« ぬくもり庵 | メイン | 獅子ヶ鼻湿原-水と妖精の森 »

とんぼと田んぼ

6月30日~7月1日
「とんぼと田んぼの山形・庄内ツアー」開催。参加者25名。

受け入れてくれた生産グループは、
「みずほ有機生産組合」「庄内協同ファーム」「月山パイロットファーム」「コープスター会」
の4団体。

1日目は、午後2時に鶴岡駅に集合後、
鳥海山麓にある獅子ヶ鼻湿原の散策、宿舎となる鳥海山荘での交流会。
2日目は、朝4時からの鳥海山トレッキングから始まり、
みずほ有機・佐藤秀雄さんの田んぼ見学、
地元食材を使ったイタリア・レストラン「アルケッチャーノ」での昼食、
そして庄内協同ファーム・志藤正一さんの田んぼでの「生き物調査」と、
なかなか盛り沢山の内容であった。

ここでは、まずは佐藤秀雄なる人物とその田んぼをご紹介したい。

佐藤さんの田んぼでは、毎年100万から500万匹の赤とんぼが
誕生しているそうだ。
e07070201.JPG

坪当たりのヤゴの数を元に勘定しての推計値なので、
年や場所によって変動もあるようだが、それにしても恐るべき数字である。

当然、それだけのヤゴの餌となる小動物が存在しているということで、
その食物連鎖の底辺にいる微小生物群は無尽としか言いようがないし、
微生物を支える有機物の存在たるや……要するに「地力がある」。
この生き物の連鎖(生態系)と生命の多様性がしっかりと守られる田んぼを、
佐藤さんは作り上げてきたのだ。
それにしても何という土の柔らかさだろう。トロトロという表現がぴったりだね。

佐藤さんの、ここに至るまでの試行錯誤は書き切れない。
10年くらい前には、いろんな薬草やら植物を醗酵させて
自家製の液体肥料を作っていたのを見せてもらったことがある。
佐藤さんはそのタンクに ‘曼荼羅液肥’ みたいな名前をつけていた。
ここ数年は、冬にも水を張る「冬季湛水(冬水田んぼ)」にも取り組み、
たくさんのハクチョウが佐藤さんの田んぼで冬を過ごしている。
それもどうやら卒業して、次の世界に至ったようだ。
とにかく年々進化するので、下手に説明などしようものなら、
「それは昔の話ですね」とか言われてしまう。

今は雑草も含めて、すべての生き物を受け入れようとしている。
この日も、私が田んぼに入って草を抜いたら、叱られた。

「まったくエビさんは余計なことをする。私の大事な草を抜かないで欲しい」

「えっ? だってこれ、コナギですよ。こんなに生えて…やばいんじゃないすか」
「大丈夫です。これも何かの役割を果たしてくれているんです」

田んぼではすべての生き物が互いに支えあい、その中で稲も育てられています。
ここで何万匹もの赤とんぼが羽化して、上昇気流に乗って
いっせいに鳥海山に向かって飛んでいく様を、皆さんに見せたかったんです。
とんぼが羽化したての時はまだ上手に飛べなくて、それを狙ってツバメがたくさんやってきます。
ぼくの田んぼでは、ツバメが低く飛びます。
そしてとんぼを捕まえる瞬間、ピシッ!という音がして、さあっと舞い上がるんです。

e07070202.JPG

こんな話を田んぼでゆったりと語る佐藤秀雄。

佐藤さんのお米を食べたことのある参加者の感想はこう。
「特に主張がなくて、でも食べているうちに、ふわぁっと自然の風景が浮かんでくるような
 幸せな気分になったの」

佐藤さんはだたニコニコと、頷いている。

どんよりとした曇り空の下。
残念ながら、この日はとんぼの一斉飛行は見られなかったけれど、
この田んぼで、この人の話を聞きながら、その姿を想像するだけで、
みんな何だか満足させられちゃったような気がする。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://202.164.238.117/cmt/mt-tb.cgi/298

コメントを投稿

いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。