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成清忠蔵さんを偲ぶ

先週はずっと外での飲み会が続き、
記しておきたい話題は増えるものの、全然書くことができなかった。
ひとつずつ、書き残していくことにしよう。

まずはこの報告から始めなければならないだろう。
13日(土)の夜、品川プリンスホテルで行なわれた 「成清忠蔵さんを偲ぶ会」。

成清(なりきよ)忠蔵。
有明の海苔でお馴染み、成清海苔店の親父さんだ。
今年5月21日、63歳で永眠された。
気持ちよく寝て、朝起きたら、すでにこと切れていたという。
安らかな笑顔だったと-
その人の人生を象徴するような潔さ。

2000年から4年間、大地を守る会の生産者理事を務められた。
豪放でいて人への気遣いを忘れることなく、
同じ水産物関係の生産者からの信頼も篤く、また消費者のファンも多かった。

東京で何としても偲ぶ会を、
ということで全国から成清を愛した人たちが集まった。

冒頭で挨拶する藤田和芳・大地を守る会会長。

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   成清さんはとてもシャイな方で、あまり口数は多くはなかったが、
   海苔のこと、海のこと、環境のこととなると、実に熱く語ってくれた。

   酒が好きで、
   理事会の会議よりも、そのあとの一席を楽しみにしていたフシもあるが、
   皆を楽しませながら、時に剛毅な一面を垣間見せた。

   個性的な生産者が多い水産物の中で、
   成清さんは重石のような役目を果たしていて、
   専門委員会 「おさかな喰楽部」 の魂の部分を育ててくれた・・・

成清さんへの献杯の発声は、
「なんとしても水産から大地を守る会の理事を出そう!」
と訴えて成清さんを立てた、伊東の島源商店・島田静男さん。

マイクの前に立った途端、絶句。
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奥さんの顔見たら、思わず泣けてきちゃったよぉー。
男・島源、こちらもちょっと涙もろい人情の人である。

参加者から次々と、忠蔵さんの思い出や感謝の言葉が述べられる。

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四万十の鰻・加持養鰻場の加持徹さん。

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理事として同期を過ごした、新農業研究会・一戸寿昭さんも青森から駆けつけた。

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東京海洋大学の先生、川辺みどりさん。
大地の会員で、おさかな喰楽部のメンバーでもある。
成清さんが毎年秋に催してくれた 「有明海海苔摘み交流会」 にも参加している。

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実行委員を代表して、佃煮の遠忠食品・宮島一晃さん。

消費者会員の方々も次々とマイクの前に立っては、思い出を語る。

   2月の東京集会のホームスティで泊まっていただいたときにね、雪が降ったんです。
   雪を見ると思い出すって言うんです。
   若い頃、サツに追われて神社の床下で雪に震えながら隠れたんだとか。
   なんでサツに追われたのかは、聞けなかったんですけどね。

体を気遣って、「これを飲むといい」といって、何とかの水を送ってきてくれた話とかも出る。

僕にもあった。
9年前にガンの手術をして暫くたったある日、自宅に届いた布団袋のようなでかい荷物。
しかし、軽い。
開けてみれば、大量の乾燥スギナである。

「これを煎じて飲んだら、ゼッタイよおなると」

誰も彼も忠蔵さんから何かをもらっていたのである。もちろんモノという意味ではなくて。
ひとつの生き方を、とでも言えるだろうか。
まるで ‘愛は惜しみなく’ のように。

いつも周りの人の体調を心配しながら、
自分のことは頓着せず、
ただ豪快に飲んで、実に恬淡として小気味よく、逝った。

ただ・・・早すぎるよ。
もっと自分をいたわってほしかったよ。
(彼は 「わしも飲んどる」 とか言いながら、いやゼッタイ、スギナは飲んでなかったと思う)

でも、仕方がない。それが成清忠蔵なのだ。

みんな悔しいけど、成清と今日も飲んでいる、という感じで、つとめて明るく
「また飲もう。待ってろよ!」 と偲ぶ。

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左から、島源・島田静男さん、遠藤蒲鉾店・遠藤由美さん、札幌中一・橋本稔さん。
大地の水産物生産者を代表する元気印。右端は藤田会長。

「藤田さんの偲ぶ会は、盛大にやらんとなぁ」
「まあまあ、皆さんの弔辞は用意してますよ。どっちが先かな?」
 …という会話だったかどうかは、知らない。

偲ぶ会を準備した実行委員会から、忠蔵さんの奥様、君代さんに感謝状が渡される。
渡すのは元消費者理事、佐々木洋子さん。

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最後に挨拶する、ご子息・忠さん。
今や押しも押されもせぬ成清海苔店・2代目である。

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   いまも親父はここにいて、皆さんと一緒に楽しく飲んでいます。

・・・グッときて、あとは覚えていない。 凛として、立派な跡取りだ。
次の時代を作ろうぜ。親父のためにも。
   
故人を偲びつつ、実はもう一度、僕らは自分の生き様を振り返り、励まされているのだ。
成清の友人として、恥ずかしくない生き方をしよう。
またいつか、この親父から
「おお、こっち来いって。いいから、ここで飲めって言うとるとよ」
と言ってもらえるために。

ただ心配なのが、あの世でセクハラ騒ぎを起こして追放されてないか、だ。
すべてが許される世界ならいいんだけどね。
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いつも大地を守る会の発展を願い、労を惜しまなかった成清忠蔵さん。
ありがとうございました。

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コメント

忠さん。
読んでいただいたようで、ちょっと、いやかなり、冷や汗です。親父さんのヤバそうなエピソードもばらしちゃいましたが、僕にはこれも実に ‘らしい’ 若い頃の武勇伝の一つと思うところです。会場の笑い泣きも、忠蔵さんへの哀惜に満ちてたように感じました。
海水温が下がらず、海苔の作業にも影響が出ていると聞いてます。心配ですが、状況が好転することを願っています。お元気で、また東京集会でお会いしましょう。お母様にもよろしくお伝えください。

沢山の仲間に偲ばれ、故人そしておふくろも私も大変感謝しております。ありがとうございました。私も故人の種(タネ)として恥ずかしくないよう生きていこうと思っています。

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