえばアジア・モンスーンに暮らす人々は、

一粒の種が1生命サイクルで1500~2000粒に増殖する湿生植物=稲(米)

との共存技術を進化させることによって獲得してきた。

その共存システムをできるだけ安全で

永遠に持続可能なかたちで育むのが有機農業である。

 

しかも、この一年でどうやら見えてきた世界は、

厄介な放射性物質をがっちりとつかみ、生命循環系への拡散を防ぐ力は

土壌のキレート力にあり、それを安定的に支えるものこそ

生物多様性という土台世界なのではないだろうか、ということである。

 

放射能リスクから自己を防衛するために必要なことは、

" 逃げる・避ける "  だけではない。

免疫力強化のためにも、有機農業は貢献する。

逃げて別なリスクを摂取しては、元も子もないしね。

土を守る、その力を回復させる、無駄にしない (荒れさせない)、

新しいエネルギーを生む基盤にもする、

その力を 3.11以前よりも強固にする。

これこそ 復興 というものではないか。

そのためにも、生産と消費の流れの再建が必須である。

 

「流通者とは、価値のネットワーカーでなければならない」

なんて偉そうに喋ってきたツケから逃げるワケにいかなくなって、

いよいよもってしんどい一年が、始まった。

 



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